2005年10月25日 【関東後半 千葉県】
朝、ビーチのサーファー専用無料駐車場で目をさました。
朝っぱらからもうかなりの数のサーファーが海に浮かんでいる。
サーファーたちが気持ちよさそうに波乗りしているのを眺めながら日記を書き、それからゆうべの野村さんの豆腐屋に行ってみた。
「おー!!来たかいー!!」
ゆうべあれほど高度なギター理論を教えてくれたあの野村さんが、ゴム長、ゴム前かけであわただしく豆をかき混ぜていた。
「よし、じゃぁこれ飲んで。朝飯食わせてやる。」
渡されたカップにはトロトロしたヨーグルトのような飲み物。
口に含むと、一瞬無味に感じるが後からモアーっと豆の味が広がった。
搾りたての豆乳だ。
市販のものとは比べ物にならないコク。
「よし、食え!!」
4~5人のおばちゃんたちが豆腐を並べたり油揚げを作ったりと忙しそうにしている横で、立ったまま朝ご飯をいただく。
白飯、味噌汁、豆腐、厚揚げ、そして豆乳。
なんてヘルシー!!
できたてはやっぱりめちゃうまい!!
「ほら、その揚げ物しているおじちゃん。彼もすごいジャズのドラマーなんだよ。鴨川は他にもたくさんミュージシャンがいてね。もっと滞在するんだったらみんなに紹介したいんだけどなー。」
すごいスピードで豆をかきまぜながら話す野村さん。
地元に密着した商売だから休みは正月の3日くらいのもんで、朝早くから豆腐を作っては夜は生徒さんにギターを教えに行ってと、ハイパー多忙な毎日を送っているようだ。
12時になっても昼休憩をとらず、片づけが終わったらすぐに配送。
俺も一緒についていき、車の中でゆうべの続きのギター理論を教えてもらった。
譜面にある♯・♭の数によるコードのパターンや、その平行調の法則とか、そんなめっちゃ難しい話。
「今後10年20年音楽を続けていけば、プロにならずともみんなプロ並の腕前になっていくし、金丸君もなる。そうなったときに多少なりとも理論はわかっていないとコミュニケーションがとりづらいんだよ。今後絶対役にたつから理論は覚えておいたほうがいいよ。」
配送が終わっても作業場でギターを持って熱心に指導してくれ、気がつけば17時になっていた。
「よし、それじゃ僕はそろそろ行かなきゃいけないから。また次に来たときに色んな人のところに連れていってあげるよ。あー、後1週間いたら相当レベルアップするんだけどなぁ。」
今までずっと独学で音楽をやってきたけど、やっぱり教えてもらうと理解が早い。
師は自分のステップに合わせて巡り会うというけど、野村さんに出会えたということは俺もそのレベルに達したんだと思いたい。
もっともっと勉強していいミュージシャンになりたいな。
野村さん、本当にありがとうございました!!!!!
理論勉強します!!!
頭の中音符でこんがらがりながら、町にある温泉旅館『魚眼庵』にお風呂に入りに行った。
こんな立派な旅館の日帰り入浴で500円はまぁ安いなと思いつつ風呂場に行き、服を脱いで浴室のドアを開けるとそこはいきなり露天になっていた。
やっぱ旅館だから体は各部屋の風呂場で洗うんだろうなと思いつつシャワーで体を洗っていると、ワイワイがやがやと団体のおじちゃんたちが入ってきた。
おじさんというのは体を洗わないでいきなり湯に入る。
「いやー、いい風呂だっぺよー、うわっ!!なんだこれ!!ぬるすぎだっぺー!!」
「ぬるいぬるい!!風邪ひいちゃうっぺよー!!」
おじさんたちが大騒ぎしている。
俺も体を洗い終わって入ってみると確かにぬるすぎる。
いくら入っていても温まらない。
ていうか露天だからほぼ水。
「いやー、でも、ちょっと温まってきたな。」
「そういわれればそうだっぺな。なんかこう、じんわりくるな。そういう温泉なんだっぺ。」
「そうだっぺー。」
どう考えても違うよな?と思いつつ、おじさんたちと一緒に震えながら風呂を上がる。
服を着てロビーに出ると女将さんが顔色を変えて慌てふためいていた。
「大変申し訳御座いません!!手違いがありまして!!」
「…………………………………だと思ったっぺよー!!」
やっぱり機械の故障かなんかでお風呂が冷たくなってたみたいだった。
そりゃそうだよな。
こりゃ評判がた落ちだなと思いながら駐車場に戻っていると、女将さんが外まで追っかけてきた。
「あの、これ、代金いただくわけにはいきませんので。大変申し訳御座いませんでした。」
入浴料の500円を返してくる女将さん。
まぁ当たり前っちゃ当たり前なんだけど、これが出来ない店のほうが大半だろう。
きっと接客も普段からしっかりやっているんだろうな。
お風呂もまぁよかったし、逆にイメージアップだ。
さっぱりしたら館山に向かう。
今日はモンシェリーのオーナーの誕生日。
おそるおそる店のドアを開けるともういたるところ花だらけになっていた。
「おうー!!金丸君ーー!!よろしくなー!!」
早速3曲歌わせてもらうと、そこにあの日本男児タケオさん登場!!
