11月12日 火曜日
【グアテマラ】 ティカル
ゴソゴソ………ゴソゴソ………
うぅ、気持ち悪い…………
まだ完全に酒が残っている………
あと楽勝で5時間は眠りたい………
けど起きなきゃ………
もうあと10分で迎えのバンが来てしまう。
今日はティカル遺跡。
ああ………眠いよぉ……
根性で体を起こして顔と歯だけ洗って、まだ寝静まっている宿を出る。
外は真っ暗。
4時45分。
こんな時間から観光だなんて、旅も楽じゃない。
ひと気のない通りの向こうからバンが時間通りにやってきた。
俺たち3人を入れて満席になったバンはフロレス島を抜け出してジャングルへと向かった。
夜の闇がうっすらと白いできたころ、バンは森の中の簡易的なゲートの前に止まる。
ここで遺跡入場料の150ケツァールを払う。1800円。
400円くらいしかしなかった同じくマヤ文明の遺跡、パレンケに比べると相当高い。
そしてバンはさらに密林の奥へ奥へと突き進んでいく。
周りの南国の植物が隙間なく生い茂るジャングルを見ながらふと思う。
バンの中、酒臭かっただろうなぁ(´Д` )
そしてゲートから20分。
フロレスから1時間くらいでようやくバンは駐車場に到着した。
この時、朝6時くらい。
「ハーイ、ではここに12時に戻ってきてくださいー。あとガイドが必要な方はご案内しますから残ってくださいねー。」
スペイン語なまりだけど、流暢な英語を喋るおじさんガイド。
長年ここでガイドを生業にしてるんだろうなぁ。
バンに乗っていた他の欧米人たちはみんなガイドを頼むみたいだけど、俺とケータ君とナオコちゃんは自由に歩きたいので、3人で歩き始めた。
しばらくするとオフィシャルのガイドハウスがあり、どうだい?と言ってくるが、お断りして進んでいく。
地図もなんにも持ってないところで、チケットゲートに着くと、そこで地図を売っていた。
1800円もすでにとっているのに、めちゃくちゃ簡易的なマップが20ケツァール、240円もする。
迷子になるといけないので、一応そのマップを購入。
いざ密林の中へのびる道へと足を踏み入れた。
さて、ティカル遺跡ってのは、マヤ文明の遺跡です。
パレンケと同じく、このメキシコとグアテマラをまたいだ広大なジャングルエリアに栄えたマヤ文明。
そのマヤの中でも最大規模の遺跡であり、文明の政治的な中心地だったそう。
4~9世紀にかけて栄えたようで、最盛期には6万人もの人がここに住んでいたというから驚き。
トウモロコシを主食として作っていたみたいだけど、木材を調達するために森を伐採し続けた結果、土壌が崩れ、作物が確保できなくなり、この大都市は衰退し、消えていったそう。
そして年月とともに深い森の中に閉ざされてしまう。
1000近い年月を経て、この遺跡を発見したのは、パレンケと同じくスペイン人の神父さんだそう。
深い密林の中にそびえるピラミッドを見つけた驚きは、まぁ何度も言うけど失神もんだろうな。
ある程度の歩道ができている今でさえ、こうして歩いていて一瞬で道に迷いそうなほどの密林なので、当時はとてつもない過酷な道だったんだろうな。
一歩一歩、ぬかるみ、滑りやすい土の上を歩いていく。
寝ぼけながら宿を飛び出してきたから俺もケータ君もサンダルという暴挙。
すでに足はドロドロだし、ズボンも土が跳ねている。
森の中は静寂に包まれている。
いや、静寂ではない。
ものすごくたくさんの、聞いたこともないような動物の鳴き声が、近くから、遠くから、そしてすぐ頭上から聞こえてくる。
森は濃い朝霧に幽玄と包まれ、まるで怪物でも出てきそうな雰囲気すらある。
姿が見えないところから幾重にも重なり聞こえてくる、鳥か猿かジャガーがわからないような唸り声や叫び声。
それが森の中に響き渡り、エコーのような余韻を残している。
このジャングルの本当の姿を見るためのモーニングツアーなんだろうな。
ていうかとにかく蚊が死ぬほど多い。
半端じゃない勢いで群がってきて、あっという間に手首、そしてサンダル履きの足、さらに首、おでこ、服の上からもガンガンくるので、身体中をやられてしまった。
厚着してくればよかったとも思うが、ここはジャングル。
熱気と湿気ですでに汗だくになっている。
マラリアとかデング熱って大丈夫かなぁ…………
地図がしょうもなさすぎて、すぐに迷子になってしまった。
ここは一体どこだ?
森の中であっちじゃない?こっちじゃない?と言うが、このモーニングツアーなので他の観光客はほぼいないので、誰にも道を聞けない。
周りはひたすらジャングル。
マジでジャングル。
パレンケが比べものにならないくらい。
それほど手つかずの状態で残されている。
いやー、これどうするか?テキトーに向こうの方に歩いてみ………
うわっ!!!!なんだあれ!!!
