2006年2月2日 【静岡県】
目を覚ますとゆうべの雨が嘘のような快晴!!!
よっしゃああああ!!!
イクぞおおおお!!!
まずは下田の港にあるペリーロード散策!!!!
うん!!普通の田舎道!!!
1853年、浦賀沖に黒船艦隊を率いてやってきたペリーさん。
マジ貿易しようぜと日本に開国を要求。
長年戦争なんてなかったので平和ボケしていた日本の民衆たち。
めっちゃビビってみんな武器を買いに行ったり、家の押し入れにしまっていた刀や防具を出してきたりして大騒ぎになったそう。
これマジだからいい返事期待してるカラネー、とアメリカに戻ったペリーさん。
言葉通り、翌年また来日。
弱腰の徳川幕府はビビりながらも横浜で日米和親条約を締結。
函館と下田が開港される。
イェーイ!!と下田に訪れたペリー御一行がこの港からほど近い了仙寺まで歩き、下田条約を結んだ。
その了仙寺の参道がペリーロードと呼ばれている。
なんてことはないお寺だが、資料館の中にあった1枚の絵に見入ってしまった。
境内にセーラー服姿の海軍さんたちが整列し、着物姿の日本人たちが珍しげに群がっている当時の様子が描かれている。
200年以上続いていた鎖国の時代だ。
田舎の小さな漁村にぞろぞろとメリケンさんがやってくるなんて、そりゃあもう一大事だったんだろう。
マジで宇宙人くらいの感覚だったんだろうな。
そして間もなく明治維新。
この時代の人々は激動する先の見えない渦に翻弄されながらも、よくぞ国を守ってくれたもんだ。
ここの資料館、かなり面白かった。
江戸時代、大奥の女たちが使っていたという日本古来の『大人のおもちゃ』が多数展示してあったりしてすごく興味深かった。
江戸時代の人も今の人もあんま変わらんね!!
下田はこのへんにして先に進んでいると、ユウキから電話がかかってきた。
ん?
すごく暗い声。
どうしたんだ?
「……………一緒にへこんでもらっていい?」
「えー、いやよ。」
「…………………そう言わないで。」
「もう………なに?」
「………………バイク盗まれた。」
「………………マジで。」
朝起きて、ハローワークに行こうとアパートの外に出たらバイクが消えていたという。
下に散乱していた鍵穴をぶち壊した破片。
バイクを置いていた場所は、建物の裏のスペースで、道路からは絶対に見えない位置。
間違いなく計画的犯行だ。
「ステファンに……………なんて言えば……………いいとや………………もうダメだ。」
北海道でお世話になったドイツ人のステファンに「このバイクに日本を見せてやって欲しい」という想いを託され、無料で譲ってもらったカワサキのオールドモデル。
ステファンにとっても、長年乗った想いの詰まったバイクだ。
ステファンは自分が行けなかった沖縄にこいつで行ってくれるなら、という条件でユウキにバイクを譲った。
なのに沖縄に行く前に盗まれてしまうなんて…………
なんてことしやがるんだよ、盗んだやつ……………
こりゃステファンさんになんて言えばいいんだろうな。
ユウキにとっても日本中を走り回り苦楽をともにした相棒だ。
それが一晩のうちに心無い人間の手によって盗まれ、今ごろどこかに運ばれてるかバラされているか……………
ユウキは去年は台風による冠水で愛車のセドリックを廃車にしたばかりだし、マジで憐れ過ぎる……………
「とりあえず探すわ………………見つけたら八つ裂きにしてやる。」
これまで見たユウキの中で1番絶望している。
警察にもすでに届けて色々手続きしたそうだ。
見つかればラッキー、運転できる状態で見つかれば超ラッキーだという。
日本中でこんな事件が毎日起きているということは知っているが、ついに身内に被害が出るとは。
ユウキ、憐れ過ぎるぞ……………
ユウキと電話で喋りながら、松崎町という町を歩いた。
何もない小さくて静かな港町をのんびり歩く。
ニット1枚でも汗ばむほど今日はいい天気。
なまこ壁と呼ばれる、白漆喰を網目状に交差させた土蔵の民家がいたるところに見られる。
「そうそう、その橋が主人公が泣き崩れたところよ……………はぁ………………」
「そうそう、その家が爺ちゃんちのカメラ屋よ……………はぁ………バイク………………」
この松崎町はドラマ『世界の中心で愛を叫ぶ』の舞台になった場所。
あのドラマが好きだったユウキ。
北海道からの日本縦断の途中で立ち寄ったんだそう。
もちろんあのバイクで。
「あぁ……………ちょっと…………………外さまよってくるわ………………」
ユウキ、ご愁傷さま…………
バイク見つかるといいな……………
西伊豆方面にも、雲見、石部、岩地、松崎、堂ヶ島、宇久須、八木沢、土肥・・・・とまぁ海岸沿いだけでも腐るほど温泉がある。
が、全部素通り。
だって目を引かないから。
これといった名物もなく、この辺の温泉はどうやって集客しているんだろう。
そんなことを思いながら一気に恋人岬にやってきた。
名前のとおりカップルばかり。
駐車場の手すり、木の枝、周辺のいたるところに売店で売られてるハート型のメッセージカードをくくりつけて、甘ったるい言葉を書き、愛を誓ってやがる。
森の中を500メートルほど歩いていくと、海に突き出した展望台に出た。
チャペルの鐘みたいのがある。
愛の鐘というらしく、カップルが笑顔で一緒に鳴らしてやがる。
ちょうどNHKの取材班が来ており、居合わせたカップルに鐘を鳴らしてくれとお願いしている。
必死に化粧を確かめて前髪をいじくり、顔を真赤にして鐘を鳴らしている女の子。
ボケが。
羨ましすぎるわ!!!!
