11月20日 水曜日
【グアテマラ】 アンティグア
中米をどう下るか。
これって中南米を旅をする人の結構大きなテーマだと思う。
グアテマラから中米最後の国、パナマまでは1600キロの距離がある。
たいした距離ではない。
前回メキシコで40時間のバスに乗り、その後もグニャグニャの山道を越え、デコボコの未舗装道路を駆け抜けてきた。
だいたいの移動なら我慢する自信がある。
それを踏まえて、グアテマラからパナマ、そしてコロンビアまで行くルートなんだけど、一般的なのは飛行機で一発コロンビア。
調べてないけど多分2万から2万5千円も出せば飛べると思う。
楽だし早い。
次に国際バス。
グアテマラからパナマまでの間にはエルサルバドル、ホンジュラス、ニカラグア、コスタリカという5つの国がある。
普通、国を越えた移動をするときは、国境まで行き、そこから次の国のバスなり電車なりに乗り換えるのもの。
なのだが、中米ではこれを一本のバスで走っていけるというなかなか便利なものがある。
これが国際バス。
グアテマラシティーからパナマの一個手前のコスタリカまでが90ドルくらいだそうなので、100ドルも出せばパナマまで行けるだろう。
距離的にはたいしたことないので走りっぱなしなら20時間もあれば着きそうなんだけど、なにぶん5つの国をまたぐわけだから国境でのチェックがある。
それを考えたら一体どれほどの時間がかかるのか。
さらに途中途中でホテルに泊まったりしながらの道のりになるらしく、たったこれだけの移動で3~4日はかかるとの話もある。
その上、払う必要のない出入国税を嘘で請求されることもよくあるそう。
このふたつはあくまで旅行者のための方法。
当たり前だけど、都市間を繋ぐ地元の人たちが使うローカルバスも走っているし、それらは断然に安い。
ちなみにここアンティグアから1時間のグアテマラシティーまで、ホテルに迎えに来てくれるような観光客用のシャトルバンだと1000円。
地元の人が利用するローカルのバスだと100円。
10倍の違いがある。
ただシャトルバンだとドアトゥドア、つまりホテルの玄関先からバスターミナルまで一発で行ける楽さがある。
ローカルバスだとグアテマラシティーに着いてから、さらにスシ詰めの市バスを2本も乗り換えてやっとこさバスターミナルって具合。
大きな荷物があればこれだけでヘトヘトになってしまう。
もし、パナマまでの全ルートをローカルバスを利用して行こうと思ったらどれほど過酷な道のりになるかわからない。
さらにこのローカルバスってのが曲者で、この中米のローカルバスのことを一般的にチキンバスと呼ぶ。
このデコトラみたいなド派手なバス。
マジで押し合いへし合いになるくらい詰め込むので身動きもとれないほど。
そしてこのチキンバス、盗難被害の話が半端じゃなく多い。
スリはもちろん、膝の上に抱えているバッグを脇の下からナイフで切り裂き中の物を盗むという被害が絶え間無く起こっているそう。
なので、慎重な旅人はほとんど利用しない。
忘れたらいけないのが治安。
チキンバスが象徴するようにこの中米、治安が激悪いのは周知の事実。
夜中に1人で外を歩くなんて身ぐるみはいでくださいってもん。身ぐるみだけで済むならいいけど。
デカくて重すぎる荷物、
危険なチキンバス、
5つもの国境越え、
時間のよめないローカルバスの発着、
各国で観光をしたり、行きたい場所があるのならわかるけども、通過するだけなら飛行機で飛ぶのがもちろん1番の方法。
どうするか。
でも心は決まっているが。
「今日なにするー?」
「なにしようかー。」
「コーヒーでも飲みに行こうかー。」
「そうだよねー、グアテマラだしねー。」
お昼ご飯に宮崎駿さんのとこのカツ丼を食べながら、みんなでお喋り。
グアテマラと言えばコーヒー、らしい。
北米に入ってからアメリカンコーヒーのあの薄っすい味が不味くてしょうがなくて、ヨーロッパの時みたいにコーヒーを飲む習慣がなくなっていたこの頃。
メキシコでもコーヒーはあんまり飲まなかったしなぁ。
それがこのグアテマラは一気にコーヒーの名産地。
コロンビアやブラジルはもちろん有名だけど、このアンティグアも負けていないそう。
というわけで町の中にある老舗だという喫茶店へ向かう。
ていうかヨシコさんの日焼け対策が半端じゃねえ。
中庭のある雰囲気のいいお店。
コーヒーが8ケツァールで、ケーキが10ケツァール。
120円くらい。
優雅な昼下がりのコーヒータイムなんだけど、なんか手持ち無沙汰なので、ゲームでもしようか?ということに。
いやー、本当キャラじゃないんだよなぁ。
マジカルバナナとかやるキャラじゃないんだよなぁ。
ギター弾いてカッコつけていたいのになぁ。
「甘いと言ったらケーキ!!」
「ケーキと言ったら白い!!」
「白いと言ったら雲!!」
「雲と言ったら食べる!!」
「食べると言ったら、ってちょっと待てー!!雲を食べる!?」
「雲食べるってどういうことだ!?」
「だから!!雲を食べるんですよ!!」
あああ…………なんだろう、この平和な空気。
この前会ったばかりのメンバーなのに、なんでこんなに仲がいいんだろう………
