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讃岐の幻のうどんを知ってますか?








2006年10月23日 【愛媛県】






松山の街を走りぬけ、海岸線を今治方面へ向かう。



そして北条の手前にある食事処『花』に挨拶に行った。


ここでもずいぶんとお世話になった。

笑顔の素敵なママにお礼を伝えて店を後にする。





全国でも珍しいお堀に海水をひいている海岸平城の今治城。

タオルの町として有名だが、タオル美術館は何となく足が向かなかった。






「金丸君ー。ご飯一緒に食べませんかー。」



そこに昨日遊んだサドゥ君から電話が入り、今日も彼の家でファミリーに囲まれてご飯をご馳走になった。


同い年なので全ての会話が合うなぁ。



「うおっ!T-BOLANやん!!…………いいねぇ。」



「X Japanもあるよー。ガキの使いのビデオも全部あるよー。」



「すげぇ!!子供のころ溜まり場にしてた友達の家みたい!!」



「ワールドダウンタウンのビデオも全部あるよー。これ最高だから。」



ワールドダウンタウンって知らなかったけど、死ぬほど面白くてオシッコ漏れそうなほど爆笑して夜はふけていった。


あー、同世代って楽しいなぁ。









翌日。






今日はサドゥ君と一緒に松山観光に出かけた。









ここの住職絶対なんかやってるだろ?って雰囲気のイカれたカオス寺、石手寺でトリップして、サドゥ君お勧めの食堂『青空食堂』でめちゃくちゃ美味しいチキン南蛮を食べ、400年の歴史を持つ砥部焼きの里なんかを回りつつ車を走らせる。


晴れ渡る空の下、サドゥ君のiPodから色んな音楽を流しながら海に向かってドライブ。


クラブ、ロック、ブルース、フォーク、メタル、デス、テクノ、演歌、軍歌、アニソン…………あらゆるジャンルの音楽が入ってる。


サドゥ君はほんとに音楽が好きなやつだ。



「お……………いいね。」



「うん、やっぱいいよね。」



坂本九は昼下がりの海岸美によく合った。


一緒に歌いながら手を叩き、ウインクした。






二見のビーチでベンチに座りボーっと海岸を見つめる。



「まぁ、愛媛には休養で来なよ。のんびりすごそう。」



ヒッピーは社会への抵抗ではない。

ただゆるやかな自然のリズムで生きたいだけだ。









翌日。










次来た時は民族楽器をたくさん使ったCDを作ろうと約束してからサドゥ君の家を出発した。


サドゥ君ありがとうね!!

CD必ず作ろうな!!






松山を出て一気に車を走らせ、香川県の丸亀市へやってきた。


香川は20万分の1の地図の見開きに県全域が収まってしまうほど小さな県だ。


あっという間に終わらせられそうだな。



この夜は丸亀のネオン街で路上をした。


ヤクザさんの多い危険な匂いのプンプンする街で、ちょいと酔っぱらったチンピラに絡まれてギターを殴られたりしたけど、まぁなんとか1万円までいった。







このところ美香とほとんど話していない。


世界に行きたいと言ったときに、もういい加減愛想を尽かされたのかもしれない。


そうだよな。


待っていてくれると思っている俺がマジアホだよな。


あれから全然電話もないし、たまにかけてもわざと明るく話してきて「友達だもんね」オーラを出してくる。


それがあまりにもヨソヨソしく感じてしまう。


なんだか俺の中でも美香の存在が薄れてきている気もする。



もう、ダメなのかな。









翌日。






香川は讃岐の国。


讃岐といえば……………もちろんうどん。


マップを見ると県内に何十軒も散らばってるし、もちろんマップに載ってない名店も無数にある。


どこから行くか迷ったが、まずは超有名店から攻めてみるか。









高知市内から離れた郊外の住宅地の裏路地にある池上製麺所にやってきた。


車1台がやっと通れるような細い道沿いにあるプレハブ小屋が店。


駐車場はない。


おかげでその辺一帯には、



『うどん屋さんに行く人。絶対に停めないで!!』



なんて看板がデモみたいに立てられまくっている。

めっちゃ迷惑してるんだろうな。






この池上製麺所。


テレビでお馴染みの瑠美子ばあちゃんがやっているお店で、そのアットホームさと1玉70円という安さで全国から客を集めている香川でも屈指の有名店だ。


店に近づいていくと、プレハブ小屋を囲んでみんな道路やそこらへんでドンブリ片手に麺をすすっている。



行列に並んで中に入るとヨレヨレの服を着た瑠美子ばあちゃんが座ってて、客に何か渡している。


受け取るとそれはauのパンフレットだった。


………………え?なんで?


うどん屋でなんでau?


業務提携してんのかな…………






謎のパンフレットをポケットに入れて進んでいくんだけど、店員さんの仕事はマジで麺を茹でるだけなので行列はできてるとはいえ回転は異常に早い。


1玉70円のうどんに+50円の卵をぶっかけてもらい、そのまま食べるだけ。


驚いたのは支払いまでセルフなこと。

ザルみたいなとこに小銭をチャリンと置くだけ。







さすがにうまかったんだけど、マジでそこらへんで立ち食いする感じなので、まぁあわただしいことこの上ない。

並んでから食べ終わって車に戻るまで10分もかからなかった。


サッと食って小腹を満たす、このスタイルが讃岐流なのかな。


でもやっぱり日向の天領うどんが1番!!







