2月10日 日曜日
【ヨルダン】 アンマーン
~ 【イスラエル】 エルサレム
たった今、同性愛者の兄ちゃんが俺を諦めてどっかに行ってくれました。
エルサレムの夜中の公園は若干危険です。
ケツが。
でもここで寝ますけどね。
エルサレムに着いてるということはイスラエルの国境を越えることが出来たということです。
みんなが気になるイスラエルの国境越え。
彼のことは忘れて、今日を振り返っていってみよう!!!
「あー、天気いいっすねー。」
「そうだねー。」
「今日でこの街ともお別れっすねー。」
「そうだねー。今日からイスラエルだねー。」
「じゃあ、そろそろ行きますかー。」
「そうだねー。」
「あー、いい天気っすねー。」
「うん、ほら、ショウゴ君立ちなよ。行こうよ。」
「フミさんこそ立って下さいよ。」
「いやいや、ショウゴ君から立ちなよ。シュボ。」
「ちょ、なにタバコに火つけてんだっぺや。シュボ。」
「いい天気だねー。」
「そっすねー。」
そんなやりとりをしつつも、なんとか重い腰を上げる。
いや、ちゃんと出発しましたよ。
でも沈没者の気持ち、めちゃわかったな。
さて、宿で出会ったデンジャラス茨城県民、ショウゴ君も今日イスラエルに行くということでエルサレムまで一緒に行こうということに。
国境を越えてからバスに乗ってエルサレムまで行かないといけないため、入国前にイスラエルのお金を用意しておく必要があります。
アンマーンの換金屋で30ジュディーをイスラエルのお金、シュケルに換えました。
1シュケルが0.2ユーロ。
重い腰をようやく上げ、タケさんやアッコちゃん、レセプションのルアイに別れを告げ、6泊分のお金24ジュディー、25ユーロを払って出発。
安い!!
イスラエルは物価が物凄く高いらしく、ホステルでも10ユーロ以上するそう。
イスラエルでは野宿だな。
アンマーンから国境までの行き方だけど、まぁいろいろあります。
タクシー、乗り合いタクシー、バス。
まずは乗り合いタクシーでバスステーションへ行かないといけない。
そこらにいる乗り合いタクシーと交渉。
みんな、2人で2ジュディーだよと言ってくる。
高いから無理と断り続け、ようやく1.5ジュディーでいいよと言うドライバーを発見。
乗り込んでバスステーションへ。
バスステーションに着いて1.5ジュディーを払おうとすると、いやいや、2ジュディーだよ、とキレてくる。
ど嘘ですか!!
やりますね!!ムスリム!!
焦りましたね。
茨城県民のショウゴ君がドライバーの腕に根性焼きで十字架を入れてしまうんじゃないかとちょっと焦りました。
でも彼は素直なので1ジュディー払いました。
そこからバスステーションで国境であるキングフセインブリッジ行きのバスを探します。
バスステーションにはタクシーと乗り合いタクシーがひしめいていて、俺らみたいなアジア人が立ち入った日には、もう餌食ですね。
「バス?ないない!!バスはもう終わったよ!!ほら!!タクシーこっち!!」
「ほら!!こっちだよジャッキーチェン!!」
もう客引きが半端なくウザいです。
「乗り合いタクシーはいくらですか?」
「7ジュディーだよ!!1人7ジュディー!!」
「そんなにお金ないので5ジュディーなら乗ります。」
「OK!!ノープロブレム!!さ!!こっちだよ!!」
さっきのドライバーがど嘘をかましてくれたばっかりだったので、もう1回言ってください、とビデオで撮影。
1人5ジュディーだから!!と張り切って言ってるところをビデオにおさめて、さぁ出発。
街を出ると、一気に風景が荒涼としたものに変わる。
不毛の山や丘が連なり、肌色の乾いた大地がどこまでも広がる。
アラビアンナイトの世界。
そんな道を走ること1時間ほど。
国境のキングフセインブリッジに到着。
約束通り運ちゃんに1人5ジュディー払おうとすると、いやいや1人6ジュディーだよと言ってくる。
お!!ど嘘ですか!!
やりますね!!ムスリム!!
まぁそう来ると思ってたよ。
予感的中すぎてウケる。
アラビア語でまくし立ててくるターバンの親父にさっき撮った1人5ジュディーでノープロブレムだぜ!!とほざいているビデオを見せつけてやると、チッ!!と悔しがりながら5ジュディーにしてくれました。
おかげでドライバーは茨城県民のショウゴ君に殴られすぎて味覚を失わないで済みました。
よかったね。
今度からこのビデオ作戦が活躍しそうだな。
さて、ついにヨルダンからイスラエルへの国境越えです!!!
