12月14日 金曜日
【ボスニアヘルツェゴビナ】サラエボ
俺の部屋は5人部屋なんだけど、ゆうべ外に飲みに行った連中が夜中の3時くらいに帰ってきた。
バタンバタン
ドタドタドタドタ
うっせえ。
もうちょっと気を使えよな。
ついに金曜日が来てしまった。
今夜はホステルのパーティー。歌わないといけないのに体調は万全には程遠いコンディション。
頭痛、体の怠さ、ツバを飲み込むのが嫌になるくらいの喉の痛み。
こりゃえらいこった。
4日間もタダで泊まらせてもらっといて、やっぱり歌えませんなんてハラキリもんだ。
「ヘイ!!フキ!!これを聴いてくれ!!」
ホステルの太っちょの兄さんが、なんか渋いロックの曲を聞かせてきた。
だからフキて(´Д` )
ウケる(´Д` )
俺はフミだ!!!
意外なことにサラエボは70~80年代、ロックミュージックの発信基地として名高い街だったそうで、数々の有名なバンドがサラエボから生まれたんだそう。
まぁ、 ひとつも知らなかったけど。
そんなボスニアヘルツェゴビナのローカルロックの曲を今夜までに覚えてくれという。
カンナムスタイルだけで許してよ(´Д` )
バールカン バ~ルカン バ~ルカン モ~
有名だというバルカン半島の賛美歌。
とりあえずコードだけは覚えといた。
町に出て、カフェへ。
待ち合わせ時間にやってきたのは昨日のハリス。
まだ20歳のハリスとは音楽の話が合う。
ニールヤングやイーグルス、そしてマディウォーターなんかのブルースが好きなハリス。
まるで自分の若い頃を見てるようだ。
俺も若い頃、夢中でブルース弾いてたなあ。
リトルウォルター聴いてハープの練習してたなあ。
まだまだ練習しないとなあ。
楽しい時間なんだけど、体の怠さがどうしようもない。
明日また会う約束をして、ハリスと別れて宿に戻った。
談話室に入ると、ソファーが広げられており、テーブルに物凄い量のビール、ワイン、ウィスキー、ラキアが並べられていた。
うわー、ものすごいたくさんの人が集まりそうな予感。
こいつは緊張してきたぞ。
体は怠いけど、やることはやらないと。
喉のウォーミングアップに路上へ。
今日はそんなに寒くない。
しかし、そのせいで建物の屋根に積もっていた雪がとけて、ジャバジャバと水が滴り落ちてきており通りが水浸しでかなり汚い。
そのためお金入れてもらうためのギターケースを地面に置くことができない。
何か代わりになる空き缶みたいなものないかなぁと、ゴミ箱をあさっていたらホームレスの物売りのおじさんが靴下をくれた。
ちょ、おじさん!!
俺ホームレスじゃないから(´Д` )
結構お金持ってるから(´Д` )
大丈夫、何も言わなくていい、俺たちは仲間だからね、と極上の笑顔で俺の肩をポンと叩いて去っていった。
そうだよ、俺たち仲間だよな。
助け合わなきゃな。
いつも見下しているホームレスからこんなに暖かい気持ちをもらえるなんて。
とてもとても難しいことだけど、ホームレスだろうがなんだろうが同じ人間だと思えるようになりたい。
ほとんどの人が出来ないことをあのホームレスのおじさんはやってみせてくれた。偉大なホームレスだ。
清々しい気持ちで路上開始。
ああ、優しい気持ちを歌に込めるぞ。
世の中は愛に満ちている。
「てんめええええええ、まだいやがったのかあああーー!!!!」
ひいいいいい!!!!
鬼のような顔でいつもの婦人警官が突進してきた。
今日で3回目。
「おいてめー、オレのことなめてるだろ?あ?何回目だと思ってんだ?警棒ケツにぶちこまれてーのか?」(推測)
「す、すぐ、消えます!!」
この男日照り!!
彼女がいなければかなり稼げてたのになぁ。
おっと、優しい気持ち、優しい気持ち。
みんな助け合わないとな。
この追っかけっこも今日が最後だ。これはこれで楽しかったよ、婦警さん!!
宿に戻ると、まだ数人しか談話室に集まっていなかったが、20時が近づくにつれドンドン増え、20人ほどの人で部屋の中はごったがえした。
映画で見るようなホームパーティーって雰囲気!!
みんな飲み物片手に歓談している。
ここで歌うのか。
「フキ!!準備はいいかい!!」
ボスの合図とともにライブ開始!!
