スポンサーリンク サグラダファミリアからアンドラへ 2017/7/19 2017/06/30~ スペイン, 2017/07/01~ アンドラ, ■彼女と世界二周目■ 2017年7月1日(土曜日)【スペイン】 バルセロナ~【アンドラ】 ~ 【スペイン】 ピレネーバルセロナの地下鉄はちょっと高い。片道で2.1ユーロもする。70分乗り換え自由なので市内ならだいたいどこでも行けるチケットだけど、片道で270円は高い。カンちゃんと2人で往復したら1080円だ。今からサグラダファミリアを見に行くけども、サグラダファミリアの1~2時間のためにこれはもったいない。というわけで町外れの住宅地から車を動かし、市街地までやってきて有料駐車場を探した。さすがに大都会のバルセロナでもほんの1時間くらいの駐車で1000円以上はしないだろう。と思ったら、サグラダファミリア近くの路面パーキングに止めると、たった50セントで明後日の朝までチケットが買えてしまった。え?どういうこと?今日は土曜日。つまりバルセロナでは土曜、日曜が路面パーキングが無料で、明後日までのまたぎチケットが買えたってわけだ。得した気分。よっしゃそれじゃあ念願のサグラダファミリア、行ってみるかーーーーーー!!!!ぐおおおおおおおおおお!!!!!すげえええええ!!!!!昨日も見たけどやっぱすげえええええ!!!どんな外観にしようかー、ってそこら辺の仮面ライダーが好きな子供にガウディが聞いて、遊び半分で子供が描いた絵を図面にして、これでイキましょうかっていう流れしか思えん!!!!ガウディはもう他界してこの世にはいないけど、今もガウディの複雑極まりない設計のために工事は続行中。もう135年間もずっと工事してる。ガウディもあの世で、ヤベェちょっとやりすぎたかな…………ってなってないかな。たくさんの観光客がワラワラと写真を撮っている中エントランスに近づいていくと、昨日見た時間割りのモニターがあった。はい、今日1日、朝から晩まで全ての時間帯、チケットソールドアウト。あっぶねえええええええ……………昨日ダッシュでネット予約しといてよかったああああああ……………バルセロナまで来てサグラダファミリアの内部見ないで帰るとか、マジで死ぬとこだったわ。受付けスタッフさんにスマホ画面のチケットページを見せ、荷物チェックゲートをくぐり、ついにサグラダファミリアの中に入った。そこにはとんでもない光景が待ち受けていた。SFの世界。SF映画で、コンピューターグラフィックで作った宇宙船の中ってこんな感じだと思う。もしくは、不思議な巨大生物の体内に作られている謎の王国、とかそんな。マジで異空間すぎて、言葉を失って唖然とするとはこのことだった。細かい装飾や造りの複雑さを言葉で表現するのは不可能。言葉にしたらすぐにちゃちくなってしまうそう。とにかく、言葉をなくしてその不思議な世界を見上げるしかなかった。ガウディは1852年に生まれたスペインの建築家。生涯にわたり、たくさんの建築に携わっていくんだけど、そんなガウディがサグラダファミリアの設計に推薦されたのが1883年。しかし、心血を注いだ最高傑作の建設途中に、ガウディは路面電車に轢かれて死んでしまう。身なりに気を使っていなかったため、浮浪者と間違えられて手当てが遅れたのが原因らしい。偉大な建築家と浮浪者で手当ての対応が違うというのもやりきれない話だけど。ガウディの死後からすでに91年。サグラダファミリアはまだ完成していないけど、ガウディの意思を継ぐ者たちが今も日夜工事を進めている。完成予定はあと9年後の2026年だ。当時は完成までに300年はかかるといわれていたらしいけど、スペインの経済成長にともなって工事のスピードも加速しているみたい。そのあまりにも独創的で他に類を見ないデザインはまさに世界で唯一無二。