ついこの間もパレスチナ自治区への攻撃を行っていた、あの紛争大好きイスラエルです。
旅人ならば常識ですが、先日の日記にも書いた通りイスラエルはイスラム諸国からめちゃ嫌われているために、パスポートにイスラエルのスタンプがあるとイスラム諸国に入国することが出来なくなります。
ヨルダンやエジプト、モロッコはスタンプがあっても入れるらしいけど、他の国は絶望的ですね。
まぁ、スタンプ持ってても入れた、という話もありますが。
僕はこれからアフリカに入るので、イスラエルスタンプはもらいたくないところ。
そこで旅人たちが使う方法というのが、ノースタンプ、プリーズという魔法の言葉。
パスポートにではなく、他の紙に捺して下さいというもの。
これによりイスラエル入国の形跡を残さないようにします。
まぁ、簡単そうに聞こえるんですけど、イスラエル入国をみんなが恐れる本当の理由は、カスタムの警察たちが厳しい、というところです。
隣国と敵対関係にあるので渡航者たちに厳しいというのはわかるんだけど、まぁめんどくさいらしい。
どこに行くんだ?どこに泊まるんだ?仕事はなんだ?給料はいくらだ?親父の仕事はなんだ?なんやらかんやら。
そんな異常な質問攻めを、信じられないような高圧的な態度でしてくるようです。
ニヤニヤしながら嫌がらせのように詰問し、もし係官の機嫌を損ねてしまったら個室行き、さらに4~5時間の拘束、などなど。
そんなひどい目に遭ったという話を数多く聞きます。
なのでみんな、まるで入社試験の面接のようにあらゆる質問に答えられるよう、宿で予習をしてから国境越えに望むわけです。
さすがにドキドキ。
よっしゃ!!まずはヨルダン側のカスタム。
普通に窓口にパスポートを渡します。
ここでもノースタンプと言います。
ヨルダン側の出国スタンプがあったらイスラエルのスタンプがなくてもイスラエルに入ったことがバレバレですからね。
もう俺らみたいな奴らだらけなんだろう。
はいはい、みたいな感じで別紙にスタンプ捺してくれます。
他の外国人たちにも別紙に捺してました。
多分何も言わなくても別紙です。
こっからは金。
金めちゃかかります。
まずヨルダン出国税が10ジュディー。11ユーロ。
そしてヨルダンカスタムからイスラエルカスタムまでの国境間をバスで移動しないといけないんだけど、このバスが5ジュディー。バッグ1つが1.5ジュディー。
ちょくちょくと取られていきます。
そしてそれぞれの間の待ち時間が長いです。
そしてバスは何もない荒れ果てた荒野の中の一本道を走っていきます。
殺伐としたバス内………
なんだけど、ここに世界中を長年ガンガン旅してるベテランのおっちゃんがいて、彼がペチャクチャ喋って場を和ませてくれる。
おっちゃん、グッジョブ。
わずか5分で、イスラエルカスタムに到着。
マジのデカイ銃を抱えた人たちが何人も歩いている。
緊張の入国…………
お願い、変なこと言わないで………
いくつもの窓口でパスポートチェックをしながら奥に進んでいきます。
ボディ荷物チェックはかなり厳しく、どんなに混雑していようが、金属反応ゲートの音が鳴れば、何度でも何度でも繰り返しゲートをくぐらされます。
僕はブーツまで脱がされました。
「ちょっと!!何これ!!」
うわ!!何!!なんかマズイもの持ってたっけ!!
と思ったらバッグにくっついてるトロールを見ている怖そうな姉ちゃん係官。
「僕の友達です。」
「ぶー!!マジウケる!!いいわよ、行って。」
トロールのおかげで色んなところで助かってる。さすがは北欧の妖精。
そしてついにイミグレーション。
窓口が5つほどあるが、俺は男の窓口を選んだ。こういうとこの女は嫌な奴が多い。
そして男の中でも黒人にした。
白人たちの中で働いている黒人はほとんど紳士だからね。
そして俺の番がきた!!
