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音楽は教育であるべきなのか、楽しみであるべきなのか

2016年4月19日(火曜日)
【インド】 ビシャカパトナム






昨夜の晩ご飯に驚いた。


チャパティにチーズが挟まっていた。




「インドとヨーロッパのミックスよ。」




とローズママが言っていたけど、その味はめちゃくちゃ美味しかった。

さらには食後にコーヒーまで出してくれた。




ここの人たちは外国人ゲストが喜ぶことをとてもよく理解してくれているし、それに応える寛容さを持っている。






そして1番驚いたのはタバコを敷地内で吸っていいというところ。



もちろん建物の中ではダメだけど、庭とかで吸ってもいいと言われた。


カデルのところで敷地でタバコなんか吸おうもんならソッコーで追い出される。








ここではスイス人ゲストのバスティアンはハーフパンツでウロウロ歩いてるけど、カデルのところではシャツにズボンというちゃんとした格好をしないといけない。


子供の見本とならないといけないので、常に身だしなみや行動に品格が要求される。

食べ物も徹底してインド料理だし、コーラなんか彼らには毒でしかない。






日本人としてその感覚はよくわかるので、カデルの学校ではその程よい規則のある緊張感が心地いいんだけど、このニューホープスクールではインドのインドらしい自由さが通用するみたいだ。

ローズご夫妻もなるべく外国人ゲストが快適に過ごせるようこちら側に歩み寄ってくれている。






嬉しいことだ。

泊まらせてもらってるゲストルームも申し分ない。


でもなんだかその快適さがむず痒くもある。
























朝起きてテラスに行くと、ゆで卵とパンのブレックファストが用意されていた。






紅茶を飲みながらそれをゆっくりと食べる。


子供たちはすでに学校に授業に行っており、夕方まで俺たちは何をしてもいい。

完全に自由。




え?なにこれ?

快適な宿、美味しい欧米風のご飯、ゲストというだけでみんなが笑顔を向けてくるこの環境。

きっとみんな俺たちのことをそんなによく理解していないはず。


いつものようにボランティアにやってきた日本人たち、って感じだ。



うーん、



とりあえず暇だ…………………
















子供たちが学校に行っている間、ちょっと外に出かけることにした。



バスティアンたちがビシャカパトナムの町に遊びに行くということで、俺たちも近所の町まで乗せていってもらうことに。



この学校はど田舎の何もない場所にポツンと存在するので、最寄りの町まで歩いて行くこともできない。

施設のスタッフに頼んで車で行かないといけない。


軽い軟禁だ。

















「フミ、俺たちが今から出かけるのは子供たちには内緒にしてるから何も言わないでね。」



車に乗り込みながらバスティアンが言った。

どういうことか聞いたら、なにやら今日の朝に、バスティアンが子供たちとみんなで学校の掃除をしようと思い、ゆうべの時点で朝7時に集まってねーと声をかけていたそう。





しかし実際集まったのはたったの5人。




ちゃんと約束したというのに5人しか集まらなかったことにバスティアンはショックを受け、なんで集まらなかったかみんなに問いただしたが子供たちはうつむいて言葉をにごすだけ。

ごまかそうとしている。






そこでひと芝居うつことにしたそう。


子供たちに何も言わずにスイスに帰るふりをして、自分たちが約束を守らなかったからバスティアンが行ってしまった、というふうに反省してもらおうという計画だ。



バスティアンはすでにこの学校の子供たちの本当の兄弟みたいな存在。

そんなバスティアンが何も言わずにいなくなったらみんな相当悲しみにくれるはずだ。









というわけでみんなで車に乗り込み、エンジンをかけて出発すると、何人かの子供がその様子を発見して、めちゃくちゃビックリした顔をしている。

え!え!?うそ!?みたいに慌てふためく子供たちの前を通り、車はゲートの外に出た。






















近所の村の中心地はそれなりに栄えていた。





ただここは小さな村なので、中心地といっても小さなボロボロの商店が並んでいるだけで大きなビルなんかはない。

ローカルなお店ばかりだ。


そこで俺とカンちゃんだけ車を降りた。






















まぁとにかく暑い。

死ぬほど暑い。


そう感じるのは俺たちが日本人だからではない。


実際インド人も死にまくってる。



それくらい殺人的な太陽が照りつける中を歩くと、人々が俺たちのことを見て超絶驚いて二度見してくる。





外国人がおるわー、へー…………ってうおぉ!!!?




