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チキン南蛮食べたいのにコルカタ

2016年3月27日(日曜日)
【インド】 コルカタ






「フミー、ドントゴー。ドントゴー。」





朝、カデルが寂しそうな声で言ってくる。



うう………俺も行きたくないよ………













コルカタなんて!!!!





この前またもや見事にお腹を壊して、おかげさまで下痢を英語でダイアリアーっていうのを覚えさせてくれたあの世紀末シティー、コルカタ。


ズタボロでズタボロで人々は都会的な冷たさがあって、観光客ズレしてて態度悪いし、特に観光地もないし、何しに行くの?





決まってる。ストリートチルドレンに会いに行くためだ。


この前あげたリコーダーをちゃんと吹いてるか見に行く。
そして吹き方を教えたい。


もう一度この目で現状を見て、俺にできることを探さないといけない。




チェンナイに戻るのは4月6日。

カデルの学校の卒業式が15日で、そこでイマジングループと翼をくださいガールズたちの発表が待っているため、最終練習のために帰らないといけない。






そしてカンちゃんがついに4月14日にインドにやってくる。

チェンナイ空港に着くんだけど、俺がカンちゃんと電話してると、いつもカデルが明日来てくださいー!!と横から会話に入ってくる。



それくらいカデルファミリーも、学校の先生たちも、みんなフミの彼女が来るというのを楽しみにしてくれている。

きっとカンちゃんならみんなに愛されるだろうな。










というわけで今回のコルカタは10日。

カデルにわがまま言ってなんとか作ってもらったこの日数。


ストリートチルドレンたちとの最終決戦だ。



またお腹壊すかなぁ…………

壊すだろうなぁ……………







カデルが言うには、数年前にジュース屋さんの氷をめぐってとある大問題が起きたらしい。


なんと死体を冷やすために使った氷をジュース屋が安く買って使いまわしていたらしいのだ。



とんでもない。もーとんでもない。


日本だったらそのジュース屋、死刑くらいの勢い。




インドではそんなことが普通に起きてるはず。



他にもカデルに写真を見せてもらったんだけど……………

路上のジュース屋のオッさんがブロック氷の上に汚い生尻で座ってケツを冷やしてる写真。

生尻で氷の上に座って涼んでる。


その氷をジュースに使う。






頼むから死んでくれ……………





ああ………インドの路上でこれまで食べたものがどれほど不衛生なものだったか考えたくない…………

























まだ暗いうちからカデルの運転する車に乗って駅に到着。

カデル、また戻ってくるからね!ありがとう!!




















そして電車に揺られてチェンナイに着き、そこからまた電車で空港へ。




無事着いたよとカデルにメールを送る。


カデルがポケットワイファイのルーターを持っていて貸してくれるとのことだったので、昨日のうちに2GBだけチャージしておいた。

450ルピー。760円。


これでメールくらいならどこでもできるはずだ。




















スパッと飛行機に乗り込んで2時間でコルカタに到着。

飛行機は往復で16000円。


現在、シンガポールで稼いできた所持金がどんどん減ってきている中でこの出費はかなり痛い。

あと5万円ちょいしかない。




でもこれが今回インドに来た理由だ。

どんなにキツかろうか、所持金がヤバかろうが、中途半端なままで投げ出すなんて絶対にしない。

やれるだけのことをやらないといけない。



お金はカンちゃんが来てからムンバイまでたどり着けばなんとか路上で稼げるはずだ。















空港を出ると一斉にタクシーの運転手が必死の形相で群がってくるけど、さすがに1ヶ月以上インドに滞在していると心にも余裕がある。

バスで行くからーと笑顔で断りバス停に向かって歩く。



まだ声をかけてくるオッさん。



だからバスで行きますからねー、どうやって行くかも知ってますからノーサンキューですー。




そバス停に着いてもまだ横でギャーギャー言ってるオッさん。
ワイノット!!ワイノット!!



いやー、本当心の余裕がもうアレですっていうか何がワイノットだてめぇの鼻ひげを緑色に染めるぞ!!





