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異界の入り口、湯殿山へ







リアルタイムの双子との日常はこちらから






2005年9月13日 【山形県】




朝方、車から飛び出して田んぼのあぜにゲロを吐き散らかしたのをかすかに覚えている。


もちろん二日酔い。


うげええええ…………気持ち悪い…………


ゆうべ調子に乗って飲み過ぎた…………


でも楽しかったな。




よろよろと布団から起き、ゆうべ『あじな』のママに握ってもらったおにぎりをほおばって、いざ出発だ。


極楽鳥海人の皆さん、本当にお世話になりました!!!











112号線を走っていると、バンジージャンプのできる月山の道の駅のあたりから、急に景色が一変する。


峡谷が山を割り、萱葺きの民家がちらばる。


滝が見えたかと思うと、はるか頭上をわたる高速道路の橋。

なんつーダイナミックな場所だ。

















月山湖の裏道を弘法大師の足跡を追うが行き止まり。


山奥にひっそりと寄り集まる田麦俣の集落には、昔ながらの兜造り民家が見られる。


百名瀑の七ッ滝を見てから、古くからの参拝道である六十里越街道で湯殿山へ向かう。







グニャグニャの山道を走っていくと、ようやく駐車場に到着。



出羽三山の1つ、湯殿山。


ここから先は400円の有料道路になる。


昭和時代の活気に溢れていたころを偲ばせる古いホテルの休憩所でおばちゃんに話しかけてみた。



「すみません、歩いて登る歩道ってないんですか?」



「えー、そちらの、ほらあそごがら、400円払っで登っで。」



「いや、歩いて登りたいんですよ。」



「はい、あそごの道を登っで下さい。ほら、料金所、あすこ。」



「……………」



いや、だから人の話ちゃんと聞けよ!!!



料金所の爺ちゃんに聞いたら、あるよー!!とすぐに教えてくれた。







というわけでサンダルで山に突入。


有料道路ができたことで、もうこんな登山道ほとんど誰も通らないんだろう、荒れ果てていて足場も悪い。


途中途中に明治まであったという『休憩小屋跡』の看板なんかが立っており、参拝の歴史を垣間見る。


昔はみんなこの道を登ったんだ。


ブナの巨木が密集していて白神山地顔負けの幽玄さ。












30分ほどかけてようやく森からズボッと抜け出た。




うおー……………


なんじゃこりゃー……………








山の隙間にそびえたつ真っ赤な巨大鳥居。


出羽三山の奥の院、湯殿山。


古くからこの山での出来事は『語るなかれ、聞くなかれ』といわれてきた神秘の霊山だ。


即身佛信仰の聖地でもあり、たくさんの人がこの地で五穀十穀を断つ木食行に打ち込んでいたという。


そう考えると山全体が黄泉の国への入り口のような、霊界のような、ただでは帰れなさそうな空気に震えがくる。





即身佛修行の行われていた行人塚には、即身佛のレプリカが置いてあった。





庄内地方には6体の即身佛がそれぞれお寺に安置されているが、どれも撮影は厳禁。


リアルさには欠けるが、まぁこんな感じです。
















鳥居から20分ほど登っていくと山道になり、ついに本宮への入り口。


とはいっても祭殿はない。


どういうことだろう?


