1月22日 水曜日
【エクアドル】 キト
勝負の朝が来た。
ついにこのキトでの戦いの日々に終止符を打つときがきた。
吉崎ふみ君にイースター島とオーストラリアまでの飛行機を早く買わないと恐ろしい値段になりますよと教えてもらってから、死に物狂いで稼ぎまくってきた10日間。
そして手持ちのユーロをナオちゃんに、スウェーデンクローナをケータ君にそれぞれ買ってもらった。
何もオマケであげるものがないので、コロンビアで路上してる時にもらったブラジルのお金が4ドル分くらいあったのでそれをケータ君にあげた。
俺はブラジルには行かないけど、ケータ君はリオのカーニバルに行くみたいだからな。
さぁ、旅行代理店!!!
勝負だ!!!
やってきたいつもの代理店。
ここの人たちはみんな優しく、そして何軒も代理店を回った中で最安の値段だった。
「あらー!!元気にしてた?久しぶりね。」
愛想のいいおばちゃんが笑顔で迎えてくれる。
お金が出来たら戻ってきますと言ってから10日も経った。
恐る恐る、もう1度アルゼンチンからオーストラリアの値段を確認してもらった。
「……………値段は…………」
「………………」
「1100ドルよ。」
「うわああああああああああああああああ!!!!!!おばちゃん大好きいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!」
思いっきり抱きつくとビックリしているおばちゃん。
やったぞ!!値上がりしてない!!
そしてついに支払い。
これまで貯めに貯めてきたドルを袋から取り出す。
札で1000ドル。
そして1ドルコイン、50セントコイン、10セントコインを積み上げていく。
代理店のママが玄関のドアを閉めて鍵をかけた。
大金を扱う時は人目につかないようにしないといけない。
テーブルの上に大量のドルが広げられた。
確認のカウントをしていくおじさん。
そしてついに…………
チケットを手に入れた……………
3月26日の朝、アルゼンチンのブエノスアイレスからオーストラリアのシドニー空港へと飛ぶ飛行機のチケット。
チケットを見つめる。
ついに…………やっと…………
やっと手に入れたぞ…………
これで俺は南米から脱出できる。
この地球の反対側から、太平洋を越える手段を手に入れた。
これでもう南米で靴磨きになるという選択肢は……………
いや、消えてない。
あり金をつぎ込んだおかげで、俺の袋の中のドルはあと10ドル。
残りの金は、ブルガリアとボスニアヘルツェゴビナという、南米ではケツを拭くくらいしか価値のない金。
どこの銀行でも換金することはできない。
実質俺の全財産、千円。
南米で千円(´Д` )
あと2ヶ月。
あと2ヶ月で南米を下り、アルゼンチンまで行かないといけない。
その途中、マチュピチュとウユニ塩湖というものすごく金のかかる観光地が立ちはだかっている。
道中で間違いなく稼ぎながらそれらをクリアーして下っていかないといけない。
千円から(´Д` )
こ、怖え(´Д` )
俺出来るか?
ちょっとでもミスったら、一発で終わりだぞ?
もしうまく稼げなくて飛行機の期日までにアルゼンチンにたどり着けなかったら…………
考えれば考えるほど怖ええええええ(´Д` )!!!!!!
こっからは、こっからはマジで気合い入れないといけない。
死ぬほど節約して食うか食わないかでやっていかないと。
なんとしても全ての行くべきところをクリアーしてアルゼンチンまでたどり着いてやる。
そしてオーストラリアまで飛べば、あとはもう先進国でヘドが出るほど稼ぎまくってアジアに渡れば、日本はもう目の前だ。
というわけで、その足でケータ君とお肉屋さんに行き昼飯で5ドルを使い、残金500円に。
せ、せ、せせ、節約の日々を………
あ、今カフェでカプチーノ飲んでるので残金300円。
うふぉぉぉぉおおおおおおおおお!!!!!
テンション上がるうううううううう!!!!!!
「よっしゃケータ!!!コノヤロウ!!!キト最後のバスキングに出陣する用意は出来てんのかチンカスゥ!!!」
「すんません!!出来てないです!!」
「なんだとおおおおおおお!!!????てめーこの街最後のバスキングだぞコノヤロウ!!!三重県の怪人、剛兵太知らねぇのかあああんん!?!?ライブの後に喉から血が出るまで歌ってお客さんからあなたキツネに憑かれてますとか言われるくらいマジでやらないといけならりれるっちゃられら!!!!」
「ちょっと待ってください!!ブログが2位になってる!!!」
「……え…………やだそれなに………抜かさないで…………」
「よおおおおおおし!!!!金丸さん歌いましょうか!!」
「……え……ちょ、ちょっと待って………」
チケット買った瞬間余裕こきすぎて、バスキング開始時間は15時という宮崎時間。
でも昨日見つけた最高に反応のいい通りを中心に攻めまくる。
最後のバスキングということでケータ君の声にも気合いが入っている。
拍手ともう1曲というアンコール。
バスドライバーのおじさんたちも、もう何も言わなくても手招きして中に入れてくれる。
呼ばれたらどんな状況だろうが乗り込むぞ!!
