スポンサーリンク カンちゃん号泣 2016/7/8 2016/06/27~ ノルウェー, ■彼女と世界二周目■ 2016年6月27日(月曜日)【ノルウェー】 ドランメンフェリーは夜中の2時半にノルウェーの港町、ラルビクに入港した。カンちゃんを膝で寝かせながらずっと日記を書いていたのでさすがに頭がぼーっとする。やっぱり車旅で、しかもずっと人と一緒だとどうしても話をしたらりして日記を書く時間が減ってしまう。1人だと暇なので移動時間にいくらでも書けるんだけどなぁ。船内放送が流れて車両甲板に降り、車に戻って待機し、やがて誘導の人に指示に従って車が動いていくと、俺たちもエンジンをかけて船から滑り降りた。ノルウェーの空は夜中でも明るかった。ていうか日の出が早すぎて夜のピークをもう過ぎているのか。まだ3時なのに。昔、根室の町で路上していて、スナックの人に呼ばれて流しをし、さて帰るかと店のドアを開けた時、まだ3時くらいだったのに空が真っ赤に焼けていたのを覚えている。あの時の衝撃はすごかった。日本でも東の端っこだとこんなにも日の出が早いんだと驚いだもんだった。ここは東の土地ではなく、北だ。太陽が地平の深いところまで下がらないためにこうして夜でも明るい。そんな空の下を寝床を探して走った。カンちゃんのナビがあまり上手くいかなくて、間違えて高速に乗ってしまったりして変なところで降りて疲れが増してしまう。目がしょぼしょぼして眠かったけど、なんとか走って田舎道のパーキングスペースを見つけてそこに車を止めた。朝焼けの白い空の下、すぐに後部シートを整理して寝袋にくるまった。結局、朝の5時くらいに寝たのであまり睡眠時間を取れないまま目を覚まし、すぐに移動を開始した。ちっとヘビーだな…………明後日にはオスロから飛行機に乗ってあの憧れのスバールバル諸島に行くので、今日を含めた2日で島での滞在費をノルウェークローナで稼いでしまわないといけない。ノルウェーの銀行はかなりの手数料を取るので換金するのは馬鹿らしい。前回の一周中、ノルウェーに入った初日に2000円くらい換金しようとしたら1500円くらい手数料で引かれるけどいいの?って言われて爆笑で銀行を出た記憶がある。ウケるーって。そして死に物狂いで歌ってノルウェークローナを稼いで飯を食い、そこから大きく貯蓄をするに至った。まだ世界一周3ヶ国目、というか外国3ヶ国目だったノルウェー。美しいダイナミックな自然、その中に散らばる歴史あるファンタジックな教会、そして初めて外国で大きく稼げて自信をつけることが出来たこの国。世界一周してどこが1番よかった?って聞かれた時、いつもすぐにノルウェーと答えていた。それくらいノルウェーは素晴らしい。フィヨルドの谷間の野宿も、白夜の中のヒッチハイクも全てがあまりにも美しくて、まだ外国をほとんど知らなかった俺にとって、初めて日本にはない旅を感じさせてくれた場所という思い入れもあった。あの大好きな大好きなノルウェーにまた戻ってきたぞ。今回はさらに深いところに潜り込んで、絶景巡りしまくってやる。なんせ車だもん!!行きたい放題だ!!と、そのためにもお金をきちんと稼がないといけない。大丈夫、前回でノルウェーは稼げるところだってのはわかってる。まったく何の情報もないまま手探りで回っていたけど、行った町ではほとんど稼げたし、おそらく目立たない小さな町でも稼げるところはいっぱいあるはずだ。まずはスバールバルのために向こうの滞在費を稼ぐこと。日記もあまり書けていないし、ネット作業も溜まってる。でも歌うことが最優先事項。あー、やることがありすぎて気がはやる。ちゃんと歌って稼がなきゃ。と、そんな焦っているピリピリがつい外に出ていたのかもしれなかった。ドランメンに到着し、早いところご飯を食べて路上を開始しようとカンちゃんにご飯をお願いした。