まだ建設途中ではあるけどもこのブッとんだ教会を見るべく世界中からたくさんの観光客が訪れている。驚くのはこの建築費がすべて寄付と入場料収入によって賄われているということ。とんでもなく莫大な金額なんだろうな。あまりにもデザインが緻密すぎるので、ガウディの死後、完全にガウディの設計通りに建設するのは不可能とされたんだけど、各時代の建築家たちが一生懸命ガウディの意図を推測しながら工事を進めているんだそう。いやぁ、ガウディも天国で思ってるだろうなぁ。ちっとやり過ぎたかな…………って。もう複雑にもほどがある!!!!このデザインをどこまでガウディが細部まで設計し、それを忠実に再現してるのかわからないけど、そりゃこんなわけ分からん作りしてたら100年以上かかるわ。これが中世だったらクレーンもないし、石切りのカッターもない。建築技術の発達した現代でもこれほどかかってるんだから、ガウディが生きていた当時の技術で計算したら、いやぁ2000年くらいかかるかもしれませんねウケるーって感じだったのかもしれない。これもまたガウディの芸術のひとつだったのかもしれないよな。堂内をこれでもかと堪能したら、別入り口のほうにある博物館にも行ってみた。建築年代によっての写真のパネル展示がしてあったんだけど、最初の頃のやつなんてまだ教会の周り全部が原っぱだ。今はこんなにも隙間がないほど建物が密集している大都市だけど、バルセロナ中心部から少し離れたこの辺りは、何にもない寂しい土地だったんだな。このパネル展示、すごく面白い。他にも、完成予想の模型や、設計図の絵コンテなど、興味深いものがあくさん展示してあって、サグラダファミリアに来たなら必ずここは見ておきたいところだ。そしてそんな博物館の最深部、通路が行き止まったところにガラス張りの部分があり、そこを覗いてみると、地下に薄暗い礼拝堂みたいな部屋が見えた。このサグラダファミリアのド派手さはここまでは達しておらず、静謐な雰囲気に見える。ここにガウディが眠っているとのこと。自分が手がけた最高傑作の下で眠ってるんだ。いやぁ、旅人の中には建築の勉強をしながら世界を回ってるっていう人もいるので、そういう人たちがこのサグラダファミリアを見たらすごく色んな勉強になるんだろうと思う。震えるほど世界最高峰の技術の粋なんだろうな。でも建築のことなんかさっぱりの俺でも、これは震えるわ。人間すげぇって思える。サグラダファミリア大満足。さぁ!!!!スペインでの最大の目的を果たしたら次に向かうぞ!!!!バルセロナの街を出たら北に向けて走っていく。今日も素晴らしい天気の下、田園風景が輝き、その中に小さな名もなき村が散らばっている。畑の中で農家の廃墟が風に吹かれ、牧草ロールが転がり、気持ちよくて窓を開けるとすごく涼しい。本当にここ最近、一気に気温が下がって秋口みたいに快適な日々だ。イタリアでは毎日焦げまくってたのになぁ。しばらく走っていると、だんだん風景が変化してきた。田園風景の向こうにゴツゴツした岩山が見え始め、それらが雄大にそびえる高地へと突入していく。ノルウェーを思い出させるその大自然。切り立った断崖絶壁、美しい湖、巨大なダムなど、どこを見てもすごく綺麗だ。何度も車を止めては写真を撮りながらアクセルを踏んだ。そんな大自然の中をどんどん奥へと入っていくと、いきなり道にゲートが現れた。おお、来たぞ来たぞー。ドキドキしながらゲートをくぐり、ノーチェックの建物を通り過ぎると、看板の文字が目に入った。アンドラ入国だ。マジでアンドラって何があるの?最初にアンドラって聞いたとき、それってアフリカのどっかの国?って思ったけど、これはれっきとしたヨーロッパの独立国家。スペインとフランスの国境に挟まれためっちゃくちゃ小さな謎の国だ。本当に何ひとつ知らないし、旅行者で行く人もほとんどいないし、ヨーロピアンですら知らない人もいるくらい超地味な国。