スポンサーリンク 戸村のタレで焼肉を食べたいです 2016/10/30 2016/09/07~オーストリア②, ■彼女と世界二周目■ 2016年10月19日(水曜日)【オーストリア】 フェルトキルヒコンコンコン、とノックする音で目を覚ました。パッと目を覚ますと、結露した窓の外に人影が見える。警察か。職務質問だ。車中泊をしているとよくあること。俺は慣れっこだけど、誰かが車をノックしてきたことでカンちゃんはビックリしていた。まぁまぁカンちゃん、ここは職務質問のプロである僕に任せておきなさいよ。昔、1人で日本を回っている時に、夜、ムラムラしてきてちょこっと1人でアレをアレしようと思ってズボンを下ろして握撃していたらいきなり窓をノックされて、ぬおおおおおおおおううう!!!とパニックに陥って、下半身に布団をかけたまま警察に職務質問を受けるという死にたくなるような思い出とかマジウケる。絶対見られたし……………この前日本に帰国してる時も、自転車こいで三軒茶屋から多摩川を渡る間で4回職務質問にあうという伝説的な記録を打ち立てた職務質問のプロは、まず冷静に布団から出てドアを開ける。「グーデンモルゲン。ベートーベンベートーベン、モーツァルト?」「グーデンモルゲン。英語喋れますか?」「オーケー、ここで寝てたのかい?寒かっただろう?」「いえ、このくらいならまだ全然問題ナシっす。モーツァルトまじヤバイっすね。あのカツラとか激シブっていうか!」「ヨーロッパは宿が高いから車中泊が安上がりだもんね。じゃあパスポート見せてもらえる?」優しそうなお巡りさん2人。かつて岩手県の田舎町を夜ひとりぼっちで歩いていたら、警察に職務質問され、最近このあたりのコンビニに強盗が入ったんだぁって、コンビニ強盗と疑われた経験のある男に対してもとても紳士で優しいです。さすがはオーストリア警察。「ん?これって…………ちょっと。」俺たちのパスポートを見て動きが止まり、もう1人の警官とパスポートを持ってパトカーに戻っていったお巡りさん。あー、きっとシェンゲンのことか。するとお巡りさんが戻ってきた。「君たち、どんなルートでヨーロッパを回ってるんだい?」「えーっと、まずハンガリーからシェンゲンに入って…………」「それはですね!ハンガリーから入って北欧を回って3ヶ月シェンゲンに滞在してからオーストリアに戻ってきました!!オーストリアと日本には特別な協定があって私たちは180日オーストリアに滞在できるんです!!ウィーンの日本大使館にも確認に行ってるので間違いありません!!」横のカンちゃんが一生懸命英語でまくしたてる。お巡りさんはそんなに英語が達者ではないので、ちょっとビックリしてる。「うん、そうか、でもオーストリアもシェンゲンだから90日しかいられないはずだよ。」「シェンゲンの中でオーストリアだけ日本と二国間協定っていうのがあって日本人は180日オーストリアに滞在できるんですよ!!ちゃんと大使館で確認をとっています!大丈夫です!!」「ん、そ、そうか。ならいいんだ。じゃあハバナイスデイ。」お巡りさんはパスポートを返してくれ、そのまま去っていった。昔、夜に島根あたりを車で走っていたらいきなり警察に止められて色々質問された挙句、こいつ完全に不審者だと思われたのか、車の中を隅々まで調べられ、でも何も出てこなくて、お巡りさんも勘が外れたか………みたいな感じになってる時にダッシュボードの中からカッターナイフが出てきて、こ、これはなんだぁ!!この危険人物め!!えー!!こちら○○!!車の中に刃物を所持してる不審者を発見!!と無線でどこかに連絡されて、警察5人くらいに包囲されて、カッターナイフくらい車の中にあってもいいやろ…………って呆然とした素敵な思い出のある俺。職務質問なんていつものことだけど、可愛い普通の女の子であるカンちゃんは俺と付き合い始めてから初めて職務質問を経験したそう。一生懸命、丸顔で警察に身の潔白を証明しようとしているところが可愛かった。いやぁ………今まで何回職務質問されただろ…………さて、山の上の道端ホテルは警察によるモーニングコールもついているというサービスで気持ちよく目を覚ました。周りに広がる山々が気持ち穏やかに見える。高低差もそんなになく、丸みを帯びている。走りに走ってついに俺たちはチロルを横断し、オーストリアの端の端までやってきた。