2016年3月28日(月曜日)
【インド】 コルカタ
せっかくコルカタに来たんだから、バングラデシュに行ってみようかなと思った。
チェンナイに戻る飛行機は10日後。まだ結構時間がある。
バングラデシュはアジア最貧国と言われているので、貧困についてまた何か感じることがあるかもしれない。
それに新しい国だ。
今回の旅で最初の初めての国。
今の所シンガポールとインドしか行ってないけど、一度来たことのある国はやっぱり新鮮な感覚はない。
久しぶりに知らないところに行く冒険心を味わいたい。
しかしちょっと不安なのはバングラデシュがムスリムの国だということ。
別にムスリムの国が全て危険というわけではないんだろうけど、バングラデシュで去年、日本人が殺されている。
イスラミックステイトによるものだという話も聞いている。
これはかなり怖い。
しかし首都のダッカには日本人も結構住んでるみたいだし、昨日町で色々聞いてまわったところ、外国人観光客も普通にこのコルカタからバスで遊びに行ってるとのこと。
イスラミックステイトのテロはもはや世界のどこで起こるかわからない。
危険なところに行かないに越したことはないんだけど、首都のダッカに2日くらいだけ滞在するぶんにはとりあえず大丈夫そうだ。
他のところには行かない。
夜間は出歩かない。
それくらいは最低限心がけよう。
コルカタからバングラデシュの首都ダッカに行く方法は3つ。
飛行機
バス
電車&バス
飛行機は一瞬。
バスはコルカタからダッカまで直通の国際バスが出ている。1200ルピー。2000千円で15時間ほど。
電車だとまずコルカタのシールダー駅からボンガアンという国境近くの町まで行く。3時間くらい。チケットは多分100円くらいだろう。
国境を徒歩で越えたらバングラデシュ側からバスに乗ってダッカへ行く。多分1000円くらい。
そして気になるビザなんだけど、バングラデシュはビザが必要とのこと。
調べてみたんだけど、これが情報が入り乱れていて、
「国境でアライバルビザが取れます。楽勝で。」
「国境だと取れないですよ。バカなの?コルカタのバングラデシュ大使館で取得してから行きましょう。」
「バングラデシュ大使館に行ったら、外国人はアライバルビザが取れるから帰れハゲと言われた。」
「ビザ代という名の俺のビール代のために50ドルよこせと言われて払った。」
「無料だった。バングラデシュ人優しい。」
などなど、どれが本当か全然わからない。
調べれば調べるほどに面倒くさくなってきたので、iPhoneを閉じた。
まぁ明日電車で国境まで行くか。
それで追い返されたんならバングラデシュとは縁がなかったということにして、他の町に行くことにしよう。
宿の気持ちのいい屋上で上半身裸でのんびり日記を書いていたら、アジア人の女の人がスタッフと一緒に上がってきた。
どうやら今着いたみたい。
すぐにその女の人が日本人ですか?と聞いてきた。
インドの服装に身を包んでおり、お化粧もしれおらず、いかにも旅人ですといった雰囲気だ。
このマリアゲストハウスはコルカタの宿の中でも比較的日本人が多い方だ。
もちろんサンタナゲストハウスがダントツ日本人だらけっていうかほぼ日本人しかいない宿。
その次がパラゴンでその次がこのマリアといった感じかな。
最近では2年前までなかったワイファイが取りつけられたので、サダルストリートの中ではかなり快適に過ごすことのできる宿だ。
「どうもー、どちらからいらしたんですかー?」
「あ、僕はチェンナイから来ました。」
「あ、南から来たんですねー、私はバラナシからですー。ホーリーでめちゃくちゃ盛り上がってきたんですよー。いやー、ほんとインド人が大騒ぎしてるの見るの楽しかったー。」
インドの有名なお祭りであるホーリー。
色のついた粉を町中で誰彼構わずぶちまけ合うかなりクレイジーなお祭りだ。
俺は行ったことないけど、まぁ南米でスプレーと水をぶちまけ合ってたあのお祭りみたいなもんか。
観光客に大人気で、よく若いバッグパッカーたちはこのホーリーに合わせてインドに来る人が多い。
俺はわざとその日は外した。
道歩いてたらいきなり粉を投げつけられて塗りたくられるとか想像しただけでキモくてしょうがない。
ギターにかかったりしたらマジでキレる。
「あ、そ、そうなんですね………旅はよく行かれてるんですか?」
「いやー、そうなんですよー、これ見てください。」
おもむろに腹巻からパスポートを取り出す女の人。
「ページが足りなくて増刷してるんですよねー。インドもう5回目です。私って本当変わっててー。あははー。いやー私のお気に入りのチャイ屋もう空いてるかなー。本当、サンタナとか大嫌いなんですよねー、インドに来すぎちゃってて。あははははは。」
仲良くなれない感がハンパない。
すごいですねー、と相槌をうって散歩に出かけた。
ゆうべ屋上でビール飲みながら中国人の女の子と喋ってたんだけど、その子が、ニューマーケットで日本人が路上演奏しているのを見たよと言っていた。
おお、このコルカタにも路上やってる日本人がいるなんて。
ていうかニューマーケットってなんだ?