気合の入った演奏でお客さん大興奮。
それから路上、スナック『アンアン』、『シンデレラ』でも歌い、またモンシェリーに戻って3曲歌うという忙しい夜。
おかげでかなりのチップがたまった。
しかし、歌い終わるとなぜか女の人がいる席を回らされた。
お客さんの女の人の話し相手になって酒を注ぐ。
お客さんはみな目当ての男に会いにきているのに、なんで俺がこんなヘルプまがいのことしなきゃいけないんだ?と一気にテンションがた落ちしてしまった。
話すことないし。
気まずすぎてめちゃくちゃ疲れた。
結局タケオさんと一緒に店を出たのは夜中の3時だった。
冷たい夜風が気持ちいい。
今日で館山ともバイバイ。
これで先に進める。
今夜は14000円ほどの稼ぎになったが、心は浮かない。
その理由はわかってる。
俺って口下手だなぁ…………
なんか最近特に痛感する。
そんな面白い話とか出来ないし、ダンスも踊れない。
つまらない男だと思う。
さっきみたいな場面があると結構へこんでしまうんだよな。
女の人と対面するとどうしても身構えてしまって、緊張が伝わって相手も気まずくなって、変な空気になって終わり。
ちくしょー、嫌だなぁ。
これが俺だし、って開き直ることができれば楽なんだろうけど、それができるほど強くもない。
モヤモヤした気分のまま車に戻った。
翌日。
九十九里の海岸沿いはどこもかしこもサーフショップだらけだ。
そんで歩いている人もみんな真っ黒くろすけの波乗りさんたちばかり。
女の人も真っ黒に日焼けして、荒れ放題の顔と髪の毛で堂々と歩いている。
ラジオを聞いていると天気予報みたいな感じでサーフィン情報が流れてくる。
『~浜は南西の風、腰くらいで午前中がベストでしょう。』
『~浜はいい波はきていないようです。』
まさにサーフィンを中心に回ってるような地域だ。
全長60キロもある浜、九十九里浜をかっとばし銚子市に到着。
全国でも有数の水揚げ量を誇る巨大港だ。
町中に入る前に犬吹崎の『地球の丸く見える展望台』へ。
小高い丘の上にある展望台の頂上から海を見渡す。
360°どこまでも広がる太平洋。
きれいだ。
そして銚子の町に入り、CD屋に飛びこんだ。
どうしても欲しかったCDをようやくゲット!!!!
ローリングストーンズの『The Bigger Bang』!!
とうとう手に入れたぞ。
うーん、もうジャケットからヤバすぎ。
CDをオーディオプレイヤーに挿入する手が震える。
こんなに新譜に期待できるバンドなんて他には絶対いない!!
いやぁ……………かっこよすぎ………………
これが60歳超えたジジイの演奏か?
楽曲はめっちゃ斬新で大胆!!
ていうかどんなにダッサイアレンジでもストーンズがやればそれがロックの王道になる。
音がすごく生々しいんだよなぁ。
いかにもチープなマイクで録音しました、余計な手入れは一切してないぜ、っている迫力がビシビシ伝わってくる。
まるで目の前で演奏しているかのようだ。
ほとんどミックの家のスタジオで録音したらしいが、キースがスタジオ入りする時、楽器と機材とトラック1台分のワインを持ってきたという。
いつも仲の悪いこの2人。
しかし何があったのか、今は60年代のころのようにすごく仲良しになっているらしい。
この調子でワールドツアー、日本にも来てもらいたいなぁ。
やっぱりストーンズはロックの頂点であり最前線。
この前ポール・マッカートニーの新曲聴いたけどやっぱり冴えないもんなぁ。
それに比べてこのアルバム、1秒1秒すぎるのが惜しいほど快感をともなう。
ストーンズ最強ーーー!!!
ご機嫌でアルバムを聴きながら日記を書き、夜になってから銚子の町中をぐるぐる回ってみた。
しかし飲み屋街は微妙な大きさで歌えそうになかった。
まぁいいか。
今日はこのままストーンズ聴きながらたまっている日記の続きを書くか。
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