2006年8月25日 【長野県】
江戸時代、木曽山地の森林は幕府直轄の国有林だったらしく、「木一本首一本、枝一本腕一本」といわれていたほど森林が厳しく管理されていたそうだ。
勝手に伐採するのがそれほど重罪だったんだな。
そんな深い山の中に木曽福島の町はある。
町の中は古い昭和の商店街の姿がそのままに残ったレトロな雰囲気。
一歩路地に入ると江戸の宿場風景そのままだ。
町中を散策し、平家討伐後、征夷大将軍にまでのぼりつめた英雄、木曽義仲の墓を見てさぁ次の町だ。
木曽街道11宿の中の最大の宿場、奈良井千軒とうたわれた奈良井宿にやってきた。
うおおおおおおおおおおお!!!!!
すげええええええええええ!!!!!
こいつはすげぇ!!
だんとつ日本一だ!!!
今まで色んな古い町並みを見てきたけど、こんなに江戸時代の庶民的な暮らしが残っている風景は日本広しといえどまずない!!
どこまでも続く木造民家の軒。
周りの山々。
着物ちょんまげの人がいないのが逆に不自然に見えてくるほど。
いやー、俺の地元の美々津も古民家の町だけど次元が違うなぁ。
日本にはまだまだ手付かずの古さが残ってる。
こいつは木曽に行くなら奈良井は絶対にはずせない名所だな。
よーし、この調子で今度こそ綺麗な山見るぞー!!
県道26号で乗鞍岳へ一直線。
よーーーーーし!!
ここから見えるはずーーーーーー!!!!!
また曇りーーーーーーーー!!!!!!
何も見えんーーーーーーー!!!!!
百名山だらけの長野県。
いい加減雄大な山を見たいよ………………
国道に出てトンネルだらけの山奥の道を走っていく。
次に目指すは高原ハイキングがさかんな長野の中でもひときわ人気で日本中のハイカーたちに愛されている場所、そう、上高地だ。
山の中の道をずんずん走っていく。
えーっと、そろそろ着いてもいいころだけどー…………
ん?
な、なんか看板が出てる……………
何ーー!!!!
マイカー規制!?
山の中の道がいきなりマイカー規制!!!
クソォ!!
この先に上高地があるのに入れねぇ!!!
あ!!!バスの他にも乗用車が入って行ってるじゃねぇか!!
と、思ったらどれもタクシー。
なんだそれ!!
タクシーならいいのかよ!!
上高地、大儲けやな。
悪いがそんなに金は使えません。
えー、上高地だぞー……………
上高地ー……………
長野でいったら善光寺にも並ぶ名所だよなぁ……………
でも金が……………
せっかくここまで来たのにどこにも行かずじまいじゃ悔しい。
せめて温泉には入ろう。
このあたりにはいたるところに無数に温泉があるので迷うが、白骨温泉というところに行くことに。
戦乱の時代から武田信玄の隠し湯といわれている高名な温泉、白骨。
山あいの静かな谷間にいくつかの風情ある旅館が並び、秘湯ムード満点だ。
この温泉地の顔として人々に親しまれている川端に湧く公共野天風呂。
しかし野趣満点なのはいいがシャンプー・石鹸はNG。
他の宿も宿泊客優先のため立ち寄り湯の時間が短いので入りづらい。
そこで行ったのが柳屋旅館。
ここは遅くまで入ることが出来るし、白骨特有の白い湯が温泉街の中でもっとも白いと評判だ。
入浴料は500円。
んー、露天の景色もいいし湯の香りもいい。
温泉ってなんて自然と一体化できる手段なんだろう。
何千年、何万年とかけて染み出した地球のエキスにつかる。
人間は地球の子だ。
山の中を駆け抜け、松本市に抜け、諏訪までくだってきた。
この前マイケルさんに金曜にもう一度来ますと言っていたからな。
よっしゃ!!歌うぞー!!
