こんにちは!神田です。
昔、インスタントラーメンが大好きで、誕生日の夜ご飯何がいい?てお母さんに聞かれて、必ず「ラーメン!!!」て答えてました。
インスタントラーメンを夜に食べれることなんてなかったからすごく嬉しくて特別な気分だったのを覚えています。
今でも海外から帰国する日の前日に必ずお母さんは明日帰ってきたら何が食べたい?て聞いてくれます。
お母さんの愛情を、変わらず感じて嬉しくなる瞬間です。
おわり
2017年11月10日(金曜日)
【オーストリア】 シュピッツ ~ クレムス ~シュピッツ
「グッドモ~ニング、フミ~、ナオ~。」
朝起きるとイングリッドおばちゃんがギュッと俺たちのことをハグしてくれた。
まるで1ヶ月のお別れの後みたいに。
大きなおばちゃんの体に埋もれて、心が安らぐ。
普段は朝起きたくらいでハグはしない。
俺たちとの時間が残り少ないことを分かっているから、少しでも愛情を俺たちに伝えようとしてくれていた。
その純粋さに胸がつまる。
おばちゃんもパパも、とても愛に溢れた人だ。
とりあえずコーヒーを飲んだらすぐに昨日の残りの作業に取りかかり、なんとか荷物の選別とパッキングが終わった。
よし、これでなんとかイケるはず!!!
そして重量を測ってみると!!!!!
22キロ!!!!
ぬああああああ!!!!!
はみ出るううううううううう!!!!
20キロ以内に収めないと6500円も高くなってしまう!!!!!
もうこれ以上なにを削れっていうんだ……………
思い出の品たちなので捨てるに捨てきれない……………
めっちゃゴミみたいな物もあるし、これ必要か?って怪しくなるものもあるけど、やっぱり愛着があるから捨てきれない……………
ぬぬぬぬ……………でもかと言ってそれらをアジア旅にずっと持っていくわけにもいかないし……………
仕方なくめっちゃ断腸の思いで色んな物を削った。
想いは胸の中に刻まれてる!!とか言いきかせて削っていき、なんとか20キロ以下に収めることができた。
パッキングしたバッグを昨日ゲットしておいた段ボールで梱包し、これで荷物はオーケーだ。
写真貼りの図工の残りを終わらせた。
さらにギターの弦も張り替えた。
ヨーロッパ最後の路上は万全な状態で臨まないと失礼だ。
それから車の中の余っていた食材でカレードリアを作り、これで食材も使い切った。
準備万端。
今夜はイングリッドおばちゃんとレイモンドパパとみんなでホイリゲに行こうと前から誘っていた。
俺たちは明日出発する。
今夜がイングリッドおばちゃんたちと過ごす最後の夜。
そしてそして、今日は11月10日。
そう、1年前の今日、俺とカンちゃんはシュピッツの教会で結婚式を挙げた。
日本から来てくれた両親と、数人の友達、そしてイングリッドおばちゃんたちに囲まれて、これ以上ないほど素敵な式ができた。
今日はあの1周年記念日。
あの日、パーティーの二次会で行った大好きな大好きなホイリゲが今年もこの時期にオープンしている。
またあのアットホームな、これぞバッハウのホイリゲといった楽しいホイリゲにどうしても行きたかったんだよな。
結婚1周年の今日、イングリッドおばちゃんたちとの最後の夜、大好きな思い出のホイリゲ。
きっといい夜になるはず。
「じゃあ、18時半に帰ってくるね!!」
「フミ~、頑張って歌ってきてね~。」
またハグしてくれるイングリッドおばちゃん。
そして6ヶ月ぶりにシートを取り付けて普通の車になった愛車のシュコダにギターを積み、エンジンをかけた。
まずやってきたのはクレムスの郵便局。
さて、ネットで調べてた値段と同じだったらいいんだけど…………
大きな段ボールを重量計の上に乗せると………
19.6キロ!!!!超ギリ!!!
そして日本までの値段は…………
102ユーロ!!!13400円!!!!
よし!!計算通りいいいいい!!!
日本には6日~10日以内で到着とのこと!!!
