2006年9月17日 【石川県】
1日で能登半島1周してやる!!
うおー!!
ムボー!!
でもやるしかねぇ!!
時間ねぇ!!!
まずは気多大社で縁結び絵馬を買っているカップルを冷ややかに眺め、海岸線を北上。
荒々しい奇岩の景勝が続く海岸線、能登金剛で日本一古い木造灯台の福浦灯台を見て、巌門、機具岩、460.9メートルの世界一長いベンチ!!!
車を降りてはダッシュ!!ダーッシュ!!ダッシュ!!
1321年に開山された曹洞宗の大本山、總持寺祖院へやってきた。
大陸から曹洞宗を日本にもって帰ってきたのは道元禅師。
彼は同じ北陸の福井県に永平寺を建てた。
そしてその日本曹洞宗を世に広め宗派の母と呼ばれている4代目瑩山禅師が建てたのがこの總持寺だ。
2つともが宗の大本山として中心道場となっている。
總持寺は1898年に大火で灰燼に帰したため横浜に移り、今ではあちらのほうが有名だが、こちらはこちらで元祖だと言い張っている。
ややこしい!!
ていうか輪島塗高ぇ!!
輪島市に入ってそこらへんの器屋さんに入ってみたんだけど、ただのお椀が6500円だと?
100均行ったことあるのか?!!
嘘ですごめんなさい!!!
んー、でも庶民に使われてこそ工芸品だよなぁ。
とりあえず輪島市にある漆器資料館へ。
輪島塗りの起源はおよそ610年前の室町初期にさかのぼる。
そして技法の原型が固まったのが桃山時代。
珪藻土の焼成粉末を漆に混ぜる技法や、口縁部に布をまく布着せなど、堅牢で実用的な器作りが輪島塗りの特徴だ。
しかし……………この値段はないよなぁ。
そりゃ沈金や蒔絵の施された鮮やかなものなら何万っていうのもわかるけど、なんの模様もないシンプルなやつが6000円も7000円もするんだもん。
これじゃ金持ちしか買えない。
現代の職人さんは何を求めて漆塗りを作ってるのかな。
輪島の町を出て海岸線をひたすら走り、能登半島屈指の名所である白米の千枚田に着いた。
うおぉ……………ここすげぇ……………
海からなだらかに登る傾斜地に広がる大小の田んぼには、黄金色の絨毯のようなふさふさの稲穂が揺れている。
さっきから通りすぎているそこらじゅうの町々では秋の収穫祭が行われていた。
実りの秋が来たら、吹雪に閉ざされる冬がやってくるんだ。
村下孝蔵の『恋路海岸』を歌いながら恋路海岸を駆け抜け、小木でやっていたねぶた祭りのねぶたを突き破りそうになりながらひたすらハンドルをきり、夕闇に海が溶け始めた頃、氷見の町まで降りてきて能登半島強行1周完遂。
これが旅行会社のツアーだったら、俺なら二度とその会社使わん。
さてさて、もう時間がない。
まだ小雨がパラついてはいるがいたしかたない。
明日から立山登山を開始するぞ。
こりゃ雨の中の長期戦になりそうだぁ。
しかたない!!!
北陸のメイン!!!立山アルペンルート!!!
待ってろよおおおおお!!!!
翌日。
北陸のメインと考えていた立山登山&黒部ダム探検の日がやってきた。
ここ立山黒部アルペンルートというのは調べてみると恐ろしく金がかかる観光コースだということがわかった。
☆立山駅~美女平(ケーブルカー700円)
☆美女平~室堂(高原バス1660円)
☆室堂~大観峰駅(トロリーバス2100円)
☆大観峰~黒部平(ロープウェイ1260円)
☆黒部平~黒部ダム(ケーブルカー840円)
これが片道。
往復だからこれの倍かかるというわけだ。
無理に決まってるやろがボケッ!!
全部歩いてやる!!!!
ダムまで30キロ近くあるんだよな………………
山道で……………
いけるかな……………
根性!!!!