最初気づかなかった。
朝霧に包まれていたし、そのスケールのでかさを受け入れるのに時間がかかった。
木々の間から、ものすごく巨大な建造物の影がうっすらとその姿を現した。
もう大興奮!!!
すげすぎる!!!!!
急いでその巨大な影に近づいていくと…………
これもんですか。
はい、パレンケ超えた。
シチュエーション、規模、オーラ、全てにおいて想像を凌駕してきた。
ピラミッドの鋭角にそそり立つ姿のなんて原始的なシルエットか。
黒ずみ、苔の生えた石垣がはるかな歴史を物語る。
その歴史の深さと、目の前に厳然と立ち尽くす建造物の存在感のギャップが、圧倒的に雄弁だ。
こいつはずけーや…………
これだけで来た価値があった。
とか言いながら、遺跡の上に寝転んだら一瞬で爆睡(´Д` )
起きて、それからゆっくりと他のポイントを見て回った。
ジャングルは奥に行くにつれドンドンと鬱蒼としていく。
蚊は相変わらず多いし、しとしとと雨も降ってくる。
でもそれもまたティカルの壮大さを演出しているように思える。
敷地の1番奥にはテンプルクアトロという建造物があり、70メートルという巨大なものだ。
木組みの急な階段が設置されており、そこを息を切らして登っていく。
階段を登りきると、そこにはピラミッドの先っぽがポコんと飛び出していた。
遺跡の淵に座ると、目の前には息を飲む光景。
果てし無く続くジャングル。どこまでも、地平線まで。
その人智の及ばないような密林の中に、ニョキっとピラミッドが顔を出していた。
トロール持ってくるの忘れたからケータ君で代用。
世界ってなんでこんなにも面白いんだろう。
どれほど心を揺さぶる景色に溢れているんだろう。
地球ってすごい。
人間ってすごい。
今この時代に生まれてることを、この人生を生きられていることを心から嬉しく思う。
旅する人生を選んでよかった。
そんなことまで思わせてくれる場所だ。
保存状態の良いもの、年月の中で朽ちたもの、これまでの人生で見てきた遺跡とは完全に異質な、宇宙さえも感じてしまうほどの様々な遺跡たち。
滝のような雨が降ってきたら木の下に隠れ、動物がいたら逃げられないように近づき、ぐるりと一周して疲れたころには時間はちょうど12時になっていた。
そして入り口に戻り、来た時と同じバンに乗り込めばまたホテルまで連れて帰ってくれるってわけだ。
マジで、マジでティカル遺跡。
今までの遺跡関係でトップ3かな。
この地球に生きているなら是非とも見ておきたいもののひとつと断言できる。
衝撃的すぎるその姿。
あー!!中南米の遺跡はハンパじゃねぇ!!!
てなわけで14時前にフロレスに戻って来たわけだけど、疲れ果ててるので一刻も早く眠ってしまいたい。
ていうかいつグアテマラ初路上をやるんだ?ってところなんだけど、このフロレスではとてもじゃないけど路上はできない。
観光地といってもここはゆったりするところなので人がほとんど歩いていないし、ローカルエリアの方はスーパーカオスなので一瞬で身ぐるみはがされて終了みたいな雰囲気。
おまけに1時間ごとに滝のようなスコールが降るので、とても路上はできない。
これから先の中南米はずっとこんな感じなのかなぁ………
結構深刻にお金が減ってきている。
マジでコロンビアあたりで本気で稼がないとイースター島どころか南米から脱出することも厳しいな。
またスコール。
しかし…………
疲れ切っているので、屋上でハンモックに揺られて寝ようと思っていたら、どこからともなく日本語が聞こえてきた。
んあ?なんだ?だれだ?
周りをキョロキョロしてみると、道路向かいの建物の屋上からこっちに手を降っているカップルの姿。
あれは……………あ!!
エビちゃんとヨシコさんカップルだ!!
メキシコシティー、サンクリストバルと同じルートを回っている2人がパレンケを終えて追いついてきたみたいだ。
しかも向かいのホテルて^_^
「いやー、また会いましたねー。じゃあ飲みましょうか。いいお店知ってます?」
相変わらず飛び切り人を和ませる笑顔のエビちゃんと、極妻みたいな超美人なのに子供みたい変な動きをするヨシコさん。
あー、この2人和むなぁ。
というわけで早く寝なきゃと思っていたのに、この日もいつものバーに行きお互いの旅のエピソードで盛り上がる。
2人も、俺たちが越えてきたアドベンチャールートでグアテマラに入ってきたみたいだけど、途中の山道でがけ崩れ現場に遭遇し、バスが泥にはまり込み、道路が半分崖の下に崩れ落ちてる真横でユンボで救出されるという誰も経験したくないような危険を乗り越えてきていた。
そんな超デンジャラスな経験をほんわかと笑って話すヨシコさん。
こんなお似合いカップル。
2人は旅の中で出会って恋に発展した。
そして今まさに2人で世界一周をしている。
今のケータ君にはちと酷かなぁと思ったけど、それは仕方ないこと。
旅で別れる人。
旅でパートナーと出会う人。
恋なんてどうなるかわからんもの。
この夜は結局宿の屋上に場所を変えて夜遅くまで語り合った。