2016年1月1日(金曜日)
【岡山県】 川上町
ガヤガヤと家の中が賑やかになって目を覚ました。
うー、眠い………
頭まで布団をかぶってもう一度寝ようとする。
布団から押入れの臭いがする。
遠い昔を思い出す懐かしい匂い。
婆ちゃんちの布団の匂い。
食器を運ぶ音が聞こえるから、お母さんお婆ちゃんたちが台所で朝ごはんを作ってくれてるんだろう。
テレビの音が聞こえるから、爺ちゃんとお父さんもコタツに座っているはず。
いいな、この目覚め。
家族に囲まれてるっていう安心感がこんなにも安らかに眠らせてくれるなんてな。
のそのそと起きて居間に行くと、テーブルにおせちとお猪口が置かれていた。
「あけましておめでとうございまあぁぁぁす……………うぃー…………ぷしゅー…………」
まだ寝ぼけた顔でコタツに入ると、お父さんから温かいオトソが入ったお猪口を渡される。
こんな寝起きで酒とか飲みたくねぇよ…………
「金粉入りやからなー、いい酒やぞー。」
へーそうなんだ、とお猪口を覗き込む。
どっからどう見てもひとかけらも入ってない……………
「あー、私のはいっぱい入っちょるわー、ラッキーやわー。」
ニコニコしてるお母さんと一緒にオトソを飲み干した。
大好きなブリの入ったお雑煮を食べ、しばらくしたら初詣に出かけることに。
玄関を開けると家の外は霜がびっしりとおりて、地面も物干し竿も全てのものが真っ白になっていた。
やっぱり山の朝は冷え込む。
その分澄んだ空気が気持ちよくて、胸いっぱいに吸い込むと、体が生まれ変わったように新鮮になる。
みんなで車に乗り込んで山の中を走っていく。
ちらほらと見える民家の軒先には日の丸の旗が挙げられており、しめ縄や門松も見られた。
田舎に似合わない車が農家の前に止まっていると思ってよく見ると、それは大阪とかの県外ナンバー。
みんな里帰りして、お爺ちゃんお婆ちゃんのご馳走を振舞ってもらってるんだろうな。
それを想像するだけで胸がじんわりと暖かくなる。
しばらく走り、どこの神社に行くんだろうと思っていたら、耳の遠くなった爺ちゃんが脇道を指差した。
こ、ここ?
お父さんも少し躊躇しながらその脇道に入る。
目の前には大きな黒い森がポッカリと口を開けている。
確かにここから先は神域ですよ、と言わんばかりの鳥居が道路にかかっている。
恐る恐る森に突入。
かなり細いボコボコの道が森の中に続いている。
谷底へ落ちていくかのような下り坂がずっと続き、これで対向車が来たらおしまいだなっていう状況。
落ち葉が散乱して、普段いかに誰も通らない道かがよくわかる。
こいつはなかなかの秘境。
こんな人里離れた山深いところに神社があんのか。
やがて少し広いスペースに出ると、車が何台か止まっていた。
軽トラが多いのは地元の人たちが来てるからだろう。
車を降りるとひんやりとした冷気が谷底を覆っており、その向こうから、ドンドン、と太鼓の音が聞こえた。
あ、何かやってんのかな。
足早に森の中の参道を駆け上がった。
崖の上には大きな社殿があった。
かなりボロボロで色んなところが傾いたり割れたりしているけど、それも風格と言えないこともない。
神殿の背後にはそそり立つ岩山の断崖絶壁がむき出しになっており、その迫力には確かに大きな力を感じる。
昔の人たちってのはこうした特殊な自然に神を見出したもの。
神社が予想を超える立派なもので、この立地もあいまってまるで秘密の神殿に来たみたいだ。
神社の名前は穴門山神社。
本殿の中では神事が執り行われており、神主さんが祝詞をあげ、太鼓を打ち鳴らしていた。
その周りには地元の爺さん婆さんたちが退屈そうに座っている。
もう本当、日本昔話。
ヨユーで百姓一揆とか起きそうな光景。
祝詞の不思議な韻、太鼓の不思議なリズム、天井に描かれた絵は年月の中でかすれて消えそうだ。
人間の業や、営みの深みにめまいすら起こしそうになる。
よし!初詣と言ったらおみくじだよね!!!
去年は末吉だったよな。
財布忘れたからお母さん100円ちょうだい!!
「あんたおみくじってのは自分のお金で買わんと意味ないんやからね!」
はいはい、そうですね、とおみくじを引いて護摩焚きの火にあたりながら開いてみた。
大吉来たああああああああああああああああああ!!!!!!!!!
お母さんの100円でええええええええ!!!!!!
◯旅立ち………早く行くが利
2月からインドっす!!!
◯恋愛………他人の言動に惑わされるな
もちのろん!!
◯ゆまちゃん………可愛いでしょう
ゆまちゃんの真価は巨乳じゃない!!愛!!
