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俺のやってることは意味のないことなのか

2016年4月23日(土曜日)
【インド】 アラコナム





インドに来てまだどこにも観光に行ってないカンちゃんのためにカデルがカンチプラムに行こうぜと誘ってくれた。




カンチプラムは南インドのヒンドゥー教の聖地で、無数の寺院が集まるとても有名な町だ。外国人観光客もわずかながらいる。



すでに俺はこの前マニガンダルたちとみんなで行っているけど、カンちゃんのためにもう一度お参りに行こう。



















朝早くに車に乗り込んで30分ほど走ってカンチプラムに着き、朝ごはんにドーサを食べた。


有名なお店らしく、朝からたくさんのインド人で賑わっていた。

カデルがわざわざ店員さんにお願いしてドーサをコーンみたいに立てて盛り付けてもらった。






これは子供に出すときにするものですよと店員さんに言われたけど、外国人の彼らに見せてあげたいんだよとカデルが言ってくれた。


カデルありがとうね。





ていうかドーサでか!!


そしてパリパリしてて美味しい!!
































前回も参拝したマンゴーツリー寺院を今回も見て回った。

大きな塔がそそり立ち、寺院の中は洞窟のように薄暗く、石の怪しげな静謐さに満ちている。

















その洞窟の奥には3500年前からここに生えているマンゴーの木がある。

それだけでもすごいのに、シヴァ神とサラスバティが結婚した場所でもあるという。


目の前にあのインドの不思議な神話の一部があるかと思うと、毎回驚いてしまう。










そしてインド人、この御神木の葉っぱちぎりすぎ。


真横にちぎるなって書いてるのに。







あ、そうそう、僕が最近さんざん宣伝していた天才写真家ショータ君のアメリカ横断の講演会が無事この前終わりました。


たくさんの人が集まったみたいで、スペシャルゲストの秦万里子さんの演奏も素晴らしかったようだ。


行った人が羨ましいです。
俺も行きたかった。

ショータ君、お疲れ様!







「オーケーオーケー、いいよー。ビーナチュラル、ビーカジュアル。」



プロのカメラマンであるカデルが、俺たちのために大きなカメラを持ってきてくれて写真を撮ってくれた。

やっぱ上手い人が撮ると違うなぁ。






























この前知ったんだけど、このカンチプラムはアガスティアの葉という、何百年か何千年か忘れたけど、そんなずっと昔にすでに自分の人生のすべてが書かれた不思議な葉っぱが存在する町としても有名なんだそうだ。


アガスティアの葉という名前は聞いたことあったけど、このカンチプラムにあったんだな。



カンちゃんと、ひどいことが書いてあったらどうする?明日死ぬとか書いてあったら何しようか、なんて笑いながら話した。


カデルに写真を撮ってもらい、美味しいご飯を食べ、観光をして、楽しい時間。






でもこの時、心の中がとても乱れていた。

カンちゃんやカデルとの会話が耳に入ってこないくらい、上の空になっていた。




そんな自分に嫌気がさす。



太陽が暑くて、汗が身体中を流れていた。






















カデルの家に戻り、お昼ご飯を食べたら、みんなネットタイム。

カデルもカンちゃんもちょっと作業がたまっていたようで、黙々とパソコンに向かっている。


俺もやることはある。


でも1人で家を出て学校に向かった。












今日も学校では特別クラスをやっており、何人かの生徒たちが私服で授業を受けていた。


廊下の窓からこっそり教室をのぞくと、みんなが気づいてこっちに手を振ってくる。


先生たちも笑顔で、中に入る?と聞いてくれるが、気にしないで続けてくださいと言って、クラスを回った。








5月の真夏の太陽が窓の外を焦がしている。


子供たちはみんな真剣な顔で授業を受けていた。






























校舎の屋上にあがって、そこから周辺を眺めた。



広々とした原野に木々が散らばり、乾いた風が吹き渡っている。

ヤギが見え、牛もゆっくりと動いている。



空はどこまでも広く、俺を世界から取り残してくれる。




カデルの学校に来た初日からこの屋上がお気に入りだった。

でもどんどん気温が上がっていって暑くてたまらなくて、最近全然ここに来ていなかった。


学校にいる時は基本カデルとずっと一緒なので、こうやって1人でここに来るのは初めてかもしれないな。




















明日、この学校を出る。


当初の俺のやりたかったことはインドのストリートチルドレンにリコーダーを教えて稼ぎを上げてやることだった。



そのために去年、日本中を回ってリコーダーをかき集め、たくさんの人に頭を下げて感謝をして、それなりに金を使ってインドまで持ってきた。




でも、結局ストリートチルドレンに音楽を教えることは出来なかった。

俺がやったのは、彼らにリコーダーをあげ、いくつかのインドの学校に行ってリコーダーを寄付し、子供たちと音楽でコミュニケーションをとったくらいだ。









今回インドに来て、ストリートチルドレンたちと前回よりも深く絡んで、カデルやJICAの現地の事情に詳しい人に話を聞きながら色んなところに行ってきて、少しずつ俺の中の見方も変わっていった。