朝、コンビニでパンとおにぎりをしこたま買い込み称名滝にやってきた。
ここの広い無料駐車場に車をとめ、バッグに食料と防寒着を詰め込む。
富良野ジャージに地下足袋、頭にタオル、の戦闘着に着替えたらいざ出発だ。
落差日本一の称名滝の方に歩いていくと、滝のすぐ横から早速山道が始まる。
そそり立つ絶壁を一気に登るいきなりのハードコースが立ち塞がる。
真横には、ゴゴゴゴ……………と地響きを起こす滝。
しぶきを浴びながら木々をかきわけて登っていく。
モデルタイム2時間半の山道を1時間半で駆け上がってやった。
この調子でガンガン行くぞー!!
弥陀ヶ原まで来るとだいぶ高原っぽい景色になってきた。
日ごろの行いがいいせいで今日に限って天気最高!!
雲ひとつない爽快な空の下、木道を歩き、松尾展望台に寄り道。
うおー!!
すげーー!!
なんてスケールだ!!
山えぐられすぎ!!
そそりたちすぎ!!
こいつが立山カルデラか。
ハンパじゃねぇ。
弥陀ヶ原に戻ってきてここで一休憩。
休憩所のおじさんに話しかけてみた。
「ダムまで歩いたらどのくらいかかりますか?」
「はぁ?無理だムリ。絶対死ぬぞ。」
そっけなくあしらわれてしまった。
ジジイが……………それで客商売か?
見てろよ、帰りにここ通ってほえずらかかせてやる。
天狗平までの1時間半の旧道を1時間で突破。
そして森を抜けた瞬間、一気にボルテージが上がった!!
うおー!!
これが立山かー!!
目の前にそびえる何とも不思議な色をした立山の姿。
遠くに見える岩山は日本の登山家最大のステータス、剱岳だ。
あまりの壮大な光景に一気に足取りも軽くなった。
ウキウキで写真撮りまくりながら地獄谷へ降りる。
そんな俺の姿を見てハイキングの老夫婦が声をかけてきた。
「やぁこんにちは。どちらの小屋の方ですか?」
え?
ただの登山客ですけど?
老夫婦は高そうな登山ウェアー。
俺はジャージにじか足袋。
こんな格好でぴょんぴょん歩いてたら確かに山の人に見えんこともないか。
硫黄の匂い立ち込める荒涼とした谷。
ここを地獄谷という。
立山は日本三霊山に数えられる信仰の山。
この地獄谷にはあの世の魑魅魍魎がうごめいていると昔から恐れられていたという。
その象徴が3メートルもある硫黄塔。
硫黄のガスが噴き出して結晶化し長い年月をかけてこんな奇怪な形になったのか。
なるほど、こりゃ確かに物の怪に見えるわ。
いやー、緑が美しいなぁ。
風が強いため、みくりが池に映る逆さ立山は見られなかったが、それでもメチャきれい。
アルプスの少女がその辺スキップしてそうな爽やかさだ。
立山は夏もいいらしいがこの時期もナイス。
これが4~5月だったらアルペンルートの車道に除雪したての20メートルもの雪の壁ができるらしいし、残雪の山も望める。
10月には山全体が紅葉に燃え上がり青空とのコントラストが見事だろうな。
それにしても昨日まで雨だったのに今日に限って天気サイコー!!
室堂から一の越に到達したのが14時30分だった。
出発して6時間か。
ようやくここにきて立山へのピークへアタックだ。
今まさに日本を襲っている台風の影響か、すさまじい暴風が吹き荒れている。
しかも一の越からはただの岩山になるので、道なき道を両手両足・三点確保でロッククライミングとなる。
一歩でも踏み外したら何百メートルも下に転がり落ちてしまうような急斜面。
うおおお!!
風で飛ばされそう!!
ぐううう…………きついな…………
さすがに1日中歩きっぱなしの体でこの岩場は怖い!!
1時間で立山の1つ目のピーク雄山頂上にたどり着いた。
標高は3003メートル。
ここからさらに縦走して3015メートル地点があるのだが、まぁ別にそこまではせんでもいいか。
ここでも充分素晴らしい景色だ。
山小屋のおじさんに話しかけてみた。
「すみませんー、ここからダムまでどのくらいかかりますか?」
「はぁ!?7~8時間はかかるぞ!?」
「えっ!!!そんなかかるんですか!!!?」
「当たり前だろうが。」
「え?当たり前?なにが当たり前なんですか?」
当たり前とか知らんし。
山の人間って何でこんなに横柄なんだろう。
ボケが。
雄山を下り、一の越から黒部ダムがある山の裏側を眺めた。
深い深い谷底のジャングルに道が続いている。
これを行くのか……………
幾重もの山並みが夕日を浴びて目を疑うほどに真っ赤に染まっている。
闇と静寂が秘境に訪れはじめている。
なんとか今日中にダムまで行きたい……………
が、7時間っていったら23時だぞ?
