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世界遺産の温泉から、田辺の路上の始まり








2006年3月6日 【和歌山県】





しとしと雨の本宮町は一際神域の風情をかもしだしていた。


そんな雨を眺めながら思う。


濡れた古道もまたきれいだろうな。


深い山の中に続く熊野古道は、人知れず今も雨に濡れ、古の旅人の足跡を洗い流している。
















本宮三温泉郷の1つ、湯の峰温泉にやってきた。




ここのつぼ湯という立ち寄り湯は、参詣者の垢落としの清めの湯であったことから、世界遺産『紀伊の霊場とその参詣道』のくくりに含まれており、世界で唯一の世界遺産の湯ということになっている。


湯治場の風情漂う小ぢんまりとした温泉場。


その中心に流れる小川の川原に建つ質素な小屋。


750円とちょっと高めだが、つぼ湯を30分貸し切ることが出来る。


まだ時間が早かったので運よく待ちなしで入ることができた。






小屋の中には小さな湯だまりが1つあるだけ。


何百年もの間、星の数ほどの人々の穢れを落としてきた禊の湯だ。


室町時代、毒殺された小栗判官が地獄の餓鬼の姿でよみがえり、この湯で湯治してもとの姿に戻ったという伝説は全国的にも有名。


ここでは石鹸は使えないが、セットで内湯にも入れるからそこで洗うことができる。




さあああああああああ!!!!!



世界遺産の禊の湯に神妙な感じで入るぞおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!












めっちゃ何回もセルフタイマーしました。





体洗えなかったので近くの温泉でもう1回ちゃんとお風呂入っといた。












身も心もすっきりし、さぁ出発だ。


ヒゲも剃ってさっぱり。












和歌山南部の大きめの町である田辺市に向かう道を走っていく。


この田辺~本宮間は熊の古道でも1~2を争う人気のコースとのこと。



ホント熊野古道ってこの紀伊半島のいたるところに張り巡らされてるなぁ。


こうしてただ走って通り過ぎるのはもったいないのでどっか見られたらいいなとアクセルを踏んでいると、道路ぎわに『熊野古道→』の看板が見えたのですかさず山に入ってみる。


いきなりアスファルトが終わって林道になり、でこぼこの砂利道を登っていく。


そこらじゅう崖崩れのオフロードコース。


しかもタイミング悪く雨が降ってきやがった。



これ大丈夫かよ…………と思いつつズンズン奥地へ向かう。









30分ほどすると小さなお堂が現れた。


ものすごい山の中。

雨は一層激しさを増している。


こんな山奥誰もこねぇだろ…………と思いながらお参りを済ませ、車に戻りとっとと道路に戻ろうと走ってる時だった。




ん?




なんか車の底が地面に当たっている………?




雨の中、降りて覗き込んでみた。





………………あー…………パンクしてるよ……………



…………マジかよ。


………………勘弁してくれよ。







こりゃもうどうしようもない。


しかたなく車の中の家具を動かし、キットを取り出し、どしゃ降りの中ずぶ濡れでジャッキを差し込んだ。



せっかくさっき風呂入ったのに、すぐに髪の毛から水が滴ってくる。


あああああ!!!もう!!!!


早く交換しなきゃ!!!!


力を込めてジャッキを回していると、雨で地面がぬかるんでいるせいで土にめり込み、ジャッキが倒れた。



ドン!!



浮きかけた車がジャッキから外れて地面に落ちた。



ぬおおおお!!!あぶねぇ!!!



潰されかけた…………



もういやだー…………………





寒いよー!!!


孤独だよーーーー!!!!!


工事車両しか通らないような林道でパンクとかマジで心細いいいいいいいいいい!!!!!








