2016年1月28日(木曜日)
【大阪府】 難波
あれは12年くらい前のこと。
その年の阪神タイガースは、神がかり的な強さを誇っていた。
それまでの阪神タイガースはすっごく弱いチームだった。
毎年下位に甘んじており、だいたいのイメージが、阪神は弱いのにファンが悪魔のように恐ろしくて口が悪くて暴力的でモツ焼きを食べている、というもの。
大阪で巨人の応援なんかしようもんなら間違いなくちょっと嫌な顔されること必至。
ひどいときは宮崎出身というだけで巨人の仲間と思われて、おお!そうか宮崎から来たんや!といってモツ焼きをおごってくれる。
大変なファンである。
それがその年の阪神は違った。
連日連勝。
最強だった巨人を毎日のように大差でうち破り、破竹の勢いで優勝街道まっしぐら。
道頓堀のビールの看板に設置されたマジックはあっという間に1になった。
街にはご機嫌で泥酔した阪神ファンが毎晩のように溢れ、有名な心斎橋のリコーダーおじさんもリコーダーをピーピー吹きながら首からマジック数の書いた段ボールをぶら下げていた。
そしてついにその日はきた。
試合が終わり、タイガースの優勝が決定。
実に18年ぶりのリーグ優勝に大阪は歓喜の渦。
まだ21歳で日本一周に出たばかりだった俺は、街の賑わいを見てみようと電車に乗って心斎橋へ。
すでに電車の中からタイガースのユニフォームを着た人たちが戦闘態勢で、電車から飛び出すためにマウント鳥羽並みのパンプアップをかましている。
心斎橋に到着すると、そこはもう半端じゃない人の数。
御堂筋の車道にも溢れるほどの人が全員道頓堀を目指しており、俺もそれに混じって歩き、やっとのことで道頓堀に到着。
人が飛び込むことで有名なひっかけ橋の上は、もはや地面が見えないほどの肉塊で蠢いていた。
夏の残暑でうだる夜に人々は揉みくちゃになって、水をぶっかけ、叫び、もはや地獄絵図阿鼻叫喚パイ揉み祭り。
下半身押しつけ祭り。
そんな橋の上で次々と川に飛び込む人たち。
みんなまずは橋の手すりにのぼり、そこで観衆の視線を集めて何かのパフォーマンスを一発挟んでから身を踊らせる。
全裸になって飛ぶ男も多数いたんだけど、そんな中、1人のテンション上がっちゃったギャルがノリで手すりに上がった。
勢いで上がったはいいものの、大観衆の視線を一斉に浴びて、あれ?やっぱ恥ずかしい、みたいな感じになったギャル。
そこに追い討ちをかけるシュプレヒコール。
「ぬーげ!!ぬーげ!!ぬーげ!!ぬーげ!!」
これはもう脱ぐしかない。
というかテンション上がっちゃったギャルならここで華麗にブラを外して観衆に放り投げて飛び込むくらいのビッチぶりを見せるんじゃないかと思いきや、そのギャルは恥ずかしそうに、えい!って普通に飛び込んで終了。
パイ揉み祭り加速。
今度は人口密度でとんでもないことになってる引っ掛け橋に、六甲おろしを爆音で轟かせたヤンキーの車が突っ込んできた。
改造しまくったシャコタンのセダンの屋根に仲間の男たちがのぼって観衆に向かってイキりまくっているんだけど、そのヤンキーたちの服装も車の外装も全部タイガースカラーで仲間意識高め可愛い。
街灯や店舗の屋根にも盛り上がったやつらがよじ登ってるし、海に飛び込むペンギンみたいに次から次へと川に人が飛び込んでいるし、警察が声枯れながらやめなさいいいい!!って叫んでるし橋の上はパイ揉みだし、もう大阪怖いって思った若かりし日。
あの頃の引っ掛け橋はとても刺激的な場所だった。
昔懐かしい殴られ屋がいたり、ファイヤーパフォーマンスをしてる大道芸人がいたり、ローカルなチンピラのおじさんが肩で風を切って歩いていた。
あれからすっかり変わった。
優勝の夜の次の日、まだ興奮冷めやらない若者が川から飛んで死亡。
危険な飛び込みが起きないよう、引っ掛け橋は大幅な改修工事が行われ、黒ずんだ汚い橋から綺麗な大理石の橋になってプラスチックの囲いができた。
大道芸人やチンピラは消えて、今では橋の上は外国人観光客しかいないといってもいいくらい外国人だらけ。
あの頃のドロドロした、地方都市の熱気に溢れた難波のローカル感は今は全然感じない。
完全に観光客用のテーマパークみたいになってる。
懐かしいパイ揉み祭り。
阪神また優勝しないかな。
というわけでタビジュンさんこんばんは。
「おおー!金丸さん!どうぞどうぞー!!あ、カンちゃんこんばんはー!カンちゃん今日はすごく女の子っぽいやんー!赤いニットなんか着てー!この前はニットキャップかぶってたからカジュアルな感じやったけど!」
おお…………ホームの難波で会うタビジュンさんの本領発揮ぶりが面白い( ^ω^ )
さすがは元ホスト。そして旅中に彼に会った人たちが口を揃えてタビジュンさんはお喋りが上手!と言ってた意味がわかるわ。
この前は梅田だったし、全然知らないメンバーだったから遠慮してくれてたんだな。
それにしてもタビジュンさんって女の匂いを感じないんだよなぁ。
こんなに男前なのに。
はっ!!