さすがにまずいか。
とにかく行けるところまで行こうと、山肌にへばりつくようにゴツゴツした岩場を黙々と歩いていく。
もちろん他に人の姿はない。
暴風によろめく。
ただ1人だけの時間。
だれも応答はない。
東一の越に着いたころにはもう完全な真っ暗闇になっていた。
さすがに体力も底が近づいてきた。
岩に座って力をぬくと、降り注ぐような星空に包まれた。
暗闇の山の上、あかりは星の光りだけだ。
あー、きれいだなぁ。
さぁ、行くか。
ここから急激な下り坂が始まった。
ライトは持ってきてない。
あまりに真っ暗で、しかも足元が岩場なのでめちゃくちゃ歩きづらい。
油断したら即足をくじいてしまう。
思いついたのはデジカメの液晶。
電源を入れ、淡い灯りで足元を照らし、一歩一歩探りながら歩を進めていく。
生い茂るジャングル。
ロープウェーが通ったためにこの道はほとんど使われてないんだろう。
背丈以上もある草が生い茂り、道がほとんど見分けがつかない。
草をかけわけながら慎重に足を踏み出していく。
「うわっ!!!!!!」
突然足元がなくなり体が浮いた。
ベキベキバキバキ!!!!!!!!!
3メートルほど転落!!
木に引っかかったんだけど、暗闇なので態勢がどういう状態になっているのかもわからん!!
くそ…………きついな…………
ていうか熊がめっちゃおるって休憩所のジジイが言ってたよな……………
今度はしばらくするといきなり森が途切れた。
な、何だここ?
めちゃくちゃ広い岩場だ。
どうやらここは沢のよう。
今は水量が少なくてただの岩場のようになっていた。
突っ切って向こう岸にたどりついたのだが……………
暗すぎて道の続きがわからねぇ………………
やべぇ。
上流にのぼったり下流にくだったりと、沢の上をグルグルと歩き回る。
わからん。
わからんわからん!!!
やばい!!
くそ、こんな真っ暗の中、微妙な草木の割れ目なんてわからねぇよ……………
山の20キロを歩き続けた体はもう疲労ピーク。
あ、ここ…………かな?
なんとか続きの道を見つけ、また草木をかきわけて進んでいると、何だ……………?
今度は道がなくなった。
え?
道間違えたか?
岩場に近づいてデジカメで照らしてみる。
こ、これハシゴか?
岩場にボロいハシゴがかけられてある。
マジかよ………………
力を振り絞ってハシゴを登る。
すると、真っ暗闇の眼下に小さな光の粒が見えた。
あそこがダムか……………
空に飛行機の点滅が見える。
あそこから見たら俺がいるところは広大な漆黒の山岳地帯。
しかし空の上とはいえ人間の存在を確認できただけでかすかに安堵感を覚えた。
何時間、暗闇の中で草木をかきわけ続けただろう。
本当にこの道、というか道かどうかも怪しいのだが、この道で合ってるんだろうか。
その時だった。
あ!!
何だこれ!!
古びた道標を見つけたときのうれしかったことったらなかった。
やっと着いた…………………
えーっと、なんて書いてあるかな……………
『黒四ダム 4.3キロ→』
し、死ぬ…………………
も、もうダメ…………………
あっ!!!!!!!!!!!
森の向こうに明かりが見える!!!!!!!!
フラフラと歩いていくとロープウェーの黒部平駅の建物だった!!!!!!
何だ?
水の音が聞こえる……………
あっ!!
湧き水ううううううううううううううううううううううううううううううう!!!
ありがたいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!