俺はその間に日記を書かないといけない。「んー、風があるからガスの火に悪いなぁ。どうしよう。」「助手席に荷物を移動して空いた車の中のスペースでやればいいよ。」「え?どういうこと?」「いやだから、後ろの荷物を助手席に移動するやん。そしたら後ろにスペースできるやろ。そこで作ったら風も少しは弱くなるやろ。」言い終わってからカンちゃんの動きが止まってるのに気づいた。「なんか………怖い………」そう言ってカンちゃんは助手席を降りて荷物の移動を始めた。ちょっと言い方が強かったかなと思いながらも、日記書きに没頭した。日記を書いてブログに投稿することはいまや俺1人のやるべきことではない。アフィリエイトで収入が発生して旅の資金になるんだから、これは2人の仕事だ。俺に日記を書く時間を作ってもらわないといけない。いつも運転と路上をやってるので料理の時間は俺にとって大事なフリータイムだ。その時、後ろでキャッ!と声がしてガタガタと音が聞こえた。驚いて振り返るとフライパンが倒れてガスコンロがひっくり返っていた。料理中だったオカズが、全部ではないけどシートにこぼれていた。すぐに車を降りて駆け寄ると、シートに味付けをしたお肉と玉ねぎが散乱しており、カンちゃんが慌ててガスコンロを持ち上げた。ちょうど火を消していたタイミングだったからよかったけど、コンロの鉄の部分が熱されており、倒れたところにあったカンちゃんのバッグの一部と車のシートが少し溶けてしまっていた。ガスコンロは縦長の直立させるタイプのものなのであまりバランスは良くない。心配していたことが起きてしまった。すぐにこぼれた食材を拭き取るが、汁が染み込んでおり、匂いがついてしまっていた。カンちゃんに怪我はなかったのはよかったけど、車内に匂いがついたこととバッグやシートが少し溶けてしまったことに心が乱れた。するとカンちゃんが泣き出した。どんどん泣きかたが激しくなっていき、顔を押さえてしゃくり上げている。抱きしめて大丈夫だよ、大丈夫だからね、と背中をさするが、泣き止む様子はなくずっと体を震わせている。「なんで私が泣いてるか………わかる?」声も絶え絶えにそう言うカンちゃん。「こぼしたこととかシートが溶けたこととかじゃなくて………フミ君が冷たくて………これからどこまで冷たくなっていくのかと思うと怖いの…………」このところ、カンちゃんのナビや荷物のパッキングとか、色んなことにヤキモキしていた。自分1人ならズバズバっと素早く行動できる。でもカンちゃんは俺ではない。カンちゃんにはカンちゃんのペースがある。お化粧もしないといけないし、たくさんある洋服の整理もしないといけない。努めてはいるけど、いつの間にか自分のペースを押しつけようとしてカンちゃんに冷たくなっていた部分があったのは自覚している。2人が出会った頃、付き合い始めた頃はきっとこんなことはなかった。カンちゃんも、あの頃は冷たいと思うようなことは一度もなかったって言う。でも、こうしてずっと1日中行動を共にしていれば、必ず慣れる。慣れればそれまで以上のことを相手に要求するようになる。これくらい分かるやろ?って。それがカンちゃんには重荷すぎたのか。このままどんどん慣れていけば、カンちゃんに対する要求はもっとハードルが上がっていくはず。相手に要求すること、相手を敬うこと、相手を可愛がること、そのバランスの難しさを痛感した。今までどれだけ恋愛をしてきたのか。それなりに経験して、パートナーとの距離感は勉強してきたはず。それでもやっぱりまだまだなんだよなぁ。大切な大切なカンちゃんをぞんざいに扱うつもりなんて1ミリもない。別にカンちゃんが求める理想が高すぎるわけでもないと思う。気をつけないと。気をつけながらも、お互いがお互いの機嫌をうかがって腫れ物を扱うようになるのは絶対にダメだ。やっぱり2人旅っていい訓練になる。