うわああああ、なんか気持ちが充実してる時に大吉とか引いちゃうとマジで晴れ晴れした気分になるわー。
いやー、いい初詣だった。
それから墓参りへ。
現在のお婆ちゃんの家は道路沿いにあるんだけど、俺が小学生のころまでは超絶山の中にあった。
超絶。
今みなさんがこれを読みながら想像している風景をまぁまぁ超えてくる山の中。
アスファルトの道から山道に入り、さらに獣道みたいな未舗装の道へ。
イノシシ捕りのワナが仕掛けてある横を通り、民家の影も形もなくなり、遭難ですか?ってくらい進んだところに昔の婆ちゃんの家はある。
つまりお母さんの実家。
お母さんはここで生まれ育った。
茅葺の巨大な屋根。中は土間になっており、農機具がいっぱい置いてある。
トイレが外だったのが強烈な記憶だなぁ。
子供の頃、正月の里帰りで寒い中、トイレは外ってなんの拷問ですか?って思ってたなぁ。
夜はお母さんにトイレについてきてもらってたのを思い出す。
お母さんはここで育ったんだよな。
お父さんに最初来た時驚いたんじゃない?って聞いてみた。
「おー、そりゃ驚いたわー。川上町の中心地まで来てから、この先はバスがないって言われてタクシーに乗ってな、どこまで行くんだ?ってくらい山に入っていくやろうが。そしたらさらにこの山の中だもんなー。あれは驚いたわー。」
お父さんがここにお母さんをくださいって、挨拶に来たんだよな…………
その時、爺ちゃんと婆ちゃんはなんて言ったんだろう。
俺はもう当時のお父さんの年を超えている。
もちろんお母さんの年齢も。
まだ年頃だった2人が、この家の下にいたんだなぁ。
お墓は家の裏手の山の斜面にある。
いつものように水をかけ、榊を供え、お菓子とお米を配っていく。
新しい墓もあれば、かなり古いもの、さらには自然石が置いてあるだけの墓もある。
相当昔からこの地に根ざしていた家系なんだろう。
お墓に水をやるお爺ちゃんを見ていると、とてもヨボヨボだ。
足が悪くなってゆっくりゆっくりとしか歩けない。
それに比べてお父さんはまだまだ元気。
俺に至ってはこの崖を滑り降りることもできる。
でも、お爺ちゃんにも、もちろん俺と同じ年齢の時があったのだ。
筋肉におおわれ、走り回り、素早く弁論していた時期があった。
俺や他の若者と同じように人生に迷い、苦悩して道を選んだ時期があった。
俺のお母さんも、この山の中で木に登ったりして遊んで、あの家の中で寝起きし、婆ちゃんに料理を教えてもらったりして成長し、高校生の時に下宿で町に降りた。
婆ちゃんにだって少女時代があって、この辺りで戦争に怯えながら暮らしていたんだ。
自分が歳をとってくると、周りの人たち全てに同じような過去があったことを知り、想像することができるようになる。様々な人生の岐路や出来事があったことを。
それを知ることで親への感謝の気持ちは年々大きくなる。
このお墓のひとつひとつがなければ、俺はここにいないかもしれない。
俺が今こうして幸せでいられてることもまた、このお墓の中の人のおかげなんだろうな。
墓参りの意味とか全然わからんかったけど、血が続くっていうことのすごさに気づいたらとても大事なことなんだな。
婆ちゃん、お母さんを育ててくれてありがとう。
それにしてもお母さんすごいとこで育ったんだなー!!
夜になって親戚の叔父さん夫婦が帰ってきて、みんなで鍋を囲んだ。
旅のことや世界のことについては大して触れず、これからどうするのかってことを聞きたくてウズウズしてるみんな。
みんなそっちのほうが興味あるんだよな。
フミ君歌ってやー、と言われたが完全オフモードなのでやんわりお断りして、元日は早めに寝た。
年の最初の日にふさわしい、良い1日だった。
さて!早速ですが、お知らせです!!
インド出発までのライブですが、まず次が兵庫県。
1月19日(火曜日)
三田市『Bar ニューオリンズ』
(南ヶ丘 1-17-38)
19時オープン
19時半スタート
1500円(ドリンク別)
次が東京品川のカフェでのライブですが、こちらは完売いたしましたので締め切らせていただきます!
マジでありがとうございます!!!
次に1月25日(月曜日)に、旅出発前の飲み会したいと思います!!
誰でも参加オーケーです!!
場所は東京三軒茶屋のバー、四軒茶屋です。
20時から飲み放題、軽食付きで3000円です。
東京で遊んだみんな、しばらく日本離れるので飲もう!!!
最後が山口県岩国市。大好きな町で思いっきり歌ってその2日後には飛行機です!!
2月7日(日曜日)のお昼過ぎくらいから夕方にかけてやります。詳細はまた後ほど!!
ご予定空けておいていただけると嬉しいです!!
1月忙しくなりそうだー。
頑張ります!!