7月7日 日曜日
【アメリカ】 ニューヨーク
あ、書き忘れていた。
面倒くさがりのカッピーが、こんなにもぶっ飛ばしてニューヨークまで俺に会いに来てくれたのは、ただたんに俺のことが大好きで仕方ないからではない。
ある人との約束があったから。
昨日それをカッピーから受け取った。
見慣れた絵だった。
この大好きな絵は、ミユキさんのものだ。
イタリアを回っている時にミユキさんと会い、この絵手紙を託されたそう。
あのカビ臭いヨーロッパの街並み、石畳の路地裏、古城と教会とカフェ、もはや懐かしい。
海を越えたお届けもの、今アメリカで受け取ったよ、ミユキさん。
イタリアにいたんだね。
今頃は違うところにいるのかな。
会いたいな。
ミユキさん、俺は元気だよ。
ミユキさんも元気でいる?
いつかまた会えた時に、最高の笑顔でいられるように恥ずかしくない旅をするから。
「ううう………お、おはよー………」
「おはよー、フミ君。はい、冷えてるよ。」
起きた瞬間にビールをついだコップを渡してくるカッピー。
冷えてるよじゃねぇよ(´Д` )
う、うお、冷えてやがる…………
たった一晩で部屋きたね!!
おやすみー。
ベッドがあるのに床で寝るユージン君。
み、ミユキさんに顔向けできねぇ(´Д` )
「さてー、そろそろ行こうかー。」
「そうだねー。今日こそ稼がないと本当にヤバイよね。」
「そうだねー、よし、じゃあ行こうか。」
「うん、行こう行こう。頑張るぞー。」
「あ!!バス乗り過ごしたーーーー!!!!」
と言いながら、誰1人立ち上がろうとしないという一連の流れをてっちゃんに断ち切ってもらって、渋々荷物を抱えて宿を出る。
と、その前に、俺のブログのコメントに、ニューヨークでお会いしましょうってコメントをくださっていたよちりんごさんという方がいるんだけど、その方にメッセージを送っておいた。
ブログをやってらっしゃる可愛いらしい女性みたいだ。
「やったね!フミ君!!これで歌ってるとこ聴いてもらって、よちりんごさんにお友達紹介してもらって今夜飲み会だね!!」
「よーし!!モテるぞー!!」
こんなことで、1日に対するモチベーションが急に上がる僕たちは幸せものですね(^-^)/
路上の前にラーメンでも食べに行こうかということになり、てっちゃんが調べてくれたワシントンスクエアの近くにある「匠」というお店へ。
「いらっしゃいませー。」
懐かしいJPOPが流れる店内。
テレビではダウンタウンの番組をやっていて、まっちゃんが笑っている。
うおー、な、懐かしい。
肝心のラーメンですが、味は中の下です。
日本だったら全然流行らないです。
でも1杯12ドルです。
ちなみに今ニューヨークで旋風を巻き起こしている一風堂は15ドルで2時間待ちだそうです。
さて、お支払いですが、ここで僕たち貧しいバッグパッカーが越えなければいけない高い壁があります。
チップです。
北米ではお店で食事をした場合、チップは必ず払わなければいけません。
カナダでは10パーセントでした。
でもアメリカでは15パーセントだと、以前アメリカ在住のサチさんに教えてもらっていました。
あくまでチップです。
気持ちの良いサービスを受けた時に、気持ちとして渡すものです。
値段なんてありません。
でもアメリカではあります。
税抜きの合計金額が53ドル。
4人でラーメン食べて5300円ていうだけですでに爆笑ものですけど、これに税金が加わって58ドルです。
さらにチップで15パーセントなのでプラス8ドルといったところです。
僕らはお金がありません。
なので10パーセントくらいでいいだろうと5ドルプラスした金額を払いました。
そしたら金額を確認したチャラい女店員がプラプラ歩いて戻ってきて言いました。
「問題があるんですけどー。」
「なんでしょう?」
「お金が足りませんー。ニューヨークではチップは15パーセントいただいてるんですよー。もう一度確認してくださいー。」
これ本当の話ですからね。
チップが足りない、と要求してくるんです。
彼らはモロッコ人ではありません。
日本人です。
北米ではウェイターの給料がものすごく少ないと言います。
時給2~3ドルとかそんなもんらしく、チップで稼いでいるそうです。
しかし客からしたらそんなこと知ったこっちゃありません。
チップは良いサービスに支払うもの。
確かにラーメン食べてる時に一度お水を入れに来てくれました。
しかしそれだけだったら、財光寺にある天領うどんのおばちゃんは、うどんを食べ終わるまでに5回は水を入れに来ます。
まだお水が半分以上入ってるのについできます。
ひどいときは、最初にお水を持って来て、まだコップを口をつけてないのに注ぎに来てすれすれまで入れてきます。
常にニコニコしてます。
水飲ませすぎです。
そんな天領うどん財光寺支店が大好きです。
あのおばちゃんがニューヨークに来たら富豪になれます。
でもここは宮崎じゃなくてニューヨークなので請求された通りのチップを払いました。
釈然としないです。
僕やカッピー、ユージン君は路上でパフォーマンスしてます。
人々の落としてくれるお金で食ってます。
でももちろん、決まった金額を入れろとは言いません。
10曲聴いて1円しか入れてくれなかろうが、笑顔でありがとうと言います。
そんなの当たり前のことです。
でもここはニューヨークです。
やはり釈然としないです。