「えー!!ヤダー!!猪木のモノマネとか出来ないー!!」
嫌がるナオコちゃんに、猪木のモノマネという生き恥をさらしてもらっていると、そこにユウコちゃんとフランス人の兄さんがやってきた。
なのでそのお兄さんも巻き込んで古今東西ゲーム。
「お兄さんが負けたらジャンポールベルモントのモノマネをしてね!!」
「オーウ!!難しすぎるよ!!」
「日本の漫画のタイトル古今東西ー!!」
「ドラゴンボール!!」
「ワンピース!!」
「ジャングルの王者ターちゃん!!」←俺
「ナルト!!」
「ナナ!!」←フランス人
「え!え!え!わかんなーい!!」
ナナとか知ってんのかフランス人(´Д` )
フランス人のゲームの飲み込みの早さと頭の回転の早さに驚愕してナオコちゃんまた負ける。
兄さんのリクエストでスパイダーマンのモノマネをして国際的に生き恥をさらすナオコちゃん。
こんな単純なゲームで異様なほど盛り上がった幸せな俺たち。
帰りに迷路のメルカドに行き、食材を調達して宿に戻った。
今日はバーベキューをしようという話になっている。
この宿、キャピタントムはまだ新しい宿なのか、タニアママのお手入れが行き届いているのか、キッチンもテレビもソファーも、全ての設備がまだ新しいし、ピカピカしている。
なので料理をするのがすっごく楽しい。
たいがい安宿のキッチンってのは、油まみれだわ、全部黒ずんでるわ、皿は垢だらけだわ、鍋は持ち手がもげてるのしかないわっていうのが相場。
持ち手がキチンとついてる鍋を置いてる安宿なんて滅多にない。
なので料理がすごく楽しいので、宿泊してるみんな、日本人だけじゃなく、イタリア人のグループもオーストラリア人のグループも夜になるとワイワイとキッチンに集まり、楽しく料理をする。
たいがいいつも日本食とイタリアンの勝負になるわけだけど、今回の俺たちは焼肉。
イタリアンたちはニョッキという芋で作ったパスタだ。
イタリア人の料理レベル高え!!
つーわけで今夜もキッチンに6ヶ国くらいの国籍が入り乱れて各国の料理をジャンジャン作っていく。
小麦粉と芋を練り合わせて小さくちぎってフォークを使って成形していくニョッキのイタリアンチーム。
俺たちも野菜と肉を切って行く。
「おー!!やってますねー!!僕らも下ごしらえしてきましたからー!!」
そこにやってきたのは、昨日お会いしたあのHitch × kakeruのお2人、オタケさんとケイコさんご夫妻。そして同じくペンション田代に泊まっているヨシさん。
イタリアンチームに一歩リードされていたところに、この世界中の料理を食べ歩いてきたプロの料理人であるオタケさんとケイコさんが加わったことで日本人チームも挽回。
英語、ロシア語、イタリア語、スペイン語、日本語が飛び交うキッチンの中。
それぞれにそれぞれの料理の作り方を教えあう。ちょっとやらせてー、とお互いにお手伝い。
つまみ食いも。
するととうとうアレが始まってしまう。
イタリアンの可愛すぎる女の子がエビちゃんの顔に小麦粉を塗りたくった。
その瞬間、小麦粉の塗りたくり合いが勃発して、キッチンの中に小麦粉が舞う舞う。
「イヤッハー!!」
「ウヒャーーイイイ!!!」
「ヤダアアアアア!!!」
「アリアリアリアリアリーー!!!!アリーベデルチ!!!」
「乳首見せろ!!!」
乱痴気騒ぎから抜け出して、屋上に上がり、町の夜景を見下ろしながらの乾杯。
そしてバーベキュー。
なんだけど…………
オタケさんとケイコさんの料理がオシッコじゃば漏れするくらい美味えええ!!!!!
なに?ボルシチって?
下ネタかなんかですか?
なに?ジャーマンポテトって?
プロレスのなんか?
なにこのペペロンチーノ風、芽キャベツとハムの炒め物て?
なに人?
「やったー!!美味しいって言ってもらえて嬉しいですー!!」
そっから飲めや食べろやの大騒ぎの果てに、やっぱり言われた、ギター持ってこいコール。
ちょっと肌寒いアンティグアの夜。
空に黒く浮かぶ山の稜線。
気持ちいい雰囲気の中、ほろ酔いで1曲歌うと、それまでリビングや部屋にいた人たちがみんなワラワラ集まってきて、さらにスタッフもレセプションほったらかしで集まってきて、ついには近所の友達までやってきて、屋上ライブに歓声と拍手が巻き起こる。
「アンコール!!アンコール!!」
「サルー!!」
「カンパイー!!」
みんな笑顔。
色んな国の色んな人種が、垣根のひとつもなく、肩を抱き、歌い、キスし、ジョークに大笑いした。
宗教とか、政治とか、肌の色とか、言語とか、ここにはなんの分け隔てもなく、みんな人間だった。
いく時代かがありまして
夜は疾風ふきました
いく時代かがありまして
今夜ここでのひと盛り
このホステル、本当に最高だな。
色んな旅人がそれぞれに違う道を歩み、ここに集まった。
今夜のこの瞬間に、数ある人生の喜びのひとつを味わう。
そしてまたみんなバラバラの道を歩んでいく。
楽しく、心ゆくまでリラックスできる時間ももう少し。
数日後に迫る出発に向けて心はもう決まっている。
グアテマラ、パナマ間、
全ルートローカル移動。
やりきってやるぞ。
まぁ、もうちょっと調べないとまだわかんないけどね!!