10月3日 木曜日
【メキシコ】 サンフェリペ ~ エンセナダ
名前……ノルウィージャントロール
出身……ラップランド
年齢……5095歳
好きな音楽……デスメタル
ブラックメタル
嫌いな音楽……フォーク
好きな食べ物……トナカイ
サーモン
ストックマンのお惣菜
友達………サンタクロース
ムーミン
好みの女性……アンネリ・ヤーテンマキ
嫌いな国民……エジプト人
タバコの銘柄はバイスロイ。
ミントリキュールが好き。
コケモモ摘み世界大会にはいつも参加している。
目玉と尻尾がもげて、金丸文武を心から憎んでいる。
風雪と熱気にさらされすぎて最近髪の毛が薄くなってきている。
ラテン女性のお尻は悪くないと思っている。
そんなトロール。
たまに逃亡を試みますが、ことごとく僕にとっ捕まっています。
イースター島でのモアイとの対談
オーストラリアでカンガルーのポケットに入る
アジアでレディーボーイに犯される
インドで牛と格闘する
少林寺で頭を丸める
そして日本で彼女に会う
まだまだトロールの過酷な旅は続きます。
彼はうんざりしていますが、無理矢理連れて行きます。
これからもトロールをよろしくです。
暑っちいんだよメキシコめ!!!
トゲトゲしてればいいと思ってんじゃねぇぞ!!
ねぇ?アイアンメイデンやってくれよ?
「いやー、僕もトロールと同じでハゲそうなんですよねー、ていうかもうホントに薄くなってきるんですよねー。」
「アンタなぁ、そんなもんでハゲてるゆーたらホンマもんのハゲに後ろから刺されんで。たいがいにしときよー。ウチの甥っ子はなぁ、電車の中でハゲのオッさんにな、オッちゃんなんで毛はえてないの?って聞いとんねん。ほんならオッさん、そんなんワシが聞きたいわって言いよったわ。ウチ走って逃げたわ。ハゲなめたらアカンで。」
そんな漫才みたいな会話をしながらトロールをバッグに縛りつけて、さぁ今日はサンフェリペを出発。
エンセナダに戻ろう。
もっとこの麻薬のようなサンフェリペの空気にまどろんでいたいが、ここはマジでヤバい。
ここで過ごす時間は背徳の快感に犯されているようだ。
エンセナダは週末にはクラブやバーが大にぎわいになる。
確実に稼いでいかないといけない。
荷物をまとめてホテルを出た。
サンフェリペ、ここはまたいつか来よう。
全てのしがらみから解き放たれて1人になりたかったら、ここほど最適な場所はないな。
「あはははは!!!なんやねんアレ!!あかんで!!爺ちゃんのチンチンやんけ!!」
エンセナダまでは同じ道を帰ることになる。
荒野の中の一本道。
遠くに見えるカリフォルニア湾は、浅瀬の部分が真っ白く染まっている。
この強烈な太陽で干上がって、塩の大地ができあがっている。
そんな過酷な自然の中、道のいたるところに検問所のゲートがある。
来た時と同じ様に、大きな銃を持った兵隊さんたちが荷物と車内チェックをするんだけど、来る時よりも入念なチェックが行われる。
アメリカの国境方面への移動は、麻薬などの密輸の可能性を警戒しているんだろう。
バッグひとつひとつを開けて中を調べられる。
「ねぇ~、お願いだから~、お願いだから~、このトロールに銃を向けてる写真撮らせて~。」
厳しそうな軍人さんたちにそんなお願いをしているジェニファーさん。
彼女はビビるということを1ミリも知らない。
「そう言われてもなぁ、決まりでダメなんだ。」
「ねぇ~、お願い~、うわ~、お兄さんすっごい男前よね~、おじさまなんてダンディにも程があるわ。まるで岡千秋みたい!!ね、だから写真撮らせて~。」
「ダメだ。ごめんな。」
さすがにジェニファーさんの鬼の愛想良さでも、軍人さんには通用しないみたい^_^
まぁとりあえず、そんな感じで3ヶ所の検問を通り、険しい山を越え、3時間半ほどのドライブでエンセナダに戻って来た。
ここもたいがいの田舎なんだけど、サンフェリペから戻ってきたからかなりの都会に見えてしまう。
そしていつものホテルに到着。
「おー、戻ってきたのかいー?」
とスタッフの人たちがみんな笑顔で迎えてくれる。
もうエンセナダはホームタウンのように馴染んでしまっている。
少し落ち着いてから晩ご飯に出かけた。
歩き慣れた道。露面の屋台。ボロボロの建物と観光地エリア。
すっかり嬉しくなって地元の人たちのエリアを散策してみた。
屋台でタコスを食べ、無数にあるビリヤードホールへ。
ジュークボックスにコインを入れると、大音量の音楽がホールの中に響き渡った。
エルビスを聴きながらビリヤードなんて、ひと昔前の映画の中に入り込んだみたいだ。
地元のおっちゃんたちも、ニコニコしながら俺たちを見ている。
表を歩けば、いたるところで見かけるのがマリアッチのおじさまたち。
綺麗なスーツを着込んだ単体の爺さん、お揃いのメキシカンらしい服装に身を包んだトリオ。
すると、そんなマリアッチの中の1人が、歩いてる俺を見つけて、おー!!と俺にギターを渡してきた。
とまどう俺。
こんな観光客向けのサービス彼らはしないはずだけど、と思ったら、どうやら先日俺が路上で歌ってるのを聞いてくれていたオッちゃんだった。
お前の声はグッドだと親指を立ててくれる。
「あ、そうだ、べサメムーチョ出来ますか?」
「もちろんさ。」
べサメムーチョはあまりにも有名な曲で、誰もが歌える曲。なのでみんなそれぞれに歌い込んだそれぞれの歌い回しのスタイルを持っている。
これから俺もやっていく上で、色んなスタイルを聞いておきたい。
おじさんたちは浪々と歌う。
哀愁のあるギターとウッドベース。
たまらなく美しい。
演奏が終わり、勉強させてもらいました、ありがとうございます!!と20ペソ、1.5ドルくらいを差し出す。
これがだいたい相場。
しかしオッちゃんたちはノーと受け取ってくれない。
え?なんでだ?なんか機嫌を損ねたかな?
演奏してもらったんだから気持ちを渡すのは失礼に当たらないはずなんだけど………
するとオッちゃんは言った。
「俺たちは友達だろう。だから払う必要はない。」
そしてニコリと笑った。
「ええなぁ、ミゲルはもうエンセナダのマリアッチ組合に入ったんやなぁ。気づいてないかもしれんけど、ドンドン首短かなってきとんで。」
同業者からはチップは受け取らないってわけなのか。
その心意気がたまらなくカッコイイ。
いつも清潔で、スマートにしているマリアッチたち。
日本の伝統的な流しのおじさんたちもみんなスーツで粋に振舞ってるもんな。
俺も彼らを見習って常に身奇麗にしていないといけないな。
カッコイイ先輩ってのは、自分がいる道に誇りを示してくれる。
さぁ、明日から週末。
紳士に粋に、俺も歌うぞ。