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この旅最大のバカ

3月28日 金曜日
【オーストラリア】 シドニー





ガサガサ………ガサガサ…………






ガサガサガサ!!!








「うわああああ!!!」



一瞬で目が覚め、声をあげて飛び起きた。



泥棒だ!!荷物をあさってる音!!


眠気が吹っ飛び、緊張と恐怖で身体中の毛が逆立つ。

真夜中の公園のベンチ。周りには誰もいない。


ガバッと体を起こして荷物を見た。







こんばんはー。

photo:01







お、おお、お前、何してんだ(´Д` )

枕にしてるバッグをガリガリこじ開けようとしているなんか変な生き物。


でけぇ!!
ちょっとしたネコより大きい!!



「うわああああ!!!あっちいけええ!!!」


怖くて直接叩けないので、ベンチをバンバン叩くけどガン無視でバッグをガリガリやってる変な動物。

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この野郎……と写真撮ってやったら、フラッシュに驚いたのか何も持ってねぇじゃねぇかと思ったのか、ノソノソ去っていきました。




はぁああ………久しぶりの野宿でいきなりこんなネタいらねぇよ………











photo:03




次に目を覚ますと、目の前の歩道をたくさんの人たちがランニングしていた。

おお、この異常なまでの朝のランニング、欧米の象徴だな。




photo:04




寝袋をたたみながら、湾の向こうに並ぶ摩天楼を眺める。


あれに立ち向かうのか。

こんなボロボロのギターだけで。

不安で押しつぶされそうになりながら荷物をまとめ、ベンチを後にした。










公園の中に公衆トイレがあったのでそこでまずは顔を洗いシャンプーをする。

おお………久しぶりだな、この蛇口の下に頭を持っていく感覚。

ていうか蛇口からお湯が出てくるんですけど?すげぇ………


そして荷物が多すぎてバッグに収まらなくなってきていたので、何か捨ててしまうことに。


そして選んだのはこれ。

photo:06




フィンランドでオンニと一緒に買ったH&Mのニットとジーパン。


ああ、このニットずっと着てたなぁ。

もうボロ雑巾みたいになってたけど、まだ着ていたかった。

また戦友がいなくなった。








雨が降る公園を抜け、街へと向かう。

そそり立つ高層ビルがとても窮屈に感じられる。

photo:05




地下、地上、中二階、スロープ、ガラス張り、

もう全てが迷路すぎて自分がどこを歩いてるのかわからなくなる。

photo:07




photo:08









とりあえずお腹が空いたので、そこらへんにあるセブンイレブンに入った。

カップラーメンくらいなら安いだろう。



photo:21





はい400円。

バカ?イースター島はるかに超えてるとかバカ?




じゃ、じゃあコーラを………




400円。

ここマチュピチュ?






せ、せめて水を!!





300円。

ここ砂漠?






仕方なくカップラーメンと食パンを購入。7カンガルー。700円。


コーヒーディスペンサーでお湯を入れてコンビニの前で立ち食い。

雑誌からそのまま出てきたようなオシャレにもほどがあるレディース&ジェントルマンがゴキブリを見る目で見てくる。




よーしよーし、なるほどね。

ついおとといまでアジア人だ!!お金持ち!!と思われていたのに、今は完全に貧民を超えてゴミです。

photo:09





周りにはジェニファーロペスとジョージクルーニーみたいな人ばかり。

いいもん、別に。カップラーメン美味しいし。
あ、麺を吸ったらスープがほっぺたについた。いけね。






ほおおおおおおふふうぅぅぅ………


大丈夫、俺大丈夫だぞー………
そんな変じゃないぞー………

中米の人たち思い出せ。
5人に1人くらいメッシのユニフォーム着てたじゃないか、オシャレ着で。

カッコいいスーツ着てるからって偉くないもん!!









