スポンサーリンク





オンザロードアゲイン 8章








それから不思議な4人旅が始まった。


全員、自分の食い扶持は自分で稼ぐというやりかたで、甘えは一切なし。

生活レベルも稼ぎ次第ってわけだ。


俺とカッピーは路上で演奏し、ショータ君は女性の写真を撮って稼ぐ。


イクゾーもなんとか路上で頑張って弾き語りをしている。

しかしこれがめちゃくちゃ下手くそにもほどがある。



「ちょ、あいつ下手すぎるね…………」



「う、うん…………翼を下さいて…………あの歌あいつのためにあるようなもんやん……………切なすぎて聞いてらんねぇよ。」



「この大空に~翼を広げ~飛んで行きたいよおお~~~」



みすぼらしい格好でぺきょんぺきょんとギターを鳴らし、哀愁漂う翼をくださいを歌うイクゾーの前をヨーロッパの人々が何事もないかのように通り過ぎていく。


ギターケースの中には赤いコイン(10セント以下)が悲しげに散らばっている。







移動も宿泊も稼ぎ次第でグレードが変わるので、稼いでるショータ君は電車移動にホテル泊。


俺とカッピーはヒッチハイクと安宿のドミトリー泊って感じ。


そしてイクゾーはもちろん公園のベンチ。



「金丸さんたち良いっすね…………毎日シャワー浴びてベッドで眠れて…………正直寒いっす。」



「甘えんなよー。自分の食い扶持は自分で稼ぐ。じゃないと置いていくからな。」



「わ、分かってますよ。」



「お前テントは持ってないの?テントあったらだいぶ違うよ?」



「いやー、一応テント持ってきてたんですよ。でもこの前ニースでベンチで寝ながら横でテント乾かしてたんですよ。前の夜が雨だったから。そしたらなんかバキバキバキって音がして、起きて見てみたらオッさんがゴミ収集車にテント放り込んでるんですよ。普通分かるっしょー……横で俺寝てるんだから。何してんだオラー!!って日本語で叫びましたよ。だからテントないです。」



「あ、哀れすぎる…………」



「じゃあ今はどうやって寝てるの?」



「これです。絨毯です。なんかクリシュナとかいう人たちがくれたんですよね。絨毯って普通上を歩くもんですよね。その下に人がいるっておかしくないですか?ウケるー。おやすみなさい。」














なんだかんだで4人旅は順調に進み、バルセロナから海沿いに南下してアリカンテの港町にやってきた。

有名なサンタバルバラ城が海岸沿いの小高い山の上にそびえている。


というか山の頂上を削り出してお城となっているので、まるで大地からお城が生えているかのような景観だ。



太陽が降り注ぎ、ビーチが広がり、町の中には細い歴史ある路地が入り組み、たまらなくワクワクしてくる。

バレアレス海を挟んですぐ対岸にはアフリカ大陸のアルジェがあり、そこと繋ぐ大型フェリーも運行しており、スペインが昔からイスラム地域との交流が深かったエリアだということを想像させてくれる。


町には当時のイスラムのテイストを残す遺跡が散らばり、耳をすませば対岸からアザーンの音が聞こえてきそうだ。


なんて良くできた町なんだろう。

ヨーロッパもこれだけ南に下ってくるとだいぶ雰囲気も変わる。




「金丸さんー…………全然稼げないっすー…………スペイン厳しいですー…………シエスタうぜー…………」



路上の休憩でカフェでみんなでエスプレッソを飲んでいると、ギターを抱えたイクゾーが戻ってきて嘆いている。

そ、そりゃその実力ではどうもならんよな…………



「そうだなぁ、でも金がなかったら旅は続けられないからな。なんとか頭使って稼がないと。路上の可能性は無限なんだから。それとシエスタは文化だからしょうがないよ。」



「野良犬は野良犬らしく自分で餌を見つけるんだな!!人に与えてもらうんじゃなくてよ!!ハハハー!!」



「今所持金いくらなの?ちゃんとごはん食べなきゃダメだよ。」



「さっきまで60円でした。」



「60円て…………ここ静岡じゃないんだよ…………」



「でも今8ユーロは稼げたので1000円くらいはあります。金丸さんたちみたいに100ユーロとか稼ぎたいっす…………」



「8ユーロ?ショボいなぁ!!お前ってヤローは!!」



「これでもかなり上がってきたんですけどね…………今俺のギター1弦が切れてるんです。なのになぜか稼ぎが上がっていってるんです。弦がないほうが稼げてるって不思議です。」



