2016年4月9日(土曜日)
【インド】 アラコナム
「どうもー、お久しぶりですー。コルカタとバングラデシュはどうでした?」
朝、コズエさんがやってきた。
JICAの隊員として、このアラコナムから2時間ほどのところにあるど田舎の村の小さな学校に派遣されているコズエさん。
タミル語を勉強して現地に溶け込む努力をしてて、誰に対しても礼儀正しくて、明るくて、とっても素敵な女性。
この週末は学校が3連休らしく、1人で村にいたら干からびてしまうので遊びに行っていいですか?と昨日メールをもらっていたのだ。
コズエさんは俺と一緒に1度このカデルの学校に来ているので、すでにみんなと仲良くなっており、家に帰るとママとパパがコズエー!!モストウェルカム!!と笑顔で出迎えた。
「いやー、暑いですねー………また地獄の日々が始まっちゃいます………」
アラコナムもコズエさんがいるベルールもインド国内でトップクラスに暑い場所だ。
すでに40℃を超えてきてるし、来月の5月になったら45℃とかになる。
エアコンなしじゃ夜も眠れないよ。
「コズエー、いつでも来ればいいんだよー。ここにはエアコンあるし、美味しいご飯あるし、バケツじゃなくてちゃんとしたシャワーあるんだからエブリウィークエンド来ればいいよ。」
ゲストが大好きなカデルがそう言う。
コズエさんも家から2時間のところにいいお友達ができて嬉しそうだ。
よかった。
お菓子美味しい。
袋開けたら中身入ってない…………
インドへようこそと笑うカデル。
前回コズエさんが来た時は学校が休みだったので音楽の授業を見てもらえなかったんだけど、今日は土曜日。
ノーブックデーという、勉強以外のことを学びましょうという日だ。
生徒たちは朝からクリケットやブラスバンドの練習をしている。
その様子を見て、インドの貧しい学校に情操教育をするために派遣されてきたコズエさんはとても驚いている。
コズエさんのいる寒村の貧しい学校では人材も物資も足りず、英語とか算数の授業で手一杯で、それ以外の音楽や体育の授業なんかはほとんど行われていない。
それに比べてカデルの学校では様々なクラブが活発に活動しており、生徒たちはみんなとても活き活きと学校生活を楽しんでいる。
まぁコズエさんの学校の子供たちもウルトラ活発だけどね。元気にかけてはここの生徒たちよりもはるかに上だ。
今日もいつものように翼をくださいグループの授業をやったんだけど、せっかくなのでコズエさんにも先生をやってもらった。
「はーい、それじゃあこのリズムでリコーダーを吹くからねー。サレガマパダニサだよー。」
さすがに1年以上このインドで学校の先生をやってきているコズエさんだ。
教え方、子供たちとの接し方が上手い。
外国の子供と思い出作りでじゃれてるような旅行者のそれとはわけが違う。
インドで暮らし、彼らの生活や習慣に従い、きっちり彼らの中に溶け込んでいるので、それを子供たちも敏感に感じ取っている。
コズエさんの柔らかい人柄は、きっと海外で活動するのにとても向いてるんだろうなと思った。
見習わないとなぁ。
「リコーダーって低いドとかレって全部穴をふさがないといけないから難しいじゃないですか。なので私は低いドとレを押さえなくていいパフを練習してるんですよ。」
この前コズエさんの学校にリコーダーを寄付して来たけど、あれからずっとリコーダーを使って音楽の授業をしてくれているという。
そして曲はピーターポール&マリーのパフ。
定番の曲ではあるけど、この欧米文化に侵食されていないタミルの人たちはもちろん知らないので、1から教えることになる。
大変ではあるけど、あのキャッチーなメロディーと低いドとレを押さえなくていいということがハマって子供たちに受け入れられてるみたいだ。
さすがコズエさんだなぁ。
いつもどうすればいいのかを全力で考えて、子供たちのため、職務のために努力されてるんだろうなってのがよく分かる。
本当見習わないとなぁ……………
コズエさんのおかげで楽しく、そして充実した授業ができ、今日のクラスはお終い。
イマジングループはテストがあるから忙しいみたいで今日はなしだ。
もうすぐ学校も卒業式で、それが終わったら夏休みが始まる。
40℃を超える酷暑の夏だ。
子供たちはそれぞれに家族旅行に行ったりして夏の思い出を作るんだろう。日本と同じように。
セミの声、カキ氷、盆踊りの太鼓と笛のお囃子、
墓参り、野球中継、草いきれと陽炎。
このタミルの原風景はどんなものなんだろう。
きっと人々の心の中に、ゆらめく思い出が沈殿しているんだろうな。
ていうかカシューナッツってこうやってできるんだ……………
なにやら俺たちの写真を撮ってくれたカデル。
これお金発生するレベルだよ。さすがショータ君の写真家仲間。プロだわ。
「コズエー!!準備はいいかー!!いくぞー!!」
夕方になり、いつものメンバーでバレーをする。
太陽が傾いて、原野の向こうに真っ赤に燃えながら沈んでいく。
ボールを打ち上げ、追いかけ、歓声を叫び、汗をかいた。
1日はあっという間に過ぎていく。
そしてまた新しい1日がスクロールしてやってくる。
子供たちはこの繰り返しの日々の中で、多くのことを学んで成長していくのに、俺たち大人は今日という1日でどれほど成長したのだろう。
生きている限り、何か新しいことにチャレンジして、新しいことを学び、常に新しい日々を過ごしていけるはず。
あの頃の、原風景の中の子供が今こうしてインドの片隅でボールを追いかけている。
1日1日を無駄にしないよう、大切に今を生きないとな。