これから一生2人で過ごすなら、これくらいで亀裂が入ってるようじゃ話になんないよな。カンちゃんが落ち着いてきたので2人で料理を作った。「カンちゃん、心配させてごめんねっていうか辛っ!!これ辛い!!」「………うん、私こそワガママ言ってゴメン。シートは多分車の保険で大丈夫だと思うっていうか辛っ!!これ辛い!!!」食べたのこれ。韓国のウルトラ激辛焼きそば。何考えるのこれ!?バカなの!!バカ旨辛なの!!?って2人でむせながら焼きそばを食べた。さぁ、気を取り直してドランゲンの町で路上やるぞー!!っていうか雨すげえええええ!!!っていうか駐車場ゲロ高えええええええええええええええええええ!!!!!町中にあるパーキングエリアに来て、雨の中チケット機の前でマジで目を疑いました。1時間30クローナって書いてあって、え?と思って計算機で換算してみると370円と出た。ずおう!!!ドイツのそこそこの都会でも1時間1.5ユーロとかそんなもんだった。180円くらい。それが倍。別にそんなに大きな町でもないのに。もうあまりの値段に最後の雨の中西保志並みにびしょ濡れです。気持ち良さそうに。怖え……………ノルウェー怖え……………前回は毎日野宿&ヒッチハイク&パンというガンジー並みの生活をしていたので、そこまでノルウェーの物価の直撃は免れていたけど、車になるとそうはいかない。こ、こいつはマジで高いな…………ま、まぁでもその分稼げたらいいんだよ!!1時間で3億クローナくらい稼げばいいんだよ!!ガンジーからビルゲイツで乱交してやる!!!1時間でソッコー戻ってきてチケットを買い足せばいいだけのこと!!よし!!そうと決まればチケット購入!!うん!!ノルウェークローナ1円も持ってない!!昨日入ったばっかりだからノルウェーのお金がないので駐車場止められない!!あぁ…………中西保志歌うまいなぁ………………町外れの脇道に地元の人が路駐してるところを見つけたのでそこにドラフトで止めて、一応カンちゃんに車で待機してもらって1人で歌いに行くことにした。さいわい雨も止んだようだ。「よし!カンちゃん!今から俺がウルトラ稼いでくるから何が欲しい!!ヴィトン!?バーキン!?マリメッコ!?」「ケバブ食べたい!」「よおおおおおおおし!!!!ケバブ2億個食わしちゃる!!!!!」車を飛び出してダッシュでホコ天到着!!イヤッホオオオオオオオオオ!!!人いねええええええええ!!!!!!!!え……………な、なに…………?なんでこんなに人いないの…………?そこそこの町だし、ホコ天も充実している。H&Mもある。なのに人が閑散としすぎ。そしてビビるくらいのジープスの数。マジで歩いてるの半分くらいジープスですか?ってくらいそこらへんにいるし、町角に座り込んで紙コップを設置完了している。デンマークには全然いなかったのにノルウェーに来た瞬間、半端じゃない数だ…………どうやらジープスたちにとってもノルウェーは最高の稼ぎ場なんだろうな…………前回の旅を思い出すわ……………とにかく稼がないことにはカンちゃんにケバブを食べさせてあげられない。人通りは少ないけどとりあえず演奏開始。うん、お金は入る。でもめっちゃまばらで寂しいことこの上ない。こ、こいつはヤバイな……………ジープスたちがお決まりのロングスカートを蹴りながら歩いてきて、しげしげとギターケースの中のお金を覗き込んでくる。しかめ面で。もう、本当ジープスたちの存在って暗いよなぁ。しばらく歌っていたけど、どうもカンちゃんのことが心配になってきた。さっきあんなことがあったのにまた1人ぼっちでほったらかしにしているのが可哀想で、歌に集中できない。お金も少しは入ったので、とりあえず移動することはできるか。ささっと荷物をまとめて車に戻った。あがりは1時間ちょいで406クローネ、5440円。