「は!!は、ははは、橋幸夫、じゃなくてハロー。」
「どこに行くんだ?」
「エルサレムに行きます。マジ、ユダヤ人リスペクトしてます。」
「エルサレムだけか?」
「そうです。アインシュタインとかすげっすよね。」
「何日いるんだ?」
「10日ほどです。チェスのチャンピオンのほとんどがユダヤ人らしいっすね。マジ天才すぎ。ウケる。」
「どこのホテルに泊まるんだ?」
「ニューパームホテルです。」
(旧市街のすぐ近くにある安宿。みんなここの名前を出す。日本人に人気なのが、寄付金制でやっているイブラヒム爺さんという人のホステルらしいが、この爺さんアウトローらしくこの名前を出すとマズイことになるらしい。)
「そこの予約は取っているのか?」
「ま、ま、まだです。その頭に乗っかってるの河童の皿みたいで渋いっす。」
「ホテルの場所はどうやって見つけるんだ?」
「人に聞いて探します。いやー、マジカッケー。ノースタンプ、プリーズ。」
1分で終了。
ノースタンプと言ったら、ヨルダン側みたいな紙切れを渡されると思っていたんだけど、しっかりしたカードをもらいました。
大事に持っときなさいと渡されました。
これが入国の証になるわけだね。
あ、あれ?もう終わり?
あ、ショウゴ君どうだったかな?
キレて茨城弁で暴れてねっぺか?
スタスタ歩いてきたショウゴ君。
俺の後ろに並んで、あ、彼と一緒です、と言ったら何ひとつ質問すらされなかったらしい。
はい、イスラエル楽勝。
他の国のほうがよっぽどめんどくせえ。
態度がめちゃ悪いっていうけど、ユーゴスラビア圏の国境警察のほうが乱雑だった。
というわけでみなさん。
時代は流れてます。
今のイスラエル国境越えを恐れることはなにひとつありません。
たぶん茨城のイトーヨーカドーに行くほうがめんどくさいことになると思います。
ショウゴ君の荷物が放置されていて1時間ほど待ちぼうけを食らったけれど、それくらいはご愛嬌。
バスで一緒だったメキシコ人のデビッドもわざわざ俺たちを待っててくれ、無事に荷物をゲットしてから3人で今度はエルサレムまでのバス探し。
手段は3つ。
タクシー。
乗り合いバス。
ローカルバス。
タクシーはもちろんゲロ高い。
乗り合いバスはエルサレム直行 & 荷物ひとつで42シュケル。8.4ユーロ。
ローカルバスは途中乗り換えがあって41シュケルくらい。
ここは無難に乗り合いバス。
乗り合いバスは安いことは安いんだけど、お客さんが集まってバスが満席にならないと出発しないってところが難点。
ここでも1時間ほど待たされる。
この時点で夜の7時になっていたけれど、イスラエルは今までよりも1時間の時差がある。
iPhoneの時計をイスラエルに合わせると、7時から6時に変わった。
俺はこの日、25時間生きたことになった。
わずか数キロしか離れていないのに時差があるなんて不思議だな。
バスは暗くなったころにカスタムを出発。
ヨルダンとはまったく別物の綺麗なアスファルトの道を新車のバンは快調に飛ばし、あっという間に首都のエルサレムに着いた。
あ、エルサレムに入る途中に、簡単なパスポートチェックがありました。
あそこがパレスチナ自治区のボーダーだったんだな。
乗り合いバスを降りると、そこはヨルダンと変わらないゴミゴミした街並み。
女の人は頭にカバーをし、男も鼻ヒゲやターバンなど、ムスリムの人たちがたくさん歩いている。
エルサレムは宗教のデパート。
つまり人種のデパート。
あまりにも多様な人々が同じ街の中に暮らしていると聞いていたが、ここはムスリムの人たちの地区のようだ。
ゴミゴミした通りの向こうに伸びる高い石の壁は、クロアチアのドブロブニクを思い出させる。
この中が宗教のデパート、オールドシティーか。
お腹が空いたので露店のファラフェル屋さんで肉入りのサンドを食べた。
10シュケル、5ユーロ。
ただのサンドが5ユーロ。ヨルダンなら2ユーロでも高いくらいだ。
やっぱりイスラエルは物価の高い国のようだ。
とりあえずWi-Fiをゲットしようと、メインストリートを探して歩いていくと、ピッカピカの路面電車が走るオシャレな通りを見つけた。
こりゃすげえ。
ムスリム地区から一気に様変わりした。
そして歩いてる人の頭の上にはアレ。
あの不思議な河童の皿みたいな帽子。
帽子と言うにはあまりに小さい。
つむじが隠れればいいくらいのサイズ。
