3月14日 金曜日
【チリ】 イースター島
興奮の一夜が明けて、今日もテントの中で汗をかいて目を覚ました。
青空が芝生を照らし、柔らかい風が吹いている。
ああ、朝から最高だな。
サンチアゴから持ってきたインスタントコーヒーを飲みながらベンチに座ってタバコを吹かす。
チリ人やブラジル人、フランス人のみんなが声をかけてくれる。
優雅な朝にまずメールのチェックを………といきたいところなんだけど、Wi-Fiが弱すぎてまったく使い物にならない。
Facebookのメッセージくらいならギリギリ見ることは出来るけど、それでも1通受信するのに3分くらいかかる。
ブログの更新なんて100%できない。
サイトを開くこともできないのでもはや今自分がブログランキング何位なのかもわからない。
まぁでもそれがいい。
この島では余計なことは全部忘れてしまいたい。
微弱なWi-Fiなんて風に飛ばされてしまう、そんな忘れられた孤島にいるんだ。
インターネットなんてイースター島には似合わないよな。
ユキさんと今日のお昼も歌いに行きましょうかと話していたんだけど、毎日やるのはあまり良くない。
飽きられないように調整するのはとても大事なこと。
まだこの島には4日ほど滞在するので時間はあるしな。
ということでそれをユキさんに伝えに行き、ついでに一緒に散歩に行くことにした。
釣りしてるおじさんに話しかけたりしながら、村から目のあるモアイが立つ儀式村の草原を抜けて、海岸線のあぜ道を歩いていく。
ひと気はまったくなく、ただどこまでも海と草原が広がるのみ。
そんな中に伸びる1本の土の道は石がボコボコと散らばり、車は通らないよう。
放牧された馬や牛がのんびりと草を食み、海に突き出した崖の上で寂しげにいなないている。
日本を回っている時も、小さな島に行ってこうして1人で歩くのが好きだった。
原っぱが風に揺れ、取り残された漁師小屋や廃校の校舎が潮にさらされて、過ぎ去った時間を感じるのが大好きだった。
太陽は虚空に輝き、海が音もなくそこにある。
信じられないほどの鮮やかな青が心に滲んで行く。
また馬がいななく。
美しい毛並みが光る。
ここから7体のモアイがいるアウアキビを回って村に戻るハイキングコースはだいたい5~6時間かかるんだけど、何を思ったかご飯を食べてこなかったのでお腹が空いて死にそうなってしまう。
飲み物も何も持ってこなかったんだよな………
これくらいのハイキング、ゆっくり楽しめるところなんどけどお腹が空きすぎてマジで行き倒れそう………
「ユキさん、お腹空いたー………もう動けないー………」
「もうちょっとですよー、もう少ししたら車道に出るから、そこからヒッチハイクしましょう。」
頑張って歩き続けるが、ガタガタの地面で余計に体力を消耗してしまう。
疲れ切って崖の上に座り込んだ。
お腹空いたなぁ。
海が綺麗だ。
いつか見た遠い記憶の中の崖。
あれは波照間島だったかな。
あそこも溶岩が固まったギザギザの黒い石が広がっていた。
今日と同じように暑い日差しが照りつけ、見下ろした海があまりに透明で底まで見透かせたのを、安いデジカメで写真に撮ったのを覚えている。
おぼろげな夏の日。
ここに来るのに12年かかったんだな。
長かったのか、早かったのか。
そこからも頑張って歩き続け、もうお腹が限界でそこらへんの草でも食べようかなと思っていたころに、遠くの方に何台かの車が止まっているのが見えた。
見渡す限り何もない緑の絨毯、牧場なのか原野なのかわからないが、その中にポツリと木々が茂ってる部分がある。
ヘロヘロになってようやくたどり着いた。
モアイだ………
モアイだよー…………
原野の真ん中に取り残されたようなモアイが7体並んで立っていた。
ああー、モアイだぁぁぁあああ………
7体もいるよおおおお…………
俺モアイ見てるよ………
もう感動して仕方ないよ………
そしてご飯や水は持ってこなかったくせにわざわざ重たいこいつは持ってきましたよ。
大事な大事なやるべきこと。
そう、トロールとモアイの共演、ついに実現。
北極圏のラップランドからまさか南半球の孤島に連れてこられることになるとはトロールも思ってなかっただろうな。
片目もげてるし。
でも、めちゃくちゃ雰囲気合ってるよ。
いい友達になれるよ、きっと。
ひとしきり空腹を忘れるくらい感動していると、ユキさんが駐車場にいた人に声をかけてくれて村まで戻るという車を捕まえてくれた。
台湾から来ている女性2人組。レンタカーで島を観光しているところだろう。
もちろんいいわよ!!と快く乗せてくれた。
助かったぁー…………
歩けば2時間かかる距離をわずか15分くらいでピューンと村まで戻ってきた。
台湾ガールにお礼を言ってすぐにスーパーへ向かう。
昨日日本人のキヨさんから、この島で辛ラーメンが買えるという衝撃の事実を教えてもらったのだ。
グアテマラかどっかで初めて食べてあまりの美味さにショックを受けた辛ラーメン。
韓国のカップラーメンかな。
日本のハイクオリティなカップラーメンはなかなか売ってないし、あっても半端なく高い。
そんな中、辛ラーメンはいろんなところで見かけるし値段もそんなに高くない。
見つけるといつも買っていたんだけどまさかイースター島にあるとは。
てなわけで島の1番大きなスーパーで探してみると、
あった。辛ラーメン。
1300チリペソ。260円。
他のマルちゃんの袋麺が500チリペソとかなので、まぁ高いけどそれでも買う!!!
2個食べる!!!
玉ねぎと豚肉も買って、すぐに宿に戻って料理した。
玉ねぎと豚肉を醤油で炒めたやつを、目に染みるくらい辛い湯気をたててるラーメンに乗せる。
もう美味すぎる………
最近パスタとツナ缶ばっかりだったからただのカップラーメンなのにオシッコ漏らしそうなほど美味い。
あああ…………やっと生き返ったー…………
お腹も満たされ、シャワーを浴びてからビールを持って外のベンチへ。
柔らかい風が体を乾かしてくれる。
ああ、気持ちいい。
今日もちょこっとしか活動していないけど、イースター島ではこのペースでいいと思う。
これまでほぼ休みなく気を張って戦い抜いてきた南米。
こんなゆっくりする時間、本当に久しぶりだ。
それがイースター島なんだからたまらないよな。
まだ明るい夕方、ビールを飲んでギターを弾いた。