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元住吉での同級生たちとの日々







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2005年11月6日 【関東後半】





元住吉の部屋に戻ってきたのは深夜の2時過ぎだった。



そんな夜中なのに起きて待ち構えていた光ちゃん。



しばらくしてユウキもやってきた。



役者は揃った。


全員でファントムに乗り込み真夜中の246を飛ばす。



今日はタカフミの誕生日サプライズ。









青山にあるタカフミが働いている高級鉄板レストランに到着。


ナインティナインの『ゴチバトル』のオファーが来るような名店だ。



店から少し離れたとこに車を止め、シャンパンとケーキとクラッカーを持って、静まり返った青山の路地をサササッと走る。



そこら辺に止まっている車、ほぼベンツ。


そんな路地を泥棒のように抜き足差し足する3人の田舎者。





タカフミに発見されたら今までそしらぬ顔して暖めてきた計画がおじゃんだ。



電柱の陰から中の様子をうかがったり、ビルの前に身を潜めて待ち続ける。


店はもう終わっている。


始発の走り出す5時あたりに出てくるはずだ。




最初はもっとびっくりさせてやろうと、血ノリで血まみれになって店の前に倒れとこうとか、タカフミが店を出てきたところで変装したユウキを俺が車ではね飛ばすとか色々あったんだが、まぁ普通に驚かそうということに。









………………が、全然出てきやがらねぇ。



5時をすぎても店から出てくる気配なし。


ユウキは7時半から仕事なのでかなり焦っている。






ついに6時になりやがった。


もうこれ以上待てんと痺れを切らしたユウキがタカフミに電話をかけるが出ない。


表から大声を出すが反応なし。


ぼけが……………







こうなった正面突破だ!!


3人で店に突入!!



「あの、甲斐君いらっしゃいますか?」



「あ、はい。」



ひょっこり奥から出てきたタカフミ。



「ハッピーバースデートゥーユー!!!!ハッピーバースデートゥーユー!!!!」




パンパンパン!!!!




「ははは!!やめろってお前ら!!」



クラッカーとクス玉を割り、ローソクの火を消す。


そこに店の人たちがワラワラ出てきた。



「おいおい、いい友達持ってんなー。もうあがっていいぞ。」



3人それぞれプレゼントを渡すと、大喜びするタカフミ。



「お返しせんといかんなー。ヨシ!!ヌキ行くか!!」



「ヨシじゃねぇ!!!ちょ、ちょっと待てよ。あと1時間で仕事だから…………間に合うけ?」



「間に合うわけねぇやろが。」



「はっはっはっはっは!!!!」




そんな同級生タカフミの24歳の誕生日。


この街のこと、この日々のことをあと何年か後に懐かしく思うんだろうな。


4人で大笑いしながら朝の青山を歩いた。














元住吉での日々は本当に楽しい毎日だった。









CD作りはなくなったけど、別に光ちゃんと仲が悪くなったわけではない。


むしろプレッシャーから解放されて気兼ねなく過ごせた。


同級生がみんなこうして神奈川の小さなアパートに集まって過ごすのはホントに修学旅行の延長みたいで、でもあの頃よりみんな多少は世間を知ってて、そんな俺たちには東京っていうのはいい遊び場だった。






























宮崎からマコトが遊びに来て、秋葉原にも遊びに行った。









電子機器が好きなマコトだけど、本当の目的は俺も1度は行ってみたかったあの場所。



メイド喫茶!!!!


うおっ!!


いるいる。

道でビラ配ってるメイドさん。






「こんばんはぁ。今度そこにオープンするんですぅ。よろしくお願いしますぅ。」



鳥肌が立つような鼻にかかった甘ったるいアニメ声の『妹系カフェ』の女の子。


マコトすでにテンションマックス。


街を歩いてるとそんなコスプレのメイドさんがいたるところに立ってる。









ここまで来て店に行かないわけにはいかないので、秋葉原で1番有名なメイド喫茶にやってきた。


ドキドキしながら店内に入ると、もーーメイドがいっぱいいる。

ていうか行列が出来てる。




わけのわからん受付を済ませイスに座る。


殺風景な店内。

客はアキバ系はあまりおらず女の子も結構いる。





「ご主人様、お待たせしましたー。」



死ぬほどかったるそうな言い方でプラスチック容器の飲み物を置いてさっさと戻っていくメイド。




おい、ちょっと待て。


なんだこのふざけたプラスチックのコップは。



思い切って話しかけるが、あー、はい、とテキトーな返事をするだけ。


オタクっぽい感じの女の子がメイドの格好してるだけでやけに調子に乗ってやがる。


なんだこれ?





隣の席の奴がメイドと黒ヒゲ危機一髪的なゲームをやって盛り上がってる。


なんだこれ?