こんなに山の中にひっそりと隠れるように存在しているんだな。山の谷間を進んでいくと、ほんの小さな町に入ってきた。首都というか最大の町というか、ちゃんとした町はこのひとつしかない。周りを山に囲まれた静かな静かな町で、真ん中に川が流れ、斜面に民家がへばりついている様子は、どこか日本の温泉街みたいな雰囲気だ。とにかく車を止めて散策してみようと駐車スペースを探したんだけど、こんなに小さな面積にひとつの町があるだけなのでどこも有料駐車場ばかりでなかなか見つからない。中心部から離れて坂道を登っていき、町を見張らせるくらい高いところまで来たところでようやく止められる場所を見つけることができた。一応路上もできたらやってみたいので、ギターを持って歩いた。田舎の婆ちゃんの家に里帰りに来たような、そんな山の中の散歩道をクネクネとくだっていく。懐かしい里山の歩道。途中に小さな小さな教会があり、そこで地元のおばちゃんとすれ違った。おばちゃんはニコニコと笑顔でオラーと挨拶してきてくれた。どうやらアンドラの人たちはスペイン語を話すみたい。ていうかアンドラ国籍の人って、自分たちがアンドラ人であることを誇らしく思ってるのかどうなのか。こんなに小さくて、話す言葉も他の国の言葉。国民としてのアイデンティティって何で養われるもんだろう。それにしても寒い。日中だというのに気温が19℃しかない。ここが山の中で標高が高いというのもあるだろうけど、本当に夏はどこにいってしまったんだ?このまま冬に突入しそうなくらい冷たい風が吹いてくる。そんな中、山を降り、車道に出ると少しばかりお店が並び始め、川を渡るとそこに賑やかなメインストリートが現れた。おおお!!!すげぇ!!!!めちゃくちゃ人おるやん!!!!!長い長いホコ天のショッピングストリートがあり、両側には隙間なく店舗がズラリとひしめき、通りを溢れんばかりの人々が歩いていた。建物も綺麗だし、よく整備されており、この通りだけそんじょそこらの都市を越える活気に満ちている。カンちゃんがネットで軽く調べてくれた情報によると、アンドラは非課税の国らしく、物価が安い。なのでスペイン、フランス両方からショッピングに来る人たちがたくさんいるんだろう。特に今日は土曜日。家族連れやカップルが楽しそうに歩いており、週末だからアンドラにお買い物に行こうかーって感じだ。いやぁ、とにかくすごい人。そんな人たちの向こう、ショッピングストリートからのぞむ山の斜面に、お父さんが小さな子供を抱っこしている絵が描かれていた。それがなんとも印象的で、アンドラの風景のひとつとして頭に焼きついた。めぼしい観光地らしきものはなさそうだし、この人通り。こいつは路上やるしかねぇ。アンドラで路上なんて聞いたこともないし、こんな小さな国で歌っていいのかわからないけど、通り自体はこの上なくおあつらえ向きだ。稼げる匂いがプンプンする。良さげな場所を見つけてギターを広げると、通行人たちがなんだなんだ?と足を止めてこっちを見てくる。反応めっちゃ良い。この時点で何人か足を止めており、物珍しさもあってかこのアジア人の路上パフォーマーに興味津々な様子。これ絶対稼げる。フィーバーの予感しかしない。はやる気持ちを抑えて、冷静にチューニング。丁寧にいこう。焦って変なチューニングで歌ったりしたらいけない。1曲1曲大事に歌おう。よーし、それじゃあヨーロッパの謎の国、アンドラでの路上やってみるかーーーーー!!!!!1曲目はいつものCCRのローダイ!!!!いくぞおおお!!!!「ジャカジャーン!!」「はいー、ゴメンねー。」5ストロークで警察に止められました。迅速うううううう。セキュリティしっかりしてるううううう。「ゴメンね、アンドラでは全域路上パフォーマンス禁止なんだよ。」