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本の出版ってどうやるんだ?そして初めての西成へ








2006年9月28日 【三重県】





亀山のトラステで目覚め、いつものようにドライバーしかいない食堂で飯を食べ、図書館にやってきた。


最近ネットでずっと調べているのは、本の自費出版についてだ。


興味ある人たくさんいるんだろうな。


関連ページがズラリと出てきた。




この旅を始める前から、旅の日記、写真をまとめた放浪記を出すのが大きな目標の1つだった。

実行するために1日も欠かさず日記を書き、毎日肌身離さずデジカメを持ち歩いてきた。


旅もあと3ヶ月。

そろそろ出版のために動き始めないといけない。






どうやら出版には3種類あるようだ。


まず出版会社が、「この作品なら売れる」と踏んだ場合、その出版費用を全額負担してくれるのが『企画出版』。


ある程度しか売れないなと思われる作品の場合だと、初版、例えば1000部を著者が自己負担して、その後の増版費用は出版会社が負担しますという『協力出版』。


そして完全に0から100まで全部自分で手配して出版する個人出版。



個人出版も考えたんだが、法律的な問題(著作権、盗作問題、プラバシーの侵害など)が色々大変そうだし、なにより費用が莫大になる。


手順もコネもなく何もないところから作ろうと思ったら時間も気の遠くなるほどかかる。



協力出版になると、安く作れば100万円以内で済むが、今の俺のイメージするものを作るには200万はかかるようだ。


この価格は各出版会社のホームページにある費用一覧を照らし合わせた平均の値段。


協力出版など会社がからんでくると印税制になるので、俺の手元に入ってくるのは……………なんとわずかに売上の3~5%!!


これだと1500円で1万部売っても元がとれない。





俺が狙っているのはもちろん出版社が全部お金を出してくれる企画出版。


しかし、実績のない人間のはじめての作品を企画で出すなんてまずあり得ないことらしい。


んなこと言われても200万なんて金、臓器売らないと手に入らんよ。


なんとか売り込まないと。




とりあえず判断基準とするため、コアでポップな本を出している某出版会社、G出版のホームページにある個人出版問い合わせフォームに、放浪記の内容と企画をメールで入れておいた。



どういう返答がくるか楽しみだ。









翌日。





今日も亀山のトラックステーションで目を覚ました。

もうすっかり三重での寝床だな。


どこに行くにもちょうど真ん中にあるからとても動きやすい。



「山口さん、ちょっと西成行きません?」



「あー?西成?ふみたけも度胸あるなぁ。ビッグマネーは持ってったらアカンで。何かもみんな爆破されるぞ。」



トラックドライバーの山口さんは神戸生まれ大阪育ち。


小さい頃は兄弟で悪事の限りを尽くしていたという。


そんな山口さんの悪さ話を聞きながら山口さんの庭、大阪は西成に向けて車を走らせた。


日本一のスラム街という噂は聞いているが一体どんなところなんだろう?


まぁ、いくらスラムっていったって豊かな日本なんだから、そこまででもないだろう。








久しぶりの大阪に到着。


ただの街の雰囲気だけでも、なんとなく庶民的で生命力に満ちているこの空気。


懐かしいな。



山口さんのナビで大きなビルが立ち並ぶ天王寺の駅の通りにやってきた。


こんなとこにスラムなんてあるのか?


普通の都会やん。



「山口さん、別に普通ですよ。」



「まぁみとれ。おう、そこ曲がってみ。」



1本細い道に入ってみる。




ん?


な、なんだ?