も、もしかして…………………
………………実は童貞なんじゃないだろうか…………
こ、怖くて聞けない…………………
やってきたお店は15ミニッツという難波のバー。
この前ケータ君たちと一緒に飲んだチヒロちゃんがやってるお店で、旅人が集まるバーとして大阪では有名な存在みたい。
タビジュンさんがここにたまにお酒を作りに来てるということだったのでちょっと遊びに来てみたのだ。
お店の中では世界がどうとか、あそこの国はどうとかって会話が飛び交っている。
なんだか緊張してしまい、カンちゃんと端っこの方でモジモジしていたら、タビジュンさんが気を使ってこっちの席に座ってください!って言ってくれた。
「あ、じゃ、じゃあ、すみません、お邪魔させていただいていいですか?」
「あ!金丸さん、どうぞ、入門してください。」
ピク…………………
この向かいのソファーに座ってる男性……………
「あなた………今なんて言いました……?」
「金丸さん………二度同じことを言わせないでくださいよ………一度でいい事を二度言わなけりゃあいけないってのは………そいつが頭が悪いってことだからです。何度も言わせるって事は無駄なんだ………無駄だから嫌いなんだ、無駄無駄無駄無駄無駄無駄…………」
ゴゴゴゴゴ………………………
「渋いねぇ………まったくおたく渋いよ。」
「イエーイ!!」
「いやっふー!!」
目の前に座ってた男性からのいきなりのジョジョネタぶっ込みにテンション上がってめっちゃ盛り上がる。
「いやー、金丸さんのブログってジョジョネタと刃牙ネタがあるじゃないですか?あれ僕いつも爆笑してます!!」
「考えたこともねぇ。」
「シリアスプロブレムだぜ…………」
「春、それは恋の季節!!」
「帰ったら、尻でもなでてやるか。」
「ちょ、今どっち!?今ジョジョと刃牙どっちの話!?」
タビジュンさんもカンちゃんもわけわからんなってるけどその男性とめっちゃ盛り上がってお店にいる間ほぼ漫画の話しかしてない旅人バーなのに。
ていうかその男性、ちょっと前に世界一周ランキングにいた君の知らない世界一周物語、略してキミセカというブログで有名だったナリ君でした。
ナリ君!初めましてで漫画の話しかしませんでしたね!
またジョジョの話しましょう!!
ウリィ!
それからもタビジュンさんや、これからバスキングしながら世界一周しようと思ってるという男性といろんな話をしてる間も、お店にはヒゲをはやした人とかタビッポのスタッフをやってる人とかがどんどんやってきて大繁盛。
大阪にもこうした旅人が集まるお店は何軒かあるみたいだけど、ここはかなり人気の場所みたいだ。
旅好きってたくさんいるなぁ。
タビジュンさん、またフラッと遊びに来ますね( ^ω^ )
チヒロちゃんありがとう!!
お店を出て夜の心斎橋を歩いた。
通りのお店はほとんど閉まって、店先にゴミと段ボールが山積みにされており、それをホームレスのオッさんたちがテキパキと仕分けしている。
ゴミを出して、そのゴミを金に変える人たちの構図。
この心斎橋アーケードにいた時、毎晩それを見ていた。
ホストと、家出少女と、風俗嬢と、チンピラと、そんなやつらが夜の底でいつまでもじゃれ合ってた。
未来のことなんかなんにも考えずに、ひっかけ橋から見えるネオンの揺らめきを見ていた。
夜に寂しさも覚えずに。
帰りに千日前でラーメンを食べて、カンちゃんと腕を組んで帰った。
阪神の優勝、心斎橋の夜。
今こうしてまた大阪を歩いてる。大好きな人と一緒に。
本当、どうなるかわからんなぁ。
本当、縁だよね( ^ω^ )
日本最後のライブ、詳細発表!
最後が山口県岩国市。大好きな町で、かなり渋い場所で歌います。2日後には飛行機です!!
共演も豪華なのでぜひ遊びにきてください!
★日にち………2016年2月7日(日曜)
★場所…………山口県岩国市 『水西書院』
★オープン……13時
★スタート……14時
★チケット……1500円(ワンドリンク付き)
★共演…………原田侑子、高瀬裕充