聞くと、どうやらコルカタにも来た観光客が1番最初に行く観光地らしい。
そういえばこんなに何回もコルカタに来てるのに、まだサダルストリートとパークストリートの往復しかしてない。
ちょっとそのニューマーケットってやつを見に行ってみた。
サダルストリートから歩いて5分。
道路際にこれでもかってくらいたくさんの屋台がひしめく通りの先に、大きなレンガ造りの建物がある。
これがニューマーケットか。
中に入ろうとするとすかさず騙す気満々でござる!!みたいな感情が顔中からほとばしり出ているインド人が話しかけてくる。
「オミヤゲ!!チープ!!マイショップ!!トモダチ!!」
「ごめんね、お土産を探してるんじゃないんだ。1人で歩きたいからついてこないでね。」
「そうなんだ!ところでうちのお店ってすごく安いから見ていってよ!ミルダケタダ!!トモダチ!!」
「ごめん、でもお土産欲しくないんだ。1人で散歩してるんだよ。あなたがいるとのんびりできないからついてこないでください。ね。ごめんね。」
「そっか!わかったよ!うちの店は日本人の客が良く来るんだ!!すごくチープだよ!!あ!マリファナはどう?ナイスクオリティマイフレンド!!」
「このヒゲ野郎!!消えろ!!カレー食っとけ!!」
「フ~~ウ!オヒョヒョ~~!!」
ニヤニヤしながらどこかへ消えていったヒゲ。
だいぶ観光地なんだな、このニューマーケット。
建物の中はまさしく迷路になっていて、サリーやシャツ、ジーンズなどの服飾品のお店が息苦しくなるほどひしめいている。
細い道がアミダのように入り組み、すぐに迷子になってしまいそうだ。
服飾品エリアを抜けると、なにやら悪臭が鼻をついた。
このムワッと立ち込める不快な臭い…………
そこは生肉売り場だった。
鶏肉、ヤギ肉が木の切り株みたいな台の上でバッコバコに叩き切られ、いたるところに捌きたての肉が吊り下げられている。
足元はこれでもかというほど汚くて、汚水、血肉、生き物の羽なんかがベチョベチョに塗りたくられ、様々な形の刃物が並び、まるでどっかの拷問部屋みたいだ。
建物の中なのに頭上をカラスが飛び回っていて不吉この上ない空気に満ちている。
切りたてのヤギの首がそこらへんに転がっていて、動物の足首のヒヅメの部分が山盛りに積まれている。
こいつはヘビーだな………ってドキドキしながは歩いていたら、オッさんが肉を叩き切った瞬間に肉片が飛び散って歩いている俺の頰っぺたに張りついた。
キャアアアアアアアアああああああああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアあああああああ…………………
建物の中に叫び声を轟かせかけたけどなんとか我慢して肉片を指で弾く。
はぁはぁ、もうサンダルの足もドロベチョだ………潔癖症じゃなくてもかなりきつい。
どうやらこのニューマーケットは築地みたいな場所になってるらしく、生肉エリアの横には青果エリア、その隣には香辛料エリアと、様々なパートに分かれて広大に広がっていた。
迷子になりながらもなんとか裏側の出口から吐き出されると、そこにもまた鬼のような屋台の大群がひしめき、人がうごめき、ネットリとした活気に満ち満ちていた。
通りの両側にそびえるのは大きな洋風の建物で、イギリス領時代の威風を今にとどめているが、その建物は100年前からゆっくりと朽ちていっており、現在はただのお化け屋敷だ。
外壁が崩れ落ちすぎて中のレンガがむき出しになっている。
危なすぎる。
なのにこのお化け屋敷がホテルだというから驚く。
エジプトでもそうだったけど、植民地時代に造られた豪壮な町が手入れされなさすぎですべて廃墟みたいになっているのはこのインドでも同じだ。
でも、その雰囲気にとても好感が持てた。
100年前から何も変わっていないこの町自体が遺跡だ。
コルカタって特に観光地のない退屈な町かと思ってたけど、結構いいところだなと思った。
これぞベンガル。古からの交易の町だったんだろうな。
「あ、どうもー、今から買い物行ってきます。私インドに好きな化粧品があるんですよー。次インドに来るまで大量に仕入れて帰るんですー。」
