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日本一周の終わり








2006年 年末【宮崎県】




タカフミの家で目を覚ました。

ゆうべは朝まで2人で飲み語った。


色んなやつが結婚したり仕事についたりしてる話を聞いた。




宮崎市に向け車を飛ばす。

今日はこれから新聞の取材、そして夜にラジオの収録。

日本一周という青春の全てを捧げた旅が終わり、それなりに慌しい日々が続いている。


俺やった。

やったよ。


絶対無理って馬鹿にされた日本一周という壮大な旅をやりきった。

日本の全部を見てやるって想いで出発し、4年4ヶ月、俺なりに全力で走り回ってきた。


それなのに達成感はない。

俺やったんだ、って自分に言い聞かせて、かろうじてその事実を認識している。




日本中を見て回った。

今も東京で、北海道の雪の町で、離れ小島の漁村で、誰にだって平等に時間が過ぎている。

どこかで人が生まれ死に、無数のドラマが作り上げられていっている。


そのドラマに俺が参加していないことが悔しい。

今思えばそれが俺の旅の動機だったんだと思う。



「文武は1つの場所にとどまることができないんだよ。」



いつか美香が悲しい表情で言っていた。

まるでこの結末をわかっていたかのように。


ほんとうにそうかもしれない。

宮崎というのどかな町の中にいると、今まで訪れた全ての町のことが気にかかっていてもたってもいられなくなる。


俺はどうなるんだろう。

どこへ行けば終わるんだろう。





















2007年1月7日 【宮崎県】




きらめく海岸線。

パームツリーを揺らすおだやかな風。


日南海岸の綺麗な道を走っていく。




車に乗っているのは滋賀でやったライブに来てくれて、それ以来俺のことを応援してくれているミユキさんと直也さんご夫婦。


滋賀県からわざわざゆうべの到着ライブに来てくれた。



ライブはとても盛り上がったと思う。

スピードウェイの演奏はさすがだったし、俺も4年4ヶ月の集大成を出し切れたと思う。


宮崎に帰ってきたのはクリスマスイブだったけど、これで本当に日本一周が終わった。







日南海岸をとばし、鵜土神宮にやってきた。


まだ初詣の名残でたくさんの参拝客でにぎわっている。


旅に出る前、美香と2人で来て、海の上にある大岩の窪みの水溜りに小石を投げ入れるという名物の運玉投げをしたこの神社。

2人して1つも入らなかったよな。




のんびりした風景とはうらはらに疼きの止まない心。

優しい仲間、暖かい家族、居心地は確かにいい。


このままここにいれば、それなりに楽しいこともあって、平和に生きていける。


でもこのままでいいのかと思えてしまう。


体は故郷に、しかし心は風の中。

トムの言葉が囁く。





「テディーさん、今まででやり残したことってありますか?」



「……………やれなかったこと全部だよ。でも俺は俺の選んだ道に誇りを持ってるよ。」



数日前のテディーさんの言葉を何度も思い返している。


何かを諦めること、それが大人になるということか。


どんな最悪な状況でも、それが今の自分には最適な状況。


1人きりで、嫌ってほど思い知らされた4年4ヶ月。


今まさに岐路。

俺の人生はまだ始まったばかりだ。



「やったーー!!」



「うおー!!すげーー!!」



「きゃー!!」



青空に放った運玉が、窪みの中にポチャリと入った。






【日本一周】






リアルタイムの双子との日常はこちら





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