9月29日 土曜日
なんてキレイな町なんだ、シュタイアー。
ザルツブルクも街全体が美術館みたいな美しさだったけど、この町にはさらに日常に密着した温かみを覚える。
千年の歴史のある町らしく、かつては鉄器や刃物なんかの産業が盛んだったみたい。
街全体がとても古びた風情を残しており、教会や裏路地にロマンを感じずにはいられない。
中央広場にはたくさんのお店が並び、野菜やパン、卵なんかの日用品の露店が立ち、地元の人々が行き交っている。
これだけ美しい町なのに観光客が少ない。もちろん少しはいるけれどアジア人がまったくいないのが嬉しい。
観光地特有の浮ついた空気のない、ローカルな温かみにとても落ち着く。
町歩きをしたいところだけど、今日は土曜日。
明日は日曜で人がいなくなるはずだから、今日で稼がないといけない。
歌える場所を探して中央広場を歩いて行くと、道幅が狭まり、歩行者のみの雰囲気のいい通りに変わる。
両側の建物が迫る細い通り。
アコーディオン弾きとサックス吹きがいるが、どちらも流してるだけの気の抜けた演奏。
その細い通りに場所を決め、ギターを構える。
歩く人々がちらちらと見て行く。
ギターを鳴らし、ハーモニカを吹き、歌を歌う。
アジア人バックパッカーの知らない言葉の歌。
1曲目が終わる頃には、人だかりができ、周りの窓からもたくさんの住民が顔をのぞかせ、拍手がまきおこった。
それから4時間。
足元にはたくさんのユーロ。
そろそろ終わろうかなと思っていると、1人のおばさんが話しかけてきた。
英語が堪能なおばちゃん。
あ、オーストリアもやっぱり英語をしゃべれる人は少ないんだよな。
かつては外国から閉ざされた国だったというこのオーストリア。ベルリンの壁崩壊とともに開かれ、たくさんの外国人が訪れ、居住するようになったんだという。
オーストリアは貧富の差がそんなにないようで、中流階級が多く、みな仕事を持ち、家を持ち、豊かな暮らしをしているようだ。
給料は平均30万円くらい。日本と同じような感じだな。
ただ周りのチェコやポーランド、ハンガリー、ルーマニアは貧しい国々で、彼らはほとんどが仕事でオーストリアに来るのだが、たまに盗みや強盗を働いているらしい。充分気をつけること。
日本にも中国人やインドネシア人とか働きに来てるけどそんなに悪さはしてないよな。
マクドナルドはないですか?と聞くと、よし!私の車で連れていってあげる!ということに。
優しくて温かいおばちゃんの車で、大きなショッピングモールへ。その中にマクドナルドが入っていた。
ゆうべ俺が寝た河川敷のすぐ近くやん。
Wi-Fiゲット
ヤバくなってた充電ゲット
トイレゲット
モールの中にスーパーマーケットが入っているので日用品ゲット
この町サイコーーーー!!!!!
おばちゃんとハグをして、両頬にキス。胸が暖かくなる別れのやりとり。
それからマクドナルドでひとしきりネット。
色んな人から、
この人はパリにいるからメールしてね、
この人はスイスに住んでる日本人だからメールしてね、
これ私のアドレスだから落ち着いたらメールしてね!
ってなふうにたくさん紹介をしていただいたり、路上で出会った人とアドレスを交換したりするので、それが結構忙しい。
世界一周してる男からメール行くはずだから!って連絡が回ってるかもしれないと思うと、放ったらかしはできないんだよな。失礼だもんな。
もうそれがわけわからんくらいたまってる。
ケータイをいじくりまわすこと数時間。ひと気がなくなってきたショッピングモール。
気がついたらスーパーが閉まっていた。なんてこった。ビール買おうと思ってたのに。
仕方なくご飯を食べに、お昼も行ったケバブ屋さんへ。
ケバブは安くてお腹いっぱいになる。
日本のすき家みたいなもんだ。
我慢できずにビールを注文。
とりあえず生チュウ!!
生チュウ3ユーロ!!
安い!!!
ケバブは3.5ユーロ。
安い!!
今日の稼ぎは121ユーロあったからな。
少しくらい贅沢したっていいだろう。
のんびりくつろいでいると、隣に熊みたいな大男が座った。
ブロンドヘアーを刈り上げた、丸太かつぎます!!みたいな巨体。
かなり酔っ払ってるみたいだ。
その熊と仲良くなり、一緒に飲みに行くことになり、川沿いにある地元の人たちの酒場へ。
店内は土曜日ということもあり大にぎわい。
古めかしい、古き良きバーといった趣のこのお店。
少し高いらしいが、この雰囲気が好きで週に2、3回は来るという熊さん。
カウンターに並んで座る親子みたいなサイズの俺と熊さん。
ツェプファーって読むのかな。
オーストリアビールで乾杯!
熊さん
「あー?オペラ?行かない行かない。オーストリア人はオペラよりもスキーに行くんだよ。音楽の都じゃないのかって?俺たちはラジオでポップスを聴くんだよ!アメリカの!」
地元の人間のリアルな本音でした(^-^)/
ここはヨーロッパ、オーストリア
ビールのほろ苦さ
郷愁の甘美さ
川面に揺れている歴史の芳醇さよ
シュタイアーと出会えた喜びに乾杯