2016年5月13日(金曜日)
【アラブ首長国連邦】 ドバイ
もはや家。
ドバイ空港の空港泊、快適すぎる。
ファストフード、売店、ワイファイ、飲料水、エアコン、清潔なトイレ、喫煙所、カート、電車駅直結。
言うことなし。
さらには駐車場のほうに荷物の隠し場所まで確保。
これで手ぶらで町の観光まで出来る。
安宿がドミトリーで最低3000円からというこのドバイにおいて、最強のバッグパッカーの味方だ。
さて、今日でドバイも3日目。
いくら節約してるといっても、まず電車代で1000円、ご飯で1500円、その他もろもろで1000円はかかる。
何もしなくても3000円以上は使っている。
2人の所持金はあと2万5000円。
そこそこシャレにならない。
なのに、シャレなってないねぇー、笑かすー、とカンちゃんと2人でお気楽に笑ってる。
いやー、カンちゃんがめっちゃシリアスで現実的な子じゃなくて良かった……………
とにかく稼がないと。
このドバイで路上ができるかはまだ全くの未知。
今までドバイのストリートパフォーマンスで稼いだって話は聞いたことがないし、ネットで調べても情報はまったく出てこない。
かろうじてハンドパン奏者のソウ君のブログが出てきたので、おお!!これは一筋の光明か!?と思ったんだけど、モール付近まで行ってここで演奏したら2秒で警察に殺されそうだと判断して演奏は自粛したらしい。
あのソウ君でさえ。
終わり(´Д` )
でもドバイはなかなか広い。
人が集まるのは間違いなくショッピングモールだけど、きっとローカルの人たちが過ごしているナイスなエリアが存在するはず。
今日目指すのはドバイマリーナエリア。
世界一周仲間のカッピーや、現地の人に聞いた話ではこのマリーナ周辺がオシャレな人たちが集まる場所でレストランも多く、いいんじゃないかということだった。
カッピーたちはカフェバーのオーナーに気に入られて半路上、半ライブって感じで演奏していたそうだ。
どんなところかまったくわかんないけど、とにかくトライアンドエラーだ。
エラーでジェイルはシャレにならんけど…………………
空港からメトロに乗って1人10.5ディルハム。310円。
結構長い時間移動してやってきたのはドバイマリーナエリアだ。
かなりデカい奇抜なデザインビルディングがひしめいており、バージカリーファー周辺に並んで賑やかなエリアなのかな。
とりあえずマリーナモールというショッピングモールがあったのでそこに行ってみた。
まぁここもまたとにかく豪華。
数日前まで牛と牛の糞まみれのインドにいたので、時代が100年くらいタイムスリップしたみたいだ。
このモールに来て思ったのは、お客さんのほとんどが欧米人であること。
ムスリムの衣装を着た人があまりおらず、肌を露出しまくったいつものノリの白人たちがたくさん歩いている。
このマリーナ周辺は欧米人の駐在さんたちの住むエリアなのかな。
それにしても、欧米人はやっぱりどこでも肌の露出が半端ない。
ホットパンツに、それただのブラですよね?みたいなただのブラだけつけてサングラスかけて歩いてる女の人なんて普通。
アラブ首長国連邦はイスラム国家だ。
それもなかなかの厳格なイスラム。
人前でキスしたら逮捕らしいし、セクシャルな服装も禁止されている。
でもショーウィンドウのマネキン、こんなだけど。
どこからがセクシャルなのー!とぷりぷりしてるカンちゃん。
というわけでズボン購入。
「ちょっ!!マジで今買い物してる場合じゃない!!!」
「あああ!!H&Mとか来たらダメええええ!!!」
2人でキャーキャー言いながらカンちゃんもロングシャツを購入。
5000円お買い上げなり。
ま、マジでこれで稼げなかったら笑うしかない………………
いやぁ、インドでのiPhone盗難から始まり、飛行機でのロストバゲッジというダブルパンチ。
今思いっきりホップ、ステップで勢いつけてジャンプをしようとしてる気がしてならない………………
ウヒョーイ!!ホップステップジェイル!!笑えねぇ!!!
というわけで今日もスーパーでお惣菜を買って美味しすぎるランチ。
ぐおおおお!!フランスパンが美味すぎるううううう!!!!
