3月29日 金曜日
【スペイン】 アルヘシラス
スペイン南部は天気が変わりやすい。
雨がザッと降ったかと思えばすぐに晴れ渡る。
しかしゆうべは一晩中暴風が吹き荒れ、雨がテントを叩きつけ、怖くて眠れなかった。
吹き飛ばされてしまいそうで。
テントは度重なる暴風の中でのキャンプにより竿が折れまくり、色んなところが破け、修理はしてるもののキチンと直っておらず無残にゆがんでいる。
寝袋は小さな穴があき、中の羽毛が少しずつ出てきている。
ズボンも帽子も破れているし、バッグのゴム紐もちぎれそうだし、パイプも折れた。
さらにギターは弦がビビり始めているし、ハーモニカはAとGのファの音が壊れて出なくなっている。
結構、満身創痍。
そろそろ色んなもの新調しないとな。
朝にテントから出ると、ゆうべの雨と風が嘘のようないい天気だった。
太陽が俺を乾かしてくれる。
これだから前に進める。
お金もそこそこ出来たので、次の町に移動しよう。
目的地はすぐ近くにあるジブラルタルという町。
この丘の上から見える対岸の小さな半島にある町だ。
そんなに大きな町ではないそうだが、話ではお金持ちたちのリゾート地らしく、稼ぐにはもってこいとのこと。
ガッツリ稼いでやるぞ。
ランニングをしてる老夫婦にどうやって行けばいいかたずねる。
ヒッチハイクでもいいんだけど、すぐ近くなのでバスで行ってもたかがしれてる。
「バルログバルログ。」
スペイン語でなに言ってるか1mmもわからないけど、着いてきなさいと言っているおばちゃん。
もー、白人のおばちゃんってなんでこんなに可愛いんだよ。
ていうか白人はおっさんでも兄ちゃんでもみんな可愛くて仕方ない。
抱きしめたくなる。
俺の腕を引っ張りながら連れて行ってくれたのは自分たちのマンションの前。
そこに彼らの息子さんが出てきた。
「ジブラルタルに行きたいのかい?」
英語ペラペラ。
息子に話させるために連れてきてくれたんだ。
わざわざ家から出てきてくれるとか親切にもほどがあるよ(´Д` )
「ところでパスポートは持ってるよね?」
「へ?なんでですか?」
「え?知らなかったのかい?ジブラルタルはスペインじゃないんだよ。」
なんだとおおおおおお!!!!
ほんの小指みたいな半島なのにそこだけスペインじゃないってどういうことだよ!!
確かにiPhoneで地図を見たら、半島の先っちょ部分だけ、点線で区切られてやがる。
なんとここだけイギリス領。
まじかー…………
やめとこう。
稼げそうな雰囲気ではあるけども、今はスペインを満喫したい。
リゾート地はもうダハブでしばらくお腹いっぱいだし。
もちろんチップを請求されることもなくご家族と別れ、町に戻った。
もう1日だけアルヘシラスで歌ってから西に進んでいくとするかな。
ご飯何にしようかなー、と歩いているとケバブ屋さん発見。
あああ!!!このケバブ屋の油と肉の臭い!!!
これぞヨーロッパの臭い!!!
ファストフードの王様!!!
まぁね、俺はあれだよ?トルコ行ってるからね。
トルコって知ってる?
ケバブの本場なんだよ?
本場のケバブを食べてきてるんだからね、こんなヨーロッパの真似事みたいなケバ………
で、でけぇじゃねえか………
トルコのケバブの倍くらいあるじゃねえか………
まぁデカけりゃいいってもんじゃねぇからな。
トルコの鼻ヒゲのオッさんたちが作るケバブ食ったことあんのかい?紅茶飲むかい?
あんまりなめてもらっちゃ俺のカッパドキアも出るとこ出て………
うっめ。
マジうっめ。
忘れてた。
ヨーロッパのケバブが世界一。
あぁ、またケバブとピザの日々が始まる…………
美味すぎるから全然オッケーだけどね!!
ケバブ3.5ユーロ!!!
夕方になり路上開始。
今日は金曜日。
いつにも増してたくさんの人でごった返すショッピングストリート。
色んな人が聴いてくれる。
笑顔を向ければみんな笑顔を返してくれる。
なんだこいつ?みたいな怪訝な顔をする人が1人もいないという驚異的なノリの良さと懐の深さ。
スペインはヨーロッパでもダントツの移民受け入れ大国なのだそう。
相手の立場に立って考えてあげるという優しさに満ちた、おおらかな気質なんだろうな。
街灯にあかりがともり、小雨がちらつき始めた。
それでも軒下に入って歌い続ける。
金曜の夜は大盛り上がり。
みんな可愛い笑顔で歩いている。
おばちゃんがフラメンコを歌ってくれた。
体に染みついてるんだってことがわかる節回し。
日本のおっちゃんが演歌を歌うみたいな感じだね。
物悲しいメロディ。
でも力強くて情熱的な、あのフラメンコ。
マリア・ドロレスおばちゃん、ありがとう!!!
今日のあがりは36ユーロ。
さー、明日から移動開始だ!!