「ああ、そう…………」



「あー!!もっと稼げねぇかなぁ!!もうこうなったら町の中にギターケース200個くらい置いといたら明日の朝にはなんか入ってるんじゃないですかね?ウナギみたいに。ウケるー。」



「ていうかさ、イクゾーって路上看板出してないじゃん。日本から世界旅してますっていう看板を作ればいいじゃん。それで結構チップ上がるよ?」



「あ、俺ダメなんすそれ。だってお金くれる人、俺にくれてるのか看板にくれてるのか分からなくなるじゃないですか。違うんすよねそれ。あ、そのエスプレッソの横のクッキーもらっていいですか?もぐもぐ。しみるー。」



イクゾーはバカなやつだけど、ちゃんとポリシーというかこだわりというか、自分の中の譲れない部分というものをはっきり持ってる。


何が自分にとってカッコいいことなのか、何がダサいことなのか、

人はみんなだいたいそれらの基準を心の中に持ってはいる。

でもそれを実行できるかといったら、なかなか難しいもんだ。


多くの人が、自分に都合のいい言い訳をしながら嘘をついて生きていく。

常に自分の心に正直に行動するってのは、言葉では簡単だけど相当な精神力が必要になる。



イクゾーはいつも正直だ。気持ちいいくらいバカで、不器用だ。

それがなかったらきっとショータ君もカッピーもすぐに愛想を尽かして置いてけぼりにしていると思う。





そんなイクゾーが横で何かをクシャクシャに砕き、破った紙に巻いている。



「ちょ、イクゾーお前何してるの?」



「え?タバコ巻いてるんですよ。」



「いや、それはわかるけど、そ、それ何巻いてるの?中身は?」



「え?落ち葉です。お金ないですし。」



「はぁ!?お前なに巻いてんだよ!!」



「えええ!?落ち葉吸わないんですか!?静岡じゃ普通ですよ!?」



「絶対お前だけやろ!!静岡県民に謝れ!!」



「シュボッ、いやぁ、僕が若いころとか普通、ゴホッ!!ゴホゥ!!だった、ゴホホゥッ!!!ゴボッ!!けどなぁ、ゴホー!!」



そこに電話をしに行っていたカッピーが戻ってきた。



「お、カッピーなんか長電話だったけどどうしたの?」



「フミ君あのさ、俺たまにフェイスブックに今回の旅のことアップしてるんだけどさ、今回こうやって俺たちがサハラに向かっているっていうことを俺の知り合いの雑誌の記者さんが見て、取材させて欲しいって言ってるんだよね。」



「お、いいねぇフミ君。伝説の旅人復活で女にモテまくりじゃねぇか!!」



「雑誌の取材!!なんかスゲェっす!!ゴホゥ!!ゴホー!!」



「スカイプで取材してそれを文にまとめるみたいだから、今日の17時に話してもらっていい?」



「あ、ま、まぁいいけど。」



さすがにカッピーは今でも業界との繋がりが多いなぁ。

こんなオッさんの地味なチャレンジがそんな記事になるようなものかわからないけど、別に断る理由もないので、とにかく17時になってワイファイの繋がるカフェで日本とスカイプした。


