3月24日 日曜日
【モロッコ】 フェズ ~ シャウエン
昨日書いた、一生に一度はやりたいこと。
まぁそこまでではないけれど、このモロッコでどうしても行きたい場所があった。
まだどこらへんかなぁ。
北欧とか旅してる時かなぁ。
誰かにモロッコの写真を見せてもらったことがあった。
そこにはとんでもなく美しい町の写真があった。
建物すべてが鮮やかな青色で染まった町の写真だった。
入り組んだ細い路地。輝く青い壁。
ペンキ缶をひっくり返したように、町中が青に染まっていた。
まだ旅を始めた最初のころだったので、モロッコなんてアフリカのイスラム国でどうやって行くのかもまったくわからない地の果てみたいなイメージだったけど、この青い町の風景は新鮮にまぶたに焼きついていた。
遠い遠い国ということもあいまって、俺の中では完全におとぎの町だった。
とうとう、あそこに行くんだ。
遅くなったけど、ここでモロッコのミニお国情報!!
★首都………ラバト
★人口………3200万人
★言語………アラビア語
★宗教………イスラム教
★通貨………ディルハム
★レート………1ディルハム = 10.9円
★世界遺産………文化8件
歴史はまぁぐじゃぐじゃ過ぎてどうでもいいかな。
侵略と解放の繰り返し。
近代ではフランス、イギリス、スペインにあっちを取られこっちを取られという可哀想な扱い。
第二次世界大戦後にアフリカの植民地が続々と解放されていく中で、モロッコも1956年にフランスから独立。
独立は果たしたものの、今も地中海に面した重要なふたつの港町がスペイン領のままだ。
それらの支配の歴史、隣国であることからモロッコではフランス語とスペイン語が英語よりもメジャーだ。
南部に西サハラって地域があるけど、これはモロッコによる実行支配地域で、現在も正式な領地とは認められていないよう。
モロッコにはもっともっと大きな魅力があるはず。
俺がほとんど知らないだけで。
この国も懐の深い国だ。
さあ、そんなモロッコの魅力を探すためにも進まなければ。
なっちゃんと畑くんに別れを告げ、宿を出る。
「えー、砂漠一緒に行きましょうよー。砂漠ですよ!?サバク!!サハラ!!ね!行きましょ!!」
やめてくれえええええええ(´Д` )
もう俺は先に進む!!
なっちゃんゴメン(´Д` )
楽しんでね。
畑くん、もうこれ以上盗まれないようにね。
なっちゃん、八重歯、反則。
2人とも元気で!!
オールドシティーから40~50分歩いてバス乗り場へ。
なんとかギリギリ間に合って、11時のバスに乗車。これが最終便なので気をつけて。
チケットは荷物代で5ディルハム取られて75ディルハム。750円。
バスの中で1人ドキドキ。
ずっとずっと憧れていたあの写真の中の青い町。
モロッコではそれなりに有名な観光地らしいんだけど、それ以上に思い入れが強く、俺にとって特別な場所。
果てしなく遠い場所だと思ってたのにな。
いつの間にかこんなとこまで来れたんだ。
あのおとぎの町に行けるのかと思うと旅って本当にすごいと思った。
行けちまうんだもんな。
バスはどんどん山の中に入って行く。
ノルウェーを思い出させるような、ダイナミックな岩山がそそり立つ谷間を走る。
岩山と緑の山並み。
ポツポツと散らばる小さな家。
砂漠のイメージが強かったモロッコ。こんな豊かな自然もあるんだなぁ。
そんな険しく雄大な高地を走っていると、ふと山の麓にこびりつくような町が見えた。
あ!!!
青い!!!!!
なんだあれえええええ!!!!!
青いいいいいいいいい!!!!!
山の緑の中に密集する建物の壁の青さ!!あれだ!!!
なんだなんだよー!!
こんな人里離れた高地にあるなんてメルヘンチックにもほどがあるよ。
ドキドキで叫びたくなるのをこらえながらバスを降りる。
「ハーイ!!コニチワー!!日本人大好きです!!ホテルはありますか?いいところがあります!!私の友達が家族でやってるところです!!ビンボープライス!!とてもビンボー!!ハッパハッパ、ガンジャグッドクオリティ。」
「うるっせぇボケ!!」
「ガンガムスタ~イル!!ヒョヒョヒョ~!!」
いいよいいよ、大丈夫。
ここは観光地。観光客が来るから彼らはこれを仕事にしてる。
俺たちが来るから、彼らはこうなってるんだ。
そこをわきまえよう。
せめてこの美しい町では。
と思ったら韓国人の女の子2人がガイドにすごい勢いで絡まれて荷物とか勝手に持たれて怖がっていたので、ごめんねー、と間に入ってガイドの言葉を遮ってやったら、凄まじい勢いで怒り出し、腕が触れただけで、お前は俺を殴った!!殴りやがった!!こうやって!!こうやってええええええ!!と自分の腕を拳でガンガン殴ってるので、日本もモロッコもチンピラのいちゃもんのつけ方は同じだなと思いました。
中学生か(´Д` )
「殴りやがったなこの野郎!!イカレテンノカ!!日本人はリスペクトを持った奴らじゃないのか!!」
「触れただけだろうが何言ってんだテメー!!彼女たち怖がってるだろうが!!お前ら紳士じゃねえのか!!」
お互いの鼻先がくっつきそうくらい顔面を近づけて怒鳴りあって、ガイドが拳を振り上げたところで他のタクシードライバーたちが止めに入り、終了。
はぁ………こんなつもりじゃねえのに………
なんでいつもこうなるんだよ………
歩いてぼちぼちオールドシティーへ向かう。
オールドシティーというか、モロッコではあの複雑に入り組んだ迷路のことをメディナと呼ぶ。
どこの町にもメディナはあり、綺麗なヨーロッパ風の新市街地域とは完全に別個のものとして存在している。
さて、メディナはどこだ?
