スポンサーリンク イギリスではほとんどなかった楽しい出会い 2017/3/5 2017/02/15~ クロアチア, ■彼女と世界二周目■ 2017年2月22日(水曜日)【クロアチア】 スプリト目を覚まして部屋の窓を開けると目の前にスプリトのメインストリートであるホコ天の通りが見える。今日もアドリア海の実力全開で、真っ青な空から太陽がさんさんと降り注いでいる。すぐ目の前にあるフィッシュマーケットはすでにたくさんの人で賑わっており、買った魚を入れたビニール袋を持って歩いている人たちの姿がある。みんな持って帰ってこのダルマチア地方の家庭料理を作るんだろうな。そんな町の様子を部屋の窓から見下ろす。まるでこの町に住む住民の1人になれたかのような錯覚がしてとてもとても贅沢な気分だった。朝ごはんはバルカン名物、ブレク。1枚10クーナ、160円。ミンチ入りとチーズ入りがあって、トルコでよく食べてたパイと同じような感じだ。もう食べ物もだいぶ中東と混じり合ってきた。スプリト最後の今日。気合い入れて歌うぞーとギターを持ってホコ天に出てくると、いつにも増してものすごい人出で溢れていた。おお!!こりゃすごい!!なんつー賑わいだ!!半端ない混雑で通りの向こうが見えないくらいだ!!よっしゃー、こうなったら腕がなるぞー。お!!日本人観光客の姿もある!!この町ではアジア人は断然韓国人が多いんだけど、日本人の姿もチラホラ見られる。面白いことに男の人はほとんどいなくて、若い女の子2人組ばっかりというさすがのアドリア海!!この美しい海辺の世界遺産の町が女の子にとって憧れの地ってのはイメージしやすいもんな。みんなこのスプリトからのドブロブニクのコースで旅行に来てるんだろう。よーし、ここはいっちょ気合い入れて日本人女の子が目の前を通る瞬間に氷室並みの動きでクラウディーハートを歌いまくって、やだ……あの人キモい………って言われて割りにみじめね!!というわけで日本人女子とすれ違いざまに右手を後ろに突き出し左手の手のひらを顔に当てて指の間からキメ顔をのぞかせて挙動不審になって鏡の中のマリオネットになったところで真面目に歌いましょう。「ふーん、フミ君もあんな感じの若い子が好きなんだねー。ダハブとか行ったらデレデレしちゃうのかなー。」「な、何言ってるんだねこのキューピーマヨネーズは!!ホント困っちゃうよね!!ダハブのカフェで隣の席で日本人の女の子たちが楽しそうにお茶してたとしてもデレデレなんてするわけないじゃないか!!九州男児をなめてもらったら塙の竜五郎が黙っとらんばい!!信介しゃ~ん、抱いてくれんね信助しゃ~んつって。ただ眼球の筋が引きちぎれるくらい横目で女の子たちを見るくらいですばい!!」というわけで1曲目は山崎ハコの織江の唄からいくと見せかけてCCR!!うん!!喉の調子が悪い!!なんか引っかかって声が抜けてこない。クロアチアに入ってからまだ本調子の声が出せてないんだよなぁ。イギリス後半でほとんど歌ってなかったので鈍っているだけだったらいいんだけど、ずっとこんな声のままになってしまったらどうしようかと怖くなる。俺はもっといい歌がうたえるはず。なんとか調子を取り戻していかないと。場所を変えながらなんとか1時間半やって少しは声が出始めてきたところで1人の兄さんが声をかけてきた。「ハーイ!日本から来たのかい?僕はスシショクニンをやってるんだよ!」明るくて綺麗な英語を喋る彼の名前はピーター。ブルガリア出身だけど、新鮮な寿司が作りたくて魚が豊富なスプリトに移り住んだんだそう。今はこの町で寿司教室をやってるとのこと。「どうだい?俺が君たちにスシを教えてあげるよ。ヨーロピアンがジャパニーズにスシを教えるってわけさ!ヒャーハッハッハッハ!!」めっちゃジョークを連発してくる面白い男なんだけど、聞けば寿司教室のかたわらクラウンのパフォーマンスもやってるんだそう。クラウンというのはピエロのこと。コミカルな動きや表情でお客さんをいじったり、時にはパントマイムなんかを交えたりして笑いをとる、かなりの高等技術が必要とされるパフォーマンスだ。このスプリトの路上でもパフォーマンスをしているようで、ものすごい人だかりを作ってる写真を見せてくれた。クラウンは人柄だよなぁ。周りを笑顔にさせる才能って本っ当にすごいと思う。「すごいね!いやー、俺たちずっと旅中だからお寿司が恋しいなぁ。」「よし!それじゃあそこに美味しいバーガー屋さんがあるんだけど食べに行かないかい?」めっちゃスシの話からバーガーかよってちょっと突っ込みそうになってしまったけど、久しぶりのこうした出会いが嬉しかった。こんなナイスガイと知り合えるなんて、やっぱりアドリア海最高だな。ピーターが連れて行ってくれたのはオシャレなバーガー屋さん。地元の人よりは観光客向けといった雰囲気で、値段もポテトとセットで50クーナ、800円くらいする結構いいお店だ。外のテラス席に座って昼間から冷えたビールで乾杯すると最高に気持ちいい。バーガーも確かにすごく美味しい。「あったかいなぁ。スプリトは天国だよ。イギリスから来たんだけど、向こうは毎日霧と雨であんまり楽しくなかったんだよね。」「はははー!分かる分かる!スプリトではまったく雪も降らないからね!でも2005年に一度雪が降ったことがあってね、その時はみんな雪なんかほとんど見たことないからパニックになったんだよ。」