開けた窓から臭ってくるアンモニア臭………………



そして目に飛び込んできたのはもう別世界だった。








髪ボサボサ、服ボロボロのホームレスたちが道中に溢れかえり、まるで映画『ゾンビ』みたいにフラフラと動いている。


アスファルトの上に寝転がってるおっさん。


その上を汚い野良犬がまたいでいく。


どこから拾ってきたのか古雑誌や怪しい時計を新聞の上に広げて売ってるっぽい人、ワンカップ片手の作業服、足のない車椅子のおじさん、ボロボロの民家、戦後の写真で見たようなアーケードと闇市さながらのバラック小屋、立ち飲み屋と質屋、当たり前のように道路上で潰れているパーツの剥がれた自動車……………



「文武、写真はやめとけ。見つかったら袋叩きやぞ。」



すでに想像をはるかに超えてる。


マジでボロボロ。


話では日本中から蒸発した人とか夜逃げした人とか犯罪者とかが流れてきて、ここで戸籍もなく日雇い労働者としてその日暮らしをしているんだそう。


平日の昼間だというのに仕事にあぶれた男たちがウロウロと歩いている。


マジで小便の臭いがキツすぎる……………


スラムすぎる…………………






ドキドキしながら車を路駐して山口さんと歩いてみた。



「ここが飛田新地っていう女郎街や。」



すごい!!

こんな光景見たことない!!


昔の遊郭そのまんまの女郎屋が通りの両側にズラーって並んでいる!!


木造の古い長屋のような建物。



開け放たれた玄関を覗くとばあちゃんが1人。


小あがりには見世物のような女の子がピンクのライトに照らされて手をこまねいていて、3メートル間隔くらいでその玄関が口を開けている。


これもまた伝統か………………



そこら中にあるこれみよがしな金看板。

この地区では法の執行者は警察ではなくヤクザさんなんだな。



「ホレ、あれ見てみ。あれなんやと思う?」



「え?なんですか?あれ。」



「あれ監視カメラやねん。ここらのやつら留置所入るために平気で悪さするからな。すごいやろ。町中に監視カメラがあんねやで。」



マジですか………………







今にも崩れ落ちそうな薄暗いアーケードの中、1杯飲み屋へ入ってみた。


カウンターには朝から飲んでるというおっちゃん。


足元を歩いている数匹の猫。


ソワソワしながらホルモンを食べてると、店のモンゴル人の女の子が外に向かって腕でバッテンを作っている。



「ダメー!!アカンデー!!ヨソイキー!!」



外を見ると、ガラス越しに俺たちのホルモンをうらめしそうに見てる爺ちゃんがいた。


すごすごと歩いていった。



「ど、どうしたの?」



「酒グセワルイネン。ヨクアルコトヤデー。」



このモンゴル人の女の子もヤクザさんに囲われているんやろな………………







そんな西成のど真ん中、やめとけと言う山口さんを尻目に、警察署前のアーケードの交差点でギターを抱えた。




怖さはなく、不思議と居心地がいい。


ギターを鳴らして思いっきり歌った。


最初は警戒して誰も足を止めなかったのだが、しだいにワラワラと集まってきた。


面白いもんで、みんなワンカップを持って、スーパー玉出で買った惣菜をつまんでいる。


1人が小銭を置いたら一気に5000円まで溜まった!!


西成の人は金はなくても金に縛られないんだな。



「兄ちゃん!!このワンカップ飲めー。」



「がんばれよぉ。」



「向こうでワシの仲間らと飲まへんか?」



「兄ちゃん、上手いなぁ。ところでわしワンカップ飲みたいんや。100円回してくれへんか?」



なんでやねん!!



大盛りあがりで楽しい路上だった。

さすがに山谷ブルースは怖くて歌えなかったけど。







車に戻り、大阪のビルの足元を走っていく。


きらびやかなネオン、楽しそうな人たち。


みんな帰る場所がある。


きれいな部屋、守ってくれる人、守るべき人がいる。


それが西成では今も薄暗い町で路上で寝る人、文化住宅というボロい共同アパートの裸電球の下でうずくまる人、公園のベンチで息絶える人。


すごい差だ。




今までそこそこ貧乏の真似事をしてきた。


だからこそその差の開きが少しはわかるようになった。


これが負の部分を隠す資本主義の現実か。


金を儲けて生きていく!!という強い意志がないからああなるのか?

それとも政治とはそんなにも強い影響力を持っているのか?


俺はこの社会でどの階級にあたる人間なんだろう。


それさえもわからなくなってくる。




西成、半端じゃねぇ。


結構人生観変わるよ。


また日本の新たな一面を見ることができた。



リアルタイムの双子との日常はこちら





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