4月3日 木曜日
【オーストラリア】 シドニー
シドニーは朝日の中。
イクゾウ君がいなくなった展望小屋で1人荷物をまとめる。
もうこの景色とも本当にさよなら。
これからの予定としてはまずゴールドコースト、その後にヌーサ、そしてケアンズまで登りきってしまいたい。
ずっと海沿いを北上する感じになる。
ゴールドコーストは名前は知ってるけどどんなとこかは全然わからない。
まぁ名前からしてビーチが綺麗なんだろうな。多分すごく有名なところだと思う。
ヌーサはまったくもってなにひとつ知らないんだけど、アメリカで別れてオーストラリアに渡ったカッピーとユージン君が恐ろしいくらい稼げたと言っていたので行くつもり。
なにやらお金持ちの保養地らしい。
そして最終目的地のケアンズまで行き、そこからニュージーランドに飛べたらなぁと考えてるけど、まぁなにも調べてないけど。
え?エアーズロックは?
うん、分かってる。
オーストラリアと言えばエアーズロック。
先住民であるアボリジニーの聖地
もちろん行きたい。
でもオーストラリアって想像以上に馬鹿でかい。
そして町があるのは海沿いばかりで、中央部分には広大な荒野や信じられない規模の農地が広がるばかりだという。
エアーズロックに行こうと思ったら車で数日かかるみたいだし、普通は飛行機を使うらしい。
ていうかオーストラリア人でもあんまり行ったことのある人はいない。
あまりにも時間がかかるし、町がないので稼ぐことができない。
西側のパースって街も少し気になるけど果てしなく遠いので、もうこのオーストラリアは東海岸のメイン部分だけを回ることに決めた。
王道ルートだろうけど、それをいかに面白いものにできるか。
とりあえずカンガルーとボクシングします!!嘘です!!
ちなみにすでにこれらの町はイクゾウ君がケアンズから南下して来る時に全て回っており、路上事情や野宿事情についていろいろと教えてもらっている。
シドニーでは悲しいくらい稼げていなかったイクゾウ君だけど、他の町では人も暖かく、お金の入りも良く、とても楽しい日々を過ごしていたみたい。
オーストラリアという国を掘り下げていくという意味では最初の街がシドニーという大都会で良かったのかもしれないな。
きっと色んな顔を見せてくれるはず。
楽しみ!!
てなわけで今日から移動開始だけど、移動手段はもちヒッチハイク。
ここシドニーからゴールドコーストまでは車で10時間くらいの距離らしいけど、長距離バスの値段、130ドルくらいらしい。
運良くセールのチケットを取れたとしても100ドル。
まぁ無理ですね。
でもここは南米ではない。
向こうでは怖くてヒッチハイク出来ないけど、このオーストラリアならいくらでもやりたい放題だ。
イクゾウ君も、待っても2時間くらいだったと言っていた。
俺の神の右手にかかったらソッコーで止まるはず!!
あ!!オーストラリアって左側通行だから神の左手か。
オーストラリアの車は右ハンドルです。
よーし!!それじゃあ気合い入れてヒッチハイクぶちかますぞー!!
の前に飯。
ゲロ美味い。
8.5ドル。
高い。
でも安い。
「あ!金丸さんですか!?」
ご飯を食べていると1人の男性に声をかけられた。
お仕事の服を着ている日本人の方だ。
実はこのお兄さん。
俺がオーストラリアに飛ぶ前日にFacebookでメッセージをくれていたんだけど、それがメールボックスに反映されていなくて確認できないでいた。
そして昨日になってようやくいただいていたメールを確認できたわけなんだけど………
「金丸さん、シドニーだったら良かったらウチに泊まってください。」
って有り難すぎる内容のものだった。
なんてこったー!!
もうシャワー南米から浴びてないんですけど。
前回浴びたシャワーが南米とかウケる。
まぁこのお兄さんの家にお泊りさせていただいていたらイクゾウ君とのあの楽しすぎる毎日もなかったわけだし、今回はそういうことだったと思おう。
わざわざ誘って下さったお兄さんには本当に申し訳ないです………
「金丸さん、これ良かったらもらってください。いつも栄養のないもの食べてるみたいだから。」
お兄さんが袋から出したのは色んな種類のビタミン剤だった。
な、なんて実用的……!!
「いやー、もっとゆっくりお話ししたかったんですけど今仕事中なので戻ります。会えてよかったです!!今度はどこかで飲みましょう!!」
そう言って疾風のごとく人ごみの向こうに走って消えていったお兄さん。
お忙しい中、わざわざ俺の体を心配してビタミン剤を渡しに来てくださったなんて、もうただのマブダチでしかないよ。
兄さん、本当にありがとうございました。
大切に飲ませてもらいます。
お仕事頑張ってください!!
最後にそんな温かい気持ちにさせてもらったシドニーともこれでお別れだ。
セントラル駅に行き、高速の乗り口がある郊外まで出る電車のチケットを買おうと窓口へ。
ちなみにオーストラリアはなんでも高いので、シドニーで日常的に通勤してる人でもバスで片道7ドルとか。
通勤や通学に14ドルとか使ってる。
きっと高いだろうなぁ。
一回ダメ元で今夜の目的地であるニューキャッスルまでの値段を聞いてみた。
「8.6ドルだよ。」
はい即購入。
2時間半ほどの距離なのに8.6ドルってめちゃくちゃ安いじゃん!!