雪が降ってパニックて。クロアチアの人たちは可愛いなぁ。「ピーターはお寿司のお店はやらないの?こんなにアジア人の観光客が多いんだからやったらいいのに。絶対お客さんたくさん来ると思うけどなぁ。」「そうなんだよ。こんなに多いのにみんなアジアンレストランをやらない。みんな気づいてないんだよ。でもそれには理由もあってね、まだクロアチアは戦争の名残りで閉鎖的なところがあるんだよね。食べ物なんて特にね。」確かにクロアチアではスーパーマーケットに行ってもアジアンフードどころかカップ麺すら置いてない。あってもせいぜい醤油くらいだ。イギリスのスーパーはあんなにも世界各地の食品で溢れていたので、このクロアチアのローカル感に最初は驚いた。でもそれはイギリスが特別インターナショナルなだけであって、まだまだ小国はこんなもの。というかだからこそローカル感が増して旅人には嬉しいことなんだけど。「江戸前寿司ってあるよね?でも俺はこのスプリトでダルマエ寿司ってのをやりたいんだ。ダルマチアのお寿司だからね!ハハハ!!」ダルマエ寿司、ナイスネーミング!!それからもしばらくピーターとビール飲みながら楽しくお喋りし、ほろ酔いになったところで一旦宿に戻ることに。また夜に軽く飲みに行こうよ!と約束し宿に帰ってきたら、眠くなってきて少し仮眠をとった。うん、昼から飲んだらすぐダルくなってしまうなぁ。1時間ほど眠り、気合いを入れ直して路上もういっちょいってみるか。夜になったホコ天には街灯がともり、ぼんやりと旧市街を浮かび上がらせている。鈍く光る滑らかな石の上を、ポツポツと人が歩いている。1回仮眠をとってしまったせいで喉がまた閉じてしまい、あんまりいい声が出てこなかったけど根性で1時間。今日のあがりは2時間半で402クーナと2ユーロ。計6700円。それからピーターに連絡し、王宮の廃墟の前で合流した。うーん、待ち合わせ場所が世界遺産の王宮の前とか渋すぎる。それから旧市街の路地裏の奥に入って行き、暗い迷路の中を進んでいく。細い路地が入り組み、すぐに迷子になってしまいそうだ。そしてそんな迷路の奥に、穴場とはまさにこれといった雰囲気の一軒のバーがあった。石造りの町の外観を壊さないひっそりとしたそのジャズバー。店内は小ぢんまりしていて、たくさんのボトルが並び、ハイパーオシャレ。店の中にはピーターの友達のクレアという女の子がいて、4人で乾杯した。ラムジンジャーの爽やかな味がこのバーにすごく合っている。「もうね!バルカンがあまりにも楽しすぎて楽園すぎて動けなくなってるのよ!!ここから出られないわー!!アハハハハー!!」お友達のクレアもまためっちゃ陽気でフレンドリーでお話が上手な可愛い女の子。ピーターがジョークを言うたびにキャハー!!と爆笑してすごくいい子だ。「フミたちにヨーロッパのお寿司について質問したんだけど、フミたちはお魚は美味しいんだけど米が美味しくないって言うんだよね。俺はよくわかるよ。日本の米とはまったく違うもんな。」「そうなんだよなー。こっちのお米はパサパサしてるし臭いがあるんだよね。」「ええ!?お米はお米よー!!全部一緒じゃない。こっちにもグレーンライスってのがあるじゃない?」「おいおいクレア、米は種類によって全然味が違うよ!!」「そうそう、こっちのお米はだいたい細くてパサパサしてるけど日本のはもっと丸くてもちもちしてるんだよ。」「分かんないわー、お米はどれも一緒だと思うわ!ポテトと一緒よ!」「クレア!マジで言ってるのかい!?お米、ポテト、これが同じだと言うのかい!?まったく違うよ!!」そう言って指で米と芋の形を作ってジョークを飛ばすピーター。キャッハー!!と爆笑するクレア。いやぁ、楽しい。こんな出会いに恵まれて嬉しいなぁと思ってたんだけど、なんとこのクレア、やたら流暢な英語を喋るので現地の子ではなかったんだけど、まさかのイギリス人だった。リアルタイムでイギリスを出た途端、イギリス以外でイギリス人の友達が出来るというこの皮肉。やっぱり出会いなんて縁なんだよなぁ。面白いもんだなぁ。クレアの前でイギリスあんまり楽しくなかったとか言わなくてよかった…………「僕はジャズフリークなんどけどね、マイルスデイビスは本当に素晴らしいよ。でも最近ね、素晴らしいアーティストが出てきたんだ。間違いない、彼は世界を変えるよ。」「どんなアーティストなの?」「いいかい、こんな曲さ。アイハブアンアッポー、アイハブアペンー、アッポーペーン。」「ぶふぉ!!ピーター!!クロアチアでもそれ知られてるのか!?」「ピコ太郎はアメイジングさ、ふぅ、ついにあの名曲を超える曲が現れたってことさ………そう!!カンナムスタイルをね!!」そしてピコ太郎の動画を見せた瞬間のクレアの顔。いやぁ、カンナムスタイルにしてもピコ太郎にしても、俺の旅中いつも世界で知られてるアジアの音楽ってそんなんばっかだな…………「え!日曜日からドブロブニクなの!?私も月曜日からドブロブニクなのよ!!向こうで遊びましょ!!私のすっごい好きな場所があるから連れて行くわ!!もちろんウチに泊まってね!!」あんなに出会いの少なかったイギリスだったのになぁ。イギリスの外でイギリスのイメージがどんどん上がっていくよ。アドリア海マジック、クロアチア本当最高だよ。飲んだ帰りはピザスライス!!タバスコたっぷり!!