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こんなもんで負けねぇぞ

2016年3月1日(火曜日)
【インド】 チェンナイ














もう超汚い。







電車じゃなくて体が。







いや電車も汚いけど。











これでいい方の等級だもんな……………






ゴミは基本、外に投げ捨て。

車内で出るお弁当の空き箱も全部投げ捨て。


そりゃキチンとゴミ箱に捨てるほうがなんか間違ってる気にもなるわ。








ていうか電車の中でお弁当が出る。

普通、電車の中での食べ物はサモサとかの軽食を持って回る売り子さんから買うもんだけど、さすがに3Aになると車両スタッフがお弁当を配って回ってくれる。


うん、ちょっとはラグジュアリーな気分。


ただ体調は未だ最悪なままなのでそのお弁当を3分の1も食べられずに窓から捨てることになるんだけど。












下痢は相変わらず続いていて、トイレに行きたくなるたびにアッパーベッドから降りないといけないのがなかなか辛い。

かといってローワーベッドだと、他の乗客のベンチに使われるので横になることができない。


トイレに入ればまぁ臭くて汚くて、そこで何度も何度も下痢をしているとどんどん気分が滅入っていく。

水道で顔を洗うけど、この水だってコケだらけのタンクに入れられるてるものだろう。
洗った気にならない。








汚れた体で、体調を崩しまくって、そしてコルカタで大した成果もあげることができずに電車に揺られている。


とにかく少しでも体が回復することを祈って狭いベッドに横になることしかできない。


心が軋んで、周りのインド人たちがフレンドリーに話しかけてきても、とても相手をする気になれずにずっとふさぎこんでいた。




















時刻は夕方。窓から西日が差し込み始めた。

もうすぐでチェンナイに到着する。


やっとこの長かった電車から逃げ出せると思ったら、車両のスタッフが何やら紙を持ってやってきた。


俺に何か言ってくる。


なにを言ってるのかわからずにいたら、隣のおじさんがマニーマニーと言った。








★海外の長距離電車あるある


インクルードだと思っていたご飯が別料金という罠。










知らずに夜、朝、昼、綺麗に全部食べたよね。



そりゃ払いますよ。440ルピーですか。なかなかですね。750円。


売り子のサモサ食べてれば100ルピーもしなかったですね。


本当、なんで最初に有料って言わないのか釈然としないまま、電車はチェンナイに到着した。




















ああ……………南インド………………


もはや同じインドなのに、こんなにも落ち着いている。



だって地面に寝てる人がいないもん。


行き交う人々の足元でチンチン出してボロ切れまとって寝てる人いないもん。


2秒で物乞いに群がられたりしないもん。






みんな同じインド人。

顔も、着てる伝統衣装もおんなじだ。


なのにこんなにも北と南では人種が違う。



北に疲弊してから南に来ると、こんなにも違う国のように見えるもんなんだな。










チェンナイまで来たらあとは通い慣れた道だ。

少しでも早く帰るためにエクスプレスのチケットを買って電車に乗り込む。


体力が落ち込んでいて、少し歩くだけでも変な汗が吹き出してきて息が切れる。

俺がよほど辛そうに歩いていたのか、電車の中の人たちがこっち来いー!と呼んでくれ、席に座らせてくれた。


北インドでは考えられない優しさだ。






そして驚くことに、電車に乗ってる子供たちがみんなスマートフォンをいじっているというこの状況。

北と南で政府の質がどれほど違うのかが如実にわかる。










そしてほとんどの人が英語が喋れるのも本当に助かる。

教育が行き届いている証であり、教育を受けている人たちはみなとても紳士的だ。






















電車に揺られること2時間弱。


アラコナムの駅に着き、ラッシュアワーの人波に揉まれながら連絡橋を登り、ぶっ倒れそうになりながらフラフラと駅を出る。

あたりはすっかり暗くなっていて、早くカデルのところに帰りたかった。





「ヘーイ!トゥクトゥク!!サルバムスクール!?」




驚いたことに俺の顔を見た瞬間、トゥクトゥクのドライバーがカデルの学校の名前を言った。

そうか、すでにカデルのところに日本人が来ているって噂が町に出回っているんだな。




「150ルピー!!それでいいよ!!」



「いやいや、それは高すぎだよ…………前回70ルピーで行ったんだから…………」



「ノー!今はラッシュアワーだし、夜だから割高なんだよ!!」




もう面倒な交渉をする気力もなくて、それでいいから早く向かってくださいと言うと、ガッテン承知のすけ!!とドライバーは張り切ってアクセルをふかした。





















町を抜け、郊外に向かい、いくつもの曲がり角を抜け、何頭もの牛をかいくぐり、明かりのないほうへと走っていく。



どんどんと暗い荒野へ向かっていくと、やがて遠くにポツリと明かりが見えた。








トゥクトゥクが止まり、お金を払って降り立つ。




つ、着いた…………………







意識が朦朧としながら校門に歩く。





するとそこにはカデル、そして一足先にバラナシから戻っていたショータ君、さらに他の先生たちが俺のことをお出迎えしてくれていた。


へたへたと力が抜けて荷物を放り投げた。






「おかえりー!!うわー!!3日前と別人みたいになってるやん!!めっちゃ顔がこけてるよ!!」



「フミセンセイ!!オカエリナサイ!!水クダサイ!!」



「フミー!!コルカタはハードだっただろー!!」





あまりの嬉しさにたまらなくなって全身の力が抜けていくようだった。


同じインドなのに、まるで実家に帰ってきたかのような安堵に包まれた。






「めっちゃボロボロやし!!コルカタでなにがあったの!?とりあえずタバコ吸いなよ!!」



「話せば長すぎる出来事がありすぎたよ……………もう疲れた…………下痢がヤバイよ…………」



「すぐにご飯食べてタブレットを飲んでクダサイ。明日ドクターに行きましょう!!そしてトゥクトゥクに150ルピーは払いすぎです!!」






ああカデル、なんていいやつなんだ……………


それに心から信頼できるアーティスト仲間のショータ君。


みんないい人ばかりの学校の先生たち。



ここには心を許せる人しかいない。









ああ………コルカタきつかった…………



チクショー…………でもぜってー負けねぇぞ。

ぜってーまた戻ってやる。

まだなんにもできちゃいねえんだ。
























































この夜は美味しいご飯を食べ、シャワーを浴び、エアコンの効いた部屋でゆっくり眠らせてもらえた。


マジでみんなありがとう……………

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