ご飯を終えてからモールの裏に出てみると、そこには綺麗な遊歩道があった。
近未来的な高層ビルがそそり立つ足元に小さな川が流れており、その川岸にオシャレにもほどがあるレストランが連なっている。
そそり立つビルディングのベランダに生活の様子がうかがえることから、これらはタワーマンションらしい。
白人さんが多いことも考えると、おそらくこの辺りは駐在さんの生活エリアなのか。
マリーナプロムナードという場所らしい。
それにしてもすげぇ。
美しく整備された遊歩道、上空を狭めるピカピカのビルディング、川にはまぁとんでもなく豪勢なクルーザーが停泊してあり、まさに金持ちたちの遊び場といった感じだ。
気品に満ちた欧米人たちやムスリムの家族が優雅に散歩している。
静かで雰囲気も良く、ここは路上に向いてると思うけど、他にもまだいい場所があるかもしれないので海のほうも回ってみることにした。
プロムナードから橋を渡って高層ビル群の足元を抜けていくと、すぐに超絶でかいホテルが並ぶ海辺の通りになる。
リッツカールトンやヒルトンという有名ホテルが、まるで宮殿のようにそれぞれの威容をアピールしている。
そんな通りにらなにやら欧米人がたくさん歩いている場所があった。
俺たちもそこに着いて行くと、こんなサインが。
スカイダイブドバイ。
そう、ドバイはスカイダイビングでも有名な場所だ。
さっきも高層ビルの隙間を舞い降りているいくつものパラシュートを見た。
この人間の仕業とは思えないようなドバイの超人工の町を空を飛びながら眺められたら、どんなに想像を絶する光景だろう。
もちろんめっちゃ値段も高いんだろうけど。
だだっ広い砂地の海辺の奥のほうになにやら建物が見えたので近づいてみた。
潮の匂いがして、懐かしい宮崎の海を思い出すが、ここは世界の富が集結するこの世の中心なんだよな。
建物が近づくにつれ、なにやら大きなダンスミュージックが聞こえてきた。
そこはバーかレストランかなにかの建物になっており、ゲートの向こうに欧米人たちが吸い込まれていく。
俺たちもそこに行こうとしたが、厳しいセキュリティがバッチリゲートで見張っていたので、こいつはきっとチケットがいるやつだろうと諦めた。
その時、ふと横を見てみるとものすごい光景が目に飛び込んできた。
広がる美しいビーチ、穏やかで青い海。
そこに信じられないくらいの数の人がうごめいていた。
砂浜沿いには壁のような高層ビルが連なり、ビーチを見下ろしており、その大自然と人工物の組み合わせがあまりにもいびつだった。
大自然の迫力に人工物がまさっている!!
ビーチにはパラソルのついたチェアーが並び、そこで優雅にくつろぐ人も見える。
さらにさっきの建物の中では、アメリカンウィスキーコンペディションなんていうイベントが開催されており、肌を露出した欧米人たちが狂気のごとく騒いでいた。
なんじゃこりゃ………………
バージカリーファーに行ってラグジュアリーなショッピングモールを見て、噴水を見る。
もちろんそれも素晴らしいけど、そんな一般的なドバイの観光ではこのオイル大国の実力の100分の1も見ることができてないんだ。
この国ではまだまだ凄まじい招待制のイベントやらVIPたちの狂乱の宴が日夜繰り広げられている。
この国の本当のリッチさを見ようと思ったら、どれほどの金を積まないといけないんだろう。
あまりの光景に呆然と立ち尽くしてしまった。
2人で若干へこみながらさっきのマリーナプロムナードに戻ってきた。
夕日が高層ビルの隙間に消え、遊歩道は柔らかい電灯でライトアップされ、日中よりも歩く人が少し増えていた。
やはりみんないかにもお金持ちですといった身なりをしている。
金持ちたちの恐ろしい遊びを見て少し混乱しているけど、やらないといけないことは変わらない。
路上をしないと。
プロムナードを歩き、レストランとレストランの間の静かであまり目立たないポジションにやってきた。
街灯も淡く光っており、目の前にはものすごいビルディングたちの夜景。
この上ないシチュエーション。
でも怖くてギターを出せない。
ガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガク(´Д` )
怖すぎる!!
だいたいどこの国でも最初は注意だ。
ここでやったらだめだよって言われて、すみませんーって言ってギターを片付ける。
そうやってその国の路上事情ってのを把握して、そこから突破口を見つけていく。
しかしここはドバイ。
問答無用で1発ジェイル直行も充分あり得る……………
カンちゃんから聞いた話では、マジでドバイは何かあったらソッコージェイルにぶち込んで、情け容赦なく何年も出してくれないんだそうだ。
へー。
やってやるよこの野郎!!
