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金をあげるのは誰にでもできること

2016年4月20日(水曜日)
【インド】 ビシャカパトナム






朝の7時。


眠い目をこすって校舎の前に行くと、子供たちと先生が集まっていた。








先生たちが呼びかけるとキチンと整列する子供たち。


俺やカンちゃんは真ん中に呼ばれ、校長先生の横に立った。

バスティアンたちは慣れた様子で真ん中に立っている。










「アテンション!」



司会進行の女の子の声が上がると、校訓や、モットーの読み上げが行われる。


みんなピシッと背筋を伸ばし、幼い声がすでに太陽の照りつける原野に流れていく。










国家の斉唱が終わると、校長先生が俺たちに一言お願いしますと言ってきた。




ちょ、ちょっと待ってよ、いきなり言われても頭回らないよ。こんな朝に。




慌てふためきながらもなんとかたどたどしく話す。
カンちゃんもキチンとした英語でみんなに挨拶した。


そして次はバスティアンの番。






「昨日、僕らには小さなストーリーがありました。」



いつもおちゃらけているバスティアンが真面目な声でみんなに語りかけた。





「昨日の朝、みんなは僕との約束を守らなかった。僕はそのことでとても傷つきました。人は過ちをおかすものです。しかしそれはとても人間的なことです。そこで大事なのは、その失敗を繰り返さないこと。そしてキチンと人に謝ることです。僕はみんなのことが大好きです。だからお互いをリスペクトし合っていきましょう。」






朝の日差しの中、とても素晴らしいスピーチだった。



バスティアンは昨日言っていた。

子供の体を叩くのは簡単なことだよ。でもそれでは少ししか伝わらない。心を叩くことが大事なんだよ、って。


子供に何か伝えるってのはこういうことなんだよな。






朝の清々しいミーティングに響くバスティアンのスピーチは、どこか神々しくすらあった。





























もし良かったら音楽の授業をしてもらっていいですよ?と先生に言われたので、午前中に学校の中で少しだけ音楽の授業をとってもらうことにした。



授業をしてください、という感じでなく、やりたかったらやっていいですよ?という言い方にこの学校のボランティアとの関わり方を見るようだ。

























ギターを持って教室に入り、サレガマパダニサの発声、日本語の曲の合唱を1時間ほど行った。

みんなだいたい大きな声で歌ってくれるんだけど、中には口も開けずにそっぽを向いてる子もいる。


なかなか悔しいけど、仕事で来てるわけでもないのに強制するのは抵抗があるんだよな。






元気な子も、シャイな子も、心を閉じてる子も、開きすぎな子も、色んな子供がこの施設にはいる。

それぞれの個性として片付けるには、少し背景が暗すぎる。




俺にできることは、みんなと歌うことくらいしかない。






















午後からは気温が上がりすぎるので子供たちはそれぞれに日陰に避難して休憩時間になる。


今日も40℃という半端じゃない日差しにマジで頭がクラクラしてくる。





そんな日差しの中、敷地のどこからか、リコーダーの音が聞こえてくる。

ゆうべあげたリコーダーを子供たちが吹いてくれているようだ。



こうして普段から楽器に親しんで音感が養われれば、歌うことも演奏することもきっと楽しくなるはず。



音のするほうに歩いていき、それぞれの場所で子供たちにリコーダーの吹き方を教えて回った。

















そしてもうひとつ大事なことを忘れてはいけない。


バッグの中に入れて持ってきていた袋をローズママのところに持って行った。



「ママ、これもし必要でしたら使ってください。」




袋の中に入っているのは子供の服だ。






シンガポールの最終日に、現地在住の日本人であるミエコさんからいただいていた子供服。

インドの子供のためにミエコさんが託してくださった大事なものだ。


施設の子供たちの中には、着古して黒ずみ、破れた服を着てる子も多い。


きっと役に立つはずだ。




「あらまぁ、ありがとうございます。このTシャツはランバブに良さそうね。このシャツはサシィに着させましょう。フミさん、どうもありがとう。」




本当は子供たちが実際に着ているところを写真に撮ってミエコさんにお送りしたかったんだけど、数に限りがある中で俺が配ったらヒイキだ!!と争奪戦が繰り広げられそうなのでやめておいた。

ここはママにお任せすることにした。





ミエコさん、いただいたTシャツやズボン、この施設で確実に役に立っていくと思います!!