「プリクラでお待ちの金丸様ー。」



「はーい、撮りますよー。プンプン、のポーズしてくださーい。はい、プンプン。」



一段と不細工なメイドに、ありがたいと思えよ的な口調で指示を出されながらプリクラ撮影。


これ1000円。


なんだこれ?




「デジカメで一緒に写真撮っていいですか?」



「メイドの撮影は禁止ですー。」







………………クソくだらねぇ。







こんなんで人気が出て商売になるのかよ。


これなら美香や由ちゃんたちが大学のときにしていたコスプレチームのほうがはるかに面白いわ。


マコトも俺も半ギレで店を出た。








なんか面白い店探そうやと適当に中を覗いて回った。


小学生の女の子ばっかりのエロ本専門店、スタンガンや小型カメラばかり売っているお店。


マジ犯罪の街。




極めつけはこれ。


大人のおもちゃ屋さん。


巨大ビルに1歩入った瞬間そこら中からあえぎ声が鳴り響いている。


マジで店内のいたるところでAVが垂れ流されている。



この巨大ビルの中、地下から6階まで全部エログッズという狂気。


あそこのさえない小デブ、家に帰れば幼児もののDVD見ながら媚薬で体ほてらせてダッチワイフにスクール水着きさせてヤリまくってるんだろうな。


爺さんまでこんな店にいるし、普通に考えてこんな治外法権みたいは街が日本に存在してることがマジで謎だわ。













次の日には築地にも行ってみた。









環七の有名なラーメン屋『なんでんかんでん』で700円のとんこつラーメンを食べ、それから浅草へ。


夜明け前の浅草は1度走るべきだな。


昼間のにぎわいがウソのようだ。






ぬぼーっとたたずむ雷門。

仲見世通りはシャッターがきれいに閉まり、新聞配達のスクーターが走り抜ける。


下町は眠りの中。










それから築地に向け走る。


江戸の台所、きっとすごい活気なんだろうとウキウキで銀座を飛ばしていると、ガラガラの道路にしだいに『~水産』と書かれた冷凍車が目立ち始める。



その後を追って信号を曲ったとたん!!!



すさまじい路駐の列。


路駐というか積み込み真っ最中のトラックや乗用車だ。



テンション上がってきたぞー!!













細い路地があみだのように張り巡らされる魚屋の通り。


立ち食いそば屋や定食屋では仕事着のおじさんたちがいそいそと飯をかきこんでいる。


まるで映画で見た戦後の闇市さながらのバラック商店街。


どんどんどんどん奥に進んでいく。


とてつもなく広い。







やがて奥の方に明かりが見えてきた。


巨大な倉庫の中に入った瞬間、まばゆいライトに照らされ昭和時代にタイムスリップした。





ガタガタで水浸しの地面、魚を積んだフォークリフトみたいな運搬車がすごいスピードで人を押しのけていく。



チャリ、原付、軽トラ、荷車、ダンボールを抱えて走り回る人たち。


喧騒を突き破る怒鳴り声の嵐。


それが何百メーターも先まで続いている。


すげすぎる!!!!


六本木や歌舞伎町なんて目じゃない活気!!!







「おらー!!どけ!!」



鼻先すれすれをビュン!!と運搬車が走っていった。


箱を抱えた爺ちゃんがそれをヒラリヒラリと何事もないかのようにかわしている。



幅2メートルもないような通路だぞ?

よく誰も跳ね飛ばされんな。


ここだと跳ねられたほうがぼーっとしてて悪ってことになるんだろうな。






こりゃたまらんと先へ進むと、そこは業務用であろう魚屋の一角。









東京中にある星の数ほどの料理屋の職人たちがあれやこれやと魚を選んでいる。


氷山みたいに積み上げられた発泡スチロールの山。






まだ先がある!!




行ってみると、倉庫の中にズラーーーっとマグロが並んでいる!!


その真ん中で、木の台に立った1人のおじさんがペンを片手に痙攣していた。



「ウヒッ!!キャ!!ニューニャー!ホヒッ!ヒッ!!ヒッ!!………………ナァァァァァぁぁぁ!!!!!」



もだえ苦しんでいるのに誰も助けようとしない。


ちょっと!!!

みんなあのオジサン痙攣してるよ!!!!


すると痙攣が頂点に達したとき、ピタリと動きが止まり紙に何かを書いた。


そしてまた痙攣。





ま、まさかこれがセリか!!


デスメタルより何言ってるかわからん!!!





何百年も繰り返された果てにたどり着いた最も効率的な形がこれなんだろうなぁ。







しばらく横に歩くと青果市場まである。


ここも尋常じゃない量の野菜や果物の山。


築地すげーよ。


ここの人たちは外がどんな世界なのか知っているんだろうか?