冷たい水にむしゃぶりついた。
火照った体中が冷やされていく。
何年ぶりかのような人工物に再会できたことがうれしくて、建物の周りをグルグルと歩き回った。
いやー、ありがとうねーありがとうねぇって建物に話しかける。
裏に小さな作業道具置き場があったので、そこへ潜り込んだ。
相変わらず風はすさまじいうなり声をあげている。
暗い物置の中で、たくさん持ってきた防寒着をしこたま着込んでパンとおにぎりを頬張った。
寒すぎる。
建物の中から聞こえてくる宿泊客か従業員かの笑い声。
壁1枚隔てて天国と地獄だな。
暗闇の中でじっと息を潜めていた。
翌日。
いくら着込んでも熱を発するものがないと寒さは変わらん。
震えながらうつらうつらしただけでほとんど眠ることは出来なかった。
やがて外がほの明るくなってきた。
小雨が降り続いている。
さぁ、今日中にファントムまで戻らないと。
涌き水で顔を洗って出発した。
ここからもまた険しいジャングルが続く。
草をかきわけ岩場の道を下っていく。
朝イチから急な下りで、太ももに力が入らず、しかもすごい筋肉痛で歩くのもやっと。
こんなんでまた30キロも来た道を歩けるのだろうか。
ようやく悪夢の森を抜け、湖岸の舗装道に出てきた。
アスファルトありがとうううううう!!!!
昨日と合わせて一の越からダムまで4時間ってとこか。
どこが7~8時間だよ。
テキトーなこと抜かしやがってあのジジイ。
ていうかきたああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!
うわああああああああああああああ!!!!!!
高さ187メートル!!!
長さ492メートル!!!
日本最大のダム、黒四ダムが目の前に現れた!!
これ造ったのが昭和37年?!
すげすぎ!!!!
時は戦後、高度経済成長の駆け出しの頃、日本は深刻な電力不足。
電力なくして発展はなしと関西電力が目をつけたのが、この黒部川だ。
そこから戦いの日々が始まる。
工事中、最も困難だったのは大町トンネルの掘削。
これが開通したおかげで資材運搬のピッチが急速に上がったわけだが、それまでは1人40キロ~70キロの資材をかついで片道8日もかけて立山を越えて現場に向かっていたらしい。
宇奈月温泉から黒部峡谷を登ってくる日電歩道という、崖に鉄筋を打ち込み、その上に丸太を乗っけただけというめちゃくちゃ危険なルートもいまだ残っている。
そんな道なき道を資材をかついでダム工事現場に向かっていた男たち。
厳冬の寒さ、崩落、水害、あまりにも厳しい大自然に人間の叡智を集結させて立ち向かい、171名の殉職者を出しようやく完成したのがこの黒四ダムだ。
現在この黒部川流域には黒四ダムを初めとしていくつもの水力発電所が造られ、秘境の山の中を何本ものトンネルやパイプが張り巡らされている。
んー……………関係者専用トンネルとか探検してみたいなぁ……………
ていうかこんなスーパー巨大な人工物をこんな深い山の中に作ってしまうなんて、人間ってマジですごいよ。
1人だったらたった100キロの石も持ち上げられないような非力な生き物なのに、知恵を結集させ、力を結集させたらこんな物を作り上げてしまうんだもん。
人間の偉大さって計り知れんわ。
おっ!!
なんだ!!
すげえええええええ!!!!
夏のシーズン、6月26日~10月15日の間は毎日この観光放水を見ることができるようだ。
ハンパじゃない迫力!!
さ、黒部ダムの雄大さを満喫したら黒部立山アルペンルート制覇だな。
あー、楽しかった。
さて車に戻って風呂入りに行って美味しいご飯食べて車の中で1人でエッチなことをして爆睡するかあああああああああ!!!!
…………………………………………
目の前にそびえる巨大な立山。
その前のジャングル。
えっと………………戻る?
戻るってなんですか?
あまりの絶望にオシッコ漏らしそうになる。
全身筋肉痛、寝不足、空腹。
手元には万一のために持ってきた1000円。
万一で1000円て………………
このままここで暮らそうかな……………………
「お、これから縦走ですか?」
ニコニコしながら恐ろしいこと言ってくる小ぎれいなツアー客のおじさんおばさん。
手ぶらでロープウェイ駅に入って行く。
俺も乗せて………………
とにもかくにも行かないことには帰れない!!!!