受付に行きおっさんに声をかける。



「こんにちはー。」



「はい、靴脱いで。」



……………なんだこのぶっきらぼうなおっさん。


靴脱げなんてどこにも書いてねぇじゃねぇか。



「はい靴、靴!!靴脱いだらこっち。」



しまいにはマイクまで使って他の参拝客に注意している。


マジでよくそんな偉そうな態度を人にとれるよな。

このオッサンを雇ってる湯殿山の人の神経まで疑うわ。




裸足になり500円を払うとお守りを渡され、榊の枝でバサバサお払い。


人の型をした薄い紙で体全体を撫で、最後にその紙に息を吹きかけ足元の沢に流す。


これで穢れは落ちたらしい。


こんだけのことをしなければいけない、身を引き締めて畏敬の念を持って参拝してくださいということだろう。






それから細い道をペタペタ裸足で進んでいくと、森の中にご神体が現れた。



うおおおおおおおお…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………





はい、こっからは実際に行ってのお楽しみ。


『語るなかれ、聞くなかれ』。


どこか懐かしい、とても不思議な気分にさせてくれる空間だった。


マジでなんか、異界の入り口みたいな、ここだけ時空が違ってるかのような山だったな。



『西のお伊勢に東の三山参り』は古くから日本人の人生の儀式。


確かに何かやり遂げたって気持ちで満ち足りた気分だ。



次は伊勢神宮。


三重県はまだまだ遠い道の先だ。









もうすっかり日が短くなり、薄暗くなった山を駆け下りていく。

静寂に閉ざされた森に俺の足音だけがこだまする。


山にじーっと見られてるようだった。








西川町のとある老人ホームは200円で天然温泉に入れる穴場。


派手な格好をした俺を遠慮なしに舐めまわすように見てくるジジババ。


今日はこの町でストップ。



うーん、もっとキビキビ動かないとなぁ。

思うようにペースが上がらなくてウズウズする。













翌日。











これが国道?ってくらい草ボーボー、デッコボコの砂利道をひたすら走っていく。



忘れ去られたような墓場や、崩れ落ちそうな路肩、ほんとにこの先かよ?と疑っていると、突然森の中に巨大な旅館が現れる。


1200年もの歴史を持つ肘折温泉だ。


出羽三山への参拝客ではるか昔から栄えてきたこの温泉郷。

江戸時代には2週間で12000人が訪れたという記録も残っているそう。


今でこそ道が悪いが、昔の人からしたらあんな道慣れっこだったんだろうな。




石抱温泉は雑草に埋もれた野ざらしの岩風呂。





露天風呂というかただの溜め池みたいな状態なので入る気が失せ、温泉街を歩いた。





長期滞在の客のために日用品が並んだお店が軒を連ねる中を、湯治の達人のようなジジババたちが自分ちの居間でくつろいでるかのようなダルダルの格好でうろついている。


古びた共同風呂、茅葺き屋根の葺き替えをしてる職人さん。


歴史を感じさせる庶民的な温泉街だ。














「みーんな新庄とが山形ぬ引っ越しで行ぐんダァ。んだども、このあだりは紅葉がすんごぐ綺麗なんだっスぅ。」



商店のおばさんがそう言っていた。






ソバ普通。











さて、最近ちょっと小耳にはさんで気になっていた場所がある。


なにやらこの辺りに恐ろしい温泉があるという。


一体どういうとこだろう?と事の真相を確かめるべく、本郷の集落から山に入りオフロードのコースみたいなすさまじい悪路を、ひっくり返りそうになりながら森の奥へ向かう。


ワイパーを最速にしても追いつかないどしゃ降り雨で前が見えない。


ガードレールなんかもちろんない林道なので、ちょっとミスったら沢に転落だ。









30分ほどそんな道をひたすら山奥に向かっていると、突然目の前に鉄格子が立ちはだかった。


ここか。


ここが謎のベールに包まれる恐怖の温泉、今神温泉。



看板が立っている。なになに?



『日帰り、1~2泊お断り』


『7泊以上から要予約』


『一見お断り』



もうこの時点で怪しさがほとばしっている。


こんなおどろおどろしいとこで1週間も湯治するのか。







傘をさして歩いていくと、1番奥地に小さな建物があった。


こんなところで7泊以上もするのかよ?ってくらいボロボロで小さい。


完全に俗世から隔絶されている。



ここの湯は神の湯とされていて、どんな難病でもたちどころに治すということでハンセン病や癌などの患者さんがやってくるんだそう。


入浴の際は白装束を着込み下半身だけ浸かり、祭壇に向かい読経しながら4~5時間入る。


想像しただけで怖い…………




歴史は1300年。


遥か昔からそんな光景を繰り返してきたのか。


まさしく秘湯。


今まで見た中でダントツの秘湯っぷりなのだが残念ながら休業中で入ることは出来なかった。


残念。


でもこんなところがあるっていうのを知れただけでも勉強になったな。


世の中、知らないことだらけだ。









薄暗くなったガタゴト道を集落まで降り、小さな駄菓子屋みたいなところでおじさんと今神温泉についておしゃべりした。


今はもう宿泊はやっていないのだが、あそこの湯のファンはたくさんいるようで、土曜、日曜だけリッターいくらで湯を販売しているらしい。


大変な人気で、中にはでかいタンクを積んでトラックであの山奥まで行く人もいるんだという。


この駄菓子屋は温泉に向かう道にある最後の店で、昔は茶屋として今神温泉に向かう湯治客でにぎわっていたとのこと。


まだ馬車が走っていた時代のことだそうだ。







どしゃ降り雨の中、最上川までやってきてそこらのドライブインでまずいミソラーメンを食べてストップ。


あー、あんま進まねーなぁ。


でもテキトーに回るのも嫌だしなぁ。


フロントガラスに打ちつける雨をぼんやり眺め、日記を書いた。





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