1300年の歴史を持つ高松の奥座敷、塩江温泉に行き、奥の湯温泉でさっぱりして市内に戻った。








翌日。





有名なうどん屋はたいてい昼の2時間くらいしか営業していないから、ハシゴするにも軒数に限りがある。


というわけでうどん巡り2軒目は、さぬきうどんブームの火付け役、映画の舞台にもなった山越うどんへ。









ここもやっぱり大行列なのだが茹でるだけなので列もスイスイ進む。

卵をからめる『かまたま』発祥のこの店。





ツルッと食べてダシを一口。


うーん、美味い。


でも天領うどんにかなうものはない!!







観光地の少ない香川の中で唯一全国から人を集める名所といえば琴平の金比羅さんだ。


創建年代不明の古社で、庶民信仰の聖地として江戸の昔から参拝客が絶えない。



門前町の琴平に到着し、昔ながらの土産物ストリートを歩いて行くと、そこから長い階段がどこまでも続いていた。





785段続くこの石段。


両側にはいくつもの土産物屋。


そこら中にお遍路さんの托鉢姿。


昔からこの石段はきついといわれており、金のある人は男2人が担ぐ籠に乗って半分くらいまで楽に登ることができるようだ。


学なんてまったく関係のない籠担ぎ。


これもこの町の伝統的な仕事なんだろう。


もちろん俺には籠なんて必要ないので、785段をピョンピョンのぼり、パパッとお参りをすませ、日本一古い芝居小屋という金丸座を覗いて車に戻った。


金丸!!






















銘酒『悦凱陣』の蔵元を訪ねたが残念ながら在庫はほとんどなし。






諦めて次の場所へ向かい、うどん巡り3軒目へ!!


これまた名店の呼び声高い宮武うどん。




3軒行った中ではここが1番かな。


もちろん、天領うどんにはかなわない!!









それから丸亀の港にあるうちわの港ミュージアムというところに来てみた。





丸亀は全国生産の9割を占めるうちわの町。


ほとんどがプラスチックの大量生産だが、もちろん手作りの和紙と竹のものもある。


実際煽がせてもらったんだけど、完全に風が違う。


柔らかくて、とても気持ちいい。


うちわの風はいいなぁ。

日本の風だ。



製作実演をしていたおじさんに話しかけると、うちわの話ではなく、彼の若い頃の登山トリップの話で盛り上がった。



「1月の屋久島は吹雪でね。ほんと手足の感覚がなくなって、あー、俺このまま死ぬんだなー、それもかっこいいなー、なんて思ったもんだよ。いつ死んでもいいけどかっこよく死にたい、なんて若い頃はそんな風に考えるもんだよね。」





とても面白い方だった。



「これ持っていきなよ。俺も若い頃はいろんな人に助けてもらったもんだ。」



いただいたのは和紙と竹のうちわ。


なんとこの和紙は高知の井野町にいる人間国宝の紙漉き職人さんが漉いた和紙だという。


おじさんありがとうございます!!










今夜は四国最後の夜だ。


坂出の小さな飲み屋ストリートで歌った。


人はほとんどいない。


そこに1人のおじさんが話しかけてきた。



「あ!!また会ったな。」



え?誰だ?


あ、おととい丸亀で歌ったときに、一緒に飲みに行くぞと誘ってくれたおじさんだ。


今夜も飲みに誘ってくれ、おじさんいきつけの『ブラックホール』なんてぼったくられそうな名前のスナックで歌わせてもらった。



「よし、気に入った、はったけうどん食べさせたろ。」



「えー、ママ太っ腹やなぁ。兄ちゃんラッキーやなー。」



え?なにそれ?


はったけ?



このはつたけというキノコ。


ものすごい山奥の水が綺麗なところにしか生えないキノコで、最近では採れる技術を持った人もほとんどいないという。


そしてそれをうどんのダシに使う人もまずいない。


しかし昔からのうどん通の間では最高のうどんのダシとして崇められており、ごくまれにしか見かけないし食べられないという幻のうどんらしい。


つまり超ラッキーということだ。



しかもママさんめっちゃ料理上手!!





出てきたはったけうどんをすすると深いコクが口に広がり、至福の香りが鼻を抜けた。


こりゃマジで美味え……………


うどんブームの有名店なんてどっか吹っ飛んでしまうほどの味!!!



ここで食べられるという噂を聞きつけてたまに通のかたがやってくるというが、それでもたいていは断るらしい。


ホントにラッキーだ。



しかしやっぱり天領うどんには……………



いや、これは並ぶほどにうまかった。




「本当にありがとうございました。」



「いいんよ。ほら。頑張って。」



他のお客さんに見えないようにこっそりと5000円札を2枚、手に握らせてくれたママ。


ああああああああああああああ!!!!!


ブラックホールがぼったくりされそうとか言ってマジですみませんでした!!!!!!









暖かい気持ちで夜の高松を走る。


ケツポケットにはママの1万円と、おじさんがチップでくれた4000円。


ありがたすぎてお尻を浮かしてしまいそうだ。


胸に広がる感謝が目から口から溢れそうになる。




四国。


なんて見返りを求めない優しさに満ちた土地なんだろう。


全てのギブアンドテイクのゲームは鳴門の渦に投げ込んでしまえ。





高松の港に着き、滑り込むように宇高国道フェリーに乗り込んだ。





【四国編】


完!!!!!



リアルタイムの双子との日常はこちら





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