宿に戻るとさっきの女性旅人さんが、インドとかマジ庭だし、みたいな感じで色々説明してくれるのをすごいですねーと聞いて、俺もギターを持って宿を出た。
お気に入りの化粧品もチャイ屋もないけど、お気に入りの路上スポットならあるぞ。
今日もいつもの場所に陣取って路上開始。
すぐに人だかりができてお金が入っていく。
同じ宿のヒッピーみたいな格好をした欧米人の女の子が通りかかって、目が合うと驚いた顔して笑っていた。
すでに何度も会っている物乞いの子供たちが今日も歌ってる周りに集まってきて、歌を聴いてくれている人たちに物乞いをして回る。
これって本当イライラする。
聴いてくれてる人たちは歌に集中できなくなるし、子供たちが鬱陶しくてその場を去る人もいる。
楽譜を覗き込んでくるしギターを触ってくるし、ケースの中のお金をいじってくるし、マジで追い払いたくなる。
「おい、フルートはどうした?今日持って来なって言ったよな。吹き方教えてあげるから。」
「ノー。ノー………」
バツが悪そうに顔をそむける子供。
興味がないのかもしれんけど、だったらなんでもらうときにあんなに大興奮して群がってきたんだよ。
欲しかったからあんなにちょうだいちょうだいー!!ってお願いしてきたんだろ?
だったらなんで吹いてくれないんだよ。
なんかもう彼らに教えるのを投げ出したくなる。
ウンザリしながらも根性で歌い続ける。
後ろの道路からはクラクションの嵐。
日本人が一生のうちに鳴らすクラクションの数を2分でクリアーするインド人なので、本当にうるさい。
しかも軽くリズムを刻むやつとかいるので、たまにギターのストロークとクラクションが綺麗にかぶって完璧に音が何も聞こえなくなるという不思議現象が起こったりする。
マジむかつく!!!!!!
そんな中、マックスに声を張り上げて歌うので2時間が限界。
はぁ、疲れる…………暑い…………
汗が滝みたいだ……………
「やぁ、君は子供たちに音楽を教えようとしてるのかい?」
路上を終えて片付けをしていると、俺と物乞いの子供たちのやりとりをみていたおじさんが声をかけてきた。
綺麗な服装をしており、良識のありそうなおじさんだ。
なにやらコルカタで英語の先生をしている人だそう。
「だったらここで教えるんじゃなくて学校で教えたらいいんじゃないかい?大学とか高校とかで。」
「いや、そういう子供たちは恵まれているので、もっと貧しい子供たちに教えたいんです。」
「なるほど。ところで日本では浮気はどうなんだい?」
は?何をいきなり言ってるんだ?
「えっと……まぁ大きな問題ですよ。だいたいのカップルはこれで別れます。」
「なるほど。興味深いね。」
インテリな顔つきをしたおじさん。
英語もとても綺麗なんだけど、何でそんなこと聞くんだ?
ただ単に興味があっただけなのかな。
「ところで日本人はア◯ルチョメはするのかい?」
な、何言ってるのあなた!!??
するけども!!いや、俺はしないけども!!
ていうか英語でもア◯ルチョメって言うんだ!!
「する人もいますけど…………」
「そうか……インドではア◯ルチョメをしたら刑務所に入れられるんだ。」
「それは興味深く…………ないけど…………」
「ア◯ルチョメは合意のもとでやるのかい?もし相手が嫌がっていてもア◯ルチョメをするのかい?」
「そんなわけないじゃないですか…………何回ア◯ルチョメって言うんだよ………」
「なるほど。ということは君の彼女もア◯ルチョメOK派なんだね。」
オラァ!!鼻ヒゲ!!!
お前絶対英語の先生じゃねぇだろ!!!!
カンちゃんはそんな汚れた子じゃない!!!
赤ちゃんはペリカンが連れてくるもんだと信じてるわ!!
砂場でオママゴトしてて隣の男の子とチューしちゃったとかそんなことしかしたことねぇわ!!
あれ?ペリカンだっけ?
あがりは1000ルピー。1700円。
さぁ、明日はバングラデシュの陸路アライバルビザ入国にトライだ。
パスポートのコピーとかいるのかな?写真とか。
面倒くさいのでパスポートのコピーじゃなくてビール買って宿に帰った。
男は黙って丸腰勝負!!
や、やっぱ怖ええぇぇ……………