気合いを振り絞って10時にダム出発!!!!
死ぬ思いでジャングルを登っていく。
ぐおおおおおおお!!!!
道が悪いいいいいいいいいい!!!!
ていうか昼間でもどこが道かわからんようなこの森を、よく暗闇の中降りてこられたな。
はるか頭上を悠々と動いているのはロープウェーの箱。
中からこっちを見下ろしてやがる。
ちくしょおおおおおおおおお!!!!!
2億回土下座するから乗せてくださいいいいいいいいい!!!!!
ついに食料も尽きたし、熊鈴なんて上等なもんもないし………………
あああ、キツい……………
50メートルほど歩いては2分座り込み、立ち上がってまた50メートル歩いて座り込む。
振り返ると、はるかな山並みの谷間にちょこんとダム湖が見える。
あんなところでひたすら何年もスコップ振るなんて頭おかしくなるよ。
顔面蒼白で、膝が砕け散りそうになりつつ15時に一の越に到着した。
やった………………
ここからはアスファルトの緩やかな下りだ。
震える足で室堂のバスターミナルで休憩。
「称名滝のパーキング?18時でゲートしまるよ。」
マジ!!!?
ヤッベ!!!!
あと3時間しかねぇじゃねぇか!!!!!
絶対間に合わない……………
あ!!
ポケットの中に入っているのは万一のために持ってきた1000円!!!!!
ぐおおおおおおお!!!!
持ってきててよかったああああああ!!!!!
1000円で行けるとこまでお願いします!!とバスに乗り込んだ。
バスで弥陀ヶ原に到着。
今16時。
身体中ボロボロで早いとこ車に帰りたいんだけど、これだけはしておきたいことがある。
昨日俺に絶対無理、死ぬぞって言ったあのジジイに吠え面かかさないことには帰れない。
すると、バスを降りたところでちょうどよく昨日のジジイが話しかけてきた。
オラァ!!!!
どうだ見たかコノヤロウ!!!!
「はい、お泊りですか。」
「いや、泊まりません。おじさん僕のこと覚え、」
「では次のバスの予約をしてください。」
「いや、バスも乗らないです。おじさん僕昨日のうちにダムまでい、」
「あのね、泊まらないんでしょ?だったら次のバスの予約して。」
「いや、まだ歩くんですよ。おじさん絶対ムリって言ったけど僕歩いてダムまで行ってき、」
「は?熊出るよ?どーぞお好きに。」
…………………………おおおおおらあああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!
テメェその残り少ない髪の毛むしり取って鼻に移植するぞボケがああああああああああああ!!!!!
ジジイに相手にしてもらえなくてめちゃくちゃムカつくけど、もうそんなこと言ってられない。
小雨の霧の中を急ぎ足で歩いていく。
今16時半。
よし、これならギリギリ間に合うだろう。
その時、後ろから山関係者のバンがやってきて横に止まった。
「おーい、何やってんだこんなとこで。乗ってきなー。」
ありがたい!!!!
このままでも間に合いそうだけど、好意に甘えることにした。
「疲れきってるな兄ちゃん。今日どっから歩いてきたの。」
「ダムからです……………」
「えええええええええええ!!!!!」
「ウソ!!!1日で!!?あの東一の越のジャングル行ったのか!!?あの道、もう誰も歩かねーんだぞ!!?」
「昨日、称名滝から歩いてダムまで行きました……………」
「ま、マジかよ………………」
最後に優しい山の人たちに出会えてホッとした。
最後の山道、八郎坂の降り口まで送ってもらい、雨でズルズルにぬかるんでる急激な坂道をダッシュで降り、滝に見向きもしないで駐車場の車に転がり込んだ。
も、もう死ぬ………………
鼻から魂出てる………………
なんとか車のエンジンをかけ走り始めたけど、あまりの疲労にクラッチを切る左足がぷるぷる震える。
辛かったああああああ…………………
でもいつも思う。
この辛さはほんの1日2日のもの。
やることをやれば、すぐにまたゆっくり眠れるところに行ける。
永久に続く苦しみではない。
抜けないトンネルはない。
だから頑張れる。
あああああああああ!!!!
きつかったああああああああああああああ!!!!!
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