8月3日 金曜日
ガヤガヤガヤ……
………ガヤガヤ!!
「Hey! fumi!! come on wakeup!!」
来てしまった……
ゆうべの兄ちゃんたちだ。
寝袋を開けるとそこには男が5人もいて、ギターを2本も持ってきてる。
もう勘弁してくれよ……
朝の3時じゃねぇか。
はいはい、わかりましたよ。
弾けばいいんですね。
ゆうべより酔いはひどくない彼ら。でもギターを弾いたら声もでかくなる。
近所迷惑、大丈夫かなぁ、と心配しながらもみんなの歌う外国の曲が新鮮でビールを飲みながら楽しんでいた。
するとやっぱり来た。
向こうのほうで何やら叫んでる。
「うっせーんだよコノヤロウ!!
明日も仕事なんだよ!!7時半からよ!!」
「Hey! Fukin uss hole.」
そんな苦情もテキトーにあしらいながら宴は続く。
1人が家からかなり上等なウィスキーを持ってきて、もはやこの公園のあずま屋はちょっとしたライブバーに。
「おい!!このクソども!!何時だと思ってんだ!!」
気持ちよく飲んでるところに、ひときわ大きな金切り声が響き渡った。
公園の入り口のところで寝巻き姿の女の子が仁王立ちしていた。
「へ~イ、You sexy.Do you wanna drink?」
おちょくったようなことを言ってる俺たちに、彼女は地面の石を拾い上げて強い歩調で向かってくる。
そしてあずま屋に入って来るなり、持っていたかなり大きな石を振りかぶって投げつけてきた。
兄ちゃんの1人に直撃。
そして置いてあったまだ半分以上入ってる上等なウィスキーのボトルを鷲掴みにして地面に叩きつけた。
飛び散るガラスと酒。
「このチンカスどもが!!こっちは疲れてんだよ!!不能ヤロウが頭イカれてんのか!!ケーサツ呼んだからよ!!」(推測)
「You are fuckin bich!! Fuckin my wisky!!」
この騒ぎを聞きつけて近所中の人たちがワラワラと集まってきた。
「あー、ケーサツですか。今公園でイカれたやつらが飲んで大騒ぎしてるんですよ。」
「このフニャチン野郎どもがさっさと家に帰ってママのオッパイ飲んでやがれ!!」(推測)
「You go to hell. Go to hell.」
壮絶な言い合いの後、兄ちゃんたちは家に帰って行った。
近所の人たちも家に戻っていき、あずま屋はまた元の静寂を取り戻した。
取り残された俺。
床には割れたガラス片とビールの空き缶とタバコの吸殻が散乱している。
勘弁してくれよと、朝5時のスボルバルの町、1人公園の片付けをして、ウィスキーの臭いが充満する中でまた寝袋にもぐりこんだ。
ガヤガヤ………
ガヤガヤ………
………なんだなんだ
……今度はなんだよ。
またあいつらか?
寝ぼけながら寝袋を開けると、そこには小動物みたいな可愛らしい子供たちがわらわらと俺を取り囲んでいた。
ハイ、と声をかけると、ヒャー!と喜んで走り回る。
外国の子供達は人懐こい。笑顔ひとつで寄ってくる。
写真を撮ると照れ臭そうにポーズをとってくれる。可愛い。
今日でこの公園の小屋ともおさらば。きれいに片付けて荷物をかついだ。
カフェでコーヒーを飲みながらタバコをふかす。
吸殻はもちろんゴミ箱へ。
人にはきちんと挨拶をして、行儀良くコーヒーを飲み、清潔感を心がける。
日本人はイエローモンキーとして人種差別の対象になるのではないか。周りからそんな風に汚い人種と思われてるのではないか。
そういった意識が、常にある一定のコンプレックスに似た負い目として心の中にあり、それが行動の背筋を伸ばしているように思える。
日本人として、金丸文武という個として、きちんと教育された文明人でありたい。
ゆうべの大騒ぎのせいで寝不足なのか、体が疲れてなかなか声が出ず、今日の路上は早めに切り上げた。
それでも950クラウンにはなった。ありがたい。
広場の露店の人たちに、明日からまた移動します、ありがとうございましたと挨拶して回る。
みんなみんな優しい人たち。
ユーロスパーの店員さんたちも、そうなのかい!とお惣菜の手羽先を多めに入れてくれたり、こっちがお願いする前に、両替はいいのかい?今日もコインがいっぱいあるんじゃないの?と気を遣ってくれる。
さようなら、きっと二度と会わない人たち。
町を背に歩き続け、橋を渡り、集落を抜け、山あいの砂利道を1人歩く。
見渡す限りの荘厳な風景。
静寂の湖。
その湖のほとりで足を止め、ボーッと湖面を見つめた。
風で出来た波紋がひたひたと音を立てる。
そんな波紋が心の中にも伝わる。
世界ってどこも同じだなと思う。
こんなに違う文化なのに、なぜかそう思えた。
早く次に進もう。
てかコーラ死ぬほどうまい(´Д` )(´Д` )(´Д` )(´Д` )(´Д` )(´Д` )(´Д` )