無駄に早い!!!
本当はイタリアとかの海あり国だったら3ヶ月くらいかかる船便があって値段も3000円くらいなんだろうけど、これはもうしょうがない。
よっしゃ荷物問題これにて解決やん!!!!
うおおおお!!めっちゃ身軽になったあああああああ!!!!
ヨーロッパとアフリカの思い出が詰まった荷物を全部日本に送り終え、これで後は機動力重視でアジア旅だ。
今、確かインドは思いっきり雨季。
雨土砂降りで、牛のウンコが溶け込んだ水が池みたいになってるところを、はいどうぞこちらを渡って下さいとか言われた時にデカいキャリーバッグがあったら、なんて想像するとそれだけで笑えてくる。絶望で。
トゥクトゥクもリキシャーも荷物多いとめっちゃ乗りにくいし、ウルトラ満員のインド電車にキャリーバッグ持って突撃するのとかマジで疲れるし、インドは荷物軽いに越したことない。
できれば手ぶらで行きたい。
カレー楽しみ。
あれ、ちょっとインド楽しみ。
いや、まだ怖いのほうが強いけど……………
「あ、ところで郵便局ってコインの両替ってできるんですか?」
「できるわよー。3.9ユーロの手数料が必要よ。」
ぐええええ!!!マジか!!!
この前銀行で1パーセントの手数料で3000ユーロ以上両替したから30ユーロも払ったのに!!!3900円!!
郵便局は3.9ユーロ!!!510円!!!
バスカーのみなさん、オーストリアでのコイン両替は郵便局がオススメです………………
気を取り直して路上!!!!
ウフォウ!!!!弦張り替えたからギターがただのギブソン超えてる!!!!
ビビるくらいめっちゃいい音する!!!
リサイクルショップで5000円で買ったこの45年もののパールギターも、俺の手元に来てからすでに5年かー。
過酷な状況でいっぱい傷めつけてきたのに、相変わらずっていうかさらにいい音出してくれる。
最高の相棒だよ。あー、すっげぇいい音。
30万のギターにも負けない完璧なバランスだよ。
演奏している俺の横ではカンちゃんが図工の最終仕上げをやっている。
色ペンを使い、色んなコメントを書き込み、メッセージを入れていく。
うん、めっちゃいい感じだ。
きっと喜んでもらえるはず。
まだ半分あるううう!!!終わらないよおおお!!ってカンちゃんが焦ってると、途中雨がぱらついてきた。
でもこれくらいの雨なら路上は続行だ。
路上パフォーマーとしての経験、今回もたくさん積んだよな。
夕暮れの青い空に時計塔がぼんやりとそびえ、怪しい束の間が終わるとすぐに真っ暗になった。
今日はここまでかな。
満足のいく3時間でギターを下ろした。
17時半に路上を終えたらソッコーでさっきの郵便局にやってきて、コインの両替をやってもらった。
よし、これでだいぶ軽くなった。
当たり前だけど、オーストリアを出るまでにユーロのコインを全てお札にしておかないといけない。
明日が最後の路上になるけど、土日は郵便局も銀行も全て休みなので、なんとかケバブ屋さんとかを回って少しずつ紙幣にしてもらう作戦でいくしかない。
ここまでは全ての準備が完璧だ。
大丈夫、きっと全部やりきってオーストリアを出発するぞ。
急いでシュピッツに戻ると、イングリッドおばちゃんたちも準備を終えてるところだった。
なんか今日はアップルの日だったらしく、路上でもらったリンゴをレイモンドパパにあげた。
「さぁ~、行きましょうレッツゴー!!」
レイモンドパパの運転する車に乗り込み、家から5分かからないところにある大好きなあのホイリゲにやってきた。
今年も2週間くらいの期間限定でしかオープンしないホイリゲ。
お店に入ると、もうとんでもないほど満席でめっちゃ大盛り上がりになってた。
うおおお!!すげぇ!!やっぱここめっちゃ人気やな!!!
