9月2日 火曜日
【台湾】 台南 ~ 台北
バスの窓からノリさんに手を振る。
動き出したバス。
少し体を起こさないとノリさんは隠れてしまう。
車椅子のノリさんの視線は低い。
窓の向こうに見えるニコニコとした笑顔には柔らかさの他に自信のようなものも見えた。
この数日できっとノリさんなりの手応えを感じたことだろう。
ノリさんの世界旅は来年から始まるそう。
俺が教えられたものなんて微々たるものだ。きっとこれからノリさんは自分の生命力と才覚をもって世界を生き抜いて行くことだろうな。
ノリさん、教えるどころか俺の方がたくさんのことを学ばせてもらいました。
本当に大切なことは気づいていないだけで目の前にありますよね。
さぁ、先に進むぞ。
4時間半でバスは見慣れた台北の駅に到着した。
たくさんの人が行き交う巨大駅の中をスイスイと歩き、地下鉄を乗り継いでやってきたのは淡水の町。
台北近郊の人々がのんびりと過ごしにやってくる河口に広がる小ぢんまりとしたリゾートエリアだ。
ここで台湾初日に路上をしていきなり爆発的に稼いだ。
台中、台南と歌ってきてここが1番やりやすい場所だった。
これから1週間、ここを拠点に稼ぎまくってやるぞ。
バスの到着が遅かったので、淡水の空はすでに夕日で染まっており、日中のうだるような暑さが薄らいだ夕暮れの川沿いにはたくさんの人たちがのんびりと歩いている。
土産物屋さんや軽食屋さんが並び、平日だというのになかなかの活気を見せている。
まだ気温こそ暑いが、その優しい風の中に誰もが夏の終わりの寂しげな気配を感じているように見えた。
夕日を背にうっすらと汗をかきながら歌った。
夕闇がおとずれ、遊歩道は外灯とお店の照明に照らされて浮かび上がる。
それなりにたくさんの人が足を止め、歌を聴いてくれ、お金を入れてくれる。
ここは警察にも怒られないし、お客さんが入れてくれる単価も大きい。
ふとカリフォルニアのビーチを思い出す。
あの柔らかい風と自由な空気。
そして晩夏の寂しさ。
今思えばアメリカの夕日にも美しい生活の匂いが漂っていた。
あといくつ忘れられない思い出を作れるだろう。
あがりは2時間で3000台湾ドル。8500円。
「あ!金丸さんー!ここでやってたんですねー!!」
振り返るとそこには前回の台北で会った旅人のアツシ君がいた。
どうやら俺とノリさんが南の町を回っている間、ずっと淡水で歌っていたみたい。
「ずっとここいたんだ。どう?淡水。」
「マジ最高ですよ。稼ぎはそこそこですけど、ご飯もあるし、ゆったりしてるし、駅前の公園で寝ててもなんにも言われないし、快適すぎますよここ。あ、でも金丸さんが来たんで僕はそろそろ違う町に行きますよ。邪魔したくないんで。」
「別に気にしなくていいよ。まぁとりあえず飲もっか。」
「いいっすねー。じゃあセブンイレブンでビールとつまみ買っていつもの寝床で乾杯しましょう。」
旅の終わりと秋の寂しさが胸に忍び寄る。
公園の向こうには地元の若者たちがたむろして大騒ぎしている。
犬を連れた人が散歩しており、空き缶拾いのおじさんがゴミ箱をあさっている、
外灯が影をのばし、落ち葉がぽとりとバッグに降りかかった。
みんなみんな、夜の中に囚われている。
季節がまた変わるな。
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さて、みなさんお元気ですか?
いつも読んでくださりありがとうございます。
旅ももう残りわずかとなり、残すところ韓国のみとなりました。
本当は2年の期限だったのですが、過ぎてしまった今、怖いのは旅が終わることより彼女の拷問です。
というわけで、本当は2年目の最後あたりにやろうと思っていた企画ですが遅ればせながらこのタイミングでやってみたいと思います。
前回好評だったこの企画!!
【金丸文武 世界放浪日記】
登場人物、人気投票ランキング!!
下半期編!!!
この2年間の旅を上半期と下半期に分けて、今までに登場した特にインパクトの強かった人物に投票してもらうランキングです。
前回の上半期は、みゆきさん、ショウゴ君、胸毛王子ネドルコ、お母さん、という強豪を抑えて、イスラエルで出会った最強の旅人、カオルさんが堂々の1位という結果でした。
ブログのコメント、FacebookやGmailなどで150件を超える投票がありました。
ありがとうございました。
下半期もまた強烈なキャラクターのオンパレードでした。
その中から厳選して10組を正式エントリーとしようと思っていますが、みなさんそれぞれのお気に入りキャラクターがいると思うので、エントリー以外の投票も受け付けます。
前回同様、1人につき2票の持ち票とさせてください。
投票はコメント欄、Facebook、Gmail、どこからでも結構です。
コメント欄は明日から投票が落ち着くまで開設したいと思います。
それにともなっておそらく批判コメントも来ると思います。
今までの経験上、コメント欄が荒れるのは、その批判コメントに対して僕ではなく読者のみなさんが反応することが大きな理由となっています。
なのでみなさん、批判コメントは無視してください。
言いたいことがあっても読者さん同士でやり合うのはやめてください。
僕が大人の返信をします。
そしてひどいと判断した時は遠慮なく削除します。
というわけで明日!
厳選した10組のエントリーを発表します!
多分あいつがダントツ1位になるだろなぁ^_^
それではお楽しみに!