「オーストラリアはバスは高いけど電車は安いんだよ。」
ニコリと笑うおじさん。
こりゃオーストラリアは電車を活用しそうだ。
てなわけでマジで地下鉄以外ならヨーロッパぶりじゃないか?という電車に久しぶりに乗り込む。
とことん綺麗な車内。ゆったりとしたシート。丁寧な車内アナウンス。
ああ、先進国すげぇ………
久しぶりに電車に乗ったけど、電車って全然揺れないね。
いつも移動時間に日記を書いてるけどバスの中だとガタガタ揺れて手がぶれまくって、たまにiPhone自体スカして空中タッチとかしながら苦戦してるんだけど、まったく揺れないから日記書きもはかどる。
窓の外にはとりたてて何もない自然の風景が続く。
すでにシドニーのあの大都会は微塵もない。
電車はあっという間にニューキャッスルに到着した。
小さな駅舎が町の規模を表している。
人の姿もほとんどない。
別にこの町には用はない。
あくまで目的地はゴールドコースト。
他の町には寄らなくていい。
またここから高速道路のある道沿いまで出たいのですぐにチケット売り場へ向かう。
よーし、今日のウチにヒッチハイク出来たらしたいとこだなー。
と思っていたんだけど、驚くことにチケット売り場が閉まっている。
それどころかキオスクみたいな売店も開いていない。
完全に仕事終わりましたって雰囲気。
おいおい、まだ18時だぞ?
シドニーはあんなに眠らない街だったのに。
電車の時刻表も電光掲示板ではなく色あせた紙だし、チケットの改札口もない。
ニューキャッスルは地図上で見る限りそこそこ大きい町だ。
それなのに駅前の建物はどれも古びて活気がなく、歩いてる人もまったくいない。
ま、マジか………
オーストラリアもまた都市集中型の過疎が進んでるのかな。
今夜は郊外での野宿になるだろうから、夜のために何か買っておこうとメインストリートへ。
それなりに綺麗な通りなんだけどマジでまったく人が歩いていない。
お店もほとんど閉まっており、18時の仕事帰りの賑わいなんて皆無。
狂気の賑わいだったシドニーとのギャップが半端じゃない。
とりあえずサブウェイはあったので1番安いサンドイッチを購入。
1番安くても7.5ドルだけど。
そして駅の裏にある市バスの発着場へ。
目当てのバスは1時間に1本しかでてないという美々津レベル。
仕方なく寂しいバス停に座って日記を書いた。
19時を過ぎてようやくやってきたバスに乗り込む。
4.6ドル。高え。
バスの中で歌ってやるぞこの野郎。
うん、2秒で蹴り出されるだろうな。
バスは夜の中を走っていく。
ゴールドコーストまでの道は1本だけ。
これだけ田舎なので道路沿いまで行けばどこででも野宿できるしヒッチハイク出来る。
どこで降りようかなぁと思っていたら、バスドライバーのおじさんが俺を呼んだ。
「どこまで行きたいんだい?」
「レイモンドテラスってところまで行きたいです。明日ヒッチハイクをしたいので。」
「あー、ヒッチハイクかい。よし、ならもうちょっと座ってな。」
そして少ししてバスはひとつの寂しげなバス停に止まった。
完全に郊外の1本道だ。
「そこの空き地のところがヒッチハイクしやすいよ。バス停で寝れば雨が降っても大丈夫だ。向こうにマクドナルドとコンビニもあるから。じゃあいい旅を。」
か、完璧すぎる。
やっぱりこの国ではヒッチハイクがとても一般的みたいで、みんなどういうものかを理解している。
おじさんの笑顔に見送られながらバスを降りる。
シドニーではほとんど触れることのなかった現地の人の何気ない優しさがじんわりと染み渡る。
何にもない道沿いにドライバー用のマクドナルドとコンビニがポツリとある。
トラックがひっきりなしに轟音をあげて走っていき、ここならヒッチハイクもすぐにつかまりそうだ。
今夜はもう暗いので明日やるとして、マクドナルドに行きWi-Fiを繋いだ。
しばらくメールの返事なんかをしてからバス停に戻り、裏の芝生の上に蚊帳を敷いた。
バス停の中なら雨の心配はないんだけど、トラックがあまりにもものすごい音をあげながら走っているので怖くて眠れたもんじゃないんだよな。
人も来るだろうし。
多分今夜の空なら雨は降らないだろう。
蚊帳の中に潜り込む。
オーストラリアは野宿したい放題なのでベンチの上で寝袋に入るだけでいいだろうと思っていたんだけど、
この蚊帳があって本当によかった。
オーストラリアは蚊が多い。
蚊帳のおかげで奴らも中には入ってこれない。
外灯の灯りの下、目をつぶる。
芝生のクッションが気持ちいい。
やっぱり野宿はいいな。夜と一体になれる。
こんなどこか分からないような郊外の道沿いだけど、寂しさは全然ない。
もはやあの南米を旅してきたら全てが快適に整備されたオーストラリアなんて楽勝すぎる。
さぁ、明日はどんな出会いがあるかな。