そんな絶望的な状況の中、なんとかスペアタイヤに交換し終え、すぐに車に乗り込んで震えながら暖房を全開にする。



はああああ……………

あったかい…………………


土砂降りの中、泥まみれのタイヤを抱え上げるのはさすがに辛かった………………




山の中にタイヤが放置してあったりするのって、こんな状況の人がいたってことなのかな。


いや、ただ捨てにきてるだけか。










服を着替え、なんとか林道を脱出し、それから近くの集落にあった『馬留食堂』という小さな食堂に駆け込んだ。




焼き飯死ぬほどうまい。





はああああ、生き返ったああああ…………


おかげで凹んでた気分も少しは晴れ、一気に田辺の町まですべりおりた。





あー、スペアタイヤってどれくらいもつんだろなぁ。


早く交換しないとなぁ。


処分にもいくらかかかるんだろうな……………




また金がああああああああ!!!!


林道怖ええええええええええ!!!!!













翌日。







目を覚まして車のドアを開けると、ゆうべの雨もさっぱり晴れて春の暖かい風が優しく吹いていた。


よし行くぞ。


ガンガン和歌山制覇していくぞ!!





関西の有名温泉地、白浜温泉は、ぴょこんと飛び出した半島の海岸線に形成しており、白砂のきれいなビーチや奇岩などの名所、家族で楽しめるテーマパークまでが揃った一大リゾート地となっている。


どんなところだろうとワクワクしながら、円月島や千畳敷などの海岸美を堪能しつつ南下。













恋人岬、夫婦波をすぎ、紀伊半島の南端、串本町にやってきた。


紀伊大島に渡り、海金剛の南国ムード漂う展望台では沖縄の海を思い出し、しばらく足をとめて眺めていた。




















紀伊半島で欠かせない名所、橋杭岩は海蝕でできた岩の柱が、まるで杭のように一列に並んで沖に伸びているという景勝地だ。


そんな橋杭岩の駐車場に車を止めて降りた時、どこからともなく何かの音が聞こえてきた。






………………ん?






これなんの音だ…………?





ピアニカか…………………?







音のする方に歩いていってみると、誰もいない砂浜の階段に座り、海に向かってピアニカを吹いている坊主頭の男性がいた。





横にはバックパックの荷物が置いてある。

思い切って声をかけてみた。




「あ、旅人さんですか?」



「あ、はい。」




27歳という彼は世界中を旅してるというカズさん。


奈良に知り合いの女の人に会いに行く途中で、気ままに古道を回って旅してる最中だという。



「俺、今夜田辺の路上で歌いますよ。一緒にやります?」



「お、いいねー。」



そんな軽い感じでカズさんと合流決定。


さすが旅人さんはフットワークが軽いなぁ。
















てなわけで2人で田辺に戻ったわけだけど、いくら旅人とはいえハルさんの全身が拷問級に臭いので、どんだけ風呂入ってねぇんだよってことで、白浜温泉の『牟婁の湯』(300円)に行き、さっぱりしてからいざ路上へ。



田辺駅の近くに味小路という風情のある入り組んだスナック街を見つけ、そこの一角で歌うことにした。


ひなびたネオン街にギターを鳴らすと、それにカズさんがピアニカを合わせてくれる。





うーん、ピアニカっていいなぁ。

すごく郷愁を誘う音色だ。



「ええなええなー!!ホラ!!おっちゃんらも聴いていきよしー!!」



演奏していると早速2人組の女の人が立ち止まった。


いかにも関西のお姉さんっぽいミキさんとマユミさん。


2人が俺たちの周りでワイワイと客引きしてくれ、サクラをしてくれたおかげでそれなりに稼ぐことができた。


ありがとう!!








路上を終えて2人で車に戻り、今日のあがりでビールを買ってきて色んな話をした。


お互いの好きな音楽をかけたりしているうちに、気付けばもう朝になっていた。



「ジャズって、スケールを外して弾くことがあるんだよね。演奏の中で入れたらいけない音を入れてくる。それをいかにカッコよく外すかっていうところでセンスが問われるんだよ。」



そう言うカズさんの信条はこれ。



『ジャズと人生はアウトだ。』



んー、なるほどなぁ。


いかにカッコよく常識から外れられるか、そんな生き方ができたらいいよな。





リアルタイムの双子との日常はこちらから





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