泣きながらカップラーメンを食べて、街を歩く。

そしてマクドナルドの前でWi-Fiを繋いだ。

別に南米でもWi-Fiはそこまで困らなかったけど、この大都会ではマジでどっこにでもフリーWi-Fiが飛んでいる。

いくらでも繋ぎたい放題だ。







実は数日前からある人とメールのやり取りをしている。

イクゾウ君という若者。

彼も旅をしているんだけど、なにやら俺に会うために先回りして今シドニーにいるらしく、今日待ち合わせをしているのだ。


ギターを弾くみたいで、このシドニーで路上演奏をやって稼いでるみたい。

どんな人かわからないけどとりあえず会ってみよう。









photo:10




昨日歌ったマーチンプレイスへと向かう。
ビジネス街の中に伸びるストリートにスーツをビシッと着た人々が行き交っている。

俺ういてるなぁと思いながら歩いていると、そのサラリーマンたちの中に俺よりもういてる1人の日本人を発見。


大きなバッグとギター、頭にタオルを巻いて、どっからどう見ても血迷ってるやつにしか見えない。

あ、俺もだ。






「うわ!!うわ!!すげー金丸さんだ!!はじめまして!!イクゾウです!!すげー!!」


まだ若者のイクゾウ君は22歳。

俺に憧れてギター持って出てきたんです!!と言ってくれる。



実はこのイクゾウ君、1年ほど前に俺にメールをくれていたみたい。

ギター持って旅したいんです!!という内容だったんだけど、結構そういうメールはたくさんもらうので覚えていなかった。



「うわー……会えたー……俺日本からオーストラリアに最初に来たんですけど、この2ヶ月マジで死にかけだったんっす。」


「え?日本出る時に持ってたお金は?」


「いやー、ちょっと手違いがあって2千円しか持ってこれなくて……」


「2千円!??!」


「金丸さんが根性とギターと寝袋があれば楽勝ですってメールで言ってくれたからそう思ってきたのに全然楽勝じゃないんですもん。」


「………で、でも!!路上で稼げなかったの?ギターは何年やってるの?」


「9ヶ月っす。」


「う、う、うん………それで路上演奏はどれくらい経験あるの……?」


「え?ないです。オーストラリア着いて初めてやったっす。レパートリー9曲っす。」


「………………」


「金丸さんが楽勝って言ったから。でもまったく稼げなくてご飯食べられないしベンチで寝てたら雨降ってくるし、3日目に所持金2ドルになった時マジで楽勝じゃないじゃないですかってメールしようと思いましたもん。」








ガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガクガク(´Д` )



こ、こいつバカだ(´Д` )


度を超えたバカだ(´Д` )





「もう2ドルになった時に、俺終わったと思ってふっきれて、なぜかそこから稼げるようになったんすよ。3日目に初めて5セント入った時、曲ストップしてギターケースの中の5セントずっと見てましたもん。」



話があまりに面白くて、大爆笑。
いやー、なかなかのクオリティのアホです。




「そ、そうか……俺そこで今から路上やるよ。」


「マジっすか!!ちょっと見てていいっすか!?俺マジで金丸さんのYouTubeの再開回数の半分自分っていう自信あるっす。」


「そ、そう、ありがとうね。あ、トイレ行きたいなぁ。」


「トイレっすか?そこの通路入って右に曲がってフードコートの中にあります。あとは向こうの通りのビルの中か、あっち側にマクドナルドがあります。」




すでに1ヶ月シドニーにいるというイクゾウ君。
この街のことを完璧に知り尽くしている。



「ところでイクゾウ君はどこのホテル泊まってるの?」


「自分野宿っす。もしよかったら僕の家行きますか?マジで完璧の場所なんで。旅のプロの金丸さんにまだ旅始めて3ヶ月の自分が言うのもあれっすけど。でもオーストラリアの野宿情報なら何でも聞いてください。あ、あととりあえずホームレスシェルターがあってそこでシャワー浴びられます。んで街のあちこちで炊き出しもあるんで時間帯で場所が違うんで全部教えますからうんたらかんたら…………」