インドの教育が充実していってることとか、物乞いの子供たちのたくましさとか、インドはインドですでに完成してる。


俺が軽く手を出せるようなもんじゃないように思えて、どんどん力が抜けていった。












何度もブログに書いてきたけど、悔しい。


俺は別に博愛主義でもなんでもない。
ボランティアとか、海外貢献とかも興味ない。
むしろ嫌いだった。


ボランティアしてる奴らを見て、いい人アピールしてんじゃねぇよバーカって思ってた。








そんな冷めた人間である俺が前回の世界一周中に初めて海外の国々を見て回り、路上で毎日のように金くれ金くれと言ってくる物乞いの人たちとバトルをしてきた。


10歳以下の、5歳とかの子供が物乞いをする様子は最初はとてもショッキングだったけど、俺だって金はない。

芸で稼いでるんだから、お前らも何か芸を磨いてパフォーマンスすればいいんだよ、タダで金が稼げると思ってんじゃねぇ、と彼らを突っぱねていた。












毎日毎日、そんな物乞いのストリートチルドレンたちとバトルを繰り広げて、いい加減イライラしていて、ついにインドでそれが限界に達した。



だから腹が減ったって言えば金がもらえると思ってんじゃねぇぞこのガキ!!俺が音楽で稼いでるところ見てただろ?教えるから一緒に演奏して稼いで儲けを半分半分にするぞ!!



そんな感じで子供に音楽を教えようとした。

でもあの時は時間がなくて、教えることができずにインドを離れた。



だから今こうして、あの時のリベンジのためにインドにやってきた。






ボランティアなんかじゃない。

モヤモヤしてる自分がムカつくから、はっきりさせたかった。


貧困を理由にすんなよ。稼ぎたいんだったらもっと稼ぎ方があるんだよ。
惨めさを売りにしてんじゃねぇよ。



そんな思いで、日本を出てきた。








でも結果はこんなもん。






多くの人が俺を笑うはず。あんなに夢を語って勇んでインドに行って全然成果を出していないじゃないかって。


ブログのランキングにいる高校生ルーキーさんが僕のやってることをブログで見て、気に入らないって書いていた。

リコーダーを配ってることをティッシュ配りと一緒だと書いていた。






人から見たらそう見えるんだろう。


インドで子供たちのためにこんなことしてます、俺っていい人でしょ!!ってアピールしてるように見えてるんだろう。











別に人に評価してもらうためにやってるわけじゃない。


いい人ですね、とか言われたら即答でクソですって返事する。



でも俺なりに頑張ってやってることを否定されるのは、まぁ当たり前に傷つく。



人の言うことなんか気にすんなって声が聞こえてくるけど、やっぱりどうしても心が乱れる。

明日この学校を離れると思うと、今回インドに来て何かを残せたのだろうかって、風が胸を通り抜けていく。



















やらないより、やっほうが100倍マシ。



これは今回、JICAやその他の様々な形で海外で地域貢献をされている人たちとお会いして思ったこと。


観光でマザーテレサハウスに行って、時間つぶしで子供たちとたわむれて、日本人宿で恋に落ちて日本に帰ってドヤ顔でボランティア経験を語る人たちもいる。

それでも、もちろんやらないよりやったほうが100倍マシ。



熊本の震災に100万円寄付するのも、1000円寄付するのも同じ。


やらないより、やったほうが100倍マシ。




ひとつでも多くの笑顔を生み出せたなら、それだけで意義があることだと感じる。






って、自分に言い聞かせてる。

そう思わないとやってらんねぇよ。

















俺はストリートミュージシャンだ。

これからもきっと世界中で物乞いの子供たちとバトルを繰り広げるはず。


だから、俺は俺のやり方でストリートチルドレンと向き合っていく。

ストリートで生きてきた俺だからこそ見えるものがあるはずと今も信じてる。





あー、この胸のざわつきはどうやったら鎮められるんだろな。










「フミー、どこにいるんだー。」



カデルから電話がかかってきた。



屋上から見下ろすと、グラウンドにカデルとカンちゃんがいた。



おーいと手を振ると、2人も屋上にあがってきた。








別に俺が1人でこんなところにいたことをなんで?と聞いてこないカデル。

今日が最後だから感傷に浸っていたんだろう、って思ってくれているんだろうな。
















カデルが肩を叩いてくる。

カンちゃんがニコニコ笑っている。






俺はダメなやつだけど、周りのみんなが俺の存在を肯定してくれる。大丈夫だって思える。

1人じゃ辛いよ。

でも、頑張らないと。








また必ずインドに戻ってくるぞ。こっからがスタートにしてやる。







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