雑誌の記者さんとのやりとりはずっと昔に何度も経験したことがある。

懐かしいこの感覚。

まるで自分がすごい人間にでもなったかのような錯覚になってしまう。

ただ経験を切り売りしてるだけの話なのに。



「あ、奥様が亡くなって、それがキッカケで昔の約束を果たしに行かれたわけですね。」



「いや、そういうわけではないんですけど…………ん、まぁ…………でもそうかもしれません。」



心が少し痛む。


カンちゃんの話をダシにしたくない。

けど、それも事実ではある。



1時間ほどのスカイプ取材を終えて、パソコンを閉じた。







「どうだったフミ君。久しぶりの取材は。いい分章書いてもらえるようにちゃんとアピールできた?」



カッピーが昔のマネージャーの顔をしながら聞いてきた。



「ああ、まぁまぁかな。そんなドラマチックな話でもないけど。」



「いやいや、面白い話だと思うよ。オッさんの路上旅。もしかして今さら有名になって売れるかもしれないね。」



「それすげぇっす!!!!」



「おい、もし稼いだら俺にも回してくれよ。写真だったら全部俺に任せときな!!」



たかが雑誌の取材くらいで有名になるだなんて遠い遠い話だ。

でもほんの少しだけワクワクしてる自分もいる。









俺はもともとそんなに有名になりたい願望は強くなかったほうだと思う。

自由に旅をするために音楽をやってきた。

音楽で売れて、名を馳せたいというためではなく、あくまで旅の手段としてのギターと歌だった。



でもどうだろう。



本当のところは何も思っていないことはない。

きっと、大なり小なり誰でも有名になって歓声を浴び、スポットライトを浴びることを夢見る心はどこかに持っていると思う。



それがカッピーと出会い、少しばかり旅でもてはやされたことでムクムクと表に出てきてしまい、音楽で有名になることを目指した。


言葉や音楽に疑問を感じながら、売れるため、周りの期待に応えるため、と自分に言い聞かせる日々。

作り笑いをして、お偉いさんに挨拶して、カッピーが取ってくる仕事を、相手のことをよく知らないままこなす。


そんなことが嫌になって、俺は自分の心に正直に生きることを望んでカッピーから離れた。





有名になりたい。

自由に生きていきたい。



心の中にはいろんな感情が潜んでいる。

それらにどう折り合いをつけて道を選んでいくのか、時には自分に嘘をつき、都合のいい言い訳をして、辻褄の合わせやすいストーリーを作る。


そうした虚空のストーリーが、時間が経てばいつか馴染み、自己洗脳されて本当の人生の歴史になったりすることも、この歳になればなんとなくわかる。



正直に、なんの後ろめたいこともなく生きていきたいとは願うが、人生は結構つぎはぎだらけだったりする。

人間は素朴な生き物だ。















その後もそうしたメディア系の問い合わせが続いた。

雑誌、ラジオの電話出演、新聞、色んな媒体が今回の俺のチャレンジを取材してくれる。


なんでこのタイミングでいきなり?