………………………………………………………無言でギターを片付けてマクドナルド行ってネット作業しました。ネット超早いです。アンドラの印象。ワイファイ超早い。温泉街。終了。ええええええ……………全域禁止て厳しいいい……………まぁこういう特殊な国はだいたい規制厳しいよね…………そんな気してたよ………………マクドナルドで作業やるだけやって、また坂道をヒーヒー言いながら登って車に戻りました。アンドラ、謎のままです。あ、アンドラでひとつだけめっちゃ嬉しかったことがあった。それはガソリン代。非課税の国なのでガソリン代がめっちゃ安い!!!!これまでイタリアがリッター1.5ユーロ、フランスがリッター1.35ユーロときていたんだけど、アンドラでは驚異のリッター1ユーロ。125円。そんなこともあろうかとスペインで給油せずにギリギリでアンドラに来ていた俺たち。ここぞとばかりに満タンにしておいた。よし、これでしばらくは大丈夫だろう。あー!!なんもしてないけどアンドラ終了!!!路上できないんだったら何もやることなし!!!!「さてー、国境まではどのくらい?」「えーっと、ここからフランスの国境までは3時間くらいかなぁ。」「結構あるなぁ。まぁ行けるところまで走るかー。」アンドラ周辺は深い山に囲まれていることで道が少なく、一旦スペインに戻り、そこから西に走ってフランスに抜ける道を走ることにした。次の目的地はフランスの国境を越えて2時間くらいのところだ。ここもまた必ず行きたいと思っていた場所のひとつ。明日ゆっくり見て回るためにも今夜のうちにできるだけ近づいておきたい。が、アンドラを出てから急に山が険しくなった。ヘアピンカーブの連続で、急激に標高を上げてはまた一気に谷底に降り、また標高を上げていく。おかげでなかなか距離がのびないし、夜の山道はちょっと疲れる。こいつは相当深い山だな……………地図を見ると、このフランスとスペインの国境部分にはものすごく広域に山々が広がっており、この山脈が国を分断している。これがあのピレネー山脈。今走っているのはピレネーのど真ん中だ。いくつものカーブの向こう、赤黒い夕焼けが空を染め上げている。時間は22時過ぎ。これは夕焼けだけど、もう人々は寝静まった夕焼けだ。ヨーロッパの人たちにとって、夏の夕焼けこそ寝る合図のようなものなのかもしれない。ぼんやりした黄昏に、ピレネーの稜線がくっきりとシルエットを引いている。そしてそこからいくつかカーブを曲がると、あっという間に山脈は広大な暗闇に覆われた。ヘアピンカーブ、真っ暗闇、しまいには霧まで出てきた。全然道が見えなくてそろりそろりと走っていく。地図を見るとものすごい場所にいる俺たち。大山脈のど真ん中にいるんだな。いやー、車中泊旅はこれだから楽しい。こんな時間にピレネーのど真ん中を走り、そしてどこでも寝ていいんだもん。ていうか、気温が低い!!!!山に入っていくにつれどんどん気温が下がっていき、ついに10℃を切った。窓を開けると真冬みたいな冷たさだ。そしてとうとう車の警告ランプが光った。気温4℃。路面凍結の警告。信じらんねぇ……………7月に気温4℃て…………ピレネーすげぇな……………寝袋だけで車中泊できるかな……………それからもなんとか頑張って走ったけど、さすがに体力に限界がきて、道の脇のパーキングスペースに車を止めた。坂道の途中なので谷の下を見下ろすことができたんだけど、そこにはひっそりと寄り添うように小さな町の夜景が光っていた。こんなピレネー山脈の奥地で暮らしてるなんて、きっとどこに行くにもめっちゃ大変だろうな。走ってる途中にも、なんでこんなところに?っていうような天空の集落がいくつかあった。おとぎ話の世界。人間はどこでも生きていける。オシッコをしながらその夜景を眺めていたけど、あまりの寒さに凍えそうになって急いで車に戻った。