と張り切って車内に飛び込んでみると、こんな状況だったりする。
身動きとれねぇ(´Д` )
運転手さん、何で呼んだの(´Д` )
ものすごい大混雑の中、ギターを抱えて歌ってるやつとか迷惑でしかねぇ(´Д` )
でもそれでもこのラテンアメリカの人々は文句を言うどころか迷惑そうな顔ひとつしない。
でっぷりしたおばちゃんがゴメンねーって俺の前を通る時に、あまりにギチギチすぎて体を押しつけてくるんだけど、ギターをストロークする右手が振り下ろすたびにおばちゃんの大きなオッパイにボヨンボヨンボヨンって当たってる(´Д` )
スタンドバイミー♬って言いながらおばちゃんのオッパイを等間隔で叩いているんだけど、おばちゃん全く気にしてない。
その状況が面白すぎて歌えないくらい吹き出していると他の乗客たちもニコニコ。
ど、どうせなら可愛いコスプレみたいな制服を着てる女子高生のオッパイを(´Д` )
夕方にものすごい土砂降り雨になったり、帰宅時間で人が多すぎて乗り込めなかったりして、決して順調なバスキングではなかった。
でも夕方になっていつもの通りに戻ってきた時には充実した疲れが体を包んでいた。
「金丸さん、もういっちょ行かないですか?」
「お、気合い入ってるねー。よーし、あのバス行ってみっか!!」
日が完全に沈み、車のヘッドライトが俺たちを照らす。
ギターを持った男と、小銭がしこたま詰め込まれたバッグを重そうに背負ったアジア人2人が街を歩く。
もうキトは完全に俺たちを受け入れてくれていた。
いつもの中華料理店へ。
すでに指定席みたいになってるいつものテーブルで今日のあがりの清算。
さて、これからの南米南下にあたっての当座の資金となる今日のあがりは…………
ジャスト100ドル!
1人50ドル!!
「すげー!!最後のバスに乗ってこれで100ドルくらいだね、って言ってたらマジでピタリ100ドルだ!!」
「俺たちすげー!!」
もはやコインを数える手際と早さが銀行員並み(´Д` )
ケータ君にいたっては数えすぎて指先の指紋が消えてきてるという(´Д` )
50ドルか。
まぁ十分だろう。
これからガンガン南下していくけど、先々の街で確実に稼いでいけばいいんだ。
今までもずっとそうやってきた。
俺なら出来る。
絶対に諦めんぞ。
中華料理店のみんな、いつもありがとうございました!!!!
お姉さん大好き!!
宿に帰ると、いなくなったビッチたちの代わりに新しいヒッピーが俺たちの部屋にやってきていた。
アルゼンチンのブエノスアイレスから旅してるカップルなんだけど、2人ともすごくフレンドリーで、自分たちの荷物を自分たちのベッドの周りに綺麗に整頓して置いているとてもしっかりした2人。
あっという間に仲良くなった。
そして前から仲の良かったティンチョーも俺たちの部屋にやってきた。
いつも朝からマリファナを吸ってて、よくバスバスキングの時に会っていたティンチョー。
あだ名は店長。
「フミマリワナ~、フミマリワナ~♬」
っていつもグデグデになりながらギターを鳴らして音痴な歌を歌ってる。
ビッチたちがいなくなって宿の雰囲気はものすごく良くなった。
相変わらず宿の中はレゲエが流れてて夜遅くまでみんなマリファナ吸ってワイワイやってるけど、0時を過ぎたら解散してくれるし、ゴミもバカにみたいにそこらへんに投げ捨てたりしない。
仲良しで、ピースフルな連中。
そんなみんなでレオが持ってたパソコンで映画鑑賞。
ハングオーバー3じゃん!!
見たかったんだよー!!
マリファナの煙が充満する部屋の中、みんなで大笑いしながら映画を見た。
最高の気分だ。
チケットは買えた。
当面の移動費も手に入れた。
あとは先に進むだけ。
あ、ケータ君のブログが2位になってたのもめでたい!!
でも抜かさないで(´Д` )
いまだかつて一緒に行動してる2人が1位2位になったことってあるのかな?
しかも2人とも宮崎人て^_^
こうなったらもうMRTあたりに取材してもらわないと!!
あ、MRTって宮崎の地方テレビです。
てなわけでもうすぐキト脱出!!!