理由はもちろん分かっている。


カッピーがやっていることだ。


あのカッピーが来た以上、何かしら業界にアピールするかもしれないとは思ってたけど、まさかこんなにスピード感があるなんてな。

さすが、カッピーは昔から仕事のできる男だ。



でも正直、今の俺にはどうでもいいことだった。

伝説の旅人の年を取ってからの新しいチャレンジ。

オッさんの珍道中。

それはなかなか滑稽で話題性はあるかもしれない。


でも今の俺にはもうそんな成り上がってやりたいだとか、名声を得てキャーキャー言われたいなんていう野心は残っていない。

ただあの頃の約束を果たしに行くだけのこと。


これが終われば、また宮崎に戻ってお店をやりくりする生活に戻る。




カッピーがどこまで考えてるのかはあえて聞かなかったけど、あいつが良かれと思ってやってくれてることを無下に断ることもない。

とりあえず入った取材は受けてあげていた。



でも、カンちゃんのことをいじられるのはあまり気持ちのいいものではなかった。

カンちゃんを使うのがメディア的にはやりやすい方法なのはわかる。

そこはずっと引っかかっていた。


それでも、俺のためを思ってやってくれてるカッピーの想いを無駄にしないために、取材に応えた。

カッピーはいつも俺のことを考えてくれている。

良いやつだ。











「ハローメーン!!イヤッホゥー!!バルセローナ~!!」



「え?あ、イェース!!バルセローナ~!!メッシ~!!クリスティアーノロナウド~!!な、なにこいつ!?」



向こうのほうでイクゾーが、バルセロナのユニフォームを着た胡散臭い兄ちゃんと踊ってる。

戸惑いながらも一緒に踊ってるイクゾー。


欧米人はだいたい陽気だ。

日本人はそんな欧米人に対して劣等感があるので、なんとかノリが悪いと思われたくなくて必死に合わせようとする。

イクゾーもまだまだ若い。




スペイン南部の町、グラナダにたどり着いた時には3月の初旬にさしかかっていた。


サハラマラソンが行われるのは4月の15日。

あと1ヶ月でモロッコに入り、サハラまでたどり着かないといけないんだけど、もうここまで来たらモロッコも目と鼻の先だ。



かつてイスラムのアラブ人たちが支配していたこのグラナダ。

古い町並みが残るアルバイシンはクリーム色の家々がびっしりと密集しており、あの中東の荒涼とした空気を思い出させる。

細い路地がどこまでも入り組み、坂道の石段が迷路のように続いており、建物に狭められた隙間から見上げる丘の上にはあの有名なアルハンブラ宮殿がそびえている。


壮麗なイスラム建築の傑作であるアルハンブラ宮殿。

侵略の歴史といってもいいヨーロッパを代表する遺跡だ。



フラメンコ、青いタイル、白い町並み、乾いた大地と燦々と照りつける太陽。

これぞまさにアンダルシア。


これまでのヨーロッパの風景からどんどん雰囲気が変わっていく。

どんどんモロッコのアラブ地域に近づいていく。




陸路の旅はこれが楽しくて仕方がない。

国境に近づくにつれ、それぞれの国の文化が少しずつ濃くなっていき、線を越える瞬間にもっとも混ざり合い、やがて一方が薄れていく。

この文化や顔つき、言葉などの混ざり合いを実感するとき、国境というものの存在をとても強く感じることができる。


これが飛行機だったら一気に違う文化圏に飛んでしまうので、混ざり合いを実感することができない。


人間は国境を超えた瞬間に全てが変わるわけではない。


目に見えない線をまたいで存在する文化の滲みがたまらなく旅を感じさせてくれるものだ。



「なかなかいい町だなぁ。うふぉー、ラテンの女の子の小麦色の肌がたまらんぜ~。」



「観光客もしこたまいるから、ここでマラソンの日程まで時間を調整してもいいかもな。」



「あー、まさかまたフミ君とこんな旅することになるなんてなぁ。まぁ楽しいからいいけどさ。あー、牛丼食べたいなぁ。」



「チキン南蛮食べたいわー。」



「バルセロナ~!!フォッフォ~!!」



「い、イエ~イ!!」



カフェでカプチーノを飲む俺たち。

広場で兄ちゃんと踊ってるイクゾー。

暖かい太陽につつまれてとても穏やかだ。


でも、そんな時でもいつもここにカンちゃんがいたらなって思ってしまう。


胸に空いた穴は、どうやっても埋めることはできない。



「あー、なんか変なやつに絡まれたっすわー。やっぱアレですね。スペインの人はみんなサッカー大好きなんすね。」



「そうだね。みんな大好きだね。ところでイクゾー。お前財布持ってる?」



「え?どういうことですか?」



「いいから財布出してみなよ。」



「え?まぁいいですけど…………あ、あれ?…………え!?さ、財布がない!!!!さっきまであったのにない!!!!」



「お前さっきのバルセロナな、あれスリだから。」



「めちゃくちゃ典型的なやつだよ。イェーイって陽気にノリよく一緒にダンスするフリして体くっつけてきて財布を抜くんだよ。観光客はノリ良くしようとして無理して一緒に踊るからな。」



「ちょ!!!みんな分かってたんですか!!!なんで教えてくれなかったんですか!!!」



「勉強だよ勉強。」



「あんな初歩的なやつに引っかかってる愚か者の無様な顔を見て楽しんでたのさ!!!ハハハハァ!!!」



「鬼だ!!この人たち鬼だ!!!ああああ!!!全財産があああ!!!!あんなに一生懸命歌って少しずつ少しずつ貯めたお金なのに!!!もうちょっとでピザ食べようと思ってたのに!!!」