とみんなビビってる。


子供たちも俺たちを見つけると、うわああ!!ヤッベ!!外国人やし!!ヤッベすぎる!!と指をさして声をあげている。



こんな観光地もなにもないど田舎のさらに内陸部に入った小さな名もなき村に外国人がやってくることなんてまずないんだろう。

人生で初めて外国人を見たって人も多いはず。





そりゃ日傘もさすわ……………





そして誰も踏切守らん。



















そんな中でまずはご飯を食べようと、そこらへんにあった小さな食堂に入った。

メニューなんかなく、何を頼んでいいかわからないのでとりあえずチキンビリヤニとチキンカレーを注文。









これがめちゃくちゃ美味しい。


大きなプレートに色んな種類のカレーが乗って出てきて、さらにテーブルの上にはサンバルかなんかが置いてあり、テキトーにミックスしながら食べる感じだ。

しかも減ってきたら勝手にウェイターさんがやってきて注ぎ足してくれる。





辛くて汗がダラダラ出てくるけど、その刺激が逆に爽やかだ。


カンちゃんも美味しいー!と喜んでる。




ただプレートに乗っていたカットレモンを絞ろうとしたら、あまりにもカピカピに乾ききっていて1ミリも果汁が出てこないというやつ。


そりゃすぐ乾くよね………こんなに暑かったら…………………
















めちゃくちゃ美味しいカレーを食べ、近くの商店でコーラをがぶ飲みし、それから線路の脇に広がるローカル市場を歩いてみた。













ズタボロの土の地面の広場に所狭しと並んでいる野菜やスパイスたちの山。

生魚に干し魚、捌きたての山羊肉、衣類から生活日常品まで様々なものが地面に並べられて売られている。


それぞれにインド人のおじちゃんやおばちゃんが座り込んで売っており、みんなヤシの木の葉で作ったパラソルという傘を立て、小さな日陰に身を潜めている。


品物たちはどれも雑然と並べられているように見えて、どこか一体感があり、カラフルで、不思議な美しさがある。

























熱風が吹くと砂埃がブワッと舞い上がり、目が開けてられないくらい煙たい。

おばさんたちはサリーで顔を押さえて砂をガードしている。


どこにでもある、ありふれた、地元の人たちのための市場。




濃密な生活の臭いが立ち込めており、歩いているだけで冒険をしているような気持ちになれるのは、ここが観光地じゃないからだ。

旅人はいつだって、先人たちの轍がついた道を嫌がるもの。


ローカルであればあるほどドキドキさせてもらえる。















外国人を見ただけで目を丸くして驚く田舎の人たちのローカル市場。

そんなところに俺たちが入り込んだらどうなることか。


誰もが大喜びで俺たちのことを取り囲み、写真撮ってくれ大会。











いや、撮るけども、撮られてどうするの?って思う。


フェイスブックで送ってくれよ!なんて言わずに、撮った写真を見て、いいねー!と喜んで、それで満足しているおじちゃんおばちゃん。



みんなニコニコして俺たちのことを暖かく迎えてくれ、ゆっくりと端から端まで見て回った。


それにしてもトウガラシ多すぎ。



しばらく田舎の町のピュアさを堪能してからオートリキシャーに乗って学校に帰った。


















































夜になり、昨日と同じくお祈りルームでの子供たちによるプレイタイムに混じった。


夜の闇の中に子供たちの聖書を読み上げる声が流れていく。




「ブラザー!ギター弾いてよ!!」


「テルグの曲歌ってよ!!」





テルグってのはこのビシャカパトナムのある州のことだ。

タミルナドとは言葉が違うので、まるで別の国に来たみたいな錯覚になる。




「テルグの曲はできないけど、これはできるよ!」




そう言って、さっきコードと歌詞を拾っておいたマルマルモリモリを歌うと、一気に子供たち大興奮で大合唱になった。





「イチニノサンシデ、ゴマシオサ~~~~ン!!!!!」




インドの子供たちとマルマルモリモリを歌ってる状況が面白くて仕方なかった。











「みんなー、聞いてー。今からみんなにプレゼントを配るねー。」




部屋からキャリーバッグを持ってきて、みんなの前で開けた。



そこにはアルトリコーダーが30本。

タンバリンが1つ。

鍵盤ハーモニカが2つ。



こんな面白そうなものが目の前に現れたら、普通だったら発狂して踊りあがり、バッグに頭から飛び込んで争奪戦が繰り広げられるはずなんだけど、ここではみんなおとなしい。


みんなじっと座っておとなしく配られるのを待っている。

どこか、もらい慣れてるのかな、って思った。















アルトリコーダーは子供たちの小さな指には大きすぎるのはわかっている。

大人の俺でもなかなか届かない。



でもずっと手元に置いて、慣れ親しんでいくことで楽器ってのは身についていくもんだ。




カンちゃんと2人でお手本にパフをハモって吹いたら、みんな目をキラキラさせながら聞いてくれ、大きな拍手が起こった。


子供たちにアリガトウゴザイマスー!!と言われ、俺じゃなくて日本の子供たちに感謝してねと伝える。


みんなにリコーダーの持ち方、音の出し方を教えて周り、夜はふけていった。
















これが1番正しい方法なのか。

音楽は教育でしかないのか。


もっと強力なもののはず。


でも今はこのやり方しか思いつかない。








夜遅くに校庭を歩いていると、子供たちの人だかりができていた。

なんだ?と思ったら、ちょうどバスティアンたちが帰ってきたところだった。



頭を抱えて喜んでいる子供たち。



自分たちが約束を守らなかったらバスティアンたちは行ってしまったんだ………って、きっと彼は彼らなりに反省したことだろう。



笑顔でみんなを抱きしめるバスティアンは、本当に彼らのいい友達だなと思った。



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