観光客はほとんどおらず、だいたいが地元の人かメルクとかクレムスの近隣の人だ。
お爺ちゃんお婆ちゃん、小さな子供まで連れた親戚一同のお食事会みたいなグループがたくさんいて、そのアットホームな感じにほのぼのする。
これぞホイリゲ!!
これぞワイン居酒屋!!
ここは普段は家族経営のワイナリー。
パパもママも息子さんもおばちゃんも、みんな俺たちのことを覚えててくれて笑顔で迎えてくれた。
こんな地元のホイリゲにアジア人がウェディングドレス姿でやってきたあの日、ファミリーのみんなとても優しく迎えてくれ、サプライズでケーキと花火まで用意してくれていた。
本当に暖かくて、最高のホイリゲだよ。
なんとか座れる席を確保し、白ワインで乾杯。
そして大好きなおつまみ盛り合わせ。
「ぎええええええええええええ!!!!美味すぎるううううううううう!!!!!」
「ハゥゥッ!!オーストリアのご飯でこれが1番美味しい!!美味しすぎる!!白ワインススムーー!!!」
もうマジでここのおつまみ全部ヤバいくらい美味しい。
ウィーンとかに行くと、ホイリゲと言いながらシュニッツェルとかの調理した食べ物が出てくるらしいけど、バッハウのホイリゲは昔ながらのコールドフードのみ。
ハムとかチーズとかの、火を加えてないものなので、最初はそんなの美味しいの?って思ってたけど、今ではこいつが1番好きだわ。
バッハウは白ワインの世界的産地!!
なのでこのバッハウには白ワインを世界1美味しく飲む文化が根付いている!!
酒飲みにはホイリゲは聖地でしかない!!!
「アッハッハッハッハー!!!それでねそれでね!!!これがおかしいの!!フミたちがあーでねこーでね!!!」
「ぶー!!ウケるー!!あひー!!」
隣の席の人たちと2秒で仲良くなってめっちゃ盛り上がってるイングリッドおばちゃんたち。
この暖かい空気に包まれて、誰もがフレンドリーに話しかけてくる。
このホイリゲの中には人の垣根がゼロ。
みんなが古くからの友達みたいに肩を叩いてくる。
「あー!!きたーーー!!!こっちですー!!!」
「わー!!池田さんラウラさん!!こっちこっちー!!」
大盛り上がりの店内に見覚えの顔!!!
池田さんラウラさんが来てくれた!!!
イングリッドおばちゃんたちとの最後の夜に池田さんたちを紹介できるなんてこんな嬉しいことない!!!
ううう…………オーストリアで死ぬほどお世話になった大好きなこの2組のご夫婦が一緒にいるよおおお……………
すげぇよおおお……………
「ラウラさんラウラさん…………ヒソヒソ…………黒石鹸持ってきましたか?………ヒソヒソ…………」
「それが本当に忘れちゃったのよー!!あひー!!イングリッドに黒石鹸あげたかったのにー!!アハハハハハー!!」
完全にタイプの違うこの2組のご夫婦。
多くを語らない池田さんとマシンガントークのイングリッドおばちゃんなので仲良くなれるのかとちょっとハラハラしてしまう。
でもそこは在住40年の池田さん。
ドイツ語ペラペラだし、これまでイングリッドおばちゃんが俺たちにもっと話したかったことなんかを何でも聞くことができる。
ラウラさんも話題豊富なかただし、俺たちの不安をよそに徐々に盛り上がり始めた。
「イングリッド、池田さんは日本料理のプロなんだよ。」
「アッソー!!それは一度食べてみたいわ!!」
「今度うちにいらしたらいいわー。」
「じゃあ連絡先を交換しましょ!!フェイスブックはやってる?」
スマホ大好きイングリッドおばちゃん。
いつもスマホをポチポチやっててたくさんメールをくれるんだけど、池田さんとラウラさんはSNSよりも電話派だ。
池田さんは一応フェイスブックは持ってるけど、そんなに頻繁にはメールはしない。
「池田さん、イングリッドおばちゃんとフェイスブック交換したらめっちゃメール来るので頑張ってください!!」
「ははは、そりゃ大変やなぁ。」
そう言いながらニコニコしている池田さん。