なんとしても今日で伊豆半島を終わらせたくて、大急ぎで車を走らせる。
もう金がないし、ケータイ代の支払いも近い。
ぶっ飛ばしてアクセルを踏み、半島の中央を通る国道414号線に出てきた。
無数の温泉をかいくぐり、まずは旧天城トンネル。
崖崩れでトンネルより先には行けなかったがすごく雰囲気あったな。
ここをくぐるとあの名作『伊豆の踊り子』の世界か……………って読んでないんだけどね。
スリル満点のジェットコースターみたいなループ橋をくぐり、河津七滝へ。
滝の前に伊豆の踊り子の銅像が立ってたので、いい写真撮ろうと気合いでセルフタイマーしてパシャリ!!!!
くだらんことやってたら時間くってしまって太陽が山の向こうに消えてしまう。
日が沈むー!!
さらに南下し、湯ヵ野温泉に到着!!!
ひなびた旅館が川沿いに並ぶ風情のあるこの温泉地。
ダッシュで坂を降り、写真に収めたのは宿『福田屋』。
伊豆の踊り子の舞台であり、川端康成が長逗留した部屋がそのまま残る宿だ。
その事実だけであと3代はやっていけるだろうな。
温泉街の中を歩いていると、裏路地の目立たないところにお風呂を発見した。
なにやら入り口に書いてある。
『ここは町民専用です』
えええ…………と思っているところにビニール袋にお風呂セットを入れたおばちゃんがやってきた。
「すみません。どこかお風呂入れるところありますか?」
「ああーん?ここ入りゃいいべ。」
というわけで地元の爺ちゃんたちと小さな湯船につかる。
ありがたいことに無料。
町民税かなんかで運営してるお風呂なのかな。
日が沈んだ頃になんとか伊豆半島の行きたかった場所はとりあえず全部制覇。
このまま歌ってやるぞと沼津までのぼってきた。
風が強いが、駅北口の繁華街でギターを鳴らし根性で歌った。
強風で楽譜がぶっ飛びそうになるのを押さえながらなんとか声を振り絞る。
人全然いないよ…………
そりゃこんな風だもんな。
それでも諦めず歌い続け、なんとか5000円にはなった。
諦めてれば0円。
今俺のポケットには5000円。
諦めなければ何かしら必ず反応があるんだよな。
いやー、それにしても今日は動いたなあああ!!!
先に進むと充実感が胸に溢れる。
この調子でもっともっとスピードアップだ!!
休んでいる暇なんてない!!
あと残り20県くらいかー………………
気が遠くなる………………
翌日。
富士山のすそ野は雪が多い。
麓でこれだから上は恐ろしいほど寒いんだろうな。
そんな富士山の5合目まで登ることができる道を走ってみた。
今の季節はまったく静まり返っているが、シーズンになれば登山客で渋谷並にごちゃごちゃになるんだろう。
あー、それにしても富士山ってなんてきれいな山なんだろう。
マジで日本の美しさの象徴だよ。
空腹を我慢しながら次の目的地、白糸の滝に到着。
滝好きの間ではこここそが日本三名瀑の1つだという声もあるくらいの有名な滝だ。
おーー、すごい。
さすがは三名瀑といわれる滝。
なるほど、これはその肩書きに恥じない優美さだ。
1本の太いやつがズゴーーーー!!!っと豪快に流れ落ちるパターンではなく、広範囲に優しく流れ落ちる女性的な美しさに目を見張る。
こりゃ素晴らしいわ。
それにしても日本三名瀑ってほんと一体いくつあるだろうな。
次に田貫湖にやってきた。
湖自体は別になんてことはない小さな湖なのだが、逆さ富士、ダイヤモンド富士のビュースポットとして知る人ぞ知る名所だ。
今日はおあつらえ向きの快晴と無風。
よおおおおおし!!!