写真送れずに申し訳ありませんでした。






















日が傾き、建物から出てきた子供たちと校庭で遊んだ。

ろくな遊び道具がないんだけど、みんなそれなりに工夫して遊んでいるようだ。







バトミントンをしたり、おもちゃのバットでクリケットの真似事をしたり、縄跳びもあった。





子供たちと遊び、たくさん笑って、たくさん汗をかいて駆け回った。


カンちゃんはカンちゃんで向こうの方で女の子のグループに混じって何かやっている。







みんな純粋だ。

いくら外国人慣れしてるといっても、所詮みんなまだ子供だ。

ちゃんと正面から向き合って相手をしてあげるとすぐに懐いてくれて、心を開いてくれる。




「いつまでいるのー!?」



「明日には行かないといけないんだー。」



「えー!!なんで!?他の日本人は3ヶ月いるのに!!早いよ!!」





そう言って周りに集まってきて手を握り、別れを惜しんでくれる子供たち。


肩を抱き、背中をなでると、その細くて小さな体の温もりが手のひらに伝わってくる。


あまりにもか弱くて、頼りない命の炎。















子供たちの表情を見ていると、胸がつまる。


こんな小さな子供が、ニコニコしたり、寂しそうな顔をしたり、恥ずかしそうにしたりして、ちょこんと座っている。



この施設にいる子のほとんどが天涯孤独であったり、片親だったりという環境だ。

お母さんがいなくて、お父さんが刑務所に入ってしまってここにいるという子もいる。






そんな境遇の子が、ちょこんと座っている。



何も知らないようで、すべての悲しみをその体の全身に詰め込まれているように。






笑顔を見てると涙が出そうになる。

どうしてこんなところにいなきゃいけないんだ。

すべての愛を注がれるはずのこの幼少時代に、彼らはまるで暗いトンネルの中だ。










この施設がなかったら、彼らは地面で寝ていたはず。


埃をかぶり、泥にまみれ、人間の尊厳などみじんもない暮らしを送っていたはず。


それが、ここにいることで友達ができ、家族ができ、大切にしてくれる人がいて、さらに教育までしてくれる。


外国人と触れ合い、様々な文化を学び、きっと賢い大人になることだろう。



彼らが大人になって自分の生い立ちを振り返った時、いつか心から施設に感謝する時が来るはず。


それくらい、この施設は素晴らしい。
人間が命の尊厳を取り戻している。


俺にこれだけのことができるだろうか。












はっきり言って、金をあげることは簡単だ。


今回のリコーダーにしても、なんにしても、丸投げするのは誰にだってできること。





この世界の不平等を変えるんだ!!と言いながらも、では人生をかけて外国の僻地で貧困に立ち向かうことができるか?


金はあげられるけど、自分の時間をあげるのはみんな躊躇する。





俺にローズさんご夫妻のように外国の子供のために、たった一度きりの自分の人生を犠牲にすることができるだろうか。



ボランティアなんか気楽なもんだ。


寄付も、もちろんいいことではあるけど、そこに責任が発生しないんだから気楽なもんだ。


俺は責任の発生しない安全な場所から、ちょこちょこと手を出してるだけなんだよな。












子供たちを抱きしめると、恥ずかしそうにモゾモゾしている。

女の子たちがやってきて、向こうで遊ぼう!!と手を引っ張ってきた。


女の子たちのグループのほうに行くと、カンちゃんが年長のお姉さんからヘナタトゥーをしてもらっていた。












インドではおなじみの女性のオシャレであるヘナタトゥー。


ヘナという植物の葉っぱから抽出したエキスで肌に模様を描くと、エキスが肌に沈着して2週間くらい模様が残り続けるというものだ。

綺麗に跡形もなく消えるので、最近では先進国でも流行ってるし、これを路上で描いて稼いでる人もいる。
日本人でヘナで漢字を描きますよーってパフォーマンスをしてる旅行者も多い。




このヘナタトゥーを手と足首にもやってもらっているカンちゃん。

カンちゃんもすっかり子供たちの中に溶け込んでいるようだった。




「フミにもしてあげるよ!!」



可愛い女の子のランディニが手の甲にインドらしいエキゾチックな模様を描いてくれた。
























今日は俺たちだけでなく、1ヶ月滞在したバスティアンたちにとっても最終日だ。

明日の朝にすべての外国人ゲストがこの学校を去る。


というわけで今夜はパーティーが催された。






広場に丸太が並べられ、中心でキャンプファイアーをおこし、たくさんの豪華な料理が振舞われた。


スピーカーから大音量で音楽が流されると、さすがにインドの遺伝子を持つ子供たちはすぐさま飛び上がって、全身をこれでもかというほどくねらして踊りまくる。














子供たちの元気のリミッターはマジで吹っ飛んでる。


みんな俺たちの手を引っ張ってきて、みんなでごちゃ混ぜに入り乱れて踊りまくった。

子供たちの笑顔に囲まれて、汗をかいた。
































色んなことを考えてしまうけど、やっぱりここに子供の笑顔があることがなによりの真実だよな。


俺にだって、誰にだって出来ることはたくさんあるんだ。



それを気負う必要なんて絶対にない。

まして人に文句をつけられることでもない。





路上でお金をもらう時に、1000円でも1円でも変わらぬ笑顔でありがとうと言うこと。


人の優しさにレベルをつけることなんて、してはいけないことだ。



あぁ、もやもやする。









でも、結構スッキリしたな。

ここに来られて良かった。





やらなきゃ、何もわからない。

そして、しないよりした方が百倍いい。


それで誰かが少しでも笑顔になったり、救われる人がいるんだから。




俺はまだちょっと中を覗いただけだけど、きっと、覗くという行動をしない人よりかは何かを学ぶことができはず。



これは答えではないけど、でもちょっとスッキリしたよ。





この、何もしないでしてる人を鼻で笑う、というポジションから、その人を認めるというところに意識を変化させるのって、ほんの紙一重の違いなのに、とても難しいことだと思う。


それが出来た時、きっと人間として大きな成長になるんだろうな。

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