3月29日 土曜日
【オーストラリア】 シドニー
「金丸さん、おはようございますー。」
目が覚めると隣に髪の毛ボサボサの変なやつが眠そうな顔で座っている。
そう、イクゾウ君。
久しぶりの野宿でしかも仲間が出来て嬉しいよ。
「いやー………お腹空いたなぁ……うわっ!!ゴキブリ!!あっち行けえええええ」
な、涙が(´Д` )
貧しすぎて朝から涙が(´Д` )
ゆうべの綺麗な夜景を見せてくれたシドニーの街が朝の太陽を受けて輝いている。
まるでジオラマみたいに壮大な人工の街。
荷物をまとめ、そんな巨大な資本主義の街に突入だ。
「金丸さん、まずはどこ行きたいですか?」
「んー、とりあえず身だしなみを整えたいからどっか公衆トイレある?」
「分かりました、自分がいつも行くところがありますから。そこで顔とか洗いましょう。」
この街の全てを知り尽くしているイクゾウ君。
まずはショッピングモールの中のトイレへ。
まだほとんどのお店が閉まっているので人が全然いなく、ゆっくりと歯を磨く。
「金丸さん、シャンプーする時ってどうやってやってます?俺蛇口の下に頭が入らないんすよ………」
「え?これくらいなら十分洗えるよ。手で後頭部を押さえて水を溜めながら洗うんだよ。」
「ま、マジっすか、やってみます。」
めちゃくちゃ綺麗なトイレの中、蛇口の下に一生懸命頭を突っ込んでいるイクゾウ君。
ま、貧しすぎる………
「ちょ、金丸さん何写真撮ってるんすか。うわー、この姿親が見たら泣きますね。旅つれー………」
あまりの面白さに写真を撮る。
まぁ俺もこう見られてるんどけどね。人がやってるところ見ると爆笑が止まらない。
「いやいや、オーストラリアすごいよ。お湯が出てるじゃん。普通冷水だからね。冬にこれやったらなかなかキツイよ。」
「旅全然楽勝じゃないじゃないですか。話が違いますよ………」
1ヶ月街を彷徨い続けたイクゾウ君なので、もはや完璧なるライフサイクルが出来上がっている。
身だしなみを整えたら、その足でセブンイレブンに行き、横の階段に座ってコーヒータイム。
1ドルのカプチーノが固い階段に良く合う。
ちなみにオーストラリアではマルボロが1箱22カンガルーとかします。2200円。バカにもほどがある!!!!
「いやー、マジで無理っすよー、もうずっとこれです。」
イクゾウ君はそう言って巻きタバコをふかしている。
巻きタバコならだいたい8日くらいはもつそう。それでも17ドルだからやってられない。
2人でマズイ巻きタバコを根元まで吸って、今度はインターネットタイム。
サーキュラーキーというこれでもかってくらい美しいハーバーのフェリー乗り場の前に、博物館ですか?みたいな建物がある。
これ図書館。
中はまぁとんでもなく綺麗で静かで、ケータイでラテンミュージック鳴らしてるやつなんてもちろんいない。
Wi-Fi飛びまくりの充電し放題。
最高すぎる。
やるなイクゾウ君。
この街の快適な過ごし方を熟知してやがる。
さーて、そろそろヤバくなってたバッテリーの充電しようかな。
うん、できない。
コンセントの形がわけ分からん見たこともない形状に変わりやがった。
チクショウ、せっかく日本出る時に全世界対応のコンセントアダプター持ってきてたのにすぐ失くしてしまったので、毎回形状が変わるたびに買わないといけない。
ただのアダプターが千円もした。
メールを返したり動画をアップしたり、溜まっていたことを全てやってしまう。
ちなみに俺はブログをいつも日本時間の0時にアップするよう心がけているんどけど、オーストラリアに来たことで日本との時差はプラス2時間。
今まで日本よりも遅れて過ごしていたのに、日付変更線を越えた瞬間時間がぶっ飛んで日本よりも先の時間を生きている。
なわけで0時にあげようと思ったら夜中の2時に更新しないといけない。
無理です。
しかも野宿生活となるオーストラリア。
朝起きてからの更新になるので、日本では7時か8時のアップになるな。
いつもと時間は変わるけどこれからも読んでもらえると嬉しいです。
「ご飯何にしようかー。」
「炊き出しはどうします?普通に美味いですよ。ピザとか出る時もあります。シェルターならシャワーを浴びれるし。」
「うーん、今回はいいかな。」
カナダではだいぶお世話になったホームレスシェルター。
3食の飯がついて、交流スペースではみんなとテレビを見てゆっくり過ごすことができた。