出てこいやあああああああ!!!!
うおーーー!!!
出てる出てる!!
逆さ富士だーーー!!
シーズン中には、日の出が富士山のちょうど先っぽから出てくるダイヤモンド富士という現象も見られるらしい。
いやー、ほんと日本人を楽しませてくれる山だ。
富士山すごい!!!
大急ぎで走りまくり、腹を空かせて富士宮市に突入。
ついにやってきたぞ、日本3大ヤキソバの町の最後の1つ!!
ヤキソバが大好物だから嬉しい!!!
これまでの2つが大したことなかったので期待が高まる!!!
ワクワクしながら町の中を走っていると、早速のぼりの立っている店を発見。
どっからどう見ても普通の駄菓子屋さん、『ワタナベ』。
狭い店内に入ると、駄菓子が並んでいる棚の横に鉄板があり、地元のおばちゃんがお好み焼きをつつきながら世間話をしている。
「やきそば食べさせてください。」
「はいよ。」
慣れた手つきでちょちょいと作ってくれる。
「このおばちゃん、もう50年ヤキソバ作ってんだ。」
「んー、まだあの頃はヤキソバの町なんていってなかったんだけどねぇ。」
もう見た目で完全に美味いこと丸出しやん。
なにこのシンプルで完成されたお姿は。
口に入れると………………
うまい!!!
うまいよ!!!!
麺うまい!!
コシのある麺に甘めのソース、ラードのコクとキャベツのシャキシャキ感。
横手よりも太田よりも断然うまい!!
うわー、こりゃいいわー。
これが300円!?
毎日食べたいわー。
大満足でお店を出て、それから商店街に入っていくと、ヤキソバの町ブームの火付け役となった『ヤキソバ学会』のお店があった。
そこでも並350円を注文。
「あー、もうレストランだろうが喫茶店だろうが、ここじゃみんなヤキソバ出すよ。飲みのシメもラーメンじゃなくてヤキソバなんだから。みんなまこと好きなんだよー。」
おしゃべりなおばちゃんがフレンドリーに話しかけてくれる。
いいなぁこの雰囲気。
「旅で来てくれたんだー。そうかいー。」
「おばちゃーん!!並2つー!!」
おばちゃんと喋ってると、お店にちっちゃい子供が駈けこんできて大声で注文した。
学校帰りなのかな。
こんなん最高のおやつだよな。
いやー、ヤキソバは富士宮で決まり!!!
お腹も心も満たされたらちょこっと観光もしておこうと、お店の正面にある浅間神社へ。
全国の浅間神社の総本宮で、坂上田村麻呂が造営した建物を持つ東海道で最も歴史のある神社だ。
境内に入ると、たくさん人が集まっているのが見えた。
そう、今日は2月3日。
節分の日だ。
時間になると神官さんたちにより餅やミカン、お菓子がばらまかれ、それに狂ったように群がる人々。
勢いあまって地面にひっくり返ったり、子供なぎ倒してまでかき集めている大人気ない大人たち。
別にたいしたものじゃないやん……………
子供たちにとって故郷の原風景になっていくんだろうな。
富士宮を出たら海岸線に抜け、静岡へ向かう。
温泉を探し回るがなかなか見つからず、ようやくたどりついた草薙の湯という温泉で久しぶりの湯をかぶり、今夜は県庁所在地で路上だ。
去年、政令指定都市になったという静岡市。
さすがになかなかでかい街だ。
ギターを抱えて県最大の一大歓楽街、両替町へ。
花キンで大盛り上がりの街はネオンとヘッドライトでまばゆいほどにきらめいている。
街頭にはサックス吹きのパフォーマーもいる。
あんまり都会は気が引けてしまうが、俺も気合で歌った。
話してるうちに気が合ったタッキー君とまた会おうと約束したり、酔っ払ったバカがギターケースにコーヒーこぼしてきて殴り合いになりかけたり、とまぁ色々あったが、なんとか6000円。
うーん……………金曜で6000円はちょっともの足りん。
しあさってまでにケータイ代振りこまないといけないし………………
うー、きつい。
でもとにかく歌うのみだ。
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