いつもの場所でうりゃー!!といい調子で8000円。
この調子なら1万越え確実だ!!と思っているところにおじさんたちがやってきた。
1番貫禄のあるおじさんが若い衆に声をかける。
「おう、そいつ連れてこい。」
「はい!!君、ちょっと来てもらえるかな。」
どこでも行きますよーとおじさんたちについて行き、スナックで3曲。
「いやー、やるねー。」
「おいおい、こりゃうちで後援会つくるに!!」
なんか重役っぽい感じの人たちで気難しいかなと思っていたんだけど、満足してもらえたようで胸をなでおろした。
話ではみなさんはミクロ発條という世界トップレベルのミクロなバネを作っている会社の社長とその幹部の方々らしい。
日本を支える中小企業だ。
といってもアジア各国に支社をもつかなり大きな会社。
豪快な社長は実にカッコイイ。
あれよあれよと話が盛り上がり、9月2日に行われる会社の家族パーティーで余興として出演してくれという話に。
ううう、まだ結構先だな…………
時間きつい……………けどせっかくのお誘いを断るのも申し訳ないので引き受けることに。
「よし、俺は帰る。金丸君ありがとうな。」
立ちあがりざま、さっと俺の手に1万円を握らせ、さっそうと代行で帰っていった社長。
社長ありがとうございました!!
残ったみんなでラーメンを食べに行くことになり、町の中のラーメン屋さんでシメのラーメンをいただいた。
「金丸君、マージャンやるに?」
「…………坊や金丸っていわれてましたよ。ニヤリ。」
「よっしゃ!!行くぞ!!」
そのまま雀荘で朝までカチャカチャ。
小沢さん強すぎ。
坊や金丸という真っ赤なウソは一瞬でばけの皮を剥がされたが、まさかの奇跡の2位。
「あー、やっぱり酒飲んでやるとダメだにー!!」
朝から晩までっていうか朝から朝まで動きまくってヘロヘロになりながら車に戻り、カーテンを閉めて布団に倒れた。
翌日。
あー、長野は冷涼とはいってもやっぱ夏は暑いいいいいいいいいいいい!!!
日差し照りつける中、今日はまず残りの諏訪大社に向かった。
古事記にも出てくるほど深い歴史を持つこの諏訪大社。
上諏訪にあるのがこの前行った上社本宮、上社前宮。
そして下諏訪にあるのが下社秋宮と下社春宮。
ややこしい。
下諏訪の町中を通る中山道の道を歩き、秋宮にやってきた。
4つのお宮さんの中でここが1番メインの場所のようで、それはそれは立派な平拝殿と本殿。
建物に刻まれた彫刻も今にも動き出しそうな躍動感だ。
神社、寺ってすごいよなぁ。
この俗世の中にあって絶対に汚すことのできない荘厳な空間。
同じ地上にあってここだけが異空間だ。
歴史の重み、人の想いが渦巻いている。
人が宗教にあやかる気持ちというものが様々な人間文化に触れることによって少しずつわかり始めてる気がする。
人間の延長が宗教であり、宗教の延長が生活だ。
それ以上のことを求めてはいけない。
観光客たちの雑踏を離れ、少し離れたところにある静かな春宮をお参り。
落ちついた佇まいに心がほぐされる。
二礼二拍一拝。
今度は上諏訪に行き、車を止めて町を歩いていく。
国道沿いにある、酒蔵がズラリと並ぶ地区をたずね歩きだ。
一応ほとんどの蔵に電話を入れたが、どこも見学はナシ。
ならばただの観光客扱いにはなるがせめて試飲して回るぞ。
まずは長野の酒といえばこれ、という『真澄』へ。
蔵の中に入るとお洒落な販売ブースがあり、観光の爺ちゃん婆ちゃんに混じって300円の試飲グラスを買って唎きまくる。
辛めでバランスのいい綺麗さ。
これぞ信州のお酒ってことかな。
次に『麗人』の蔵で試飲。
んー、美味しい。
しかし酒の美味さより販売の女の人がきれいでそれどころではない。
『真澄』もこちらもすごい美人ばかり。
でも『麗人』の方が年上の妖艶な感じでめっちゃ酒が美味しいって、ここはクラブか?
そんでもういっちょ『舞姫』の蔵。
うひょおおおおおおおおおお!!!!!
エロい舞姫どこですかあああああああああ!!!!
ここまでくるともう結構できあがってて諏訪サイコー!!
デロンデロン。
酔い覚ましにフラフラと商店街を歩いていると近くに楽器屋さんを発見し、覗いてみるとショーウィンドウの張り紙が目に入った。
『9月1日 弾き語りナイト!!』
お、いいじゃんいいじゃん。
中に入って店長さんに話かける。
「おー!!飛び入り大歓迎ですよー!!よかったら連絡先教えてください!!」
情熱的な若い店主。
こういう人がいないと地域の音楽活動を盛り上がらないよな。
音楽関係者ってのはやたらと上から目線の偉そうな人が多いもん。
そこらへんの食堂ですっごくおいしいカツ煮を食べ、酔いもさめてきたところで車に戻る。
まだ16時半か。
うーん……………よし!!