おばちゃん、池田さんの料理食べたらきっと感動するだろうな。
よし、そろそろ頃合い。
賑やかな店内でカンちゃんと目配せし、バッグの中から1冊のアルバムを取り出して後ろに隠した。
そしてせーのでイングリッドおばちゃんとレイモンドパパにアルバムを渡した。
「ンマッ!!!これ2人が作ったの!?ううう…………うううー!!あああ!!」
驚いた顔を見せたおばちゃん。
すぐに目が赤くなっていき、涙がボロボロこぼれた。
そして俺たちを抱きしめてきた。
そのアルバムは、これまでイングリッドおばちゃんとレイモンドパパと一緒に過ごした日々の写真をまとめてメッセージを書き込んだもの。
「5年前、クレムスでの最初の出会いから、僕たちはたくさんの思い出を作りました」
その出だしから、カンちゃんを連れて再会した日のこと。
いっぱいバッハウを案内してもらったこと。
家で一緒にお喋りしたこと。
俺たちがご飯を作ってみんなで食べたこと。
シュピッツでの結婚式。
何回もの別れと再会、チロルの景色、ヘリコプターに乗ったこと、
この1年半の数え切れないほどの思い出。
その1枚1枚の写真を振り返りながら、アルバムを作った。
こんなアルバムだけで4人の日々を全部まとめることなんてできない。
でもきっとこのアルバムを見て、俺たちのことを少しでも思い出してもらえるはず。
おばちゃん、パパ、本当に本当にありがとう。
「うううう………みんな………これ見てよ!!フミとナオが作ってくれたの!!これは最初の出会いで、これが結婚式でね、これがアフリカから2人が帰ってきたときの写真で、2人はあーでこーであーでこーで……………」
泣きながらアルバムを持って周りの席に見せて回りながらめっちゃ説明しまくってるおばちゃん。
おばちゃん、愛すべき人。
21時を過ぎると少しずつお客さんが減ってきて、お店の中が落ち着いてきた。
するとお店の息子さんが俺のところにニコニコしながらやってきてギターを弾くジェスチャーをしてきた。
ま、マジですか………?
やっぱそうなります…………?
去年も二次会の時にお店のギターが出てきて何曲か歌ったんだけど、まぁとにかく盛り上がってお店の中全員で大合唱になった。
あれがあったのでもう1度やってくれよ!ってことみたい。
う、うーん、もうだいぶワイン飲みまくってヘロヘロなんだけど……………
やるか!!!
ここでやらんと歌うたってる意味ないよな!!!
「グリュスゴーット!!月曜日からインド行きます!!だからもうこの歌はしばらく歌わないです!!みんな一緒に歌いましょう!!」
椅子の上に立ち、お店のガットギターを弾きながらアイネンシュタルンを歌うと、店内に大合唱が響いた。
あっという間に時間は過ぎ、いつの間にか23時を回っていた。
池田さんたちはこれから1時間以上かけてシュタイアーに帰らないといけないので、そろそろお店を出ることに。
本当は今日は俺たちが払いたかったのに、レイモンドパパが断固として払わせてくれず、ご馳走になってしまった。
こんなにお世話になったのに、最後の最後まで…………
イングリッドおばちゃん、レイモンドパパ、本当にありがとう。
お店のご家族と写真を撮り、外に出ると、冷たい空気にぶるっと震えた。
気温は7°Cくらいかな。
あと数日したら気温30°Cの国に一気に移動になる。
そう思うとこの寒さにも名残惜しくなってしまった。
車に向かって歩きながら池田さんとレイモンドパパがたくさんドイツ語でお話してる後ろ姿を見て嬉しかった。
俺たちはこの大好きな人たちに何かを残すことができたかな。
俺たちはこんなにたくさんの物をいただいたのに。
「ホナ、また今度は日本でな。」
「はい、でも僕らがオーストリアに戻ってくるほうが早いかもしれませんね。」
「そうやなー。また会えるからな。元気でな。」
池田さんとラウラさんの車を見送り、俺たちも車に乗り込んだ。
明日、イングリッドおばちゃんとレイモンドパパとのお別れ。