お店からしたら税金のかからないお金で人件費をまかなえるのですから素晴らしいシステムでしょうね。
まぁいいや。
馴染めそうにないから、あまりお店で食べるのはやめよう。
それから近くの楽器屋さんへ。
アメリカにも入れたことだし、いい加減ぶっ壊れて音が出なくなっていたハーモニカを買うことに。
あー、この2ヶ月くらい、ずっと音が出ないところを外して吹いてたなー。
さらに最近他の穴も音が狂い始めてきたので、もうほとんど役に立っていなかった。
というわけでAとGを購入。
俺がいつも使ってるプロハープは、マットでメロー、乾いた素晴らしい音がするんだけど、いかんせん高い。
1個40ドルもする。
なのでケチって30ドルのやつと10ドルのやつを買ってみた。
こんな安いの初めて使うけど、まぁよほど耳の肥えた人じゃないとそこまで聞き分けられないだろう、と思って吹いてみたら、驚くほどにクソでした。
30ドルのやつはまだ使えるけど、10ドルのやつは子供のおもちゃにもならねぇ。
音の抜け悪すぎ、ピッチ不安定すぎ、音量なさすぎ。
はい、教訓。
仕事道具をケチったらいけません。
ワシントンスクエアという、これまた路上パフォーマーの激戦区という公園に行ってみた。
たくさんの人がノンビリ日向ぼっこしたり、噴水で水浴びをしている。
「あー、こんにちはー。今日は歌うんですかー?」
あ、ユーキ君来た。
超爆笑ブログをやっている、インマイライフのユーキが昨日に引き続き路上を見にきてくれた。
やべー、ユーモラスー。
痩せすぎー。
好きなブログの人に会うのってやばいですね。
「今日は翔子さんはいないんですか?」
「あ、今日は別行動です。いつも一緒ってわけじゃないんです。」
「多分あれだね、危険な臭いを察知したんだね。こんなゲスたちのとこに来たら何されるかわかんないから。」
しょ、翔子さん、いやらしい目で見たりしてませんからね(´Д` )
そんなのどかな公園のいたるところで、まぁやってるやってる。
ジャズをやってるバンドから、ピンの黒人の激ウマトランペット吹きから、しまいにはどうやって運んだかわからんけど、グランドピアノを弾いてる人までいる。
小さな公園の中であまりにもパフォーマーの密集度が高すぎるので、ここじゃ稼げないと決断して場所がえ。
おとなしくいつものセントラルパークへ向かった。
日曜日のセントラルパークはやはりものすごい人ごみ。
そしてパフォーマーの数も半端じゃないけど、ワシントンスクエアよりはやりやすい。
カッピー&ユージンと別れて、それぞれに路上開始。
どっちが稼ぐか勝負だ。
いつものトンネルで歌ってるところに綺麗な日本人の女の人が話しかけてきた。
「へー!世界一周してるんですか!?すごいですねー!!」
彼女からとても面白いニューヨークの日本人事情を聞かせてもらった。
チュウヅマ、って言葉を知ってる?
チュウが好きな妻じゃないですよ(´Д` )ハァハァ。
駐在員の妻、です。
ニューヨークには数多くの日本企業がオフィスを持っています。
その現地社員との調整をする、日本本社から派遣された駐在職員さんが、まぁニューヨークにはたくさん住んでおります。
その奥さんたちのことをチュウヅマと言うんだそう。
そんなチュウヅマさんは、まぁ強固なコミュニティを形成しているそうで、妻会という集まりが定期的に行われており、旦那さんが仕事に行ってる間の時間で優雅なニューヨークライフを満喫しているらしい。
今話題のレストランやカフェ、スィーツ屋さんで集まっては、どこどこさんのとこは最近いかがです?オホホホ、みたいな感じなんだそう。
それはそれでいいんだけど、これがまた女の世界むきだしだというのは想像にたやすいですね。
ニューヨークでの滞在年数が多ければ多いほど、コミュニティの中で権力を持てるそうで、今彼女のいるグループにも誰も逆らえない奥様がいるそう。
会に参加しなければ、チクチク言われ、陰口を言われ、あの奥さんは調子にお乗りあそばしているわねぇ、という昼ドラ顔負けの状況が繰り広げられているそうな。
「もう本当に疲れるんですよ。皆さんのご機嫌をうかがいながらですからねー。」
そんなチュウヅマさんたちが必ずやるものがあるんだそう。
それは習い事。
教室。
しかも可笑しいことに、必ず、必ずと言っていいほど、みんな、料理教室とヨガに行くんだそう。
なんで?!って思うけど、みんな見事に料理教室とヨガなんだそう。
それも、マダムなになにさんがやってるセレブ教室とかに行って、ワイン片手にオホホホみたいなもので、ヨガももちろんそんな感じ。
先生はご想像の通り日本人。
周りをすべて日本人で固めて、アメリカ人とはほぼ絡まず、たまに外国人が来たりすると、いつも天下取ったみたいに振舞ってる奥様たちがシュンと小さくなるんだそう。
なのでチュウヅマさんたちはほとんど英語喋れないんだって。
でもそんな日本人同士で、日本人相手のお店ばかりに行って現地の人と一切関わらなくても、日本の人たちはニューヨークに住んでいるだけで、羨望の眼差しで彼女たちを見る。
みなさんそれを自慢し、Facebookにオシャレレストランの画像をアップするんだそう。
「駐在で来ているだけで、何も特別なことなんてないんですよ?みんなただの奥さんです。でもニューヨークのステイタスでセレブ気分になってるんですよねぇ。ほんと疲れます。」
こっちが奥さんのお話。
そして旦那さんのほうはというと、ピーバーに入り浸るんだそう。
ピーバーとは?
