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イクゾウ、アジアに行くぞう!!

4月2日 水曜日
【オーストラリア】 シドニー






目を覚ますとアーロンが気持ち良さそうに体を伸ばしていた。

いつもなら輝くシドニーの街並みを見晴らせるこの寝床が、今朝は深い霧に覆われて何も見えなくなっていた。

すぐそこの公園の木さえ見えないほど真っ白な霧に閉ざされている。

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すでに自分のテントや寝袋をたたんで荷物をまとめているアーロン。


「フミさん、イクゾウ、僕は大学があるから先に行きます。時間があったらまた後で会いましょう。」


そう言ってアーロンは俺たちのよりもデカいバッグパックを背負って公園を降りて行った。

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今日は4月2日。

楽しかったイクゾウ君との日々も今日で終わり。
イクゾウ君は今夜のフライトでマレーシアに行く。

食パンをかじりながらやっとの思いで買った飛行機のチケット。

よく頑張ったよ。



「もう80ドルも持ってますからね。無敵ですよ。50ドル持って行ければいいと思ってたからマジで奇跡です。」



たったの8千円で調子乗りすぎ(´Д` )

ヨーロッパまで行けばなんとかなるだろうけど、果たしてたどり着けるのか。

色んな意味で今1番注目の旅人だな。

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いつもようにトイレで顔を洗って歯を磨く。

そしてセブンイレブンに行って1ドルコーヒー。
階段に座って温かいコーヒーをすする。


今日はイクゾウ君のフライトなので路上はせずにゆっくりしよう。

駅で見送りをしたら俺もそのまま電車に乗ってシドニーの郊外に出る。

そして高速の乗り口まで行ってヒッチハイクで北へ向かうぞ。

今日中にどこまで進めるかな。





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3ヶ月オーストラリアに滞在したイクゾウ君。

世界一周最初の国でどん底を味わい、それでも根性でなんとか生き延びてきた。

食パンばっかり食べてた最初の頃からしたらだいぶいい生活してるよな。


きっとこれからどんどん稼げるようになってもっと良いものを食べられるはず。
なんたってまだギターを始めて10ヶ月、路上始めて3ヶ月だもん。伸びしろ無限大だよ。

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「いやー俺もっとギター練習します。う、うわ!!なんだこれ!?ああ………ガム踏んじゃった………」


階段から立ち上がるとジーパンのお尻にガムがくっついてるイクゾウ君。


切なすぎる………(´Д` )








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図書館でネットをしてからお昼ご飯へ。

昨日食べて感動的に美味しかったタイ料理屋さんにやってきた。

2人とも8.5ドルの美味すぎるプレートを食べる。
いやー、ここ本当美味いわ。


ていうか10ドル以下のご飯を安いと感じるようになってきているのが怖え。

早く稼いでアジアに行ったら美味しいもの100円とかでしこたま食べてやるぞ。



って、おおお………

遠かったファイナルステージのアジアがもうすぐそこまで近づいてきてるんだな。

そうか……日本ももう近いんだよな。












「あれー!!フミさんまだいたんですかー!?」


タイ料理屋さんでくっちゃべっていると、大学の授業を終えたアーロンがやってきた。

本当はご飯を食べたらすぐ出るつもりだったけどもう1回アーロンに会いたかった。

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「フミさん、イクゾウ、お願いがあります。」


「なに?」


「3人でバスキングしたいです。是非やりましょう!!」




そういうことか^_^


アーロンはギターの腕は申し分なしだし、歌もかなり上手い。
そこらへんのバスカー顔負けのレベルだ。

でもまだ路上演奏はしたことがないという。


路上の腕を磨けばどこにだって行ける。
これで稼げるようになれば夢だという世界一周の役に必ずたつだろう。

よし!やろうぜ!と言うと大喜びするアーロン。



何をやるにも全ては自分の選択。

正解はない。

でも悔いのない選択こそが1番正しい道だ。









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平日のセントラル駅の地下道は人でごった返していた。

誰もが無表情に、我先にと歩いていく。

iPhoneをいじりながら、ヘッドフォンで外界を遮断しながら。


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そんな中に3人で歌を響かせた。


そしてすぐにコインが入った。
やったぜとアーロンとハイタッチした。
これでアーロンもバスカーの仲間入りだぜ。






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黒人のおばちゃんが飛び入りしたりしながら1時間弱の演奏。