うん、悪くはないか。カンちゃん1人で泣いてないかなと車に戻ると、アッケラカンとした顔をして助手席に座ってた。「寂しくなかった?」「うん!パソコンが充電できるからトイストーリー見てた!!」おお、充電インバーター大活躍のおかげでそんなこともできるんだな。他にも写真の整理や、さっきガスコンロで溶けたバッグの穴を縫ってくれていた。ありがとうね、カンちゃん。今日はカンちゃんとゆっくり過ごそうと思い、車で町中に移動し、少しメールチェックだけして次の町に進むことにした。町中にパーキングの看板が立っていて何台か駐車しているスペースがあったので、そこの列に俺たちも加わった。国が変わったので駐車ルールに気をつけないといけないけど、大まかにはデンマークと同じようなもんだろう。車を止めたらさっきのH&Mに行き、フリーワイファイに繋いだ。他の地域はどうかわからないけど、ヨーロッパのH&Mにはフリーワイファイが飛んでいるのでどこでもネットができる。少しメールチェックだけして、それからスバールバル用のあったかい服を探したけど、季節的にそんなに厚手のものがなかったのでなにも買わずに店を出た。スバールバルってもうほぼ北極なので上着ないとキツイよねーって言いながらも俺たちはまだあったかい服はほぼ持ってない。大丈夫か?なんとかなるかー、それよりもケバブ食べようよ!!ノルウェーのケバブいくらだろうね!!と笑いながら車に戻ると、ワイパーに黄色い紙が挟まっていた。罰金500クローナ。6100円。ちょっと待てええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!ここって駐車OKのとこだよな!?ちゃんと確認して止めたぞ!!!それに他にも車止まってるし!!!よし!!他の車にも黄色い紙オール挟まってる!!!今日の稼ぎさようなら!!ケバブどころかガンジー以下!!!終わった……………油断っていうかルールわからんかった…………そこら辺の人に聞いたらやっぱりここは駐車禁止のところだったみたい。罰金は2週間以内に銀行で払えるとのこと。いきなり洗礼きついわ………………「はぁ、あんまり稼げなかったし、こんなことになってゴメン…………」「フミ君のせいじゃないよー。美味しいご飯作るから元気出していこう!!」カンちゃんのおかげでだいぶ救われてる。2人旅は、きっとそれだけで大きな得るものがあるよな。ちょいとスーパーで物価チェック。やっぱり魚介が豊富。ビールが1本500円。ドイツで買って来といてよかった………これ超懐かしい。前回のノルウェーでいつもこいつを飲んでたなぁ。安っぽい味だけど、あの時の俺にとってはめっちゃ贅沢な外国の味だった。これもありがたい!ノルウェーのスーパーのレジにはこのコイン支払機がある。毎回コインをたくさん積み上げてレジの人に嫌な顔をされなくて済む。今の所すごい勢いでヨーロッパのスピード違反の詳細を身をもってレポートしていってるけど、おそらくノルウェーではスピード違反をすることはないと思う。だってノルウェーではスピード違反のカメラが設置されている500メートルくらい手前に、この先カメラありますよーという表示看板があるから。親切すぎる。隠れてねずみ捕りする日本の警察見習って!!そうこうしながら次の町に移動し、郊外にある湖のほとりに車を止めた。静かな湖が森の中に広がっていて、22時過ぎの明るい空が水面に映っていた。ほら、トロール、懐かしいだろ。今からもっともっと北に上がってお前の故郷にも行くからな。湖を眺めながらカンちゃんが作ってくれたフィットチーネのクアトロフォルマッジを食べた。「美味しい!塩ちょっとちょうだい!!」「あー、後から味足すやつだー。」笑い声が森に流れる。お互いの良い部分、悪い部分をたくさん見ながら、もっと深く仲良くなっていきたいな。