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四国に戻ってきた








2006年10月13日 【岡山県】





岡山県川上町にある婆ちゃんちで目を覚ました。


のそのそと居間に行きぼんやりとテレビを眺める。


24歳、健康な体、平日の昼前、寝グセ頭でお茶をズズズ。



「はよー帰って仕事せまーおえんでぇ。」



野良姿でそう言ってくるお婆ちゃん。


お爺ちゃんは口数少なく微笑んでいる。


うん、これでも結構頑張ってるんだよ婆ちゃん。







赤塚さんや色んな人たちに挨拶を済ませ、関西を出発したのは昨日のこと。


やることを全て終わらせ次の四国に向かって車を走らせたんだけど、最後に神戸で嫌なことがあった。



昼前の神戸を走っていると急激な睡魔に襲われ、なんとかどこかのコンビニまで走りたかったのだが、限界がきて本当に事故りそうになったので、車を脇に寄せて後ろで大の字になり一瞬で爆睡。


そんで目が覚めて時計を見ると2時間ほど経っていた。


ああ、最近疲れが溜まってたのかなと思いながら起きて、ノソノソと運転席に移動してビビった。


フロントガラス駐禁のシールが貼られていた。


えっ!!なんで!!

ウソだろおい!!



車を止めていたのは通行の邪魔にならない道路脇だった。


中に人がいることを教える為にキーは差しっぱなしにしていたし、外から見えるようにカーテンも閉めずに毛布もかぶっていなかった。


ちょっと待てよ……………


一声かけるだろ普通……………





ムカつきながらソッコー交番に殴りこんだ。



「すんません、こんなもん貼られてたんですけど。」



「あー、はい、切符処理しますねー。これは、えー、罰金15000円ですね。」



「はああああ!!??ていうか僕車の中にいたんですけど!!」



「えっ!?車の中にいたんですか!?」



「中で仮眠してました。事故りそうだったんで。」



「そう…………ですか。ちょ、ちょっと確認しますね。」



交番にいた3人のお巡りさんたちが何やら話し、本署やこのシールを貼りやがった民間業者のボゲに状況確認を始めた。

話では、中に人がいる場合はまず動かすよう指示するのが決まりらしい。



「んー、でも中におったかどうかはワシらは見とらんしなー。業者さんも中に人がいるのわからんかったって言いよるしな。昼間に2時間やろ?どっか離れとったんちゃうん?」



「いやいやいや、確実に中にいました。写真撮ってますよね。駐禁の車がいたら。じゃあ間違いなく中で寝てる僕が写ってますから。確認してくださいよ。」



駐禁の取締りが民間業者への依託になってからものすごく厳しくなったのはもちろん知っている。


彼らにはノルマがあるらしく、最初のころは悪質な違反者だけでノルマを達成していたらしいが、最近はみんな気をつけるようになったので業者も成果があがらん。


というわけで、ウソだろ?っていうような一瞬の間にも貼りやがるようになってきている。



配送業者の仕事中のトラックにペタリ。

立ち食いソバすすってる間にペタリ。

タクシー運ちゃんがコンビニにトイレに入っている間にペタリ。


挙句の果てには中で仮眠をとっている車にソロリと近づいてペタリ。



お前らはピンクビラ貼りか!!



そんな仕事でタクシーの運ちゃんたちよりも10万以上も多くもらってるんだからマジムカつく。






結局、現場検証したり調書とったりしたが、15000円の罰金が1万円に下がっただけだった。


やってらんねぇ………………


たった2時間の仮眠で1万円か。


いや、これはやりすぎだよな、悪かった、というお巡りさん。



いやいや!!

だったら取り消せよ!!








とまぁそんな感じでの関西脱出だった。



日本一周も残り8県。

そう簡単には終わらせんぞということだ。








 


岡山の婆ちゃんの家で1泊だけのんびりしたら、さぁ出発だ。
 

クリスマスまでに帰るためにはあと2ヶ月ちょい。

旅もいよいよ佳境だ。



またそのうち来るねと婆ちゃんたちに別れを告げ、山の中を駆け抜けて倉敷に出てきた。



3年前に通った倉敷の道。


叔父さんのところで止水工のバイトをしていたころが懐かしく思い出される。





四国に向かう前に、ちょっと寄ってみたいところがある。


おぼろげな記憶をたよりに、お世話になった水島のお好み焼き屋『正ちゃん』を探した。



確かこの辺だった気が………………



しかし、なんとか辿り着いたものの、そこには正ちゃんの看板はなかった。


ひと気のない建物に荒れた玄関。


潰れてるよ……………




そうだよな。

もう3年半も昔の話だもん。


あの頃、まだまだはるか遠いと思っていた日本一周。


色んなことがあって、今こうしてここに戻ってきた。


おばちゃん、俺無事戻って来たよ。


あれからずっと遠くまで行ってきて、日本一周もあともう少しだよ。


どうか元気でいてね。









日記紛失という苦すぎる思いと共に消えた四国お遍路編。


完歩したにはしたが、お遍路ルートだけでは四国を制覇したことにはならない。


歩いてでは行けない山奥の名所とかも行かなければちゃんと回ったとは言えないので、もう一度、瀬戸内海を渡るぞ。



しかしながら車で四国に行くとなると、これが高い!!


橋なんてボケ高い。


四国につながる橋は3本あるのだが、その中で1番安い瀬戸大橋でも4200円もする。


ほんのちょっとの距離なのに!!!



結果、探しまくって見つけた最安のルートは、フェリーだった。

玉野町の宇野港から高知港に着くフェリー、なんとその便の間隔、28分毎。


普通車で2900円。

安い!!





というわけで宇野の港にやってきて、宇高国道フェリーの看板の方に進んでいると、おじさんが何やら腕を振っている。


ん?こっち?とスーっと曲がったら、そのまま船の中にスーっと収まる。


スムーズ!!








そして1時間。


宇高国道フェリーの胃袋から飛び出すとそこは懐かしの高松だった。


うわあああ、ここを汚い格好して編笠かぶって歩いていたよなぁ。


お遍路の道順と同じルートで回ることにして、アクセルを踏んで、まずは徳島市に到着した。


今夜はひとまず歌おう。


活気ある徳島のネオン街に繰り出し、お遍路中に歌った場所でギターを鳴らす。


景気がいいのか人出も多く、あがりも1万円ほどになった。







路上の帰りに焼肉バー『カルネ屋』に顔を出してみた。



「おーおー、覚えてるよー。元気に回ったかい?」



お遍路のときにこの徳島で路上をやっていてご飯を食べさせてもらい、終わったらまた必ず挨拶に来ますと約束していたんだよな。

律子さん、多美子さん、圭子さん、あの時のご馳走でどれだけ救われたかわかりません。


御礼を次げて車に戻った。







道端に立っているお遍路道の道標。


この道標を見逃さないように毎日歩いていた。


あの辛い日々が蘇る。

日記はなくなったけど、あの1日1日のすべてがはっきり胸に焼きついている。


俺にとって、全てのお遍路経験者にとって、四国は特別な場所だ。



リアルタイムの双子との日常はこちら





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