1月16日 木曜日
【エクアドル】 キト
「ブエノスディアス~。」
ゆうべ宿の中で静かなる試合を繰り広げていたアルゼンチンのビッチが爽やかに声をかけてくる。
眠いんだよ………こちとらあんまり眠れてねぇ。
「え?そんなことあったんですか?全然気づかんかったー。」
同じ2段ベッドの下で寝ていたにもかかわらず爆睡していたというケータ君。
さずかはどこでも眠れる野宿旅人。
ゴミだらけの散らかり放題部屋をすぐに飛び出して、いつもの中華料理店へ。
ここのお姉さん、本当に優しくて綺麗で笑顔が可愛らしい人。
ご飯は安くて美味しくてボリューム満点。
さらにWi-Fiがあって、しかもバスキングで稼いだ小銭を嫌な顔ひとつせずに紙幣に換金してくれるという神のような場所なので、そりゃ毎日通うわ。
お腹も膨れたところで、さぁ今日もバスバスキングいってみようか。
最初はぎこちなかったケータ君も、3日目ともなると慣れたもんで、最初の挨拶を任せてみた。
フレンドリーで爽やかな笑顔。
物怖じしない雰囲気が車内の人たちを柔らかい表情にする。
歌も上達してきて、キチンと喉を開いて歌えるようになってきたので、広いバスの後ろにまで声が響く。
昨日の失敗を活かし、どの時間帯にどの通りに乗客が多いかなどを考慮してバスに乗り込んで行く。
まずは俺が乗り込んで車内の中間位置へ。
そこでギターを弾いてケータ君が1番前で歌う。
ケータ君の歌が終わると、俺が歌う。
これでバスの前の席と後ろの席をカバーできるといった具合。
もはやコンビネーションもバッチリで、車内のお客さんの8割りくらいの人たちがお金を入れてくれる。
夕方になると仕事をしている人たちの帰宅時間になるので、入れてくれるお金の単価がグンと上がり、車内も混み合う。
拍手が起こり、みんな笑顔で話しかけてくれる。
この路上の屋台で売ってるコロッケがマジで感動的なほど美味い。40セント。
砂糖たっぷりの甘いコーヒーとの相性抜群。
そんな調子で歩道を走り回りながらバスに飛び乗り続け、20時近くまでやって今日のバスキングは終了。
いつもの中華料理店に行き、あまり人目のつかない奥のテーブルで清算。
気になるあがりは…………
113ドル。
「うおおおおおお!!!!チキン南蛮持ってこおおおおおおおいいい!!!!」
「ビールと揚げ出し豆腐と枝豆とイカの塩辛持ってこおおおおおおおいいい!!!!」
はい、宮崎人すぐ調子に乗る^_^
あああ………キチンと稼げて疲れてビール。
これで日本の居酒屋メニューがあったら言うことねぇんだけどなぁ………
ってここ地球の反対側なんだけど。
ネットをしながらランキングのブログを読んでいく。
ケータ君だいぶランキング上がって来たなぁ。
「金丸さん、この変な顔の写真使っていいですか?」
「いいよー、なんでも好きに使ってー。」
こりゃあ宮崎人で1位2位ってのも夢じゃないかもな^_^
つらつらーっとランキングの最新記事を読んでいたら目をひく記事を見つけた。
ぶらぶら珍歩道ってブログ。
最近日本を出発した男性のブログみたい。
そこに日本人宿の日本人が苦手っていう記事があった。
気の合う奴はいるけれど、日本人宿自体はあまり得意でない俺。
読んでみた。
舞台はアルゼンチンのブエノスアイレスにある上野山荘別館というとても有名な日本人宿。
俺も中南米を南下する中でよく名前を聞いてきたし、実際泊まってきた旅人ですごくよかったですよという話も耳にしている。
読み進めていくと、
なにやらブログ主さん、朝早くにブエノスアイレスに到着し、ひと気のない街を歩いて上野山荘に到着したそう。
時間は朝の7時だったみたいなのだが、まだ宿の玄関が開いてなかったそう。
一応呼び鈴を鳴らすが誰も出てこないので、朝早いからかなぁと玄関前で待っていたそう。
でもブエノスアイレスってのは場所によってはなかなか治安の悪い街。
ひと気のない時間帯にずっと外にいるのは良くないよな。
それに朝の7時。
宿なのに誰も起きてないわけない。
2度目の呼び鈴を鳴らしたそう。
俺だってもちろんそうする。
するとようやくおばさんが出てきたそう。
キレながら。
そんなに何度も鳴らさないでも聞こえてます、時間考えてくださいよー、とか、朝9時以降に来てくださいってお知らせしましたよね?、今年はそんな旅行者さん多いんですよー、とかひたすらネチネチ言われたみたい。
さらに泊まっていた日本人に、朝から呼び鈴連打されて殺意覚えたわ、とか言われたんだそう。
なんかその記事を読んでものすごくムカムカしてしまった。
朝7時に呼び鈴鳴らされて怒るってどんな宿だ?
2回呼び鈴鳴らされただけで殺意覚えるってどんな旅してきた旅人だ?
朝9時以降に来てくれというインフォメーションがあるらしいけど、ブログ主さんはそんな連絡もらってなかったそう。
そういう決まりがあったとしても、治安の悪い街をやってきた旅人をそんな邪険に扱う宿があることが信じられない。
ホステルっていう旅人の安らぎの場所であるはずのものが、今年はこういう人多いんですねぇ、はぁ~、とかって呆れたような態度で旅行者を迎えるって想像しただけでイラついてくる。
俺はよく日本人宿について思うところを書いたりするけど、それは実際に旅をしていて確実におかしいと感じるところがあるから。
そしてそれはやはり日本人同士であるからこそ、余計強く感じる。
海外でホステル経営を目指している日本人の方々はたくさんいる。
そんな方たちに対してお手本を示さないといけない立場のはずなのに、有名でいくらでも日本人がやってくるという状況にあぐらをかいて、旅行者に対して横柄な態度をとるホステルがあるなんて悲しくてしょうがない。
真面目で、協調性を大事にし、清潔な日本人。
俺たちも安心を提供してくれる宿に対して敬意を払い、ルールに従わないといけないのは当然のこと。
でもこんな話を聞いてしまい、ますます有名日本人宿に対するイメージは悪くなる。
ケータ君やナオちゃん、エビちゃんたちに出会ったのはメキシコシティーの日本人宿。
いい出会いももちろんある。
でもあれから日本人宿には泊まっていない。
多分南米ではもう泊まらないだろうな。
なんかモヤモヤした気分でネットを終えてヒッピー宿に戻る。
えーっと、
この僕の視線の先、毛布の下でコロンビア人の女の子とアルゼンチン人の男による戦闘が繰り広げられています。
犬のウンチの臭いがする部屋で。
うん。
殺意を覚える(´Д` )
…………よし、寝よ寝よ。