それまでシェルターなんてものの存在を知らなかった俺にとって、とてもいい社会勉強をさせてもらった。
しかしやはりいくら万人に開かれているものではあっても、完全なホームレスではない俺がタダ飯、タダシャワー、タダベッドを利用するのは若干の抵抗があった。
あの時はアメリカ入国のために少しでもお金を節約しなければと使わせてもらっていたけど、今はこのシェルターというものがどういうものかも分かっている。
今回はナシにしよう。
「マジすか……じゃあ俺もそうしてみます。」
まだまだご飯を食べられるほど稼ぐことの出来ないイクゾウ君まで俺に付き合わせるつもりはないけど、そうしますと言ってくれる。
男気のあるやつだ。
さて今日は土曜日。
平日の賑やかさは影をひそめ、普段サラリーマンがひしめいているビジネス街も静まり返っている。
中心部のほうはまだ人がいるけど俺が歌っているマーチンプレイスは完全なビジネスエリア。
今日はまったく人がいない。
というわけで今日はイクゾウ君オススメのセントラル駅でやることに。
シドニーのセントラル駅にある地下通路は、アメリカで別れてオーストラリアに来ていたカッピーとユージン君コンビもオススメだと言っていた場所。
やってきてみると、ちょうどいい広さの通路が300メートルほど続く、まさにギターのバスキングにピッタリすぎる場所だった。
人通りは申し分なしというか多すぎるくらいに行き交っている。
こいつはいい!!
と言いたいところなんだけど、まぁそんなナイススポットなので同業者もいますよね。
通路のこっち側と向こう側の両端に1人ずつすでに陣取って演奏していた。
ギターの弾き語りだ。
地下通路だというのに2人ともアンプとマイクを使っており、どんなに離れても通路全体に音が響いている。
こういう時は交渉だ。
あんまりやる気のなさそうな方のオッさんに何時までここでやるのか聞いてみた。
「ああー?ダメだダメだ、俺は金が必要なんだ。どっか行ってくれ、俺はここを動かないぞ。」
ただ時間を聞いただけなのに、邪魔するなみたいに追い払われる。
くそ、大都会め…………!!
もう腹がたったので、2人のパフォーマーのちょうど真ん中でギターを取り出した。
通路のど真ん中あたりで、両方とも200メートルは離れてるというのに、両側からオッさんたちの演奏が聞こえてくる。
地下通路でアンプ使うなよな、と思いながら思いっきり声をあげた。
悪くはない。
ちょろちょろとは入る。
しかしやっぱり両側から鳴り響いてくるオッさんたちの演奏に挟み撃ちにされて全然集中できない。
ダメだこりゃ。
おとなしく場所を変えることに。
夕日が沈み、次第に盛り上がり始める土曜日の夜。
通りをおめかしした人たちが楽しそうに歩いている。
浮ついた雰囲気が通りを埋め尽くす。
スーパーマーケットのウルワースに着くと、たくさんの人が行き交う中でイクゾウ君ががむしゃらに歌っていた。
「あ、やっぱりダメでした?じゃあここでやったらいいですよ。僕はあっちにもいい場所知ってるんで。」
場所を譲ってくれて通りの向こう側に歩いて行ったイクゾウ君。
ウルワースは安くて大きいスーパーマーケット。たくさんの人がひっきりなしにやってくる。
ここならもう少しは稼げるか。
気合いを入れて演奏開始。
シドニーって最初に着いた時からすごく驚いたんだけど、中国人の数が凄まじく多い。
本当に、あれ?ここどこだっけ?って思うほど中国人だらけ。
公共施設の案内板には英語の下に中国語の表記がしてあったり、街の広告とかも中国人向けのものがすごく多い。
たまに信号待ちしてる時、信号を待ってる15人くらいの人全員中国人の時とかあるくらい。
もはやチャイナタウンとかそういうコミュニティレベルではない。
完全にオーストラリア人として生活しているみたい。
話ではすでに5世とか6世の世代になってるみたい。
それほど昔からオーストラリアには中国人が住んでいるんだな。
そしてそんな中国人の人たちってすごくお金を入れてくれることに驚く。
世界一周フロムJAPANと看板を出しているので、俺が日本人だということは分かっている。
その上で彼らはガンガンお金を入れて笑顔で親指を立ててくれる。
ワーホリで大人気なので日本人ももちろんたくさんいるんだけど、今のところ交流はゼロだ。
それにしても…………
白人の酔っ払いのたちの悪いこと。
イヤッフオオオオ!!!
