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カネマル、じゃなくてカルマル同盟

9月5日 月曜日


あー、蚊がいないとこんなにもぐっすり眠れる。

目を覚まして公園を見ると、真ん中で野うさぎがジッとこっちを見ていた。
おはよう!


5クラウン払ってトイレに閉じこもり、髪の毛、顔、歯、ついでに足もきれいに洗った。
めんどくさいけどやらなければいけないこと。

相変わらずスウェーデンのスーパーには温かい食べ物はチキンしか売っていない。
しかし最近食べていなかったので、美味しくいただいた。
ちなみに16クラウン。

photo:01







このカルマルを選んだ当初の理由としては、この町から橋続きで行くことのできる島、エーランド島に行きたかったから。
島の南部にはのどかで美しい農業風景が広がっているらしいのだが、その風景が世界遺産に登録されているらしいのだ。
農業風景が世界遺産って、どんなんだ?
って気になってやって来たわけだ。

しかし、別に行かなくてもいいかなって思えて来た。
早く先に進みたいし。
「せっかくここまで来たんだし」
って悪魔のささやきが頭をつつく。
無視!!





よっしゃ!と気合いを入れて路上開始!!

声の調子がいまいち。
うーん、毎回ベストな歌を歌えればいいんだがなぁ。
あんまり反応もよくないが、それでも電車代くらいにはなったかな。
後で数えたら430クラウンだった。



1人のアジア人の兄ちゃんが話しかけてきた。
シンガポール出身のシャリー。
ニューヨーク育ちで、母親の仕事でカルマルに来ている学生だ。

日本が好きで、何度か行ったこともあるという。


そんな彼とたくさん話をした。
わかりやすい英語で話してくれるので会話が弾む。
ラルクアンシェル最高だよね!!とハニーをめちゃくちゃな日本語で歌うナイスガイだ。



photo:02



一緒にマクドナルドへ。
彼のおごってくれたハンバーガーとポテトを頬張る。


「エーランド島の世界遺産?あー、来週まで居てくれるんだったら俺の車でいくらでも連れてってあげるんだけどなー。お城には行った?まだなら行った方がいいぜ。」


そういえばハーバーから海の方に巨大な建物が見えていたんだけど、あれはお城だったのか。
ここカルマルは城壁が示すように、東海岸の重要な港として栄えた町らしく、かつては王様もいたみたいだ。

歩いていくと、海の上にその居城が雄々しくそびえていた。
完全にファイナルファンタジーの世界!!
シャリーの話では900年ほどの歴史があるらしい。

photo:03




photo:04






1400年ころにデンマーク、ノルウェー、スウェーデンの王様が集まってカルマル同盟ってのを結んだ場所がこのお城みたい。
実質的なデンマーク支配の大国がこの同盟で成立したんだな。

その後1523年にスウェーデンは同盟から独立。
数々の戦争がここで繰り広げられたという。
スウェーデンを失ったデンマークはノルウェー支配を強めて長い間その関係は続いたけど、ナポレオン戦争などのゴタゴタでついに1814年にノルウェーも同盟を離脱してカルマル同盟は消滅したみたい。
まぁ、ノルウェーはその後またスウェーデンに支配されるわけだけど。
ノルウェー可哀想(´Д` )
ノルウェーは1905年にやっと独立したみたいだね。


もうすぐ長かった北欧を離れる今になって、こういった関係性が見えてきた。
政略結婚や侵略戦争、陸続きの土地で国境を決めるにはたくさんの犠牲が必要だったんだな。
おとぎ話の世界がほんとにここにあったんだ。


お堀にかかる木の橋を渡り細い城門をくぐる。堅牢な石造りの建物。
中に入ることもできるらしいのだが、すでに閉館の時間をすぎていた。


photo:05



お城の周りを歩いた。
海に向かって古びた大砲がすえられている。
沖にほんの小さな島が見えるんだけど、シャリーの話ではこのお城の王様の部屋には隠し扉があり、秘密の通路が海の下を通ってあの孤島とつながっているらしい。
攻め込まれた時の非常用の逃げ道だ。
ロマンに溢れた話。
その王様の部屋も隠し扉も見学することができるみたい。

photo:06



写真の真ん中のちっちゃい島に秘密のトンネルがつながっている!





おだやかな日差し。気持ちのいい風。水平線にエーランド島の緑が見える。


ベンチに座りシャリーと色んな話をした。

俺は24歳。これから色んなことがあるけど、俺は何をするべきなのか探さなければいけない。
流されるままに生きるなんて嫌なんだ。

そう言うシャリー。
俺たちは探さなければいけない。
この広い世界で、自分にしかできないやるべきことを。

古城のベンチで、海から吹く風を2人で見つめた。
その一分一秒がとても貴重なものだった。
俺たちの命は、とてもとても、尊いものなんだ。


「いつか必ず日本に行くから。その時は一緒にsakeを飲もう。」


さっき会ったばかりなのに古い友人のように感じるシャリー。
この再会の約束は俺たちのカルマル同盟だな。

photo:07








電車とバスを乗り継いで、夜の10時にスウェーデン最後の町、ヘルシングボリに到着した。

大きな駅には、この時間でもたくさんの人が歩いており、さすが国境の町といった雰囲気。
海峡を挟んだわずか4kmの向こう岸はもうデンマークだ。

そういえば、またお金が変わるんだな。デンマークはデンマーククラウンになる。
めんどくせえ!!
スウェーデンクラウンの小銭を使ってしまわないとな。


マクドナルドでしばらくネットの更新をして、それから寝床を探しに町を歩いた。
真夜中の町外れ、大きな墓地公園を見つけた。
周りをキョロキョロ見渡して、こっこり墓地の中へ。


夜露に濡れた芝生の上を歩く。
墓石を踏まないように。
外灯にゆれる木々の影が手招きをする。
伸びる十字架。

墓地のブルース。


おやすみ。

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