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東京の出版社に突撃してもちろん撃沈した話








2006年10月3日~ 【三重県~東京】




目を覚ましてカーテンを開けると、しとしと雨が住宅地を灰色に覆っていた。


ここは横浜のユウキの家。


出版社にギターを持っていくつもりだったが、この雨で電車移動だとびしょびしょになってしまう。


まぁ演奏まではせんでいいだろ。





2日前に三重県を出発し、神奈川のユウキの家に着いたのが昨日のこと。


ここまで来る途中、本屋さんに寄って本棚の新刊図書や売れ筋の本をチェックしてみたりした。


んー、ここに俺の本が並ぶのかとニヤニヤ。



『本出版』→『ベストセラー』→『映画化』→『俺役が嵐の二宮君、美香役が長澤まさみ、ヒッチで乗せるイカした兄ちゃん役が俺』→『CD爆売』



ふふふ………………


妄想は膨らむばかり。


どこまで叶えられるか!!






朝7時30分。


雨の中を歩いて10分のところにあるバス停から始まり、三ツ境駅、横浜駅、渋谷駅と、ひち面倒臭い乗り継ぎを重ね、通勤ラッシュの洗礼を受けつつ、ようやく山手線の代々木駅までやってきた。


雨の中、オフィスビル街を歩き回り、なんとかG出版の本社に到着した。


うおおおお、ここがあの有名なG出版……………



ドキドキしながらエントランスを入り、普段死ぬほど貧乏な暮らしをしているくせにそこそこの作家ですみたいな顔をして受付の人に話しかける。



「あの、個人出版の件でおうかがいした者ですが。」



「あ、ではこちらへどうぞー。」



事務所の中は鬼気迫るあわただしさで人が動き回っていた。


所在無くそわそわしている俺。


ヨレヨレのストーンズTシャツにズタボロのジーンズ姿。

田舎モン丸だしだ。






イスに座って待っていると、ビシッとスーツを着こなしたいかにも仕事の出来そうなビジネスマンのおじさんが近づいてきた。



「金丸様、お待たせしましたー。」



担当の金田さんだ。

彼について応接室に入る。


なんて不似合いな格好しているんだろ、俺。




テーブルにつくと、出版までの手順、契約内容、流通などなど、ほとんど無知な俺に快く1から説明してくださる金田さん。



「はい、原稿見せてー。あー、こりゃ手直し大変だわー。」



みたいな荒っぽい対応を想像していたのだが、逆に恐縮してしまうほど丁寧。


お客様!!って感じだ。


まるで、ウチを儲けさせてさせてくれる上客、といった………………

 




雰囲気に飲まれないよう覚悟を決めて語りまくった。


こうこうこういう旅をしてきて、旅を面白くするため色んなことにチャレンジし、日本中に数えきれないほどの知り合いを作ってきた。


その人たちが本に自分のことが書かれているなら絶対に買ってくれるはず。


日本中の名所や美しい風景の写真も毎日かかさず撮り続けてきたし、何より毎日が波乱万丈な出来事の連続だった。


絶対に売れます!!

絶対面白いです!!


と熱くプレゼンした。


テーブルの向こうで興味深そうに頷いている金田さん。






そして……………………




結果はこうだった。







企画出版はハナから論外。


『き』の字も出てこん。


部数やグレードの要望を伝えたところ、協力出版でだいたい250万円の初版費用を自己負担。


増版分は会社もちということだが、それも相当評判が良くなければされない。



とどめが、印税。




そのパーセンテージは1冊につき…………………




2%……………………




まぁ…………想定内ですけどね………………






出版会社を通して本を作るメリットについても色々教えてもらった。

まずは編集だ。


プロの編集担当者がより面白くなるように文章を校正してくれる。


4年4ヵ月分の日記だ。

テキストも写真も膨大な量がある。


それをうまくまとめあげるのは素人の俺にはかなり難しい作業だろう。



次に法律に関わる問題。

文章の中に曲の歌詞を引用していた場合の著作権法、他者の作品の盗作に当たる部分がないか、肖像権やプライバシーの侵害に抵触しないか、などを出版社が責任をもって対処してくれるという。


過去には、とある風景を撮った写真が、写真家の方に俺の作品の盗作だと訴えられた、ということがあったらしい。


写真の構図が同じ、ということだけでだ。


法律ってそれほど複雑な問題なのだが、これらの確認作業などを引きうけてもらえる。



あとは流通。

書店に本を並べるには、『取次ぎ』という卸業者に申請をして流通番号を取得しなければいけない。


バーコードの下に記載されている小さな数字だ。


これを取得するのは個人では難しいというのだが、出版会社を通せばすべてお任せでやってもらえ、それで初めて書店に本が並べられるって寸法らしい。


とまぁ、他にも細かいものはあるが、これが主なメリット。





本を出したい!!という素人さんが抱く最大の喜び。


それは『本屋に自分の本が並ぶ』だと思う。


しかし、金田さんの話によると、本ってやつは毎日何百冊という新刊が発売されているらしく、それら全てを書店に並べるというのは不可能な話らしい。


1週間も並べてもらえたらラッキー。

売れ行きが悪ければ3日で倉庫行きだし、並べてさえもらえないということもよくあるという。


そりゃそうだ。


本屋さんからしたら間違いなく売れる有名作家の本や、話題作をより多く並べたいもの。


素人の初版ものにさくスペースなんてねぇよ、というのが実情だろう。


だとしたら流通の意味はほとんどない。

取り寄せならできますよ、というくらいのものだ。







終始、気持ち良く扱ってくれた金田さんに見送られ会社を後にし、小雨の千駄ヶ谷を歩く。



トボトボ………………




トボトボ………………



ま、まぁ!!


まぁこんなもんだよ!!


そうだ!!他の出版社もあたってみよう!!


せっかく東京まで来たんだ!!


もっと探してみないと!!




そう思い、本屋さんで新刊図書の出版社名を必死に調べていたら、なんだか急にバカバカしくなってきた。


俺、なんで人に頼ろうとしているんだろう。


2%て。


1500円で売って30円だぞ?


100冊売って3000円、1万冊売って30万円。


250万のもと取ろうと思ったら10万冊だぞ?


松本清張でもそんな売れんぞ?


G出版でこれなら多分とこも同じようなもん。





バカバカしいよ。


そうだよ。


納得いかねぇんだったら自分でやればいいやん。


今までだってなんとかしてきただろう。


確かに出版社の冠や編集技術、流通といったステイタスにはひかれる。


でもそうじゃねぇよな。


なんで自分が損してこの旅を完結しなきゃいけねぇんだよ。


新しいことにチャレンジして壁をぶち壊す。

自分で編集して自分で企画。


印刷会社に直接データを持ちこんで作ってもらえば売値の1500円はまるまる手元だ。


流通はできんだろうが完全手売りと発送だ。


よし、この本だけは何としても自分の手で作り上げてみせるぞ。





そうと決めるとフツフツと闘志が湧いてきた。


ハイテンションでユウキの部屋に戻り、気合いでビールをカッくらいながら日記書き。



「そうかー。よーし、本出す時に金がいるんだったら、そん時ゃ俺のバイク売ってやるわ!!」



仕事から帰ってきたユウキに計画をぶちまけるとそう言ってくれた。


いつもありがとうなユウキ。



2人でビール飲みながら、やろうぜ!!おうやってやる!!と誓った神奈川の夜。



リアルタイムの双子との日常はこちら





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