ここはフェルトキルヒという町の郊外。ここからわずか数キロ走ればそこにはもうリヒテンシュタインがあり、スイスがある。南にはイタリアの国境があり、北にはドイツの国境。色んな国境が入り乱れた面白い地域だ。が、残念ながらシェンゲンがあるので俺たちはオーストリアから出ることはできない。つまり俺たちにとっては八方塞がりの行き止まりだ。袋小路。国境という見えない壁がアルプスよりも厳しく立ちはだかっている。これからこのどん詰まりにある3つの町を10日ほどかけてのんびり周り、また同じ道を通って戻っていく。山を降りて、フェルトキルヒの町にやってきた。町の入り口にいきなり古城が立っているんだからたまらんよなぁ。町のあちこちにある中世から残されているであろう塔や教会はどれもくすんで崩れかけており、街全体がすごくひなびている。町の真ん中におだやかな川が流れており、紅葉と里山の風情が温泉街みたいだ。ここもいい町だな。1時間1.1ユーロの駐車場に明日の朝までのチケットを買って止め、ギターを持って中心部へ歩いた。雰囲気のいいホコ天のショッピングストリートが何本か交差しており、中央に大きめの通りを見つけた。通りの両側の路面にはたくさんのお店が入っているんだけど、面白いことに建物の前がトンネル式になってて雨を気にせずお買い物ができるようになっている。これってゆうべ歩いた町でも同じ作りをしていた。おそらく雪の多い地域なのでこうやってアーケードにしてお買い物ができるようにしているんだろう。雪国らしい町の作りというところは黒石のこみせ通りと共通しているのかな。テキトーにケバブを食べ、中央の通りに陣取った。目の前にはちょうど3つのカフェがテラスを広げており、ポジションは完璧。他にパフォーマーの姿はなく、物乞いもいない。この町の路上ひとりじめだ。ゆっくりとギターを鳴らすと、カフェのお客さんたちが振り返ってこっちを見る。いい歌うたうぞ。完璧。この町もまた完璧。人通り自体はそこまで多くはないんだけど、たくさんの人が足を止めてくれコインを置いていってくれる。さらにカフェのお客さんたちも拍手とともにお金を入れに来てくれ、カフェの店員さんもチップを入れてくれる。足を止めた人たちがそのままカフェに座ってコーヒーを飲みながらずっと聞いて行ってくれるというパターンも多い。今週もまたずっと雨予報だというのにギリギリ雨は降っておらず、このところ驚異的な晴れ男っぷりだ。マジで助かる。苦情も警察からのストップもなく、とてもいい雰囲気でのびのびと歌い、今日のあがりは3時間で327ユーロ。37000円。気づけば結婚式までもう少し。準備は色々しているけども、まだまだやることが多くて何が不足しているのか頭がこんがらがる。お互いの両親の航空券とかホテルとかの旅程もほとんど俺たちで組んでいるので、すごくややこしい。でも来てくれる両親にヨーロッパを満喫して楽しい時間を過ごしてもらうためにもなるべく不備のないようにしなきゃいけない。「文武、私ゃ英語なんか喋れんよ。ドイツ語なんてもちろん喋れんよ。大丈夫やろか。」「大丈夫大丈夫、みんな言葉喋れなくても旅行してるんだから。指差し会話帳があればそれで充分やから。」「あぁ、緊張するわぁ、ホテルのチェックインとかできるっちゃろか?なんか持って来て欲しいものはあるね?」「戸村のタレ持ってきて。」お母さんの声からウキウキしてるのが伝わってくる。去年帰国してる時に、ヨーロッパ旅行とかどうやろか?ってお父さんとお母さんが話していたのを覚えてる。別に2人が行きたがっていたから結婚式をこっちに決めたわけではないけれど、どうせならヨーロッパの中でも大好きなこのオーストリアを思いっきり満喫してもらいたい。結婚式の後はカンちゃんと別れ、それぞれの親と家族水入らずの時間を過ごす予定。カンちゃんたちはウィーンに行き、俺はお父さんお母さんと3人で数日間オーストリアを回る。もし時間があったら俺の路上の様子も1回見てもらおうかな。いつもこうやって元気にやってるってところを見せて安心してもらいたい。親と3人で外国旅行とかなんかすごい変な感じだ。ちょっと前までは親にただ連れて行ってもらっていただけだったのに、今度は俺が連れて行く番。でもまず1番は素敵な式をすること。あー、上手くできるかなぁ。あー、トロールかわいいなぁ。