お金は期待してなかったんだけど、ありがたいことにギターケースの中には15ドル入っていた。


また午後の授業があるからと急いで大学に戻って行ったアーロン。






俺とイクゾウ君はまだフライトまでの時間があるので外の階段に座っておしゃべり。

イクゾウ君との話が面白すぎてただのおしゃべりでもすごく楽しい。


「よし、もうマレーシア行かなくていいんじゃない?今夜も飲もうか。うん、そうしよう。晩ご飯いつものタイ料理屋さんでいい?」


「そうっすね。よし、チケット破り捨てます!ってさすがにそれは出来ないっす………これでチケット破り捨てたらすごいですよね………」


「うん、もしやったら伝説の旅人やね。」


イクゾウ君がオーストラリアで覚えた巻きタバコをクルクルっと巻いてくれる。
お金を出し合ってはいたけどいつも巻くのはイクゾウ君にやってもらっていた。

俺も覚えないとな。



「ところでイクゾウ君ってブログやってたよね。」


「はい、ギターと小銭と世界地図っていうやつです。ちゃんとしっかり書いてますよ。」


「それランキングには登録しないの?」


「ランキングっすか……なんかそういうのに属するの嫌やんですよねぇ……」


「入ったらいいじゃん。イクゾウ君の旅めちゃくちゃ面白いんだし。そして散らかしまくってよ、すごいやつが現れたって感じで。」


「いやー、でも金丸さんのブログのコメントとかマジ無理ですもん……あんなの書かれたら俺ソッコーで帰国して殺しに行きますよ。あ、帰国するお金ない。」




もうボーダーぎりぎりっていうかボーダーぶっちぎりで突破してる彼の旅。

今世界で1番世界一周できなさそうな旅人、小林イクゾウの今後がとても楽しみなので、なんとか説得。



「………分かりました、ランキングやってみます。これが本当の旅だってみんなに教えてやります!!うわ!!何これ!!また!?旅つれええ………」




お尻についたガムを悲しそうにはがすウィルスイクゾウ。


1日に2度ガムの上に座るという旅人としてのポテンシャルが計り知れない彼のブログは現在果てし無く下の方にいると思うので、お時間ある方は探してみてください。









2時間してアーロンが戻ってきた。


「あれぇ!!まだいたのイクゾウ!!早く行けえええ!!!」


イクゾウ君を心配して背中を押すアーロン。


「じゃあ行ってきます!!会えてよかったです!!マジで頑張ってきます!!」


「死ぬなよー!!」


爽やかな笑顔を残して小走りに駅へと去っていったイクゾウ君。

たった8千円しか持ってないのに。

いやー、面白いやつだった。
これから彼がどんな旅をしていくのか楽しみでしょうがないわ。

間違いなく今1番面白い旅人やな。

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さぁ、俺も行くか。
すっかり遅くなってしまったけど今日で少しでも北上できるといいな。


シドニー。オーストラリア最初の街。
南米から来た俺に世界とはここまで違うってのを見せつけてくれた。

もうこのきらびやかな大都会ともしばらくはおさらば。
ここからオーストラリアの深い部分にどんどん潜って行くぞ。


グッバイシドニー!!














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あれ?






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あれ???





ち、違う!!誤解だ!!これは違うんだ!!

ただ美女がいたからビールに誘っただけだからビールうっめええええ!!!!



はい、シドニーもう1泊。

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