この男、すげえ(´Д` )

捨てるものゼロってこういうことを言うんだ(´Д` )


野宿と路上演奏で最底辺を這いずって生きている。
俺とまったく同じだ。




「あ、そこのトイレって有料?」


「え、なんすか?トイレが有料ってどういうことですか?」


公衆トイレが有料というのは世界の常識。
そんなこともちろん知らないイクゾウ君。

この男のゼロ具合、半端じゃねぇ。









てなわけでキラキラした目でイクゾウ君が見ている中、昨日と同じマーチンプレイスの地下道で路上開始。

カッコいいところを見せたいんだけど、やはり人は足を止めない。
まったくもって止めない。

これまでの南米が嘘だったかのように全員素通り。
見向きもしない。

高そうな服を着た人々が足早に行き交う。



しかしお金はパラパラと入っていく。
地下道は声が響くので、向こうの方から歩いてきた人が俺の前に来た時にポトリとコインを置いて行く。

しかし足は止めない。

ありがとうと言っても、一瞬ニコリとするだけですぐに背を向ける。

んー、人との触れ合いがまったく発生しない…………




「いや、すごいっすよ金丸さん、やっぱりさすがっす。俺なんて5時間歌って30ドルいけばいいくらいです。金丸さんまだ2時間経ってないのに50ドルくらい入ってるじゃないですか。いやー、やっぱりすげえ。」



お金の入りは悪くない。
オーストラリアには2ドルコインがあるのでそれがバンバン入るし、中にはポケットの中のコインを無造作に掴んで金額を確認もせずに入れていく人もいる。
3ドル4ドルなんて当たり前に入る。

やっぱりオーストラリアの金銭感覚恐ろしいわ。








俺もいつもの場所に歌いに行ってきます!!と歩いて行ったイクゾウ君。


それからも数時間歌い、20時くらいまで頑張って人通りが少なくなってきたところでギターを置いた。


あがりは91ドル。
悪くはないが、この国だったらもっといける。
オーストラリアでの目標は1日100ドル。
20万はためてやるぞ。








photo:11





シドニーのメインストリート、ジョージストリート。

高層ビルが立ち並び、高級なブランドショップからファストフード店まであらゆるお店がどこまでも連なり、まともに歩けないくらいのたくさんの人が行き交っている。

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大きな荷物を持っていると歩きにくいことこの上ない。









そんなジョージストリートの真ん中にウールワースという大きなスーパーマーケットがある。
タウンホールと呼ばれる駅があるこの交差点が1番シドニーで賑やかなところだとイクゾウ君が言っていた。



そんな人でごった返すウルワースの入り口の横にギターを抱えて声を張り上げているイクゾウ君を見つけた。

photo:13







その歌とギターは……


お世辞にも上手いとは言えない。

ギターは始めて10ヶ月でストロークとローコードしか弾けない。歌はまだまだカラオケのレベル。

そして卒業写真とか翼をくださいなどの初心者向けの弾き語り曲を歌っていた。もちろん日本語で。


田舎の駅前にいる若い路上シンガーを思い出すその雰囲気。

バッグパックの前にギターケースを置いて、真剣に声を張り上げる姿がとても懐かしく見えた。

photo:14






初めての路上演奏が海外で、まだ3ヶ月しか経っていない。

俺は日本でもやっていたからある程度の勝算はあった。

でもイクゾウ君は何も持たずにやってきている。
これからどんどん磨かれていくはず。クソ度胸はマジで半端じゃねぇな。








「いやー、今日調子良かったっす。20ドルいってるはずです。やったー。」


路上を終えたイクゾウ君と晩ご飯に行くことに。


「どこか美味しいとこ知ってる?安くて。」


「あ、いいとこ知ってます。ラーメンでいいですか?」



えー?ラーメンかよー。ラーメンとか全然食べてないからもうどんな味だったかあんまり覚えてないっていうか、俺そんなにラーメンとか、



ラーメンだとコノヤロウ!!!!