日本の台所なわけだから休むこともないんだろう。


毎日毎日魚と果物をいじりまくってて、広大な敷地の中で今が朝か夜かもわからん。


ホントに昭和のままで時が止まっていた。









やっとこさ屋根のないとこに出て、思いっきり息を吸い込んだ。


ものすごい閉塞感。

インディージョーンズの洞窟の中みたいだった。


手にはさばきたての本マグロの刺身2パック800円。


こうやって関東中のスーパーに届けられていくんだろうな。


何百年食べ続けてもなくなることのない食料。


地球の営みってほんと限りなく無限に近いな。


偉大だ。



帰って刺身をあてに飲もうぜ!!と、眠りから覚め始めた東京のビルの間をすり抜けた。
















よっしゃーーーーーー!!!!!


今日は待ちに待ったバーベキュゥゥゥゥ!!!!



こんなにみんなが揃ってるんだから、せっかくならどっか遠出して遊ぼうぜ!!ということになり、山中湖のほとりにあるバンガローを借りてバーベキューしようぜという計画。


同級生みんなでバンガローでバーベキューとか楽しみすぎるうううううううあああああああああああああああああ!!!!!!!




よっしゃ行くぞおおお!!と駐車場の車の中で服を着替えて光ちゃんの部屋に入ると、予定の出発時間をすぎているのに当然のごとく全員爆睡。



「おらァァー!!お前ら起きろー!!行くぞおおおお!!」



ぐずる光ちゃん。


布団引っぺがしても全然起きやしねぇ。



「とりあえずビール飲もうや。」



「飲むな!!!車乗れええええ!!!」





でも飲んでる3人。






グダグダの3人を乗せて、ユウキのいる横浜の十日市場駅に向かう。


246沿いに出とくからと言ってたがどこにいるかなあああ……………いた!!



ダンボール抱えて親指立ててるバカ発見。



ダンボールになんか書いてる。



『美々津』



止まるわけねぇ。









そっからはユウキに運転任せて即宴会。


こんな遠出なんてすごく久しぶりだからみんなテンション高すぎ。



「カンパーイ!!」



「あああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!やばい!!!やばい!!!!どうしよう!!!!」



「なんや!!?どうしたとや!!!?」



「すごく楽しい。」



「うっひょー!!ヌキ行こうや!!」



「それはいいわ。」



「ユウキ楽しいかーーー!!」



コンビニでしこたま酒を買い込んで飲んだくれながらのドライブ。


山道に入り紅葉が見え出すとさらにヒートアップ。



「このやろー!!モミジー!!赤くなりゃいいってもんじゃねぇぞおおおおおおお!!」








そして目的地の山中湖に着いた頃にはユウキを残して全員グロッキー。



「おらぁ!!ボケども着いたぞー!!気持ちよさそうに寝くさりやがって!!」



湖畔のコテージ村に到着。


いやあああああ!!!!湖だああああああ!!!と森の中の小さな小屋にダッシュ!!



「いやっほおおおぉぉううう!!!」



「ねぇ!!ちん○ん出していい!!?ねぇ!!出していい!!?」



「とうっ!!アッ!!」



テンションが上がりすぎたタカフミがテラスの手すりから落ち葉の中に飛び降りて口の中切って血まみれになって1人で落ち込んでいる。


他にお客さんはおらず、静かな森の中に俺たちの笑い声だけが響く。













暗くなってきたら、富良野の中田のおばちゃんが送ってくれたジンギスカンを焼きながらビールを飲みまくった。



うますぎる!!


みんなで富良野に行ったらどんなに楽しいだろう。





「ぶふぅー!!」



「うわっ!!このっ、ぶふぅぅぅぅ!!」



キャベツを生でかじり吐きかけてくるタカフミ。


なにすんだコノヤロウ!!と吐き返したらみんなでキャベツの吐きあいに発展。


おかげで床がキャベツとよだれまみれに。






さんざん暴れ回り、みんなさすがに疲れてきて、部屋に入ってテキトーに布団を敷いて雑談。


光ちゃんはすでにゲキチンして寝ている。



「電気消すぞ。お前ら絶対喋るなよ。」



「わかっちょって。はやく消せよ。」



「しゃべんなよ!!」







パチッ










シーン……………………








「……………………」




「……………………」




「……………………」



「……………深津絵里っていいよね。」



「………………………いいよね。」



「………………俺高橋ひとみ。」



「お前はおかしい!!」



「なんでか!!いいやろが!!!」



「よっしゃ飲むぞーー!!」



「ひゃっほーう!!」



「酒どこじゃあああああああああああ!!!!」







結局寝たの朝だった。



こんな遊び、地元のやつとしかできんよな。


めちゃくちゃだったけど、本当にこの元住吉のメンバーとの毎日は楽しいものだった。









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