前半戦は静かな曲だけでまとめた。
ここはパーティーの場。みんなが知ってるムーディーな曲をBGMにした。
それなりに盛り上がる。
パーティーには地元の人々、そして世界各国から来ている旅人たちで盛り上がっている。
アジア人は俺1人。
ビール片手に話して回る。
そしてしばらくしてから1人の女の子がやってきた。
彼女がカンナムスタイルを歌える女の子だ。
俺も動画を見たんだけど、彼女は自分が歌ってるカンナムスタイルの動画をYouTubeにあげてるんだけど、それがめちゃ可愛くて、かなりの再生回数を記録していて、サラエボではちょっとした有名人。
そんな彼女と後半戦スタート。
カンナムスタイルが異常な盛り上がりを見せた。
みんなあの、ダサい踊りを踊って大合唱。
それからもボスニアヘルツェゴビナの有名な曲、バルカンで大合唱。
ジョニーBグッドなんて空気読みまくりの曲でスイングして、みんな立ち上がって踊ってくれた。
酔っ払ってるからわけわからんくらい盛り上がる。
そして最後にやっぱりこの曲を歌った。
イマジン。
大合唱になった。世界中から来ている人々が声をあわせた。
このサラエボで声をあわせた。
想像しよう
国も、飢えも、欲も、殺されることも、宗教もない、みんなが愛し合う、そんな世界を
まだまだパーティーは盛り上がる一方だったけど、風邪気味で歌いまくり疲れた俺は自分の部屋へ戻った。
下の談話室からは賑やかな話し声。
あー、疲れた。
ベッドに潜り込んだ。
しかし、このあとだった………
このあと大変なことが…………
何時間経っただろうか………
部屋のドアが開いて、誰かが入ってきた。
女の声と男の声。
アレクサンドラだ。
男はたぶんエクアドルから来てるやつ。
ヒソヒソ声でなにか話している。
談話室からはまだ数人の声が聞こえる。
その時、
チュパチュパという音が………
あばばばばばばばばばはばばばはばばばばば(´Д` )
そうです、紛争が勃発しました。
サラエボ紛争2012。
あ、アレクサンドラーー!!!
フィアンセがポーランドにいるって言ってたじゃないかああああああああああ(´Д` )
真っ暗な小さな部屋の中に響く卑猥なあああああ、音おおおおおお。
やっぱりホステルってそういうことが起きるのか!!!!
しかし話し声をよく聞くと、アレクサンドラはそんなに乗り気ではないような雰囲気。
エクアドル男が強引に迫ってる様子。
「No. I can’t. I can’t.」
声を殺して拒否している。
しかし、イヤ、ダメ、というのは、モードに突入している男の頭の中では、もっと、もっと、に変換される。
押し一手のエクアドル男。
アレクサンドラのベッドに横になり、エクアドル男は南米パッションでポーランド女に迫り続ける。
俺の1.5m横で紛争が繰り広げられている。
どどど、ど、どうすればいいんですか?(´Д` )
皆さんも経験あるでしょうか。
カップルの家に泊まりに行って、横でおっぱじまってしまった時、もはや熊に遭遇した時並みの寝たふりを決めこまないといけない心境を。
僕はあります。
した側もされた側も。
完全に起きてるのがわかっていながら、そこは空気読んでね、寝たふりしていてくれとテレパシーを送るんですよね。
エクアドル人のテレパシーがああああああ!!!!
すごいいいいいいいいいいい!!!!
四面楚歌ですよね。
歌というかチュパチュパですけどね。
しかしエクアドル男の健闘も虚しく、アレクサンドラは拒否の色を強めていく。
「ヒソヒソ、No. I can’t.ヒソヒソ、 」
攻めるエクアドル男!!
しかし次の瞬間!!
ドタン!!!
アレクサンドラにベッドから蹴り落とされるという最高のネタを提供してくれるエクアドル男。
布団の中で必死に笑いをこらえる。
しかし南米人はしぶとい。
諦めない。
何度も何度もアレクサンドラのベッドに潜りこむ。
蹴り落とされる、を10回くらい繰り返す。
よし、今日から君のことを南米の恥、と呼ばせてもらうよ。
でも俺も男だよ。
わかるよ、エクアドル。
諦めきれないよね。
おさまりつかないよな。
でもこの拒否状況になったら80パーセントはもう無理だよ。
押せば押すほど女の子は拒否するよ。
まぁ、たまに壁を乗り越えられるときもあるけど、それで勝ち取ったチョメチョメの後味の悪さを知ってるだろう?
ああ、戦闘モードに突入してる時はそんなこと考えないよね。わかるよ。エクアドル。
長い格闘の末、ついにあきらめたエクアドル。
第一次世界大戦やベトナム戦争が教えてくれてるだろう?
近代の戦争では防戦のほうが有利なんだよ。
自分のベッドに戻ったエクアドル。
ああ、やっと静かになった、と眠りについた。
1時間くらいしてエクアドル男、またアレクサンドラのベッドへ。
てめー、しつこすぎ(´Д` )(´Д` )(´Д` )
南米人、あきらめ悪すぎ(´Д` )(´Д` )
さすが南米の恥、その名に恥じない恥っぷり。
しかしここで覚悟を決めたエクアドル。
玉砕覚悟の突撃に出た!!!
今までのジェントルな攻勢から一変、ガバッ!!とアレクサンドラに覆いかぶさって強引な攻撃!!!
まさに大阪冬の陣からの油断させといて夏の陣での総攻撃をかける家康。
アレクサンドラの喘ぎ声が聞こえはじめる!!!
え?!大阪城陥落!?
あ、あ、アレクサンドラーーーーー!!!!!
君は誇り高いポーランド女じゃないのかああああああうああ(´Д` )(´Д` )(´Д` )
攻め続けるエクアドル!!!
ベッドがきしむ音が部屋に響く!!!
いやあああああ!!!!
ドタン!!!!ゴロゴロゴロ!!!
激しくベッドから蹴り落とされたエクアドル男。
ここでアレクサンドラからこの旅1番の名言が発せられた。
暗闇の部屋に響く、人生を感じさせる名言。
これです。
「アイドントワナ ユアペニス。」
ぶーーーー!!!!!!
爆笑死するかと思った(´Д` )(´Д` )
みなさんも外国で外国人に迫られたらこう言いましょう。
「アイドントワナ ユアペニス。」
エクアドル男は、見事玉砕してベッドに戻りました。
って話です。
でもキスは羨ましかったな。