ヒーハーーーー!!!!
とそこらじゅうで叫んでおり、俺のことを見つけるとオーストラリア英語で何か言いながら笑っている。
そして1番小さな5セントコインをポトリと置いてまたギャハハハハー!!と爆笑しながら歩いていく。
そんな奴らばっかり。
大騒ぎしながら絡んできて、ゴミをギターケースに入れるほぼ半裸みたいな服を着た女たち。
アホがなんかやってるぜー!!みたいな感じ。
ボケとビッチだらけ。
この感じ、日本の飲み屋街を思い出すなぁ。
普段本当に大人しくて、人に無関心に生きているのに、お酒を飲んだ途端大声を出して気が大きくなる感じ。
もちろん世界中どこでも少しはそうだけど、この馬鹿ノリってカナダとかアメリカみたいな歴史の浅い大国でよく感じることなんだよな。
ヨーロッパではほとんど見なかったし、南米の人もたまに喧嘩はしてるけど基本みんなお酒を飲んでもフレンドリーさは変わらない。
普段から日常を楽しんでるからなかな。
人とのコミュニケーションが希薄なストレス社会で生きていると、お酒を飲んだ時に爆発してしまうんだろうな。
その時、ウルワースの出口からちょっとヤバそうなおばさんが出てきて警備員に体を掴まれた。
ポケットの中の物を出しなさい!!と言われている。
おばさんは離せ!!と抵抗しているが警備員がポケットに手を入れるとお菓子か何かの商品が何個か出てきた。
ふん!!返したんだからもういいだろうが!!と言った感じで警備員の腕を振り払って歩くおばさん。
そして捨て台詞。
警備員さんにファッキンドッグ!!
俺横でポカーン。
この一連の騒動。なかなかの騒ぎだったにも拘らず、足を止める人はゼロ。
みんな我関せずと会話をやめることもなく歩いている。
それがとても異様に見えた。
あまりにも酔っ払いたちに絡まれるのでもういい加減ムカついてギターを置いた。
そこにちょうどイクゾウ君も帰ってきた。
「どうだった?」
「あ、僕今日なんか調子良かったっす金丸さんはどうでした?」
「もうこの国で夜やりたくない。」
2人であがりを数える。
やべー32ドルだー、と喜んでるイクゾウ君。
「イクゾウ君、財布持ってないの?」
「ないっす、これっす。そもそも入れるお金ないっす。」
スーパーのビニール袋に嬉しそうにコインを入れている。
あまりにも貧しい(´Д` )
俺のあがりは69ドル。
目標の100ドルにはなかなかいかないなぁ。
それからいつもの安いラーメン屋さんへ。
店員さんは全員日本人で、カウンターの中で店員さん同士で日本語で喋っている。
俺とイクゾウ君もカウンターの前で日本語で喋っている。
お互い完璧日本人だと分かっているのに英語で話しかけてくるケバい化粧の店員さん。
ありがとうございますと言っても、サンキューって言われる。
目も見ず、無表情で。
路上終わりなので小さなコインで払ったんだけど、横の先輩らしきケバい女の人がレジの子に、これもらったのー?混んでる時は受け取ったらダメだからねー、と俺の目の前であからさまに大きな声で言ってくる。
なんでこんな言い方ができるんだろう。
なんかもう、なんだろ。
居心地悪くて仕方ない。
「じゃあ今混んでないから大丈夫ですね。」
と言ったら新人ぽい女の子だけ笑った。
そりゃ酒飲んだら大暴れしたくなるか。
なんかモヤモヤしながら今夜もイクゾウハウスへ移動。
家から見渡す夜景。
中はあんなにドロドロしてるのに、外から見るとこんなに綺麗だ。