俺をおちょくってやがるのか!!
この物価のクソ高いオーストラリアでラーメンなんか食べたら間違いなく10ドルオーバーだろうが!!

イクゾウ君も20ドルしか稼いでないのにそんなラーメンとか食えるわけねぇだろ!!








photo:15




醤油ラーメン、3.9ドル。


ぎゃあああああああああ!!!!!!
美味えええええええええええ!!!!!!!

なんの変哲もない醤油ラーメンだけど美味えええええええええ!!!!!



「安いとことかそういう情報なら任せてください!!」


うおう!!イクゾウ!!でかした!!





ちなみにこのラーメン屋さんの店員全員日本人です。

photo:16




建物の中が全て日本料理店という日本人ビルで、居酒屋さんとかがたくさん入っています。

他のお店はハイパー高いので僕らは立ち入り禁止ですけどね………


ラーメンを食べながら2人で食パンをかじった。









「それじゃあ、僕の野宿場所に行きましょう。めちゃくちゃいい所っすから。」


イクゾウ君について2人で街を歩く。
きらびやかな街の灯りが降り注ぐビルの間を縫いながら。

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野宿場所っていってもなー。
俺が昨日見つけた場所も悪くないし、まだ日本を出発して3ヶ月経ってないやつが俺に野宿ポイントを紹介するなんて10年早えっていうかすげええええええええええええええ!!!!!!!!!!!


photo:18






「ちょっ!!何これ!!半端じゃねぇ!!」


「マジヤバイっしょここ?」


ハーバー沿いの丘を上がっていったところにある公園。
その真ん中に展望小屋がイクゾウ君の野宿ポイントだった。


大きな空間、屋根、そして地面は人工芝でクッション抜群、

なによりこの夜景はどういうことだーーー!!!

photo:19





シドニーの湾にかかるハーバーブリッジとノースシドニーの高層ビル群が一望できる最高の場所だ。



「もうここに1ヶ月いますけど何も言われないし、朝も散歩のおばさんとかがグッドモーニングって起こしてくれるんすよ。マジ完璧ッスよ。」


そんな人工芝の上で裸足になって寝転がる。
出会いを祝してビールで乾杯。
オーストラリアはなんでも高いけど、ビールは350mlが200円ちょいで買える。


こんな夜景を見ながらビールなんて最高すぎるぞ?







感動しながらビールを飲んでいると、そこに1人のおじさんがやってきた。

ヘーイとイクゾウ君が挨拶する。
どうやらここの野宿仲間みたい。


おじさんはインドネシアから来てる出稼ぎの人で、たまにここに寝にくるんだそう。

話では部屋が高すぎて借りられないんだとか。


「俺の仕事は1日150ドルもらえるんだけど全然足りねーんだー。」


「え!?150ドルってすごいじゃないですか!!足りないことないでしょ?」


「全然足りないよ。部屋を借りると300ドルはするんだぜ。普通で400ドルだ。」


「いやいや、すごく安いじゃないですか。」


「月じゃないよ、週300ドルだぜ。オーストラリアはとても厳しい国だよ。」



週300ドル!!
月12万じゃねぇか!!
そりゃ足りないよ………



「金丸さん、すごいっすね、英語ペラペラじゃないですか。イナフってどういう意味っすか?何言ってるか全然わかんないんすけど。」



い、イクゾウ君……よくその英語力で3ヶ月生き抜いてきたね(´Д` )


何言われてもまったくわからないのでいつも、イエー、って空返事してるらしい。

この男面白すぎる(´Д` )

photo:20









ビールを飲み、ホームレスのおじさんと3人で人工芝の上に横になる。


いやー、気持ちいい。

きっとホテルに泊まって見るよりもこの夜景は格段に綺麗に見えてると思う。


シドニー生活、楽しくなりそうだ。

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