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氷河の中に古い教会

8月13日 月曜日


目を覚ますと目の前におとぎ話のような教会。
ファイナルファンタジーの中に入りこんだみたいだ!!
ゴブリン出てこい!!


あ、トロールならいますよ。

photo:01





ファンタジックな世界よりも今は飯!!
もう一ヶ月はポテトチップを見たくない!!
というわけでノルウェー国内どこにでもあるスーパーマーケット、「coop」で大好きなミニ手羽先となんかよくわからんけどおばちゃんオススメのシチューみたいなやつをゲット。

手羽先6本 15クラウン
シチュー これで22クラウン

photo:02





うますぎるーーーー!!!!
あー、美味い、美味いよー。
ラーメン食べたいよー。
カルビで白飯かきこみたいよー(´Д` )


さて出発しよう。
もうだいぶ南に下ってきたし、山間部というのともあってか暑い!
久しぶりにストールをはずして上着を脱いだ。
目の前にはそびえる山々。
行くぞおらー!!

photo:03




1台目 ヒゲのおじさん
蒔を積んだ荷台を牽引してるおじさんと20kmほどのドライブ。
ロムからソグネフィヨルドに向かう55号線は、この山だらけのノルウェー国内でも最も高い山がある山脈を越えるルートになるらしく、まぁ楽しんできな、とおじさんはニヤリと笑って俺を山の入り口で降ろしてサマーハウスがある林道へ消えていった。

photo:04





どんな景色が待ち受けているんだ!!


2台目 スポーティーな兄さん
アメリカから来ている兄さん。各地で仕事をしながら旅をしているらしく、今はこのあたりで観光客向けのラフティングをやっているようだ。
このあたりは幅も広く、水量の豊富な川があり、ラフティングの名所として知られているようだ。

曲がりくねりながらどんどんと標高をあげていく道路。あたりは荒涼とし、そそりたつ岩壁が太陽を反射して鈍く光っている。

そして視界が開けたその瞬間、ものすごい光景が広がった。

photo:05



見渡す限りの荒野にまばらに光る残雪。その向こう、巨大な氷河が青空の下に広がっていた。
何千年、何万年と溶けることなく降り積もり続けた雪はやがて巨大な氷となり、それを氷河という。
それが目の前に。
マジで我が目を疑うよ!これ!
すげすぎる!!

ノルウェー半端ねぇ!!

photo:06



そこからもめくるめく断崖絶壁と湖の連続。崖にはりつくように滑り降りていく。上空には崖の間を飛ぶヘリコプター。おそらくあれも観光客向けのアトラクションなんだろうな。すっごい景色が見れそう!多分すごい高いだろうけど。

そしてようやく山を降りると、そこから国内最大のフィヨルド、ソグネフィヨルドが始まる。
緑色の美しい湖がそそり立つ山々を忠実にその湖面にうつしている。

photo:07




ウルネスに向かう分かれ道で兄さんの車を降りて、細い田舎道を歩く。
この道の行き止まりがウルネスの集落。
古い木造の教会があるという話を聞いている。
ただあまりにもたどり着きにくい場所にあるためにあまり行く人はいないようだが、そういう場所だからこそ行く価値がある。


離合も出来ないような細い湖岸の道。車が通らない。

まったく通らない。

仕方なく道路に座り込んでギターを弾く。
静寂の湖をGコードが優しく渡った。

photo:08




3台目 田舎のおばちゃん
平和で静かで美しい場所でしょう。ロマンチックなところなのよ。
と誇らしげに話すおばちゃん。
国内で3番目に大きいという滝を通り過ぎたあたりで彼女の車を降りた。



ほんとにロマンチックな道だ。
きれいだなぁ……


って車、マジでまったく通らねぇ。


30分に1台くらいか。


あー!乗せておくれー………


こんななんもねぇとこ1人で歩いてるアジア人、怪しいにもほどがあるか?

途方に暮れながらも、木々の間から美しい湖を眺めつつパンをむしって食べていると、


雨が降ってきやがった。

勘弁してくれーーーー!!!
周りには本当に何もない。大きな木の下に隠れるがどんどん雨は強くなる。カッパを取り出してバッグパックとギターをかかえてうずくまった。
木の下で草にうもれてうずまった。
草のにおい、雨の音、水面に広がる波紋。
言葉もなく、思考もなく、ただ広大な自然の中で、森と同化していた。



1時間ほどすると雨がやんだ。
そしてそこにやってきたドイツ人の家族の車に乗せてもらい、とうとうウルネスの集落に着いた。


ほんの数軒しかない小さな集落。
目の前には細く狭まったフィヨルド。対岸に小さな港町が見える。

それらを見渡せる丘の上に、教会はあった。

photo:11



あぜ道の向こうにひっそりと立つ教会。
数百年の間、ずっとこの場所でこうして静かにたたずんでいたんだろうな。
教会の周りには墓が寄り添うように集まっている。この集落の人々だろう。
なんて物悲しげな風景だろう。


こんな人里離れた場所にも人の暮らしと歴史がある。
何もなかった今日もまた歴史となる。

日が落ちて、谷を静寂が包む。
遠くで聞こえる鳥の鳴き声が、フィヨルドを越えて山にこだまする。なんのために鳴いているのか。
誰のための静寂か。

photo:10




氷河も、教会も、静寂も、
ほら、夜の中。

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