キャバクラです。
ニューヨークではピアノバーと言うそう。
ピアノの生演奏がある、駐在さん専用のちょいと高めのキャバクラなんだって。
奥さんを日本に置いてきている旦那さんたちは、みなさんそこで女の子を捕まえて浮気、不倫でニューヨークライフを満喫しているそう。
そしてそんなピーバーに勤めている女の子たち。
そんなに簡単に誰でも就労ビザが取れるものなのか?
いやいや、もちろん不法就労です。
ニューヨークで遊びたい女の子たちが学生ビザでやってきて、手っ取り早くピーバーで働き、駐在さんからお小遣いをもらってお買い物に行くという構図が見事に出来上がってるそうな。
不法就労かぁ………
俺もまぁ路上で稼いでるから人のことは言えないけどね。
まぁ、そんなニューヨークに住む日本人たちの実情を聞かせていただいた。
見栄と優越感と排他的な性格。
日本人はどこ行ったって同じようなもんやね。
ニューヨークで暮らすことも、ヨーロッパの片田舎で暮らすことも変わらない。
今日もたくさんの人とお話して、2時間であがりは40ドル。
「それじゃ僕帰ります。会えてよかったです。」
ユーキ君はこれからもう少しアメリカに滞在して、1年以上続いた世界一周を終えて日本に帰る。
他にも現在アメリカにはブログランキングの人気ブロガーたちが集結してるみたいで、日本に帰る前の最後の旅を満喫しているんだそう。
俺はまだまだ折り返し地点。
羨ましさなんて全然ないぞ。
ユーキ君、辛かった旅の最後を吐くまで楽しんでな!!
俺も会えてよかったよ!!
ギターを片付けてカッピーたちのところへ。
夕暮れ前のセントラルパークは、この時間でもいたるところでパフォーマーたちが音を鳴らし続けている。
そんな人通りの少なくなった一角でカッピーたちが演奏してた。
ホタルが無数に舞う公園に、ユージン君の優しいギターとカッピーのムーディーなサックスが染み渡る。
んー、いいコンビだ。
でも2人のあがりは35ドル。
今日は俺の勝ち!!!
「ていうかお昼にメールしたよちりんごさんから連絡なかったね。」
「そうだね。どうしてだろうね。」
「あれだよ、危険な臭いを察知したんだよ。こいつらに会ったら何されるかわからないって。」
「なんでこんなにモテないんだろうね。」
パリのシャンゼリゼに引き続き、五番街のヴィトン前のカッピー。
五番街と貧民楽団。こりゃモテねぇ………
そんなこと話しながら、世界一の高級ブランド通り、5番外をチンタラ歩いて、ミッドタウンのオフィス街の真ん中にある有名な屋台でチキンオーバーライスを食べる。
夜遅いのにすごい行列。
味は、まぁ普通。
ドデカイ近代的なビルの前、地べたに座りこんでご飯を食べる日本人5人。
最近よく地べたに座ってるなぁ。
ニューヨークは地べたに座りやすい街だなぁ。
「さーて、フミ君にミユキさんからのお届け物も渡したし、さっさと日本に帰ろうかー。」
「え?!なに、もう帰るの?!南米とか行かないの?」
「えー、もう行かないよー。もう疲れたもんー。」
「でもコスメルは行ってもいいかな。恋するコスメル。」
「うん、そうだね、コスメルで恋するってのはいいね。」
「じゃあ一緒にバスキング旅しようよ。絶対楽しいよ。みんなでヒッチハイクして、たどり着いた町のバーで演奏して飲んだくれて、稼ぎながらメキシコ行こうよ。」
「いやだよー!!フミ君の旅とかきつすぎるよー!!」
「だいたい俺たちマイアミから32時間もかけてのぼって来たのに、また南下とかわけわかんないよー。」
「でもコスメルで恋しようよ。アメリカ縦断バスキング旅。うー!最高やん!!」
「絶対行かない!!」
さてー、明日からアメリカ南下の始まりだ。