石畳の上でのたうち回ってるイクゾー。



「ぴ、ピザて…………」



「な、なんて哀れなやつなんだ…………」



「ぴ、ピザくらいおごってあげようか…………?」



「ちょっ!!俺あいつ捕まえてきます!!!ゼッテー取り返してやる!!!」



「やめとけやめとけ。怪我するぞ。」



「おーい、無理すんなよー。おーい。」



広場の向こうに野人のようなスピードで消えていったイクゾー。

さ、俺たちは歌いにいくか。











観光客が通る見晴らしのいい広場で、カッピーと演奏をする。

俺の指もすっかり皮が厚くなって痛みもなくなり、声もだいぶ出るようになっている。


カッピーのサックスは相変わらずイカしてて、ロマンチックな音色に多くの人が耳を傾けている。


俺たちの息もぴったりだ。

向こうから団体が歩いてくるのをチラリと横目で確認する俺たち。


以心伝心。

その団体が目の前に差し掛かったところでちょうどサビに入ったり、派手にブレイクを入れたりして盛り上げる。

すると足を止めてくれる確率がグッと上がるし、チップにつながりやすい。


俺もカッピーもそうしたストリートミュージシャンとしての感覚が研ぎ澄まされて、ブラッシュアップされている。


懐かしいアメリカ横断の日々。

俺たちはいつもこうして音を重ねていた。



「んー、今のよかったねぇ。今のカッピーの入り方ずるいわー。」



「いやいや、フミ君のギターの弾きかたが完全にここから入ってねって言ってたやん。」



「それを分かってくれるところが嬉しいよ。やっぱカッピーのサックスはいいなぁ。」



「フミ君もだいぶ声が出てきてるね。あの頃より上手くなってるんじゃない?」



「んー、そうかなぁ。でも、今さら上手くなってもな…………カッピーは充実した日々送れてる?東京で。」



「わかんないな。充実してるといえばしてるし、してないといえばいくらでもそうだし。…………フミ君はやっぱりすごいよ。またこうして新しいことにチャレンジして、前に進んでる。やっぱり金丸文武はあの頃と変わってないよ。」



「いや、昔のやり残しだから…………もしかしたら後退してるのかもな。カッピー。」



「ん?」



「来てくれてありがとうな。カッピーと出会えて良かったよ。」



「何言ってんだよ。あ、ホラいっぱい人歩いて来たよ!ベサメムーチョ。」



すぐさま演奏を開始した。












夜になり、お金もそこそこ稼げたことだし今夜はゲストハウスに泊まろうかと話しながらいつもの広場のカフェでビールを飲んでいると、向こうから野人が戻ってきた。



「金丸さん!!見てください!!奪い返しましたよ!!」



嬉しそうにいつも使っていたお金入れの袋を出してきたイクゾー。


おお………ま、マジで取り返してきたのね…………


破れた服、怪我してる顔、なかなかのバトルを繰り広げてきたみたい。



「よ、良かったね…………ていうかいくら入ってたの?」



「11ユーロです!!いやぁ、マジ良かったぁ!!今日は俺もうピザ食べます!!!」



「11ユーロて…………」



「仕方ねぇなぁ。ピザくらいおごってやるよ。ペルミソー、ドスマルゲリータ、ポルファボール。」



「スィー。」



「マジっすか!!やったー!!よし!!もう今日俺ビール飲みます!!11ユーロ全部使います!!ポルファボールー!!よく分からないけどこれくださいー!!」



「だ、大丈夫なのお金?」



「ヨユーっす!!どうせ振り出しに戻るだけです!!!ゼロになっても明日また頑張ればいいだけの話です!!あ、ビール来ましたね!!じゃあ皆さんサルー!!ゴクゴクゴク!!ウプッ!!ブフゥ!!!ゴホゴホッ!!な、なにこれ!!マズい!!レモン味だ!!レモン味のビールってなにそれ!!あああ!!お金もったいない!!!」



びっくりしすぎて鼻からクララを流してるイクゾーに大笑いした。

クララってのはレモン入りのビールのことだ。


面白いやつだなぁ。

本当になんの保険もなくて、興味のあることにひたすら突き進んでて、ガムシャラで。

俺も昔はこうだったのかな。



「あ、そうだフミ君、知り合いのテレビ局のディレクターが明日グラナダに旅番組のロケで来るんだよね。それでフミ君の話したら是非会って話聞きたいってなってるんだよ。明日よろしくね。」



カッピーがそう言った。

分かったよ、と答えた。


スポンサーリンク



ブログのランキングというやつをやっています。
よかったらクリックして下さい。
クリックが投票の代わりになります。

にほんブログ村 ライフスタイルブログ 田舎暮らしへ
にほんブログ村



世界中のホテルが予約できるサイトです。
家族旅行もバッグパッカーも、ここから予約してくれたら僕にアレがアレなのでよろしくお願いします! ↓↓