ニットキャップ編んでて、途中で糸が足らなくなってしまったからこれでいいね!!って感じ。
これをキッパというそうな。
さらにさらに、異様な人たちが歩いている。
全身黒ずくめのスーツをまとい、シルクハットをかぶった紳士たち。
しかしどこか紳士と呼ぶには違和感を拭えない。
若者も老人も、顔を覆うようなヒゲをたくわえており、さらにもみあげの部分だけが異常に長い。
みなが統一してその異様な格好をしている。
彼らはみんなユダヤ教徒。そしてユダヤ人。
彼らが一体どういった人たちなのかは後々書いていこうと思います。
Wi-Fiのゲットできるカフェを見つけ、3人それぞれにネットをして、ショウゴ君はホステルへ行き、デビッドは友達を待つとカフェに残った。
俺はもちろん野宿。
イスラエルのホステルは安くても50~60シュケル。1200円くらい。
イブラヒムお爺さんという人が寄付金でやっている家みたいな宿もあるそうだが、だいたい相場でみんな50シュケルは払ってるそう。
ホステルは1000円以下なら泊まるが、それ以上はちょっとキツイ。
やってきた公園は街からそんなに離れてもなく、綺麗で人通りも少ない。
端っこのベンチに寝床を決め、マットを敷いて下半身を寝袋に突っ込む。
昼間は暖かいが、夜はなかなか冷えるこのエルサレム。
そしてそこにやってきた兄ちゃんが同性愛者だったってわけです。
25歳くらいかな。1人で歩いてきて、俺を見つけると隣のベンチに座って話しかけてくる。
「ここで寝ると寒いよ。よかったらウチに泊まるといいよ。」
ホントなら嬉しいお誘いだけど、怪しい奴の雰囲気はなんとなく分かるもの。
気分を害さないように断っていると、本音を出しやがった。
「I want to sex.」
そ、そ、そうかい。
うん、他でやってくれるかい(´Д` )
俺は女が好きなんだよとやんやりと、でもバッサリ断ると、すごすごとどっか行ってくれた。
あー、ビックリした。
軽くドキドキしながらも心を落ち着かせ、ベンチに横になった。
でもやっぱり同性愛者がウロついてる公園ってことでほとんど眠れなかった。
しかし、
この夜はここでは終わってくれなかった。
最悪の悪夢に迷いこんだように。
何時間経っただろうか。
横になったのが深夜の3時くらいだったから4時は回っていたと思う。
遠くでかすかな足音がした。
敏感になっているので、すぐにそれに気づく。
寝袋の隙間から外をのぞいた。
向こうから1人の男がこちらに一直線に歩いてくる。
ヤバイ!!
すぐに寝袋から上半身を出した。
すると男は隣のベンチに座った。
さっきの同性愛者だ。
「あー、大丈夫大丈夫。寝てていいよ。」
そう言って座ったまま動かない。
俺の顔から2mも離れていない。
もちろん眠るわけにはいかないので、俺も警戒していない素振りで神経を集中していた。
2人だけの静寂の公園に、張り詰めた空気が漂う。
すると、同性愛者。
おもむろに自分の股間をなで始めた。
ちょっと待ってくれよおい………
なにしてんだよ………
そして次の瞬間、全身の毛が逆立った。
そいつの股間から、勃起したもののシルエットが闇の中に浮かび上がっていた。
そしてそれをしごいている。
ベンチから跳ね起きた。
「な、な、な、何してんだよ!!!やめろ!!やめてくれ!!」
「チョメチョメがしたいんだよぉ……俺を、ファックしてくれよぉ……う、ウフ、オフ、」
「うわぁぁぁ!!お、俺は同性愛者じゃないんだよ!!ここじゃなくて他のとこでやってくれ!!頼む!!」
「なんでだよぉ………プリーズ、ファックミー、ファックミー………オ、オフ、オフ!!」
股間をしごく手の動きが早くなる。
俺に唇を向けてチュパチュパと音を立ててくる。
なんの悪夢だ!!
「頼む!!俺は日本人だ!!俺は恋人もいる!!同性愛者じゃないんだ!!」
5分だったか20分だったか。
ヒッチコックの映画のシーンみたいな狂気の時間は、ついに同性愛者が諦めて勃起したものをズボンにしまってくれることで終わってくれた。
悲しそうに公園の外灯の下、歩いていった同性愛者。
危なかった………
ケツもだけど、逆上してナイフとか出してこないかと、そんな考えが頭を支配していた。
怖かったぁ………
人種のデパート、エルサレム。
初日から飛ばしすぎだぜ。
その夜はもちろん、一睡もできないままベンチに硬直していた。