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創価学会のオッさんに絡まれた夜








2006年6月8日 【高知県】







25日目。





コイン精米所の中で目を覚まし、濡れた白装束を着込んだ。


もちろん全然乾いてないので冷たいけど、歩いてればそのうち乾く。






三原村の山を抜け、やっとこさ国道に出てきた。


文明に喜びつつ、24時間ぶりの飯を食おうとコンビニに立ち寄った。


そこで2人のお遍路さんと遭遇した。





関東で寺の住職をやっているというM住職。


もう1人は俺と同い年のサドゥ君。


体中にタトゥーが入った、ハッピーガイだ。



お互い野宿オーラ(薄汚さ)をバリバリ出していたからか、戦友意識を抱いてすぐに仲良くなった。







意気投合し3人で一緒に歩き39番・延光寺へのお参りを済ます。




それから宿毛の町でコインランドリーへ。


おもむろに服を脱ぎだす2人。


平然と丸裸になって全ての服をドラムに詰め込んでいるM住職。


ちょ、もうちょい羞恥心を……………






「お、これ飲みな。がんばれよ。」



脱水待ちのおじさんにビールを接待していただいて3人で納め札を渡した。







「僕これから歌いに行きますけど、どうします?」




「お、おねーちゃんと何かあるかもな。へへへ。」




ノリノリのM住職。


ホントに住職か?って怪しくなってくる。





が、残念ながらいくら歌ってもおねーちゃんからのお誘いはない。


こ、こんなヤバい奴らにお誘いなんかあるわけねぇ。










それからみんなでファミレスのジョイフルに行きウダウダ喋っていると、後ろの席から女の子3人の話し声が聞こえてきた。



「カラオケ行こうかー。」



「そうだねー。」



「ん、んー、あーカラオケ行きたいなー。あー、ちょっと息抜きしたいなー。」



めちゃくちゃあからさまに大きな声で女の子たちに聞こえるようにしゃべるM住職。


不邪淫(淫らなことをしてはいけない)の教えを1ミリも守る気がない。


ていうかこんな薄汚いお遍路3人とカラオケ行くような女の子いるわけねぇ。





女の子たちが帰っていくのをうらめしそうに見つめ、そのまま店内で仮眠した。


さすがに店内なので俺とサドゥ君は気を遣って座ったまま目をつぶるが、M住職、ソファーに思いっきり横になって快眠モード突入。


ハート強すぎ。



そして朝まで注意してこなかったジョイフルさん、サイコーです。









26日目。




3人で山の中を歩いていく。













この高知から愛媛に抜けるあたりもなかなかの難ルートで、長い山道が続く。


木々の間から見える海には養殖の生簀が広がり、とても気持ちのいい景色だ。


この辺りは牡蠣の養殖が盛んだ。





それにしてもサドゥ君もM住職も歩くのが早い。


みんなスタスタ歩いていくので俺だけ置いてけぼりだ。



でもお互い別にそんなに干渉はしない。


誰かにペースを合わせたりしないで、離れたらそのまま別々に歩いていく。












3人で35キロくらい歩いたとこで、偶然サドゥ君の親戚のおっちゃんに遭遇した。


サドゥ君は愛媛県出身だ。



「みんな、今日は叔父さんがウチに泊まってけって。美味しいもの食べようぜー。」



3人まとめて叔父さんのお宅に泊めていただいた。





いやー、この日はマジで天国だった。










27日目。





サドゥ君の叔父さんに最高すぎる朝ご飯を食べさせていただいてパワー満タン。



英気を養い勢いよく歩き、40番札所・観自在寺に到着した。


もうすっかり全てのお経を暗記しており、スラスラと口から出てくる。




M住職はこれで4回目の遍路。


今回は88ヶ所の他に20ヵ所ある番外霊場も一緒に回ってるということなので、ここでお別れだ。


アジアンなヒッピー、サドゥ君とも離れ、また1人の歩きが始まった。


















この日は愛媛県の宇和島で路上をした。


なかなか大きな繁華街で、反応も上々。



するとそこに酔っ払ったおじさんが声をかけてきた。


ちょっと面倒くさい感じの人だな…………と思っていると、なにやらオッサンは創価学会の人で、「真言宗のお遍路なんて俺たちの1000年後ろを歩いてるバカだ。」と絡んできたので、他の宗教にいちゃもんつける宗教は邪教ですよと、どこかのお寺の住職さんから聞いた受け売りで応戦。


あまりに上から目線で馬鹿にしてくるので、こいつムカつくなぁ………と思っていると、さっきまで俺の歌を聴いてくれていたごっつい兄さんが戻ってきて、よし、お前の相手は俺だと言ってオッサンを路地裏に連れて行ってしまった。


慌てふためきながら引っ張られていったオッサン。



ご愁傷様です。









歌い終わった後の寝静まった街を歩く。


時間は深夜2時。


ホステスさんもママさんも帰っていき、ほとんどのネオンが消えている。


高校生の時、いつも地元の町の飲み屋街で夜中まで歌い、駅まで歩いて1人で始発を待っていた懐かしい日々が蘇る。



寂しくて、心細くて、でも世界に俺だけしかいないような特別な空気。


冒険心が満たされる。



駅にたむろしてる女の子をナンパしてホームで飲み明かし、お巡りさんに怒られたりしてたよな。





あれから8年。


愛媛の田舎町で乞食のようなドロドロの格好。



ナイスな成長ぶりだとおかしかった。




リアルタイムの双子との日常はこちら





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