2006年11月8日 【島根県】
分銅屋のおかみさんオススメの古寺、曹洞宗の永明寺にやってきた。
苔むした石段を登り境内に入ると、大きな萱葺き屋根の本堂と見事なまでのもみじの紅葉の美しさに、思わず息をのんだ。
これぞ日本の美だ。
この町出身の歴史博士であり文学博士の森鴎外の墓にお参りして、寺の裏手を登っていく。
しばらく行くと、道の終わりの木々の中に十字架にはりつけられたキリスト像とともに石碑がポツンと建っていた。
ここ津和野は美しい小京都の町並みとともに、キリシタン流刑の地としても有名な場所だ。
徳川家康がキリスト教を禁止してから約200年。
鎖国を解き、徳川幕府が終焉を迎え、明治維新がおとずれても依然キリスト教は邪教と見なされており、キリシタンの弾圧は続く。
そんな中、長崎の浦上で大量のキリシタンが捕まえられる事件が起きた。
いくら責めても改宗しようとしない信徒に対して政府がとった政策は、少数ごとで離散させるというもの。
仲間と一緒にいると結束しあって心が折れることがないからだ。
というわけで長崎から遠く離れたこの山深い津和野に153人のキリシタンが流された。
冬の氷の張った池に落とされたり、1メートル四方の檻に入れられ放置されたりと、ものすごい拷問の挙句、耐えられなかった54人が神道に改宗。
しかし、宗教とは恐ろしいもので、かたくなに拒みつづけたために36人ものキリシタンが殉教している。
死んでも宗教の教えを捨てないって、現代人には考えられん。
その後、諸外国からキリスト教を迫害していることを非難されまくり、ついに信仰の自由を認められ、残った者たちは故郷に帰ることができたという流れ。
この石碑は教えに殉じた36名の慰霊碑だったのだ。
キリストが迫害により殺されたという事実が彼らを死に向かわせたのか。
『キリストなんて大嫌いです。』とただ口に出すだけで許されたのに、人を救う為にある宗教によって命を落とすなんて。
今も世界中で続いている宗教戦争。
命を賭けてまで守りたいものが俺にはあるかなって思わせられる場所だった。
そこから少し離れたところにある森の中の乙女峠にやってきた。
この場所にあった光琳寺というお寺にキリシタンは収容されていた。
さびしげなマリア堂とマリア像。
父なる神のいる天国へ行けるのだから死を恐れちゃいけませんよー、って言ったって悲しくない死なんてあり得ない。
父なる神は心が広いから教えを棄ててなんとしてでも生き延びなさいー、青くなって尻込みなさいー、逃げなさいー、隠れなさいー、って言ってやれば、ここだけじゃない、全国で迫害されて死んでいった信者たちは残りの人生に喜びを見つけることができたかも知れないのに。
それは信心の薄い俺みたいな人間の感覚だってことも分かってなきゃな。
町に降りて津和野の中心部へ行ってみるとすごい人ゴミでごった返していた。
平日でこれだけ観光客のいる名所なんてなかなかないぞ。
さすが津和野。
京都の伏見稲荷のように参道に隙間なく赤いミニ鳥居が並んでいる稲成神社へお参りし、油揚げをお稲荷さんにお供えし、メインストリートへ向かう。
家老屋敷跡、群庁跡、カトリック教会など、たくさんの史跡を残すこの通り。
白壁の塀が続き、色づいた銀杏と用水路を泳いでいる錦鯉の鮮やかな色彩が見事に調和している。
ゆうべ走った時の燈篭の灯りに浮かぶ雰囲気も美しかったが、昼の風景もまたいい。
小京都の肩書きに不足なしだ。
昨日の分銅屋に顔を出すと、もう来ないかと思ったよー!!と元気に迎えてくれた。
笑顔が素敵なおかみさんはジプシーキングスが大好きな陽気な方だ。
彼らの曲を聴くためだけに鬼平犯科長を見てるんよとニコニコしていた。
島根県のラストはおかみさんの笑顔で決定だ!!
車に乗りこみ、鋭利なV字に刻まれた深谷峡を渡り、山口県に入った。
ここから次の広島県に入るわけだが、山口の端の端、町から遠く離れたこの山奥に美しい渓谷があるという。
錦町の小さな集落から奥地に入っていくと、そこは紅葉の名所、寂地峡となる。
名前がまたいいよな。
車を止め、緑の中をタッタタッタと走る。
んー、まるで自然が作り出した森と岩と水のテーマパークだ。
木材搬出用の手掘りのなまなましい洞門を2つくぐると、今度は谷に下る石段。
そいつを降りていくとすごい。
崖の割れ目から水が流れ落ち、いくつもの変化に富んだ滝へと姿を変えながら森の中を下流へ流れていく。
この5つの滝すべてを含めて百名瀑の五重の滝だ。
もう少し時期が遅かったらこの緑もすべて色鮮やかに染まっていたんだろうな。
紅葉狩りには最高の場所だ。
そうして次の県、広島県に入った。
広島、んー………………
見所がありすぎる!!
時間があったら1ヶ月くらいかけられそうなくらい名所だらけだよ。
これを1週間で回るなんてムリだよおおおお!!!
さぁどうやって時間のロスなくバッチリ回ろうかなとルートを組んでいく。
今は戸河内の道の駅。
隣に止まっているネオン管チカチカの若いやつらのバンがうるさい。
車の中にいるというのに室内灯に白い息が浮かんでは消える。
あー、安来で買った『天界』の純米がうまい。
島根県、ありがとう!!
【島根県編】
完!!!!!!
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