もういっちょいくか!!
できるだけぶっ飛ばさないとマジで長野県いつまで経っても終わらん!!!
岡谷市からすぐのところにある手軽に行ける高原、高ボッチ高原。
よっしゃここから中央アルプスをのぞむ美しい高原を見るぞおおおおおお!!!!
はい、見事に霧まみれ。
草原にかかる霧はこれはこれで幻想的ではあるんだが、いい加減に山々の連なりが見たいよ……………
せっかく長野にいるのにー!!
ガッカリしながら下諏訪の町に戻ってきた。
ここは住宅地の中を中山道が通っており、両側に普通に現代の民家が並んでいる。
家の前が中山道。
んー、どんな気分なんだろ。
下諏訪は温泉の町なのでたくさんの銭湯が軒を連ねているが、その中の『旧過の湯』へ。
鎌倉時代からあるという古い湯で、街道沿いでもあるため800年の歴史の中で星の数ほどの人間たちがこの湯につかってきたのかと思うととても感慨深い。
220円を番台に払い、中に入ると地元のおっちゃんたちが世間話をしている。
みんなが常連で顔見知りだ。
これはまぁどこにでもある光景なんだけど、浴室に入ってみて驚いた。
爺ちゃん同士が背中を洗いっこしている!!
え、えええ!!
腕持って脇の下まで洗ってあげてる!!!!
こ、ここはそういう銭湯なのか!?
おそるおそる洗い場に座り俺も体を洗う。
もちろん自分で。
見ていると、みんな年の差関係なくおっちゃんが爺ちゃんの、爺ちゃんが兄ちゃんの背中を流し、うまく循環しているようだ。
「兄ちゃんも何度か通ったら声かけてもらえるにー。」
この洗い合いっこが下諏訪の常識なんだ……………
微笑ましい通り越して仲良しにもほどがある……………
湯、熱っ!!
今夜は岡谷で歌ってみようと町中に行ってみたが、飲み屋街が見当たらないので仕方なく今夜も諏訪へ。
いつもの映画館前で歌っていると、5~6人のお兄さんたちがやってきた。
「うおー!!めちゃくちゃいい!!ちょっとマジで聴くわ。」
「いやー、久しぶりに感動してるわー。」
かなり真剣に聴いてくれ、おひねりも結構入れてくれたお兄さんたち。
ありがたいなぁ。
するとそこにおじさんたちが3人やってきた。
このおじさんたちも立ち止まって聴いてくれる。
歌が終わり、おじさんが口を開いた。
「兄ちゃんの歌はいいよ。でもとりまきがダメやな。」
「あ?」
お兄さんたちはそれぞれにあぐらをかいたり、地面に座って後ろに手をついて聴いてくれていた。
別に何も問題ないことなのだが………………
「そんな格好で、真剣に聴かないで失礼だろうが。」
「は?俺らが1番真剣に聴いてるし。なめてんのか?」
お兄さんたちからしたら気分よく聴いているところに心外だったはず。
こういう説教したがりのおっさんはどこにでもいるもんだ。
というわけでとっくみあいの始まり。
「兄ちゃんら金払ったのか!!ああああ!!」
「払ったわ!!つーか金払えばいいって問題じゃねーだに!!この兄さんバカにしてんのか!!」
お兄さんたちはどうやら消防隊の猛者たち。
ただのオッさんがかなうはずもない。
大声を出していたら通りかかったおばさんが止めに入り、しばらくすると和解しみんな戻って来た。
「いやー、悪かったな。兄ちゃん。みんなこういうの好きだから熱くなってしまったんだー。」
「ほんといい歌ありがとうなー。」
みんな気を遣ってチップを入れてくれ、26000円にもなってしまった。
諏訪の男は熱いなぁ。
あんな大木にまたがって坂を滑り降りるようなことやってるんだもんな。
そろそろ終わろうかな、というところにさっき乱闘を止めに入ってくれたおばさんがやってきて、一緒にご飯を食べに行くことに。
寿司屋さんに入るとさっきの消防隊員さんたちが飲んでた。
「おー!!逆ナンされたかー!!」
「おばちゃんヤリ手だねー!!」
福祉の仕事をしているヤリ手のおばちゃんはかなりの読書家で、教養のある楽しい時間を過ごさせてもらった。
寿司屋の茶碗蒸はうまい!!
おみやまでいただいて車に戻ってきて、布団に倒れる。
さぁ、明日からやっとことさ県北部だ。
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