本当、北インドに来ると精神的に参るわ……………















空港からエアコンバスに乗ってメインステーションであるハウラの駅へ。
























相変わらずゴミと汚水と陥没しまくった地面、鼻がひん曲がるような悪臭が立ち込め、人がうごめき、その足元でゴミのように寝ているオッさん。

これだけで心が疲れる。


少し歩きたくてパークストリート方面に向かった。


















物売りがたくさんいるハウラブリッジでガンジス川を渡り、ボロボロにもほどがある町を歩いていく。


絡まるものすごい量の電線。

半壊したビル。

道路に放置されてるパーツのない車。



真っ黒に汚れきった食堂の前に並べられた食べ物。



そのテーブルを、その椅子を、その台を、水に濡らした雑巾で拭きあげようとは思わないんだろうか。


確実に数十年は掃除してない食器棚は黒ずんで埃にまみれ、手をかける部分だけが元の色をしている。




なんで掃除しないんだろう。

なんでもっと効率よくしないんだろう。


なんでこんなにクラクションを鳴らすんだろう。


なんでこんなにラーメン食べたいんだろう……………

















テキトーにやってきたバスにパークストリート!と叫ぶとオッさんが手招きしたのでダッシュするがバスは止まってくれず、走ってるバスになんとか飛び乗った。


























サダルストリートに着き、一目散にマリアゲストハウスへ。










サダルストリートでウロウロしていたら、一瞬で客引きに群がられてしまう。


前回来た時は満室だったけど今日はすんなりチェックインすることができた。

















ただダブルルームで350ルピーだと言う。

2年前に泊まったときはシングルが200ルピーだった。



もちろんダブルだから少し高いのはわかるけど、俺がシングルはないの?と聞くと、いいよ、他のホテル見に行きなよ。バッグパッカーはみんなそうさ、すぐ他のホテルも見てくると言う。そして結局ここに戻ってくるのさ。さ、どうぞ他のホテルを見てきなよ。



と顔色を変えずに新聞読みながら言うボケスタッフ。



サダルストリートの宿のスタッフはこの世で最低だというのは有名な話だけど、本当観光客ズレしてて性格悪くて、みんな客を見下しているインド人ばかりだ。


まぁ泊まるけど。


ダブルで600円なら悪くない。




それに屋上の部屋だったから景色もよくてリラックスできて、部屋だけならすごく心地いい。

そこまで汚くもないし。



よーし、せっかくダブルに泊まってるんだからマザーテレサハウスに行って、ボランティアって最高だよね、子供の目ってキラキラしてるよね、とかほざきながら女子大生をだまくらかして部屋に連れ込んでオッパイ触って警察に通報されて宮崎に強制送還されて爛漫でチキン南蛮食べる。



















どうあがいてもチキン南蛮食べられないので仕方なくマクドナルドへ。


もう本当マジ……ううぅ………勘弁してください……うう………許してください!!ってくらいカデルの家で毎日毎食カレーなので自由にジャンクフード食べられて嬉しい!!!



そしていつものパークストリートへ。









今日も日曜の夜で賑やかなこの飲み屋街。

欧米風のバーやレストランが並び、綺麗な服を着た上品な人たちが優雅に歩いている。




そんな人ごみの中に風船が見えたら、あいつらだ。

そう、すでに顔見知りの物乞いの子供たち。





「おーい!元気にしてるか!!」



「………あー!あーあー!!マネープリーズ。」




俺に気づいて笑顔で近づいて来たかと思ったら、即座に悲しそうな表情を作ってお腹空いてるお金ちょうだいと言ってきやがった。


お前この前リコーダーあげただろうが!!まだ俺に金くれって言うか!!





「リコーダーあげただろ、練習してるか?」




リコーダーのことを言うと、途端に口数が減る子供。

おいおい、まさかとっくの昔に売りさばいてそんなもん記憶にございません戦法を繰り出しやがるか?




「あれどうした?持ってないの?」



「ホームホーム。」




目を背けながら家にあるよ、と言う。




「明日持ってこいよ。俺明日もいるから演奏のしかた教えるから。」



「マネー、フードフード、プリーズ。」




悲しそうな表情、手を口に持っていくポーズ、


もう完全に染みついてやがる。

まだ10歳そこらのはずなのに。


俺と演奏すれば儲けを半分半分にしてやるよと言ってるのに、そんなことよりも物乞いと風船売りを彼らは選んでいる。





それでもかなり稼げている。


この前コズエさんに聞いた話を思い出す。


大人が朝から晩まで小作農や工事現場で働いて100ルピーくらいしかもらえない。180円。


でもこの子供たちは300~400ルピーは稼いでいる。


もちろん田舎とこの大都会ではまったく違う話だけど、それでもいい金額だと思う。




音楽を路上で稼ぐ手段として彼らに教えるのは正しいことではないんじゃないのか。

音楽は人格形成の教育の一環としてあるべきじゃないのか。



そのためには彼ら貧しい子供が学校に行けるような政治の政策が必要。

海外のNGO、NPO団体による施設という受け皿。



さらに自分の子供たちに物乞いをさせて稼がせる親の意識も変えないといけない。


問題が根深すぎるよ…………



考えれば考えるほど、踏み込めば踏み込むほどに俺なんかが手を出せる領域じゃないように思えて萎縮してしまう。







俺が寄付金を募ってこのインドに施設を作って人生かけてインドの子供たちと付き合うか?


正直、その道を想像するのは難しい。



毎年インドに行って施設を回って音楽を教えるくらいならできるし、今現在、やりたいと思ってはいるけど、それじゃあ現地で苦労して活動されている人たちに丸投げのようにも思える。




俺はもうすでに一旦足を踏み入れてしまった。

もう後戻りすることはできない。






「いいぞー!!」



「もっとやってくれー!!ヒューヒュー!!」









路上で汗をかきながら歌う。

歓声が上がり、歩道を人だかりが埋め、チップがギターケースに溜まっていく。




張り上げて歌っていると、人だかりの真ん中に物乞いの子供が入ってきた。


裸足でチョコンと立って、汚れた服を着て、俺のことを見上げていた。
無垢な目で。




そんな様子を人々は写真に収める。

俺に何ができるよ。





今日のあがりは2時間で1310ルピー。2200円。








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