きつい坂をのぼって行くと、すでに周りの建物に青の町の片鱗。
壁や窓枠、ドアなど、いたるところが青い塗料で鮮やかに光っている。
歩いてる途中、ひたすらフレンドリーに話しかけられ、必ずマリファナを売りつけられそうになるが、もうそんな奴は慣れっこだ。
無視しながら歩き続け、20分ほどでメディナの入り口に到着した。
小さな門をくぐって中に入ると……………
あああああ、これだあああああああ。
青いよおおおおおお。
めちゃくちゃ青いよおおおおおお。
細く、複雑に入り組んだ迷路に露店やお店が軒をつらね、たくさんのムスリムの人々が行き交っている。
山の麓にあることで坂が多く、建物の隙間から遠くに続く山並みがのぞく。
すべての建物が青く、それに彩りを添えるのがカラフルなお土産物。
ここは、まさにメルヘンだ。
想像していた通りのおとぎの町だ。
細い路地の中にあるこれまた隠れ家のようなホステルに転がりこんだ。
中に入ると、たくさんのバッグパッカーたちでごった返してした。
世界中の言葉が飛び交い、みんな巨大なバッグを背負っている。
まさにバッグパッカーのための宿。
この雰囲気久しぶりだ。
値段はドミトリーが60ディルハム。屋上の簡易ベッドが40ディルハム。600円と400円。安い。
ひと息入れたいところなのだが、さっきのバスで金が底をついてしまった。
このままでは晩飯抜きなので、荷物を置いて即歌いに出た。
宿の前から階段をのぼり、小さなトンネルをくぐって行くと、パッと視界が開けて大きな広場に出た。
メディナのちょうど真ん中にあるこの広場。
中央に大きな木が立ち、背景にはそそり立つ雄大な岩山。
綺麗なレストランやカフェには観光客が座り、モスクの周りのチャイ屋では地元の人々が憩っている。
観光客と地元の人々が混ざり合い、お互い干渉せずにノンビリと過ごしているこの広場。
いい場所!!
一角でギターを取り出し、広場中に歌声を響かせた。
憧れ続けたおとぎの町で歌えることが嬉しくてたまらない。
ここの人々はよそ者に慣れているようだ。
これまでのイスラム国みたいな異常は興奮はなく、遠巻きで静かに聴いてくれ、歌い終わるとサッとコインを放ってくれる。
これまで世界中を旅してるであろう雰囲気を漂わせたバッグパッカーたちも興味しんしんで立ち止まってくれる。
中には日本人の姿も。
「あ!!ブログ読んでますー!!」
ありがとう!!
そして何よりも嬉しかったのが………
演奏を止められないということ。
これが嬉しすぎる………
イスラム圏で路上を止められなかった町ってほんとに片手で数えられるくらい。
そしていつも周りがうるさかったので声を張り上げてしまい、1時間くらいしか歌えなかった。
こんなにのびのびと歌わせてくれる町久しぶりだ。
それがこの憧れ続けたシャウエンだなんて。
いつもそう。
行く前からなぜか惹かれていた町には不思議な縁を感じる。
こんなに広い世界の中で、こんなに惹かれる町に出会えるなんて。
歌い終わると、レストランから、屋上のテラスから、露店のおばちゃんから、広場に拍手が鳴り渡った。
あがりは70ディルハム。
ゲットしたお金をポケットに突っ込んで、お腹ペコペコで新市街のほうへ。
地元の人の食堂を見つけ、そこで晩ご飯。
ポテトとナスの揚げ物、スープ、美味しいパンのセットで10ディルハム。100円!!
うめえ!!!
宿に戻って、仲良くなったカナダ人のカップルとブラジル人の兄ちゃんと、屋上へ。
モロッコのホテルには、屋上のスペースにベッドを置いて簡単な囲いをしただけのテントルームが多い。
そんな秘密基地みたいなウキウキする屋上で、みんなでゆったりとくつろぎ、ジョイントを回す。
日本人にももちろんいるが、欧米のバッグパッカーはほとんどと言っていいほどみんなマリファナかハシシを持ち歩いている。
安宿に行けばみんな当たり前に吸っている。
バッグパッカーなのに吸わないの?くらいの感じ。
モロッコにはそんなバッグパッカーが大量にやってくるわけだもんな。
そりゃ誰も彼も、ハッパいるかい?って聞いてくるわな。
おっさんからガキまでね。
楽しむか楽しまないかはあなた次第。
もちろん違法だけどね。
部屋に戻り、ドミトリーのベッドに横になる。
談話スペースではドイツからのバッグパッカーたちが大声で盛り上がっている。
このやかましい中眠らないといけないのも、バッグパッカーの宿ならではだよな。
明日はメディナの中を散策しよう。
どんな美しい風景を見られるだろうな。
ああ、青い色が心を落ち着かせてくれる。
ここはシャウエン。
おとぎの町。