もし俺が稼ぎまくったらこれから世界中のバスカーがドバイに来まくって、このマリーナプロムナードは路上パフォーマーの聖地にでもなっちまうんじゃないか!??!
やってやるぜオラアアアアアアアアア!!!
最初はギターだけ持ってポロポロと蚊の鳴くような音で爪弾きましょうか。
もう本当、蚊の鳴くように。それ以上出してはいけません。
クソビビりながら通行人にギリ聞こえるかどうかくらいの音で歌を囁き、なんか警備員ぽい人がやってきたら、だよね!?愚地克巳のマッハ突きってマジ痛そうくない?!!とか言いながら口笛吹きながら夜景を眺めてるフリ。
こっえ!!こっぅえ!!
しかし、もちろんこんなんではお金は入らない。
楽譜も立ててないし、ギターケースも置いていない。
通行人のリッチピープルたちも、一応足を止めてこっちを見てくれるけど、ただ写真を撮るためにやってる観光客っていうふうにしか見えてないのでバスキングにはならない。
ぬぅ……………
確かにこの状態ならバスキングになってないから警察にも捕まらないだろうけど、稼げなかったらバスキングじゃない。
ていうかドバイに着いてからエアコンまみれで寒すぎて鼻水が止まらなくなってきてる。喉が痛くて痰がからむ。
完全に風邪ひいてる。
あああ!!もういいや!!
さすがに1発ジェイル直行はないだろ!?
ダメならダメって止められて、そこで止めればいい!!
「カンちゃん!ギターケース置こう!!」
「だ、大丈夫かな…………」
「大丈夫!!でももし俺が捕まったら放置してトルコ行ってケバブ食べなよ!!獄死とかするかもね!」
「もう!縁起でもないこと言わないで!!」
決死の覚悟でギターケースを足元に置いた。
この瞬間、俺の行為はバスキングとなる。
おおお!!気合い入れてギターを鳴らす!!
ぬおっ!!ソッコーでお金が入った。
10ディルハム札!!300円!!
それが立て続けに入る!!単価がでけぇ!!!
ムスリムのあの黒ずくめ忍者さんが入れてくれた!!
ビューティフルって言われた!!
うおお!!これめっちゃ嬉しい!!
あなたのその黒い服もゲロヤバいっす!!
中に着てる紫のガーターベルト、イカしてるっす!!
ぬおお!!50ディルハム札が入った!!一撃1500円!!
ドバイヤベェ!!!!!
すると今度はその辺で遊びまわっていた小さな子供たちがキャッキャ言いながらこっちにやってきた。
「歌ってるのー!!ねぇー!歌ってるのー!!」
まだ演奏中なのにギターをジャランジャラン触ってくる子供たち。
欧米人の子供みたいだ。
めっちゃ騒がしくて全然遠慮がねぇ。
「うわあああいい!!ねぇ、なんでもっとあっちでやらないの!?あっちのレストランの前はもっと人いるよ!!私のお父さんもあっちにいるし!!」
「へー、そうなんだ、確か向こうに大きなレストランあるよね。」
「そう!お父さんのレストランなの!!」
怖っ!!
なにそれ怖っ!!
そこら辺にいる子供がラグジュアリーレストランの経営者の子供とか怖すぎるわ!!
もう、この辺にいる人、全然もれなく金持ちなんだろなぁ…………
1時間後、ギターケースの中にはそこそこのお金。
初日だしあんまり調子にのるとヤバいのでこの辺で切り上げることに。
「カンちゃん、いくらある!?」
「えーっとねー…………すごい!!164ディルハム!!」
ぬおおお!!時給4800円だとおおお!!
うん!普通に稼げる国!!
いきなり車のキーをくれるというのはさすがになかったけど、めっちゃいい感じで受け入れてもらえた!!
よっしゃ!!イケる!!これはイケるぞ!!
ドバイでバスキングやって稼いでやったぞ!!
明日は土曜日。こうなったら思いっきり稼ぎまくってやる!!
よっしゃあああああ!!!!!
そんで空港に帰ったらバゲッジオフィスにカンちゃんのロストバゲッジが届いていた。
うひゃおおおおおおおおおおおお!!!!!
「やったあああああああああ!!!違う服着られるううううううう!!!!」
喜びまくってるカンちゃん。
荷物はなぜかデパーチャーターミナルのほうに紛れ込んでいたらしく、同じ空港内にあったんだそう。なにそれ!!
まぁなんにせよドバイ、楽しくなってきたぞ。
攻略なんて出来んやろうけど、俺なりの歌を響かせてやる。
目指せ一晩100万!!
そんで焼肉!!
スキヤキ!!